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平成19年12月11日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成18年(ワ)第11880号(甲事件)特許権侵害差止等請求事件
同第11881号(乙事件)特許権侵害差止等請求事件
同第11882号(丙事件)特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成19年10月22日
判決
原告美濃顔料化学株式会社
訴訟代理人弁護士細井土夫
川本一郎
加藤志乃
犬飼敦雄
星野真二
補佐人弁理士樋口武尚
甲事件被告株式会社エコホリスティック
乙事件被告株式会社長野セラミックス
丙事件被告柴田陶器株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士溝上哲也
岩原義則
被告ら訴訟代理人弁理士山本進
被告ら補佐人弁理士宇佐見忠男
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
(以下において書証を引用するときは,特に断らない限り,甲事件の証拠番号によるも
のとする)。
第1請求
1甲事件
(1)甲事件被告は,別紙イ号及びロ号物件目録(甲事件)記載の各物件(以下
「甲イ号物件「甲ロ号物件」といい,併せて「甲被告物件」という)を生産」,。
し,使用し,譲渡し,貸し渡し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはな
らない。
(2)甲事件被告は,甲被告物件のカタログを配付してはならない。
(3)甲事件被告は,インターネットのホームページに甲被告物件を掲載してはな
らない。
(4)甲事件被告は,甲被告物件を掲載したカタログを回収し廃棄せよ。
(5)甲事件被告は,甲被告物件及びその製造装置を廃棄せよ。
(6)甲事件被告は,原告に対し,金7000万円及びこれに対する訴状送達の日
の翌日(平成18年11月22日)から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
2乙事件
(1)乙事件被告は,別紙イ号物件目録(乙事件)記載の物件(以下「乙イ号物
件」という,同ロ号物件目録(乙事件)記載の物件(以下「乙ロ号物件」とい。)
う,同ハ号物件目録(乙事件)記載の物件(以下「乙ハ号物件」という,同。)。)
ニ号物件目録(乙事件)記載の物件(以下「乙ニ号物件」という)を生産し,。
使用し,譲渡し,貸し渡し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならな
い。
(2)乙事件被告は,前項記載の各物件(以下「乙被告物件」という)のカタログ。
を配付してはならない。
(3)乙事件被告は,インターネットのホームページに乙被告物件を掲載してはな
らない。
(4)乙事件被告は,乙被告物件を掲載したカタログを回収し廃棄せよ。
(5)乙事件被告は,乙被告物件及びその製造装置を廃棄せよ。
(6)乙事件被告は,原告に対し,金1610万円及びこれに対する訴状送達の日
の翌日(平成18年11月23日)から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
3丙事件
(1)丙事件被告は,別紙イ号物件目録(丙事件)記載の物件(以下「丙被告物
件」という)を生産し,使用し,譲渡し,貸し渡し,又はその譲渡若しくは貸。
渡しの申出をしてはならない。
(2)丙事件被告は,丙被告物件のカタログを配付してはならない。
(3)丙事件被告は,インターネットのホームページに丙被告物件を掲載してはな
らない。
(4)丙事件被告は,丙被告物件を掲載したカタログを回収し廃棄せよ。
(5)丙事件被告は,丙被告物件及びその製造装置を廃棄せよ。
(6)丙事件被告は,原告に対し,金4900万円及びこれに対する訴状送達の日
の翌日(平成18年11月22日)から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
第2事案の概要
本件は,発明の名称を「遠赤外線放射体」とする特許発明の特許権者である原告
が,甲事件被告,乙事件被告及び丙事件被告(以下併せて「被告ら」という)が。
製造販売している遠赤外線放射体はいずれも上記特許発明の技術的範囲に属し,同
商品を製造販売等する被告らの行為は原告の上記特許権を侵害すると主張して,被
告らに対し,特許法100条に基づき,同商品の製造販売等及び同商品のカタログ
の配付の差止めと同商品,その製造装置及び同商品のカタログの廃棄を求めるとと
もに,民法709条(特許法102条2項)に基づき,特許権侵害の不法行為によ
る損害賠償(訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金を含む)を請求する事案である。。
1争いのない事実等
(1)本件特許権
原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を
「本件特許」という)の特許権者である。。
特許番号第3085182号
発明の名称遠赤外線放射体
出願日平成8年2月8日
登録日平成12年7月7日
(2)本件発明
本件特許に係る明細書(平成16年9月14日付け訂正審決による訂正後の明
細書。以下「本件明細書」という。甲3)の特許請求の範囲の請求項1の記載は,
次のとおりである(以下,請求項1記載の発明を「本件発明」という。。)
「セラミックス遠赤外線放射材料の粉末と,全体に対し自然放射性元素の酸化
トリウムの含有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザ
イトの粉末とを共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物を,焼成し,複
合化してなることを特徴とする遠赤外線放射体」。
(3)本件発明の構成要件の分説
本件発明は,次の構成要件に分説するのが相当である。
Aセラミック遠赤外線放射材料の粉末と,
B全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算して0.3以
上2.0重量%以下に調整したモナザイトの粉末とを
C共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物を,
D焼成し,
E複合化してなること
Fを特徴とする遠赤外線放射体。
(なお,原告は,本件発明の構成要件は①セラミックス遠赤外線放射材料の粉末
を構成材料とすること,②モナザイトの粉末を構成材料とすること,③上記①及
び②全体に対し,自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算して0.3
以上2.0重量%以下のモナザイトが含まれるように調整されていること,④上
記①及び②の粉末を共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物とし,これ
を焼成し,複合化してなること,⑤遠赤外線放射体であること,の5要件に分説
されると主張する。しかし,原告の主張する上記5要件は,本件発明の特許請求
の範囲を正確に分説したものではなく相当でない。被告らの主張する分説は,本
件発明の特許請求の範囲を忠実に分説したものであって,相当と認められる。原
告は,被告らの主張する分説が特許請求の範囲の言葉を意味なく分離したもので
あり,ことに「セラミック遠赤外線放射材料の粉末と,全体に対し自然放射性,
元素の酸化トリウムの含有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調整
したモナザイトの粉末とを共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物」は,
意味なく言葉を分離すれば「セラミック遠赤外線放射材料の粉末「全体に対し」,
自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算して0.3以上2.0重量%
以下に調整したモナザイトの粉末「共に10μm以下の平均粒子径としてなる」,
混合物」となるなどと主張するが,被告らの主張する分説によっても「共に1,
0μm以下の平均粒子径としてなる混合物」とは「セラミック遠赤外線放射材料
の粉末」と「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算して
0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイトの粉末」の混合物を指すもの
であり,また「焼成し「複合化してなる」の対象物が上記「混合物」であっ,」,
て,それらが一体不分離の関係にあることは文理上明らかであるから,原告の主
張は理由がなく,被告らの主張するとおり分説するのが相当と認められる)。
(4)被告らによる被告製品の製造販売等
ア甲事件被告は,甲被告物件を製造販売している(甲被告物件は,商品名で特
定されたものであって,成分組成については争いがある。。)
イ乙事件被告は,乙イ号物件及びこれを原料とする乙ロ号物件(商品名・美石
の湯,乙ハ号物件(商品名・美肌温泉)及び乙ニ号物件(商品名・秘湯の郷)
土)を販売している(乙被告物件は,商品名で特定されたものであって,成分
組成については争いがある。。)
ウ丙事件被告は,丙被告物件を製造販売している(丙被告物件は,商品名で特
定されたものであって,成分組成については争いがある。。)
2争点
(1)構成要件充足性
ア甲被告物件の構成要件充足の有無(争点1)
イ乙被告物件の構成要件充足の有無(争点2)
ウ丙被告物件の構成要件充足の有無(争点3)
(2)本件特許の特許無効理由の有無
ア構成要件C「平均粒子径」に関する記載不備の無効理由の有無(争点4)
イ構成要件B「2.0重量%以下」に関する記載不備の無効理由の有無(争点
5)
ウ構成要件B「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算
して「調整」することに関する記載不備の無効理由の有無(争点6)」,
エ構成要件E「複合化してなること」に関する記載不備の無効理由の有無(争
点7)
オ進歩性欠如の無効理由の有無(争点8)
カ訂正要件違反の無効理由の有無(争点9)
(3)原告の損害(争点10)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(甲被告物件の構成要件充足の有無)について
【原告の主張】
(1)甲イ号物件について
ア甲イ号物件の成分組成は,別紙甲イ号物件成分表記載のとおりである。同物
件の成分組成を分類すると,以下のとおりとなる。なお,甲事件被告主張の甲
