弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴をいずれも棄却する。
     控訴費用は控訴人らの負担とする。
         事    実
 控訴人らは、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、
二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決
を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は、次のとおり訂正附加するほか、原判決事実摘示の
とおりであるから、これを引用する。
 (控訴人)
 一 原判決書三枚目表八行目中「1」を「1の〔一〕」に、四枚目表三行目から
同裏三行目までの記載を次のとおりに、各改める。
 「(二) 本件においても
 (1) 被控訴人は、昭和二九年六月五日Aに対し、本件土地を國から売払を受
けたときはこれを売買する旨の停止条件付売買契約を締結した。
 (2) Aは、國に対し同年同月一五日本件土地の借受けを申込んだ。
 (3) 被控訴人は、同年同月一六日付の「國がAに貸付けたことについては異
議がないこと並びに法第八〇条により売払をうけたときは、Aに対し、払下げ価格
をもつて所有権を移転する。」旨の予約書を國に提出した。
 (4) a町農業委員会(以下農業委員会という)は、同年同月三〇日付書面を
もつて東京都知事に対し國有農地の貸付けにつき、目的・面積・計画実行の確実
性・附近に及ぼす影響・旧所有者の同意等については、相当である旨の進達をし
た。
 (5) 國は、前記Aの申込みに対し、同年一二月一〇日同人に対し農地法施行
規則により、個人住宅の敷地としてこれを貸付けた。
 (6) 他方Aは、右借受申込手続において「本件土地を永久転用し、木造瓦葺
二階建一三・五〇坪の住宅を建築し此処に永久居住の予定」云々という転用計画書
を提出しておきながら、何ら建築準備もしないまま、同年一一月頃訴外Bとの間
に、本件土地借受権を代金八〇〇〇円とし、借受権者名義変更手続を公正証書をも
つてすること及びBが同年度の土地使用料を負担することとして、これを譲渡する
旨の契約を締結した。
 (7) 本件土地の使用料は、A名義で当初の一年分しか支払われなかつた。
 (8) 本件土地借受権及びその後本件土地上に建築された建物の所有権は、後
記2(三)ないし(五)のとおり転々譲渡されたが、控訴人Cは、同Dと共に昭和
三四年一一月頃農業委員会を訪れ、本件建物二棟及びその借受権を取得した旨を告
げて、今後なすべき手続の指示方を求めたところ、同委員会は「旧所有者である被
控訴人の同意を得れば、控訴人Cに売払の手続をすることができる。」旨指示をし
た。
 (9) ところが農業委員会は、(い)國から委嘱をうけて本件土地売払の事務
処理をするにあたり、もはやAが借受権者ではなくなつたことを知りながら、未だ
借受権者の名義変更手続がなされていなかつたことを捉えて、恰かもAが借受権者
であるかのようにして、売払をするのに必要な一切の重要事項につきAを対象に
し、(ろ)昭和四一年六月一七日の時点では未だ土地貸付料の支払がされていなか
つたのにかかわらず、同日関東農政局長に対し借受権者はAであること及び貸付料
は収納済みである旨虚偽の進達をし、東京都知事もまたこれに基づいて同年七月一
四日同局長宛てに同旨の進達をしたほか、同月二二日には更に右同旨の進達と共に
被控訴人の買受申込(同年六月一七日付)は相当と認められるとして売払調書を作
成添附した。
 (10) 農業委員会は、その後土地貸付料の支払がないことに気付くや、同年
一〇月二五日本件土地の現実の使用者である控訴人らの意思に反して、売払を受け
んとする被控訴人をして、Aの國に対する昭和三〇年一月分から昭和四一年一二月
二三日までの土地使用料として、合計金一〇万〇六三七円を支払わせた。