イ号物件の構成は,原告が提示した甲イ号物件とは異なるものである。
①セラミックス遠赤外線放射材料に対応する成分
SiO(シリカ,酸化ケイ素)41.0489%2
ZrO(ジルコニア,酸化ジルコニウム)34.3508%2
AlO(アルミナ,酸化アルミニウム)12.9311%23
FeO(酸化鉄)0.6077%23
TiO(チタニア,酸化チタン)1.1275%2
②モナザイトに対応する成分
CeO(酸化セリウム)1.9460%2
La2O(酸化ランタン)1.0986%3
Nd2O(酸化ネオジム)0.8558%3
ThO(酸化トリウム)0.3403%2
UO(八酸化三ウラン)0.0420%38
③自然放射性元素に対応する成分
ThO(酸化トリウム)0.3403%2
UO(八酸化三ウラン)0.0420%38
イ甲イ号物件は,上記ア①の成分を含むところ,これらは遠赤外線放射材料で
あり,これらの遠赤外線放射材料は,本件発明の実施物(セラミックス遠赤外
線放射材料)として例示されている(本件明細書の段落【0027,段落】
【0028。以下,本件明細書中の段落は,単に「段落【○○○○」と表記】】
する。したがって,甲イ号物件は,本件発明の構成要件(①)にいう「セラ。)
ミックス遠赤外線放射材料」に該当する。
甲事件被告主張の甲イ号物件の構成は,あり得ない処理に基づくものであり,
事実に反するものである。
ウ次に,甲イ号物件は,上記ア②の成分を含むところ,上記各成分は,セラ
ミックスの原材料をいかに組み合わせても得られない成分である。そして,モ
ナザイトは,化学式(Ce,La,Nd)POで表示されるように,セリウ4
ム(Ce,ランタン(La,ネオジム(Nd)をその主成分としていること,))
微量成分として酸化トリウム(ThO,酸化ウラン(UO)を含んでいる238)
ことからすれば,上記各成分を構成成分とするイ号物件にモナザイトが使用さ
れていることは明らかである。したがって,甲イ号物件は,本件発明の構成要
件(②)にいう「モナザイト」を含有する。
甲事件被告は,甲イ号物件に「モナザイト」が使用されていることは何ら立
証されていないと主張するが,ジルコンのみを使用しても遠赤外線の放射は僅
少となるから,モナザイトを使用し,調整を行わなければ実施できないもので
ある。
エ次に,甲イ号物件の酸化トリウムの含有量は「酸化トリウム含有%+3×,
酸化ウラン含有%」がその換算値であるから,その換算値は下記数式のとおり,
0.4663重量%となる(段落【0032。】)
ThO(酸化トリウム)0.3403%2
U3O(八酸化三ウラン)0.0420%8
酸化トリウムの換算値=0.3403+3×0.0420
=0.3403+0.1260
=0.4663%
したがって,甲イ号物件は,本件発明の構成要件(③)の「自然放射性元素
の酸化トリウムの含有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調製さ
れていること」に該当する。
オ甲イ号物件は,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナザイトの粉末を
混合して,焼成し複合化したものであることは明白である。また,次のとおり,
各粉末が共に10μm以下の平均粒子径まで微粉末とされたものである。
(ア)まず,セラミック遠赤外線放射材料が,非加熱下において効果的に遠赤
外線を放出するためには,α線は物質中を進む飛程が短いので,各原材料の
平均粒子径を10μm以下とすることが必要であり,好ましくは0.5∼1
μm程度に微粒子化することが必要である。したがって,甲イ号物件につい
て,その遠赤外線放射原理からすれば,平均粒子径を10μm以上の状況で
混合して焼成することは,技術常識としてあり得ない。
(イ)また,一般に,セラミックス遠赤外線放射材料とモナザイトとを焼成し
て球状にする場合,その平均粒子径を10μm以下にしないと粒子間が緻密
な球状とはならない。なぜなら,平均粒子径が10μmを上回る場合,これ
らの粒子で形成された球状は,いわゆる「砂でできた団子」状態となり,直
径10㎜程度の球体として焼結することは困難であるから,球体として焼成
が容易な平均粒子径を10μmとすることは,製造過程において普通に行わ
れていることである。
(ウ)したがって,甲イ号物件が直径7から9mm程度の球体として焼結され
ている事実からすれば,甲イ号物件は,平均粒子径を10μm以下とする
「セラミックス遠赤外線放射材料」と「モナザイト」の混合物として焼結さ
れているのは明らかであり,本件発明の構成要件(④)を充足する。
カ次に,甲イ号物件は,その構成成分からして,セラミックス遠赤外線放射材
料を含んでおり,遠赤外線の放射体であることは明らかである。
キ以上のとおり,甲イ号物件は,本件発明の構成要件をすべて充足するからそ
の技術的範囲に属し,その製造販売等は本件特許権を侵害する。
(2)甲ロ号物件について
ア甲ロ号物件の成分組成は,別紙甲ロ号物件成分表記載のとおりである。同物
件の成分組成を分類すると,以下のとおりとなる。なお,甲事件被告主張の甲
ロ号物件の構成は,原告が提示した甲ロ号物件とは異なるものである。
①セラミックス遠赤外線放射材料に対応する成分
SiO(シリカ,酸化ケイ素)42.1586%2
ZrO(ジルコニア,酸化ジルコニウム)10.6207%2
AlO(アルミナ,酸化アルミニウム)17.6974%23
FeO(酸化鉄)0.5447%23
TiO(チタニア,酸化チタン)0.3494%2
②モナザイトに対応する成分
CeO(酸化セリウム)6.6175%2
LaO(酸化ランタン)2.9272%23
NdO(酸化ネオジム)2.4474%23
ThO(酸化トリウム)1.5123%2
UO(八酸化三ウラン)0.0599%38
③自然放射性元素に対応する成分
ThO(酸化トリウム)1.5123%2
UO(八酸化三ウラン)0.0599%38
イ甲ロ号物件は,上記ア①の成分を含むところ,これらは遠赤外線放射材料で
あり,これらの遠赤外線放射材料は,本件発明の実施物(セラミックス遠赤外
線放射材料)として例示されている(段落【0027,段落【0028。】】)
したがって,甲ロ号物件は,本件発明の構成要件(①)にいう「セラミックス
遠赤外線放射材料」に該当する。
ウ次に,甲ロ号物件は,上記ア②の成分を含むところ,上記各成分は,セラ
ミックスの原材料をいかに組み合わせても得られない成分である。そして,モ
ナザイトは,化学式(Ce,La,Nd)POで表示されるように,セリウ4
ム(Ce,ランタン(La,ネオジム(Nd)をその主成分としていること,))
微量成分として酸化トリウム(ThO,酸化ウラン(UO)を含んでいる238)
ことからすれば,上記各成分を構成成分とするイ号物件にモナザイトが使用さ
れていることは明らかである。したがって,甲イ号物件は,本件発明の構成要
件(②)にいう「モナザイト」を含有する。
エ次に,甲ロ号物件の酸化トリウムの含有量は「酸化トリウム含有%+3×,
酸化ウラン含有%」がその換算値であるから,その換算値は下記数式のとおり,
1.6920重量%となる(段落【0032。】)
ThO(酸化トリウム)1.5123%2
UO(八酸化三ウラン)0.0599%38
酸化トリウムの換算値=1.5123+3×0.0599
=1.5123+0.1797
=1.6920%
したがって,甲ロ号物件は,本件発明の構成要件(③)の「自然放射性元素
の酸化トリウムの含有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調製さ
れていること」に該当する。
オ甲ロ号物件は,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナザイトの粉末を
混合して,焼成し複合化したものであることは明白である。また,次のとおり,
各粉末が共に10μm以下の平均粒子径まで微粉末とされたものである。
(ア)まず,セラミック遠赤外線放射材料が,非加熱下において効果的に遠赤
外線を放出するためには,α線は物質中を進む飛程が短いので,各原材料の
平均粒子径を10μm以下とすることが必要であり,好ましくは0.5∼1
μm程度に微粒子化することが必要である。したがって,甲ロ号物件につい
て,その遠赤外線放射原理からすれば,平均粒子径を10μm以上の状況で
混合して焼成することは,技術常識としてあり得ない。
(イ)また,一般に,セラミックス遠赤外線放射材料とモナザイトとを焼成し
て球状にする場合,その平均粒子径を10μm以下にしないと粒子間が緻密
な球状とはならない。なぜなら,平均粒子径が10μmを上回る場合,これ
らの粒子で形成された球状は,いわゆる「砂でできた団子」状態となり,直
径10㎜程度の球体として焼結することは困難であるから,球体として焼成
が容易な平均粒子径を10μmとすることは,製造過程において普通に行わ
れていることである。
(ウ)したがって,甲ロ号物件が直径8から10mm程度の球体として焼結さ
れている事実からすれば,甲ロ号物件は,平均粒子径を10μm以下とする
「セラミックス遠赤外線放射材料」と「モナザイト」の混合物として焼結さ
れているのは明らかであり,本件発明の構成要件(④)を充足する。
カ次に,甲ロ号物件は,その構成成分からして,セラミックス遠赤外線放射材
料を含んでおり,遠赤外線の放射体であることは明らかである。
キ以上のとおり,甲ロ号物件は,本件発明の構成要件をすべて充足するからそ
の技術的範囲に属し,その製造販売等は本件特許権を侵害する。
【甲事件被告の主張】
(1)本件発明の構成要件Cの「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合
物」の「共に」の意味は,構成要件Aの「セラミックス遠赤外線放射材料の粉
末」を10μm以下の平均粒子径とし,かつ,構成要件Bの「モナザイトの粉
末」も,10μm以下の平均粒子径とすることを意味する。
(2)これに対し,甲イ号物件の構成は,以下のとおりである。
A1’ジルコンサンド(体積平均粒径約15∼44μm)80質量%
A2’粘土20質量%
C1’A1,A2’をそのままミキサーによって混合する。’
C2’混合物を成形する。
D’成形物を24時間熱風乾燥する。
後,焼成すること
F’によって製造された窯業製品。
すなわち,上記A1’の「ジルコンサンド」は,京都市<以下略>アコス株式
会社より仕入れたものであり(乙B1,甲事件被告は,アコス株式会社から仕)
入れた「ジルコンサンド」を丸子陶料株式会社に依頼して,粘土(A2)との’
混合ないし成形(C,乾燥ないし焼成(D)を行っている。’)’
(3)甲イ号物件は,本件発明とは以下の相違点があるから,本件発明の技術的範
囲に属しない。
ア甲イ号物件は「全体に対し自然放射性元素の酸化ナトリウムの含有量とし,
て換算して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイト(本件発明の」
構成要件B)を使用していない。
イ甲イ号物件は「複合化(本件発明の構成要件E)に相当する工程が存在し,」
ない。
(4)また,甲ロ号物件の構成は,以下のとおりである。
A1’ジルコン20%(平均粒子径は10μmよりも大きい)と,。
A2’粘土20%と長石30%と,
B’モナザイト30%(平均粒子径は10μmよりも大きい)とを,。
C’混合したものを成形し,
D’得られた成形物を焼成すること
F’によって製造された窯業製品。
すなわち,甲ロ号物件は,愛知県<以下略>山口耐火有限会社で造粒している
ものであり,ジルコン(A1)及びモナザイト(B)は,325mesh(−’’
44μm)のふるいにかけた粒度のものであり(乙B3,モナザイト(B)は,)’
粒度分布測定において粒度分布累積が50%を超える粒径(平均粒子径)は10
5μmとなっている。よって,ロ号物件のモナザイト(B)の平均粒子径は,’
少なくとも10μmよりも大きい。
(5)甲ロ号物件は,本件発明とは以下の相違点があるから,本件発明の技術的範
囲に属しない。
アロ号物件のジルコン(A1)の平均粒子径は10μmよりも大きいから,’
本件発明の構成要件Cにいう「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合
物」に該当しない。
イロ号物件のモナザイト(B)の平均粒子径は10μmよりも大きいから,’
本件発明の構成要件Cにいう「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合
物」に該当しない。
ウロ号物件は「複合化(本件発明の構成要件E)に相当する工程が存在しな,」
い。
2争点2(乙被告物件の構成要件充足の有無)について
【原告の主張】
(1)乙イ号物件の成分組成は,別紙乙イ号物件成分表記載のとおりである。同物
件の成分組成を分類すると,以下のとおりとなる。なお,乙事件被告主張の乙イ
号物件の構成は,原告が提示した乙イ号物件とは異なるものである。
①セラミックス遠赤外線放射材料に対応する成分
SiO(シリカ,酸化ケイ素)54.5482%2
ZrO(ジルコニア,酸化ジルコニウム)17.8051%2
AlO(アルミナ,酸化アルミニウム)12.3476%23
FeO(酸化鉄)0.5839%23
TiO(チタニア,酸化チタン)0.4100%2
②モナザイトに対応する成分
CeO(酸化セリウム)1.8289%2
LaO(酸化ランタン)0.9150%23
NdO(酸化ネオジム)0.7535%23
ThO(酸化トリウム)0.3881%2
UO(八酸化三ウラン)0.0348%38
③自然放射性元素に対応する成分
ThO(酸化トリウム)0.3881%2
UO(八酸化三ウラン)0.0348%38
(2)乙イ号物件は,上記(1)①の成分を含むところ,これらは遠赤外線放射材料で
あり,これらの遠赤外線放射材料は,本件発明の実施物(セラミックス遠赤外線
放射材料)として例示されている(段落【0027,段落【0028。した】】)
がって,乙イ号物件は,本件発明の構成要件(①)にいう「セラミックス遠赤外
線放射材料」に該当する。
(3)次に,乙イ号物件は,上記(1)②の成分を含むところ,上記各成分は,セラ
ミックスの原材料をいかに組み合わせても得られない成分である。そして,モナ
ザイトは,化学式(Ce,La,Nd)POで表示されるように,セリウム4
(Ce,ランタン(La,ネオジム(Nd)をその主成分としていることから))
すれば,上記各成分を構成成分とするイ号物件にモナザイトが使用されているこ
とは明らかである。したがって,乙イ号物件は,本件発明の構成要件(②)にい
う「モナザイト」を含有する。
(4)次に,乙イ号物件の酸化トリウムの含有量は「酸化トリウム含有%+3×酸,
化ウラン含有%」がその換算値であるから,その換算値は下記数式のとおり,0.
4925重量%となる(段落【0032。】)
ThO(酸化トリウム)0.3881%2
UO(八酸化三ウラン)0.0348%38
酸化トリウムの換算値=0.3881+3×0.0348
=0.3881+0.1044
=0.4925%
したがって,乙イ号物件は,本件発明の構成要件(③)の「自然放射性元素の
酸化トリウムの含有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調製されて
いること」に該当する。
(5)乙イ号物件は,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナザイトの粉末を
混合して,焼成し複合化したものであることは明白である。また,次のとおり,
各粉末が共に10μm以下の平均粒子径まで微粉末とされたものである。
アまず,セラミック遠赤外線放射材料が,非加熱下において効果的に遠赤外線
を放出するためには,α線は物質中を進む飛程が短いので,各原材料の平均粒
子径を10μm以下とすることが必要であり,好ましくは0.5∼1μm程度
に微粒子化することが必要である。したがって,乙イ号物件について,その遠
赤外線放射原理からすれば,平均粒子径を10μm以上の状況で混合して焼成
することは,技術常識としてあり得ない。
イまた,一般に,セラミックス遠赤外線放射材料とモナザイトとを焼成して球
状にする場合,その平均粒子径を10μm以下にしないと粒子間が緻密な球状
とはならない。なぜなら,平均粒子径が10μmを上回る場合,これらの粒子
で形成された球状は,いわゆる「砂でできた団子」状態となり,直径10㎜程
度の球体として焼結することは困難であるから,球体として焼成が容易な平均
粒子径を10μmとすることは,製造過程において普通に行われていることで
ある。
ウしたがって,乙イ号物件が直径10mm程度の球体として焼結されている事
実からすれば,乙イ号物件は,平均粒子径を10μm以下とする「セラミック
ス遠赤外線放射材料」と「モナザイト」の混合物として焼結されているのは明
らかであり,本件発明の構成要件(④)を充足する。
(6)次に,乙イ号物件は,その構成成分からして,セラミックス遠赤外線放射材
料を含んでおり,遠赤外線の放射体であることは明らかである。
(7)以上のとおり,乙イ号物件は,本件発明の構成要件をすべて充足するからそ
の技術的範囲に属し,その販売は本件特許権を侵害する。また,乙イ号物件を使
用した乙ロ号物件,乙ハ号物件及び乙ニ号物件の販売も本件特許権を侵害する。
【乙事件被告の主張】
(1)本件発明の構成要件Cの「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合
物」の「共に」の意味は,構成要件Aの「セラミックス遠赤外線放射材料の粉
末」を10μm以下の平均粒子径とし,かつ,構成要件Bの「モナザイトの粉
末」も,10μm以下の平均粒子径とすることを意味する。
(2)これに対し,乙イ号物件の構成は,以下のとおりである。
A’陶器土(平均粒子径13.88μm以上)80%と,
B’モナザイト原砂(平均粒子径166.2μm)20%とを,
C’混合したものを成形し,
D’得られた成形物を1200∼1300℃,10∼12時間焼成すること
F’によって製造された窯業製品。
すなわち,乙イ号物件の陶器土は,山口耐火有限会社より仕入れたもので,水
簸粘土(35%)と長石(65%)を調合したものである。陶器土の平均粒子径
は18.35μmであり,乙イ号物件の陶器土についてレーザー回析・散乱法に
よる粒度分布測定を行った結果(乙B2の1)によると,粒度分布測定結果はそ
のグラフ及び表のとおりとなり,体積累積が50%となる粒径(平均粒子径)は,
13.88μmとなった。上記A1’の「ジルコンサンド」は,京都市<以下略
>アコス株式会社より仕入れたものであり(乙B1,乙事件被告は,アコス株)
式会社から仕入れた「ジルコンサンド」を丸小陶料株式会社に依頼して,粘土
(A2)との混合ないし成形(C,乾燥ないし焼成(D)を行っている。’’)’
(3)乙イ号物件は,本件発明とは以下の相違点があるから,本件発明の技術的範
囲に属しない。したがって,乙イ号物件の販売は本件特許権を侵害せず,また,
これを原料とする乙ロ号物件,乙ハ号物件及び乙ニ号物件の販売も本件特許権を
侵害しない。
ア乙イ号物件は「全体に対し自然放射性元素の酸化ナトリウムの含有量とし,
て換算して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイト(本件発明の」
構成要件B)を使用していない。
イ乙イ号物件は「複合化(本件発明の構成要件E)に相当する工程が存在し,」
ない。
3争点3(丙被告物件の構成要件充足の有無)について
【原告の主張】
(1)丙被告物件の成分組成は,別紙丙イ号物件成分表記載のとおりである。同物
件の成分組成を分類すると,以下のとおりとなる。なお,丙事件被告主張の丙被
告物件は,原告の提示する丙被告物件とは異なるものである。
①セラミックス遠赤外線放射材料に対応する成分
SiO(シリカ,酸化ケイ素)61.7263%2
ZrO(ジルコニア,酸化ジルコニウム)0.4339%2
AlO(アルミナ,酸化アルミニウム)18.2497%23
FeO(酸化鉄)0.7747%23
TiO(チタニア,酸化チタン)0.3395%2
②モナザイトに対応する成分
CeO(酸化セリウム)3.2172%2
LaO(酸化ランタン)1.5492%23
NdO(酸化ネオジム)1.2949%23
ThO(酸化トリウム)0.7979%2
UO(八酸化三ウラン)0.0287%38
③自然放射性元素に対応する成分
ThO(酸化トリウム)0.7979%2
UO(八酸化三ウラン)0.0287%38
(2)丙被告物件は,上記(1)①の成分を含むところ,これらは遠赤外線放射材料で
あり,これらの遠赤外線放射材料は,本件発明の実施物(セラミックス遠赤外線
放射材料)として例示されている(段落【0027,段落【0028。した】】)
がって,丙被告物件は,本件発明の構成要件(①)にいう「セラミックス遠赤外
線放射材料」に該当する。
(3)次に,丙被告物件は,上記(1)②の成分を含むところ,上記各成分は,セラ
ミックスの原材料をいかに組み合わせても得られない成分である。そして,モナ
ザイトは,化学式(Ce,La,Nd)POで表示されるように,セリウム4
(Ce,ランタン(La,ネオジム(Nd)をその主成分としていることから))
すれば,上記各成分を構成成分とするイ号物件にモナザイトが使用されているこ
とは明らかである。したがって,丙被告物件は,本件発明の構成要件(②)にい
う「モナザイト」を含有する。
(4)次に,丙被告物件の酸化トリウムの含有量は「酸化トリウム含有%+3×酸,
化ウラン含有%」がその換算値であるから,その換算値は下記数式のとおり,0.