 (11) 以上のとおり、國は、本件土地売払の事務処理を委嘱していた農業委
員会がかつての借受権者たりしAにはもはや借受権者たるの資格の無いことを知り
ながら、これを借受権者であるかの如く取扱い、したがつて右Aの賃借権の承継人
である控訴人C、同Eを度外視し、かつ同委員会の虚無の事実の進達に基づいて、
昭和四一年一二月二四日被控訴人に対し本件土地の売払をしたのであるから、その
売払行為は手続上必要不可欠の前提条件を欠き、また民法第九三条、第九四条の律
意からしても、無効である。」
 二 原判決書四枚目裏三行目と四行目の間に
 「1の〔2〕 本件土地売払行為が有効であるとしても、被控訴人は控訴人C、
同Eに対し、本件土地を売渡すべき義務があること
 (一) 前述のとおり、被控訴人はAとの間に本件土地につき停止条件付売買契
約を締結し、それによつて右Aが取得した所有権移転請求権は、前述の経過で土地
借受権と共に転々譲渡され、控訴人Cと同Eはそれぞれその借地分につきこれを承
継するに至つた。
 (二) したがつて被控訴人は、本件土地の売払行為が有効であるとすれば、右
控訴人らに対し、払下価額に現時の物価指数(二六二・六〇三)を乗じて算出した
金額の一〇倍(物価指数だけでは極めて少額であるため、これを一〇倍した)に相
当する金額の各二分の一の代金額をもつて、それぞれ本件土地の半分宛を売渡すべ
き義務を負担しているわけである。
 (三) よつて、右控訴人らに対し本件土地の売渡義務を負担している被控訴人
が、控訴人らに対し同土地の明渡を求めることは、失当たるを免かれないというべ
きである。
 (四) 仮に、前記被控訴人とA間で昭和二九年六月五日になされた本件土地に
関する合意が、売買予約であり、かつそれが昭和四六年一二月六日に両者間で合意
解除されたものであつたとしても、その合意解除は前述のようにそれ以前に所有権
移転請求権を取得した右控訴人らの権利を害することのできないものである。」
を加える。
 三 原判決書五枚目裏末行中「Fが」の下に「(一)および(二)の土地の借地
権者であつたAよりの借地権譲渡書等を添付して東京都北多摩南部事務所に建築確
認申請書を提出したところ、同人は」を加え、六枚目表二行目中「、また、」から
四行目中「なされている。」までの記載を「た。」に改め、同八行目から同裏初行
までの記載を削る。
 四 原判決書六枚目裏八行目中「七年間、」の下に「控訴人Cが(一)および
(二)の土地を使用していた事実を知りながら」を、七枚目表三行目中「与えたも
のである。」の下に「以上の黙示の承諾があつたことは、右控訴人らの土地使用料
不払の一事によつて否定されるものではない。」を各加える。
 五 原判決書七枚目表一〇行目中「いたのに」の下に「右売払を受け、かつ」
を、同行中「五年間、」の下に「右敷地の占有につき」を各加える。
 六 原判決書八枚目表八行目中「述べなかつた。」の下に「また、その間被控訴
人は控訴人に数回邂逅した際に、その都度土地を買わないか、もし買受代金がなけ
れば金融機関をあつせんしようとすら申出ている。」を、一〇行目中「ばかりでな
く、」の下に「およそ、ある権利を有する者が長期間に亘り当該権利の行使を懈怠
したばかりでなく、当該権利の行使に抵触する積極的もしくは消極的行為をしたと
きは、もはや当該権利の行使は許されるべきでないから、」を各加える。
 七 原判決は、次のとおり判決に関する重要な規定に違反しているから、これを
取消して、原審に差戻すへきである。
 (一) およそ「裁判長の捺印ないときは、該調書は、判決が適式に言渡された
か否かに付証明の効力を有しない」(大判昭和七年二月九日)のであり、また「裁
判所書記の捺印ないときは、その調書は、口頭弁論の方式の遵守に付証拠力を有し
ないから、かかる口頭弁論を基本とする判決は、破毀を免れない」(大判昭和六年
五月二八日)ものであり、このように口頭弁論調書ですら、裁判長ないし書記官の
捺印を欠如するときは、該調書は、何らの証明力を有しないことが判示されている