4925重量%となる(段落【0032。】)
ThO(酸化トリウム)0.7979%2
UO(八酸化三ウラン)0.0287%38
酸化トリウムの換算値=0.7979+3×0.0287
=0.7979+0.0861
=0.8840%
したがって,丙被告物件は,本件発明の構成要件(③)の「自然放射性元素の
酸化トリウムの含有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調製されて
いること」に該当する。
(5)丙被告物件は,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナザイトの粉末を
混合して,焼成し複合化したものである。また,次のとおり,各粉末が共に10
μm以下の平均粒子径まで微粉末とされたものである。
アまず,セラミック遠赤外線放射材料が,非加熱下において効果的に遠赤外線
を放出するためには,α線は物質中を進む飛程が短いので,各原材料の平均粒
子径を10μm以下とすることが必要であり,好ましくは0.5∼1μm程度
に微粒子化することが必要である。したがって,丙被告物件について,その遠
赤外線放射原理からすれば,平均粒子径を10μm以上の状況で混合して焼成
することは,技術常識としてあり得ない。
イまた,一般に,セラミックス遠赤外線放射材料とモナザイトとを焼成して球
状にする場合,その平均粒子径を10μm以下にしないと粒子間が緻密な球状
とはならない。なぜなら,平均粒子径が10μmを上回る場合,これらの粒子
で形成された球状は,いわゆる「砂でできた団子」状態となり,直径10㎜程
度の球体として焼結することは困難であるから,球体として焼成が容易な平均
粒子径を10μmとすることは,製造過程において普通に行われていることで
ある。
ウしたがって,丙被告物件が直径10mm程度の球体として焼結されている事
実からすれば,丙被告物件は,平均粒子径を10μm以下とする「セラミック
ス遠赤外線放射材料」と「モナザイト」の混合物として焼結されているのは明
らかであり,本件発明の構成要件(④)を充足する。
(6)次に,丙被告物件は,その構成成分からして,セラミックス遠赤外線放射材
料を含んでおり,遠赤外線の放射体であることは明らかである。
(7)以上のとおり,丙被告物件は,本件発明の構成要件をすべて充足するからそ
の技術的範囲に属し,その製造販売等は本件特許権を侵害する。
【丙事件被告の主張】
(1)本件発明の構成要件Cの「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合
物」の「共に」の意味は,構成要件Aの「セラミックス遠赤外線放射材料の粉
末」を10μm以下の平均粒子径とし,かつ,構成要件Bの「モナザイトの粉
末」も,10μm以下の平均粒子径とすることを意味する。
(2)これに対し,丙被告物件の構成は,以下のとおりである。
A’陶器土(平均粒子径13.88μm以上)80%と,
B’モナザイト原砂(平均粒径166.2μm)20%とを
C’混合したものを成形し,
D’得られた成形物を1200∼1300℃,10∼12時間焼成すること
F’によって製造された窯業製品。
すなわち,丙被告物件の陶器土は,山口耐火有限会社より仕入れたもので,水
簸粘土(35%)と長石(65%)を調合したものである。陶器土の平均粒子径
は18.35μmであり,丙被告物件の陶器土についてレーザー回析・散乱法に
よる粒度分布測定を行った結果(乙B2の1)によると,粒度分布測定結果はそ
のグラフ及び表のとおりとなり,体積累積が50%となる粒径(平均粒子径)は,
13.88μmとなった。
また,丙被告物件のモナザイト原砂は,山口耐火有限会社より仕入れたもので
ある。丙事件被告が瑞浪市窯業技術研究所に依頼し,同物件のモナザイト原砂に
ついてレーザー回析・散乱法による粒度分布測定を行った結果(乙B2の2)に
よると,粒度分布測定結果はグラフ及び表のとおりとなり,体積累積が50%と
なる粒径(平均粒径)は,166.2μmとなった。
(3)丙被告物件は,本件発明とは以下の相違点があるから,本件発明の技術的範
囲に属しない。
ア丙被告物件で使用している「陶器土(構成要件A)は,本件発明の「セラ」’
ミックス遠赤外線放射材料の粉末(構成要件A)に該当しない。」
イ仮にアが認められないとしても,その「陶器土(構成要件A)の平均粒子」’
径は13.88μm以上であるから,本件発明の「共に10μm以下の平均粒
子径としてなる混合物(構成要件C)に該当しない。」
ウ丙被告物件で使用しているモナザイト原砂(構成要件B)の平均粒子径は’
166.2μmであるから,本件発明の「共に10μm以下の平均粒子径とし
てなる混合物(構成要件C)に該当しない。」
エ丙被告物件は「複合化(本件発明の構成要件E)に相当する工程が存在し,」
ない。
オ丙被告物件は「セラミックス遠赤外線放射材料の粉末」を使用していない,
から「遠赤外線放射体(本件発明の構成要件F)とはいえない。,」
4争点4(構成要件C「平均粒子径」に関する記載不備の無効理由の有無)につい

【被告らの主張】
本件特許は,構成要件C「平均粒子径」に関して,本件明細書に特許法36条6
項2号,平成14年法律第24号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」と
いう)36条4項,特許法36条6項1号に違反した記載不備があり,同法12。
3条1項4号の無効理由がある。
(1)特許法36条6項2号(明確性要件)及び改正前特許法36条4項違反
本件発明は,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末と,所定の重量%の範囲に
調整したモナザイトの粉末を「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合,
物(構成要件C)とするものであるが,以下のとおり,本件明細書中には「平」
均粒子径」の定義及び説明がどこにも記載されていない上,平均粒子径を共に1
0μm以下とするための具体的手段や確認方法が記載されていないから,一般的
技術常識を考慮しても,本件発明のいう「平均粒子径」の意味するところは明確
でなく,構成要件Cの「10μm以下の平均粒子径」は,その権利範囲の境界を
特定することができないから,本件特許は,特許法36条6項2号の「特許を受
けようとする発明が明確であること」との要件を満たしていないし,当業者が過
度の試行錯誤を強いられることなく「共に10μm以下の平均粒子径としてなる
混合物」を実施することが可能であるとは認められないから,改正前特許法36
条4項の実施可能要件を満たしていない。
ア本件明細書には,遠赤外線放射材料と放射線源材料はできるだけ細かな粒子
の微粉末とすることが好ましく,一般に,10μm以下の平均粒子径とするこ
とが好ましいこと,0.5∼1μm程度の平均粒子径とすることがより好まし
いこと,また,それらの粒度が細かいほど,自然放射性元素の放射性崩壊によ
るエネルギ線をより効果的に遠赤外線放射材料に吸収させることができるとの
記載がある(段落【0035。また,本件明細書には,粉体状の遠赤外線放】)
射体(これは請求項2に係る発明である)の実施例として実施例1ないし3。
が記載されているが,その作製方法は,磁器製ポットをボールミルとして用い,
モナザイトを含む上記の配合の原材料に,略同量の水を添加し,湿式混合粉砕
を24時間行い,次いで,これを取り出して上水を切り,400℃の温度で乾
燥させた後,200メッシュのふるいを通し,この原材料粉末の混合物を電気
炉で1200℃の温度に2時間保持して焼成し,複合化した後,これを再び試
験用ミルで粉砕して得られるものであることが記載されている(段落【004
9。さらに,本件明細書には,小球状成形体からなる遠赤外線放射体(これ】)
は請求項3に係る発明である)の実施例として実施例4ないし6が記載され。
ているが,その作製方法は,各種のセラミックス遠赤外線放射材料と,モナザ
イトと,更に陶石とを,所定の配合で磁製ポットに入れ,これに略等量の水を
加えて湿式混合粉砕し,それらの原材料の粒子が平均粒子径において約1μm
程度になるまで粉砕し,混合した後,これを濾過して得た坏土を棒状に形成す
ると共に10mm程度に切断し,その切断塊を回転造粒機によって小球状に造
粒し,次いで,この造粒物を天日乾燥した後,約1200℃に加熱して焼成し,
複合化し,その後,バレル研磨処理を適宜施して,径約8mmの小球状成形体
を得ることが記載されている(段落【0065。】)
イこのように,本件発明は,非加熱下においても,遠赤外線をより多く放射す
ることができる遠赤外線放射体を提供することを目的とするものであり,その
目的を達成するために重要なことは,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末と,
トリウム又はウランの放射性崩壊によってセラミックス遠赤外線放射材料に励
起エネルギを与えるモナザイトの粉末とは,共にできるだけ細かな粒子の微粉
末とし,これによってモナザイトをセラミックス遠赤外線放射材料中に均一に
分散させ,遠赤外線放射材料との粒子間を緻密化させることであり,そのため
に構成要件Cの「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物」としたこ
とが重要であることは明らかであり,その点が本件発明の最大の特徴であると
いうことができる。そうである以上,構成要件Cの「10μm以下の平均粒子
径」については,本件明細書に,当業者が特別な知識を付加することなく,ま
た,当業者に過度の試行錯誤を強いることなく,本件明細書の記載と技術常識
に基づいて製造できるように記載されていなければ,実施可能要件を充足する
ことにはならないし,構成要件Cの「10μm以下の平均粒子径」は,本件発
明の目的とも直接に関係する以上,当然,その定義は明確に規定されていなけ
ればならない。
ウそこで,本件発明のようにセラミックス等の粉末を取り扱う技術において,
平均粒子径がどのように定義され,計測されるのかについてみると「微粒子,
ハンドブック・朝倉書店(乙A12「粉粒体計測ハンドブック・日刊工業」),」
新聞社(乙A13「現場で役立つ粒子径計測技術・日刊工業新聞社(乙),」
A14「粘土ハンドブック第二版・技報堂出版(乙A15)といった文),」
献の記載によれば「平均粒子径」には,種々の測定方法及び定義があり,代,
表径は粒子の形状やその取り方により異なること,平均粒子径の算定方法も複
数あり,同じ代表径からでもその算出値が異なること,さらに,測定方法も複
数あることが認められる。よって,本件発明のセラミックス遠赤外線放射材料
の粉末の粒子及びモナザイトの粉末の粒子においても,同じ粒子を測定しても
測定方法と平均粒子径の算出方法によって平均粒子径が異なるのであるから,
構成要件Cの「平均粒子径」を具体的にどのような方法により求めるのかが特
定されていなければならない。ところが,前記のとおり,本件明細書には,平
均粒子径の定義,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末及びモナザイトの粉末
の粒子の形状,代表径の取り方,平均粒子径の測定方法のいずれも特定されて
いないのであるから,本件発明は,特許請求の範囲に「共に10μm以下の平
均粒子径としてなる混合物」と記載されていても,それがどのような大きさの
粒子を指すかは不明であり,特許法36条6項2号の明確性要件を満たしてい
ないという無効理由がある。
エ他方,本件明細書には,遠赤外線放射材料と放射線源材料はできるだけ細か
な粒子の微粉末とすることが好ましく,一般に,10μm以下の平均粒子径と
することが好ましいこと,また,それらの粒度が細かい程,自然放射性元素の
放射性崩壊によるエネルギ線をより効果的に遠赤外線放射材料に吸収させるこ
とができるとの記載があるが(段落【0035,粉体状の遠赤外線放射体の】)
実施例(これは請求項2に係る発明の実施例である)の作製方法として,磁。
器製ポットをボールミルとして用い,モナザイトを含む上記の配合の原材料に,
略同量の水を添加し,湿式混合粉砕を24時間行い,次いで,これを取り出し
て上水を切り,400℃の温度で乾燥させた後,200メッシュのふるいを通
すことが記載されている(段落【0049)以外には,代表径の取り方らし】
きものを具体的に示す記載は一切ない。
しかしながら,段落【0049】に「200メッシュの篩を通した」とい。
う記載があっても,これによって構成要件Cの「共に10μm以下の平均粒子
径としてなる混合物」を実現できるということはあり得ない。なぜなら,まず
第一に「メッシュ(mesh」は,ふるい目の大きさを示す尺度であるが,,)
25.4mm(1インチ)間にある目の数によって規定されるものである(乙
),A16の1・1830頁。したがって,網の太さの条件が与えられなければ
ふるい目の開きの実際の値は定まらない。例えば,ヘビーデューティ(HD)
という仕様で,土砂のような重い粉体をふるために網が太くなったタイプのふ
るい「B」と,軽い粉体専用にしたため網を細く仕上げたハイキャパシティ
(HC+P)というタイプのふるいE」の目開きを比較している情報検索サイ
ト「AllAbout」のホームページの記載(乙A17の1・2)が分かり
易い例である。乙A17の2の例で,仮に画像の左右を1インチとして「B」
と「E」のふるいを比べてみると「B」は3メッシュ「E」は5メッシュと,,
いうことになり,メッシュで表す限り「E」の方が「B」よりも細かな目であ
るこということになるが,実際には「E」の方がふるい目の開きは粗いものと
なっている。そのため,JIS規格では「メッシュ」だけではなく針金の径,
も規定して,ふるい目の開きを規定している(乙A13・53頁の表5・4を
参照。ところが,段落【0049】の記載は「200メッシュの篩を通し)
た」というだけで,これがJIS規格によるものなのか不明である上,網の。
針金の太さの規定もどこにも見当たらないのであるから,このような不十分な
記載で代表径の取り方を定義したものということはできない。また,第二に,
仮に,段落【0049】の「200メッシュの篩」が,JIS規格のものだと
仮定しても,段落【0049】の記載は,ふるい目の開きが0.074mm
(74μm)のふるいを1回通すことを述べているにすぎない。したがって,
そもそも本件明細書には「平均粒子径」の定義がないため,当業者は,個数平
均,長さ平均,面積平均,体積平均等の中からいかなる基準の平均粒子径なの
かを試行錯誤する必要がある上に,セラミックス遠赤外線放射材料やモナザイ
トの粉末の粒子の形状や粒度分布について何らの分析もなされていない本件明
細書の記載を前提とすれば,ふるい目の開きが0.074mm(74μm)の
ふるいを1回通すだけで平均粒子径を共に10μm以下に調整することは不可
能というほかない。
そして,第三に「ボールミル」とは「数十∼数百ミリメートル以下の粒度,,
の鉱石類を数百∼数十ミクロン以下にまで粉砕するために使用する機械」であ
る粉砕機(mill)の内「粉砕媒体として剛球を使用するもの(乙A1,」
8)であり,ミルの回転数,粉砕媒体ボールの量,ボールの大きさ,原料の投
入量,湿式粉砕(水を加えて粉砕する)の場合は内容物の稠度,ミルに入れる
原料の粒度などの条件を考慮する必要があるところ(乙A19・90頁,段)
落【0049】には「即ち,磁器製ポットをボールミルとして用い,モナザ,
イトを含む上記の配合の原材料に,略同量の水を添加し,湿式混合粉砕を24
。,時間行った」との記載があるのみで,ミルの回転数,ボールの量及び大きさ
原料の投入量,磁器製ポットの形状など,当業者が実施するための条件が十分
に開示されていない。そして,段落【0065】には,陶石を含む小球状成形
体からなる遠赤外線放射体の実施例(これは請求項3に係る発明である)と。
して,実施例4ないし6が記載されているが,その作製方法は「各種のセラ,
ミックス遠赤外線放射材料と,モナザイトと,更に陶石とを,所定の配合で磁
製ポットに入れ,これに略等量の水を加えて湿式混合粉砕し,それらの原材料
の粒子が平均粒子径において約1μm程度になるまで粉砕し,混合した後・・
・」と,何らの実施条件も示すことなく,いきなり約1μm程度の平均粒子径
とすることが可能であるかのような記載となっており,当業者が本件発明を実
施しようとした場合に,どのようにすれば構成要件Cにいう「共に10μm以
下の平均粒子径」を実現できるのかについては,本件明細書の発明の詳細な説
明中に具体的な説明はなく,それを示唆する記載もない。
オまた,構成要件Cの「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物」の
「共に」とは,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末を10μm以下の平均粒
子径とし,かつ,モナザイトの粉末を10μm以下の平均粒子径とすることを
意味するものであるが,本件明細書には,セラミックス遠赤外線放射材料の粉
末とモナザイトの粉末を混合したものを200メッシュのふるいにかける実施
例が開示されているのみで,いかなる手段により両粉末を「共に」10μm以
下にすることができるのかが具体的に記載されていない。したがって,本件明
細書の記載を前提とすると,当業者において,構成要件Cの「共に10μm以
下の平均粒子径としてなる混合物」を実施するための手段が本件明細書に開示
されているものと認めることは困難というべきである。また,本件明細書に記
載がなくても,当業者が本件特許出願当時の技術常識に基づいて,構成要件C
にいう「共に10μm以下の平均粒子径」を実現することができると認めるに
足りる特段の事情もない。
以上によれば,本件明細書の記載は,当業者が特別な知識を付加することな
く,また,当業者に過度の試行錯誤を強いることなく,当業者がその実施をす
ることができる程度に明確かつ十分に,構成要件Cの「共に10μm以下の平
均粒子径としてなる混合物」を実現する具体的手段が記載されているとはいえ
ないから,本件発明は,改正前特許法36条4項所定の実施可能要件を満たし
ていないという無効理由がある。
(2)特許法36条6項1号(サポート要件)違反
本件明細書には,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナザイトの粉末を
混合したものを200メッシュのふるいにかける実施例が開示されているのみで,
各粉末を個々に10μm以下の平均粒子径とする実施例がどこにも記載されてい
ない。したがって,特許請求の範囲に記載された「共に10μm以下の平均粒子
径としてなる混合物(構成要件C)は,本件明細書に記載されていないことに」
なるから,本件発明は,特許法36条6項1号のサポート要件を満たしていない。
すなわち,本件発明は,特許請求の範囲では「共に10μm以下の平均粒子径
としてなる混合物(構成要件C)とすることを特定しているが,本件明細書中」
には,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナザイトの粉末を混合したもの
を200メッシュのふるいにかける実施例が開示されているのみで,セラミック
ス遠赤外線放射材料の粉末を10μm以下の平均粒子径とし,かつ,モナザイト
の粉末を10μm以下の平均粒子径とする実施例はどこにも記載されていない。
実施例1∼6においては,セラミックス遠赤外線放射材料とモナザイトが共に1
0μm以下の平均粒子径となっていることは確認されていないのである。
したがって,特許請求の範囲に記載された「共に10μm以下の平均粒子径と
してなる混合物(構成要件C)は,本件明細書に記載されていないことになる」