のであるから、調書よりも更に重要性を有する判決そのものに、判決をした裁判官
の捺印ないしは契印を欠如するときは、判決として成立していないことは勿論、そ
の効力を有するものでもないと謂わねばならない。
 (二) 本件につきこれを観るに、原判決中「第三証拠・本件記録中の書証目録
および証人等目録のとおり。」とあるに止まり、原判決と右書証および証人等目録
(以下証拠目録という)との間に裁判官の契印の存しないばかりでなく、証拠目録
が一〇枚にも及ぶのに、一か所だにその間に契印が存しない。元来、証拠目録は、
口頭弁論調書の一部を成すものであつて、判決の一部を成すべき性質を有する文書
ではない。もしこれをも判決の一部とせば、その全葉に裁判官の契印がなければな
らない。然るに、その契印がないのであるから、証拠目録は判決の一部ではない。
したがつて原判決には、証拠の記載がないことになるから、原判決は、証拠によら
ずして事実を確定した違法がある。
 (三) 或いは証拠目録も記録に編綴されているから、何ら違法ではないが如く
であるが、「準備書面の記載をもつて、上告理由として引用することは、できな
い」(最判昭和二八年一一月一一日、昭和二六年六月二九日)のである。したがつ
て、上告の理由ですら、他の文書を引用し得られないのに、最終的判断たるべき裁
判においては、これを許すべきではないことは、右判旨からも容易に推知し得ると
ころである。
 (四) 或いは、民訴法一九一条の規定によれば、一見証拠は、判決書の記載事
項ではないが如くであるが、証拠は、事実及び争点を判断するに必要な資料である
から、これなくては事実及び争点を判断し得るものではない。したがつて判決書に
は、事実及び争点と共に証拠を記載しなければならないことは論を俟たないとこ
ろ、原判決は、証拠目録との契印を欠如しているから、証拠の記載を脱漏したると
何ら異ならない。
 したがつて、原審は、当事者の提出援用しない証拠により、係争事実を判断した
違法がある。(大判大正九年六月一一日、最判昭和二八年一月二二日)。
 (被控訴人)
 一 原判決書一〇枚目表九行目中「一項」を「一項の〔1〕及び第一項の
〔2〕」に改め、同裏七行日中「なされた。)」の下に「抗弁第一項の〔1〕
(二)(1)につき、被控訴人が昭和二九年六月五日Aとの間において、本件土地
を國から売払いをうけた場合に、その所有権を移転することを約した事実はこれを
認めるが、その合意の内容は、(い)右Aにおいて被控訴人に対し金二三万七六〇
〇円及び被控訴人が國から本件土地の売払をうける際に支払う売払代金と同額の金
員を支払うものとし、右金二三万七六〇〇円の内金五万円は同契約締結と同時に、
残金一八万七六〇〇円は予約書(乙第二四号証の三)作成と同時に、右売払代金相
当額は被控訴人から右Aへの本件土地所有権移転登記と同時に支払われるべきこ
と、(ろ)右Aは本件土地の国有農地貸付料を国に支払い、被控訴人が本件土地を
国から売払を受けるのに障害のないようにすること、が約されていたものである。
したがつて、同契約は単純な停止条件付売買契約ではなく、売買予約と解すべきで
ある。同項(二)(2)(3)(5)の各事実は、これを認める。抗弁第一項の
〔2〕項の事実については、仮に本件建物の所有権が控訴人ら主張の如く転々移転
したとしても、前記昭和二九年六月五日に被控訴人とA間に成立した契約は、Aに
おいても前述のように義務を負担しているのであるから、そのように権利義務が一
体となつている契約上の地位は、契約の一方の当事者である被控訴人が関与するこ
となくして、その地位そのもの、もしくはそのうちの権利の部分(すなわち売買予
約完結権または停止条件付売買の買主としての権利)だけを切離して、これを譲渡
することはできない(または対抗力がない)ものである。また前記転々したという
建物所有権移転の経過中には、競売も介在しているから、所有権移転の各前者と後