から,本件特許は,特許法36条6項1号のサポート要件を満たしていないとい
う無効理由がある。
【原告の主張】
(1)特許法36条6項2号違反及び改正前特許法36条4項違反について
本件明細書には,本件発明の構成要件が明確に記載されており,また,当業
者がその実施をすることが可能な程度に記載がされているから,特許法36条
6項2号,改正前特許法36条4項に違反する記載不備はない。
ア段落【0035】には「放射線源材料は均一に分散,分布されると共に,,
遠赤外線放射材料との粒子間が緻密化される。そのため,特に,遠赤外線放
射材料と放射線源材料はできるだけ細かな粒子の微粉末とすることが好まし
く,一般に,10μm以下の平均粒子径とすることが好ましい。より好まし
いのは,0.5∼1μm程度の平均粒子径である。そして,それらの粒度が
細かい程,自然放射性元素の放射性崩壊によるエネルギ線をより効果的に遠
赤外線放射材料に吸収させることができる」と記載され「10μm以下の平。,
,均粒子径」との数値限定に格別臨界的な境界の存在を示唆したものではなく
特性的,産業的に連続的に変化する領域から好ましい領域を限定しているに
すぎない。
また,段落【0046】に「磁器製ポットをボールミルとして用い,モナ
ザイトを含む上記の配合の原材料に,略同量の水を添加し,湿式混合粉砕を
24時間行った。次いで,これを取出して上水を切り,400℃の温度で乾
燥させた後,200メッシュの篩を通した。そして,この原材料粉末の混合
物を,電気炉で1200℃の温度に2時間保持して焼成し,複合化した後,
これを再び試験用ミルで粉砕して実施例1乃至実施例3の粉体状の遠赤外線
放射体を得た」と記載されているところ,上記「遠赤外線放射材料と放射線。
源材料はできるだけ細かな粒子の微粉末」を「10μm以下の平均粒子径」
と特定したものである。
平均粒子径は,数学的算出方法が慣用手段であり(乙A14,それを熟知)
した上で「平均粒子径」とするものである。そして,当業者間には光学的測
定器が市販されており,それを使用して「平均粒子径」を決定していること
。は周知の事実である。被告らも,乙A13号証で流体測定技術を挙げている
したがって「10μm以下の平均粒子径」が本件発明の権利範囲の境界を,
特定することができない旨の被告らの主張は根拠がない。
イまた,特許公報(甲2)の段落【0049】には,同公報の段落【004
7】及び段落【0048】を受けて「これらの実施例の遠赤外線放射体の作,
製は具体的には次のように行った。即ち,磁器製ポットをボールミルとして
用い,モナザイトを含む上記の配合の原材料に,略同量の水を添加し,湿式
混合粉砕を24時間行った」と,ボールミルで粉体化することが記載され,。
その粉体化処理時間も24時間として記載されている。したがって「共に1,
0μm以下の平均粒子径としてなる混合物」を実施することが可能であると
認められないとの被告らの主張は根拠がない。
被告らは,構成要件Cの「10μm以下の平均粒子径」は本件発明の目的
とも直接に関係する以上,本件明細書に,構成要件Cの「10μm以下の平
均粒子径」について,当業者が特別な知識を付加することなく,また,当業
者に過度の試行錯誤を強いることなく,本件明細書の記載と技術常識に基づ
いて製造できるように記載されていなければ,本件明細書は実施可能要件を
充足することにはならないし,構成要件Cの「10μm以下の平均粒子径」
が本件発明の目的とも直接に関係する以上,その定義は,当然のことながら
明確に規定されていなければならないと主張する。しかし,本件発明の要旨
は,訂正審判で審決(甲3)された特許請求の範囲の記載にあり「共に10,
μm以下の平均粒子径としてなる混合物」のみが本件発明の最大の特徴とな
るものではない。
ウこのように「10μm以下の平均粒子径」は,当業者にとって普通に理解,
できる粒子の粗さである。
被告らは,構成要件Cの「平均粒子径」は具体的にどのような方法により
求めるのかが特定されていなければならないところ,本件明細書には,平均
粒子径の定義,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末及びモナザイトの粉末
の粒子の形状,代表径の取り方並びに平均粒子径の測定方法のいずれも特定
されていない旨主張する。しかし,本件発明は「平均粒子径の定義「セラ,」,
ミックス遠赤外線放射材料の粉末及びモナザイトの粉末の粒子の形状「代表」,
径の取り方「平均粒子径の測定方法」のいずれをも特定しなければ具現化で」,
きないものではない。また,被告らが提出した乙A14号証には平均粒子径
の算出方法が記載されており,この平均粒子径の算出方法は周知であり,特
段の断りがない場合の平均粒子径とは,算術平均,幾何平均等を意味するも
のである。この算術平均でも,幾何平均でも,またそのほかの平均の算出方
法でも,結果に大きな違いがないと思われる。当業者は,市販されている測
定器(例えば「島津レーザ回析式粒度分布測定装置SALD−2100。同」
装置は「JISZ8901『試験用粉体及び試験用粒子」の試料に基づ,』
いて校正されている)によって平均粒子径を測定しているが,測定器の機能。
は測定器メーカに委ねられており,上記計算方法等のいずれを採用している
かは分からない。
エ「平均粒子径」とは,JISZ8901;2006「試験用粉体及び試
験用粒子」で定義されている「粒子の直径の算術平均値」であり,本件明細
書の記載もこれによったものである。これは,特許法施行規則様式第29の
備考7の「技術用語は,学術用語を用いる」に相当し,JIS規格の「平均
粒子径」について問題とされる理由がない。
(2)特許法36条6項1号違反について
ア被告らは「共に」とは,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末を10μm,
以下の平均粒子径とし,かつ,モナザイトの粉末を10μm以下の平均粒子
径とすることを意味するものであるが,本件明細書中には,セラミックス遠
赤外線放射材料の粉末とモナザイトの粉末を混合したものを200メッシュ
のふるいにかける実施例が開示されているのみで,各粉末を個々に10μm
以下の平均粒子径とする実施例がどこにも記載されていないと主張する。
イしかし,段落【0049】には,段落【0047】及び段落【0048】
を受けて「これらの実施例の遠赤外線放射体の作製は具体的には次のように,
行った。即ち,磁器製ポットをボールミルとして用い,モナザイトを含む上
記の配合の原材料に,略同量の水を添加し,湿式混合粉砕を24時間行っ
た」と記載されており,ボールミルで粉体化することが記載され,時間も2。
4時間として記載されている。ここには「磁器製ポットをボールミルとして,
用い,モナザイトを含む上記の配合の原材料に,略同量の水を添加し,湿式
混合粉砕を24時間行った」と記載されているように,各粉末を10μm以。
下の平均粒子径とする実施例が記載されている「各粉末を個々に10μm以。
下の平均粒子径とする実施例」は「磁器製ポットをボールミルとして用い,,
モナザイトを含む上記の配合の原材料に,略同量の水を添加し,湿式混合粉
砕を24時間行った」との記載があることから,それぞれを個々に粉末化す。
る処理は記載するまでもないことであり,当業者からその記載を求められる
理由がない。また,本件発明の明細書には「共に10μm以下の平均粒子径,『
としてなる混合物』とする」ために「セラミックス遠赤外線放射材料の粉末,
とモナザイトの粉末を混合したものを200メッシュの篩にかける実施例が
開示されている・・・」と被告らは主張するが,誤解に基づくものである。
「10μm以下の平均粒子径としてなる混合物」は,ボールミルとして使用
する磁器製ポットによって粉体化するものであり,200メッシュのふるい
でセラミックス遠赤外線放射材料とモナザイトを粉体化するものではない。
ウしたがって,被告ら主張の「セラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナ
ザイトの粉末を混合したものを200メッシュの篩にかける実施例」とは,
正確性を欠くものである。被告ら主張は根拠のないことであり,採用される
べきでない。
5争点5(構成要件B「2.0重量%以下」に関する記載不備の無効理由の有無)
について
【被告らの主張】
次のとおり,本件特許は,本件明細書に,特許法36条6項1号(サポート要
件)に違反する記載不備があり,同法123条1項4号の無効理由がある。
(1)本件発明は,構成要件Bで「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含
有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイトの粉末」
を用いることを特定している。この「2.0重量%以下」とは,文言上「2.,
0重量%」を含むところ,これに対応する発明の詳細な説明としては,段落【0
032】に「・・・しかし,核原料物質であるこれらの放射性核種を含有する,
ものについては,その使用に関して規制があり,これらの濃度が370ベクレル
/g(現行規則では,トリウム含有%+3×ウラン含有%で1.8%)以上であ
る場合には届出が必要となる。そのため,遠赤外線放射体をこのような届出をし
ないでも使用できる点において,放射線源材料の配合割合は,酸化トリウムの含
有量として換算して,2.0重量%未満であることが好ましく,より好ましくは
1.8重量%以下である」という記載があるのみで「未満」という以上,特許。,
請求の範囲に記載された「2.0重量%以下」における「2.0重量%」そのも
のの実施例が,発明の詳細な説明に記載されているものと認めることはできない。
なお,段落【0032】では,上記の記載に続けて「即ち,限定されるもの,
ではないが,その配合割合は,酸化トリウムの含有量として換算して0.3∼2.
0重量%が好ましく,また,0.3∼1.8重量%がより好ましい」と記載さ。
れているが,ここでいう「2.0重量%」が「以下」の意味か「未満」の意味か
はその記載がない以上,不明といわざるを得ず「即ち」という接続詞でその直,
前の文章を言い直している記載であることからすれば,むしろ「未満」であるこ
とを記載しているものというべきである。
(2)本件明細書には「課題を解決するための手段」の段落【0016,段落,】
【0018,段落【0019,及び「発明の効果」の段落【0097,段落】】,】
【0099,段落【0101】に,特許請求の範囲の請求項1ないし3と実質】
同文の文言が記載されている箇所があり,それらの箇所では,モナザイトの粉末
の含有量は「2.0重量%以下」と記載されている。しかしながら,特許法36
条6項1号の「発明の詳細な説明に記載した」とは,特許請求の範囲と同文の記
載が発明の詳細な説明にあればよいのではない(そうでなければ,サポート要件
の規定は空文化する。同号は,発明の技術的意義が発明の詳細な説明に記載さ。)
れており,第三者が発明を適切に把握し,評価できることを要件としているので
あるから「課題を解決するための手段」や「発明の効果」にクレームと実質同,
文の記載があっても,サポート要件を満たすことにはならず,上記各段落に「2.
0重量%以下」と記載されていても,これらはサポート要件を満たすものではな
い。また,仮に,段落【0032】の「即ち,限定されるものではないが,その
配合割合は,酸化トリウムの含有量として換算して0.3∼2.0重量%が好ま
しく・・・」と記載されている点が「2.0重量%以下」を意味するものだと仮
定しても,同様の理由により,その1行の記載だけでは,サポート要件を満たす
ものということはできない。
また,本件明細書には,実施例1ないし8が記載されているが,これらの実施
例が,原告が主張する換算方法によっても「2.0重量%」そのものの実施例を
示していないことは,原告自身が訂正2004−39024の審判請求書の請求
の理由において,認めているところである(乙A20の1及び2。すなわち,)
審判請求書(乙A20の1)の9頁7行目以降の記載によれば,実施例1ないし
3の酸化トリウムの含有量は1.8925重量%,実施例4ないし6の同含有量
は1.514重量%,実施例7の同含有量は1.1355重量%であるから,
「2.0重量%」そのものの実施例は存在しない。
(3)なお,構成要件Bの「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量と
して換算して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイトの粉末」は,平
成11年3月11日付の手続補正書(乙A7)で請求項1が補正された際に追加
された文言である。しかしながら,出願当初の明細書(乙A2)の段落【003
3】やその他の段落の記載を確認しても,2.0重量%の実施例は存在せず,か
つ「調整した」という文言もどこにも記載されていない。よって,平成11年,
3月11日付けの手続補正(乙A7)は,出願当初の明細書(乙A2)から直接
的かつ一義的に導き出すことのできない新規事項を含むものであるから,本件特
許には,平成11年3月11日付の手続補正(乙A7)が特許法17条の2第3
項に規定する要件を満たしていないという無効理由(特許法123条1項1号)
も存在する。
【原告の主張】
以下のとおり,本件発明の構成要件Bの「2.0重量%以下」は,何らの記載不
備もない。
(1)被告らは,段落【0032】に「即ち,限定されるものではないが,その配
合割合は,酸化トリウムの含有量として換算して0.3∼2.0重量%が好まし
く,また,0.3∼1.8重量%がより好ましい」と記載されているところ,。
ここでいう「2.0重量%」が「以下」の意味か「未満」の意味かは不明といわ
ざるを得ず「即ち」という接続詞でその直前の文章を言い直している記載であ,
ることからすれば,むしろ「未満」であることを記載しているものというべきで
あると主張する。しかし,同段落には,その配合割合は,酸化トリウムの含有量
として換算して0.3∼2.0重量%が好ましく」と記載されているのである,
から「2.0重量%」を含むと文言解釈するのが常識である。また【課題を解,,
決するための手段【発明の効果】の項でも「2.0重量%以下」と明確に記】,,
載している。したがって,特許請求の範囲において「0.3以上2.0重量%,
以下」と特定することに何ら問題はない。
(2)被告らは,特許法36条6項1号にいう「発明の詳細な説明に記載した」と
は,特許請求の範囲と同文の記載が発明の詳細な説明にあればよいのではなく,
発明の技術的意義が発明の詳細な説明に記載されており,第三者が発明を適切に
把握し,評価できることを要件としているのであるから「課題を解決するため,
の手段」や「発明の効果」にクレームと実質同文の記載があっても,サポート要
件を満たすことにはならないと主張する。しかし,同条項は「特許を受けよう,
とする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定し「発明の。,
詳細な説明」の項に記載があれば,それ以上のことを特許法は求めていない。し
たがって,被告らの主張は独自の解釈に基づくものであり,採用されるべきもの
ではない。そして,被告らは,仮に,段落【0032】の「即ち,限定されるも
のではないが,その配合割合は,酸化トリウムの含有量として換算して0.3∼
2.0重量%が好ましく・・・」と記載されている点が「2.0重量%以下」を
意味するものだと仮定しても,同様の理由により,その1行の記載だけでは,サ
ポート要件を満たすものということはできないと主張するが,同様の理由により
採用されるべきでない。
(3)被告らは,実施例1ないし実施例7の酸化トリウムの含有量には「2.0重,
量%」の実施例は存在しない旨主張する。しかし,特許公報(甲2)の段落【0
032】は【発明の実施の形態】で実施を行う場合についての態様を記載した,
ものであり,この記載も実施例の記載であって,実施例1ないし実施例7とタイ
トルした記載のみが実施例ではない。したがって,被告らの上記主張は採用され
るべきでない。
(4)なお,被告らは「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として,
換算して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイトの粉末」は平成11
年3月11日付の手続補正書(乙A7)で請求項1が補正された際に追加された
文言である』と主張するが「全体に対し」は平成16年1月30日付審判請求。,
書で訂正を請求したものであって,被告らの主張は事実誤認がある。
被告らは,出願当初の明細書(乙A2)の段落【0033】やその他の段落の
記載を確認しても,2.0重量%の実施例は存在せず,かつ「調整した」とい,
う文言もどこにも記載されていないと主張するが,実施例については,上記(3)
のとおりであり「調整した」という文言は,出願当初明細書に直接使用されて,
いないが,出願当初明細書(乙A2)の段落【0033】には「そのため,遠,
赤外線放射体をこのような届出をしないでも使用できる点において,放射線源材
料の配合割合は,酸化トリウムの含有量として換算して,2.0重量%未満であ
ることが好ましく,より好ましくは1.8重量%以下である。即ち,限定される
ものではないが,その配合割合は,酸化トリウムの含有量として換算して0.3
∼2.0重量%が好ましく,また,0.3∼1.8重量%がより好ましい」と。
記載しており,本件発明自体が「配合割合を特定の値にすること,すなわち」
「特定の値に調整すること」が記載されており「配合割合」の表現から「調,
整」は自明事項の範疇のことであり,自然のモナザイトの粉末が含む成分よりも
少なくした「自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算して0.3以上
2.0重量%以下にしたモナザイトの粉末」とは,調整によってのみ達成される
ものであり,本願発明自体が調整に関する技術であることも自明である。
6争点6(構成要件B「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として
換算して「調整」することに関する記載不備の無効理由の有無)について」,
【被告らの主張】
本件特許は,本件明細書の記載が下記の点で不備があるため,改正前特許法36
条4項に規定する実施可能要件を満たしていないから,同法123条1項4号によ
り無効とされるべきである。
(1)本件発明は,構成要件Bで「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含,
有量として換算して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイトの粉末」
を用いることを特定している。ここで,酸化トリウムの含有量を基準として遠赤
外線放射体全体に対するモナザイトの粉末の配合量(重量%)を調整しようとす
れば,当業者は,そのモナザイトに何重量%の割合で酸化トリウムが含有されて
いるかを,あらかじめ知っておく必要がある。そこで,段落【0048】に,
「また,放射線源材料としては,各実施例において,モナザイト25重量%を配