者間において控訴人主張の如き契約上の地位ないし権利の譲渡の合意の事実すらな
かつたものである。」を加える。
 二 原判決書一一枚目裏一一行目の次に、次の記載を加える。
 「五 再 抗 弁
 1 被控訴人は、Aとの間の本件土地売買に関する契約(売買予約)について、
昭和四六年一一月二六日右Aに対し、四日の期間を定めて予約を完結するか否かの
確答を求めたが回答がなかつたので、右予約は失効した。
 2 仮に右予約失効が認められないとしても、被控訴人は、昭和四六年一二月九
日Aとの間で同人との間の前記売買契約を合意解除することを主たる内容とする和
解契約を締結した。」
 証拠関係(省略)
         理    由
 一 当裁判所は、被控訴人の請求は正当であり認容されるべきであると判断する
が、その理由は、次に附加訂正するほか、原判決の理由と同一であるから、これを
引用する。
 (一) 原判決書一三枚目表三行目中「第一項」を「第一項の〔1〕及び第一項
の〔2〕」に、同裏三行目から九行目までの記載を次のとおりに、各改める。
 「2 控訴人らは、国が被控訴人に対してなした本件土地の売払行為は、手続上
不可欠の前提条件を欠き民法九三条、九四条の律意に反し無効であると主張する
が、その主張は、右売払以前において控訴人らが本件土地借受権を承継取得し、そ
のことが当時の所有者たる国に対抗できるものであつたこと、したがつて当初の借
受権者Aは右売払手続の行なわれた当時すでに借受権者ではなかつたということを
立論の前提とするものであるが、かかる前提事実の認められないことは後記判示
(原判決書枚一三目裏末行から一六枚目表五行目まで)のとおりであり、また成立
に争いのない甲第一号証の一ないし一二、乙第一六、一七号証の各一ないし四、同
第一八号証の一ないし八、同第二二、二三号証、同第二四号証の一ないし五、原本
の存在と成立に争いのない乙第二ないし四号証によれば、右売払行為はそれに必要
な手続を履践して行なわれたものであることが認められ、たといその一連の手続中
小金井市農業委員会が関東農政局長あてに国有農地買受申請に対する進達をした昭
和四一年六月一七日当時、Aの本件土地貸付料の支払が昭和三〇年度分以降滞つて
いることが認められるにせよ、それによつて国のなした右売払行為が無効となるい
われはない。したがつて、本件土地の売払行為が無効であるとの右控訴人らの主張
は、これを採用することができない。
 (二) 原判決書一三枚目裏九行目と一〇行目の間に、
 「3 被控訴人が昭和二九年六月五日Aとの間において、本件土地を国から売払
を受けた場合にその所有権を移転することを約したこと、Aが同年同月一五日国に
対し本件土地の借受けを申込んだこと、被控訴人が同年同月一六日付で国に対し
「国が本件土地をAに貸付けることに異議がなく、被控訴人が国から本件土地の売
払をうけたときは、その売払価格をもつて右Aに右土地所有権を移転する。」旨の
記載のある「予約書」と題する書面を提出したこと、国が同年一二月一〇日Aに対
し本件土地を個人住宅用の敷地として転用貸付をしたこと、被控訴人が昭和四一年
一二月二四日農地法八〇条により国から本件土地の売払をうけたことはいずれも当
事者間に争いがない。右昭和二九年六月五日になされた被控訴人とA間の本件土地
所有権移転に関する合意は、成立に争いのない甲第三号証の一、二、乙第二四号証
の三、原審における被控訴人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第二
号証、同第四号証ならびに同尋問の結果を総合すると、その合意の中でAは被控訴
人主張の如き反対給付等を履行すべき債務を負担し、そのうち売買代金二三万七六
〇〇円は、所有権移転よりも先履行の関係にあるものとして定められていることが
認められるから、右合意があるからといつて、またたとい右合意の性質を売買予約
でなく条件付売買契約であると解しても、被控訴人が国から本件土地の売払をうけ
てその所有権を取得したときにそれを停止条件としてそれのみによつて直ちに所有
権が被控訴人からAに当然に移転するものではなく、少なくともAにおいて先履行
義務を全部履行していることが、同人の所有権取得の前提条件となつていることが
明らかであるところ、Aにおいて右先履行義務を全部履行したことを認めるに足る
証拠はなく、かえつて前掲証拠によれば、右Aは尽すべき義務の一部だけしか履行
していなかつたことが認められる。したがつて、Aは、被控訴人が国から本件土地
の売払をうけたときに、これを条件としてそのときに被控訴人から本件土地の所有
権の移転をうけたものであるということはできず、単に前記合意に基き一定の反対
給付等の義務を履行して本件土地所有権の移転をうけ得べき請求権を有していたに
すぎない。そして、そのような契約上の地位は、一身専属のものでないかぎりこれ
を第三者に移転することが法的に可能ではあるが、その契約上の地位の移転の要件
としては、従前の契約両当事者の関与ないし同意を必要としなければならない。し
かるに、控訴人らは右Aの右所有権移転請求権がB、更にはG、F等を経て控訴人
らに移転したと主張するが、本件すべての証拠に徴するも、当初の契約の一方当事
者である被控訴人が右主張にかかる請求権移転につき関与ないし同意をした如き事
実は、これを認めるに足る証拠がなく、かえつて前掲各証拠によればそのような事
実は無かつたし、更に右被控訴人とA間の合意自体が、昭和四六年一二月九日右両
者間で合意解除されたものであることが認められる。したがつて控訴人らの抗弁第
一項の〔2〕は、その余の点につき判断するまでもなく、採用できない。(なお、
控訴人らは、右合意解除は控訴人らの取得した所有権移転請求権を害するから、そ
の効力を控訴人らに対し主張することができないと主張するが、それは控訴人らが
本件土地所有権移転請求権を取得したことを前提とするものであつて、その前提の
認められないことは、前判示のとおりである。)」を加える。
 (三) 原判決書一五枚目表三行目中「或いは登記」及び六行目から七行目にか
けて「し、或いは建物の所有権の帰属を公示」を各削り、七行目中「手続にすぎ
ず、」の下に「その確認申請書に土地所有者等の土地使用承諾書ないしこれに準ず
る書面(本件では控訴人らはAの借地権譲渡書であると主張)が添附されるとして
も、それは敷地の地番の特定、配置図の添附等と相挨つて建物の建築が建蔽率等敷
地との関連における建築規制に関する法令等の規定に適合するものであること(例
えば建築主において敷地として実際に使用できない土地を恰かも敷地であるかの如
くにして建蔽率に関する規定を潜脱したりすることのないようにすること)を審査
するためであつて、その審査をすることによつて結果的に土地使用権原のない不法
建築が或程度事前に防止されることがあるとしても、それは副次的なものに過ぎ
ず、それによつて」を、同八行目中「どうか」の下に「など私人間の権利関係(私
法上の権利関係)」を、末行中「結果によれば、」の下に「本件(三)(四)の建
物がいずれも不動産登記を経由して公示されていたこと、」を各加える。
 <要旨>(四) 控訴人は、原判決がその事実摘示において「第三証拠 本件記録
中の書証目録および証人等目録記載のとおり。」と記載したことが、違法で
あると主張するが、そもそも判決書は当事者がどんな主張立証をなし裁判所がそれ
に対していかなる証拠を採用してどんな判断をなし、どんな法律を適用して結論を
導いたかを明らかにすべき使命をになつており、それが万全であることが理想の形
態であるということは一応言い得るところであるが、他方各国の立法例をみても、
判決書作成の要否、作成について裁判所の作成すべき部分と当事者のそれとの役割
分担の有無、準備書面や期日調書引用の可否、その他記載内容と程度について必ず
しも軌を一にしていないように、前述の使命と共に簡易迅速、能率化という現実の
要請をもとりいれて法制化ないし慣行化しているものであるということが言い得よ
う。我が民事訴訟法は、一九一条において判決の記載事項として理由のほかに事実
及び争点を要領を摘示して記載すべきものとしている。すなわち、前述の意味の万
全という観点からすれば、「事実」に関しても当事者が口頭弁論に上程した事実資
料、証拠資料のすべての訴訟資料を如実に表現することが最上であると言えよう
が、我が訴訟法は要領摘示の程度にとどめて記載すべきことを規定しているのであ
る。そして同規定にいう事実及び争点を記載すべしということは、請求を特定する
具体的事実、理由づける事実、もしくは反対にその発生障害、変更、消滅事由とな
る事実とそれらに対する各相手方の応答の仕方、つまり争いがある事実と争いのな
い事実とを明らかにすべきことを要求していると解すべきであろう。したがつて右
にいう「事実及び争点」の中には形式的には証拠の関係(提出された証拠方法とそ
れに対する認否)は含まれていないと解するのが相当である。(それでは、従来我
が国の民事判決書において事実摘示中に証拠関係をも記載していたのは無用のこと
であつたかというと、実はそうではなく、それには十分合理的な理由があつたとい
わなければならない。例えば、民事訴訟記録は現在は弁論関係と証拠関係が分けて
編綴される方式をとつているが、かつてはこのような分類をせずに編年体式に訴訟
記録を編綴していたため証拠関係の文書が随所に分散する結果となり、これに対し
判決書でそれらをまとめて整然と記載することには少なからぬ実際上の便益があつ
たものであり、また控訴審の最初になすべき口頭弁論期日において原審口頭弁論の
結果が陳述されるにあたつても原判決書に事実資料証拠資料のすべてが正確に摘記
されておれば、「原判決事実摘示のとおり原審口頭弁論を陳述」することによつ
て、要約化明確化された訴訟状態で更新がなされ、控訴審における審理の円滑迅速
充実化の基礎を提供する一助ともなるものであり、更に事実中に証拠の記載をしな
いでおいて理由中で例えば「その他の証拠ではその事実を認めることができない」
と判示したようなときに、そこで排斥した証拠の具体的特定性に欠けるところがあ
つて理由不備となる倶れが生じる場合がないでもないなと、もろもろの合理的理由
があつて、証拠関係を事実に摘示することがほぼ慣行的に確立されていたものであ
るといえよう。)
 叙上のとおり、我が民事訴訟法において判決書の必要的記載事項としては、証拠
関係は、理由中の判断において形式的証拠力、実質的証拠力の有無が遺漏なく明示
されることが要求されるにしても、事実摘示中に証拠の標目や書証の認否などを網
羅的に記載すべきことは要求されていないと解せられるから、この解釈と異りその
記載が必要的であることを前提とする控訴人の主張は、採用することができない。
 尤も、右にいう「争点」の中には争い方、つまり如何なる証拠をもつて争うもの
であるかということまで含まれるとする説、或いは争いのない「事実」、争いのあ
る「事実」の中には書証の認否の如き補助事実をも含むものであると解する考え方
などが成り立つ余地が全くないでもないが、仮にそのような見解のもとに、本件原
判決書の事実摘示中の控訴人ら指摘の個所の証拠関係の記載の方法が暇疵であると
しても、それだけで判決の不成立、無効を来たすものでないことは勿論、その暇疵
はその判決を取消すに足るべきものでもなく、記載の不備として更正すれば足りる
性質のものである。ところで、本件の原判決中控訴人ら指摘の個所は、本判決にお
いて実質上これを改めているから、それが暇疵であるとする見解にたつても、その
暇疵は結局治癒されたものといわなければならない。
 二 よつて、被控訴人の請求を認容した原判決は正当であり、本件各控訴は理由
がないからいずれもこれを棄却し、控訴費用は敗訴当事者らの負担とし、主文のと
おり判決する。
 (裁判長裁判官 菅野啓藏 裁判官 舘忠彦 裁判官 安井章)

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