合した。具体的には,放射性鉱物であるこのモナザイト(精製物)は豪州産であ
り,レア・アース酸化物61.33%,五酸化リン26.28%等の他に,自然
放射性元素である酸化トリウムを6.55%,酸化ウランを0.34%を含有し
ている」という記載が認められる。。
(2)しかしながら,文部科学省のホームページ(乙A21の1)によれば,モナ
ザイト鉱は,鉱石の産地によって含有される酸化トリウム及び八酸化三ウランの
濃度がそれぞれ異なるものであることが記載されている(乙A21の3。例え)
ば独立行政法人産業技術総合研究所「地質調査総合センター」のホームページ
(乙A22の1)によると,モナザイト(モナズ石)は,ThO(酸化トリウ2
ム)を4∼10%含むこと(乙A22の3)が記載されているが,理化学辞典
(乙A23)によれば,ThO(酸化トリウム)の含有量は0∼18%となっ2
ており,含有量はかなりばらつきがある。そうだとすると,本件発明は,構成要
件Bで,酸化トリウムの含有量を基準として遠赤外線放射体全体に対するモナザ
イトの粉末の配合量(重量%)を調整することを要旨とするものであるから,当
業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,そのモナザイトに何
重量%の割合で酸化トリウムが含有され,また,何重量%の割合で八酸化三ウラ
ンが含有されているかを検査する方法が記載されていなければ,改正前特許法3
6条4項の実施可能要件を満たすことにはならない。
(3)ところが,本件明細書は,実施例で使用したモナザイトが,自然放射性元素
である酸化トリウムを6.55%,酸化ウランを0.34%を含有しているとい
う一例を示すのみで,産地によって変動する酸化トリウム及び八酸化三ウランの
含有割合をいかなる方法であらかじめ確認するのかの記載が一切ない。そして,
その含有割合があらかじめ判明していなければ{酸化トリウム含有%+3×酸,
化ウラン含有%}の換算式に代入することは不可能であるから,構成要件Bの
「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算して「調整」」,
をすることも実施不可能となる。また,ある特定の産地のモナザイトに含まれる
酸化トリウム及び八酸化三ウランの含有割合が確認できた上で,遠赤外線放射体
全体に対してその特定の産地のモナザイトをどの程度の割合で配合すれば本件発
明の効果が得られるのかが記載されていなければならないが,本件明細書には,
モナザイトに含まれる酸化トリウム及び八酸化三ウランの含有割合のばらつきの
範囲内で,遠赤外線放射体全体に対するモナザイトの配合割合をどのように増減
させれば良いのかを示す記載もどこにも存在しないのである。なお,前記のとお
り,原告は,拒絶査定不服審判において「トリウムの濃度の限定は,本願発明,
が実用性を求めている以上,法律の規制内(放射能濃度が無届けで使用できる3
70ベクレル/g以下)の値の中で,実験的に効果のある範囲内に限定したもの
である」と主張している。そうであれば,本件発明の構成要件Bで特定しよう。
としている範囲は,法規制にかからない放射能濃度と正確に一致するものでもな
いから,上記含有割合はモナザイト粉末の放射能濃度を測定しても推測できない。
(4)このように,本件明細書には,当業者に過度の試行錯誤を強いることなく,
その実施をすることができる程度に明確かつ十分に,構成要件Cの「全体に対し
自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算して「調整」することにつ」,
いての具体的手段が記載されているとはいえないから,本件特許は,改正前特許
法36条4項の実施可能要件を満たしていないという無効理由がある。
【原告の主張】
以下のとおり「全体に対し自然放射性元素の酸化トリウムの含有量として換算,
して0.3以上2.0重量%以下に調整したモナザイトの粉末」について何ら記載
不備はない。
(1)被告らは,本件発明は酸化トリウムの含有量を基準として遠赤外線放射体全
体に対するモナザイトの粉末の配合量(重量%)を調整することを要旨とする
,ものであるから,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に
そのモナザイトに何重量%の割合で酸化トリウムが含有され,また,何重量%
の割合で八酸化三ウランが含有されているかを検査する方法が記載されていな
ければ,改正前特許法36条4項の実施可能要件を満たすことにはならないと
主張する。しかしながら,市場で流通しているモナザイトは,そのほとんどが
生産地表示及びレア・アース酸化物,五酸化リン,酸化トリウム,酸化ウラン
等の成分が表示されている。したがって,上記の重量%を算出し,配合量を調
整することは,きわめて容易である。他方,被告らが証拠として提出する理化
学辞典(乙A23)は1971年の発行であり,現在の市販商品のモナザイト
の情報ではない。モナザイト(モナズ石)は核原料であることからして,モナ
ズ石にThO(酸化トリウム)0∼18%と「0」が含まれて表現されること2
自体間違いである。ちなみに,2002年10月15日発行の理化学辞典(甲
22参照)では,モナズ石(モナザイト)の項は削除されている。
被告らは,当業者として熟知していることを,あえて歪曲主張しているにす
ぎない。
(2)被告らは,ある特定の産地のモナザイトに含まれる酸化トリウム及び八酸化
三ウランの含有割合が確認できた上で,遠赤外線放射体全体に対してその特定
の産地のモナザイトをどの程度の割合で配合すれば本件発明の効果が得られる
のかが記載されていなければならないところ,本件明細書には,モナザイトに
含まれる酸化トリウム及び八酸化三ウランの含有割合のばらつきの範囲内で,
遠赤外線放射体全体に対するモナザイトの配合割合をどのように増減させれば
良いのかを示す記載もどこにも存在しないと主張する。しかし,本件発明の具
現化は,特許公報(甲2)の段落【0025】ないし【0043,同公報の段】
落【0047】ないし【0049】で子細に説明しており,同公報の段落【0
048】には「放射線源材料としては,各実施例において,モナザイト25重
量%を配合した。具体的には,放射性鉱物であるこのモナザイト(精製物)は
豪州産であり,レア・アース酸化物61.33%,五酸化リン26.28%等
の他に,自然放射性元素である酸化トリウムを6.55%,酸化ウランを0.
34%を含有している」との記載がある。。
(3)被告らは,当業者に過度の試行錯誤を強いることなく,その実施をすること
ができる程度に明確かつ十分に,具体的手段が記載されているとはいえないと
主張するが,当業者として熟知している事項を歪曲して主張するものであり,
当業者の知識をもってすれば,試行錯誤しなければ実施できないはずがない。
また,被告らは,原告が拒絶査定不服審判において「トリウムの濃度の限定
は,本願発明が実用性を求めている以上,法律の規制内の値の中で,実験的に
効果のある範囲内に限定したものである」と主張しており,そうであれば本件。
発明の構成要件Bで特定しようとしている範囲は,法規制にかからない放射能
濃度と正確に一致するものでもないから,上記含有割合はモナザイト粉末の放
,射能濃度を測定しても推測できないと主張する。しかし,本件発明の実施例は
特許公報(甲2)の段落【0032】で「核原料物質であるこれらの放射性核
種を含有するものについては,その使用に関して規制があり,これらの濃度が
.370ベクレル/g(現行規則では,トリウム含有%+3×ウラン含有%で1
8%)以上である場合には届出が必要となる。そのため,遠赤外線放射体をこ
,のような届出をしないでも使用できる点において,放射線源材料の配合割合は
酸化トリウムの含有量として換算して,2.0重量%未満であることが好まし
く,より好ましくは1.8重量%以下である。即ち,限定されるものではない
が,その配合割合は,酸化トリウムの含有量として換算して0.3∼2.0重
量%が好ましく,また,0.3∼1.8重量%がより好ましい」との記載があ。
る。ここで,放射線源材料の配合割合が,酸化トリウムの含有量として換算し
て,2.0重量%未満であることが好ましく,より好ましくは1.8重量%以
下であることを説明している。しかし,この数値は実施例で決まるものではな
く,法規制から限定したものである。対応する実施例としては「配合割合は,,
,酸化トリウムの含有量として換算して0.3∼2.0重量%が好ましく,また
0.3∼1.8重量%がより好ましい」との記載から,補正は「0.3∼2.。
0重量%」または「0.3∼1.8重量%」でないと,新規事項の追加になり
違法となる。そこで「0.3以上,2.0重量%以下」と特定したものである。,
ここで,2.0重量%以下と2.0重量%未満とは,数学的には相違するが,
実用的には実質的な違いはない。
7争点7(構成要件E「複合化してなること」に関する記載不備の無効理由の有
無)について
【被告らの主張】
本件特許は,本件明細書の記載が下記の点で不備のため,改正前特許法36条4
項に規定する実施可能要件,及び特許法36条6項2号の明確性要件を満たしてい
ないから,同法123条1項4号により無効とされるべきである。
(1)本件発明の構成要件Eの「複合化」の意味は不明である。理化学辞典を見て
も「複合化」は技術用語として掲載されていない(乙A23・1140∼11,
42頁。さらに,本件明細書には,複合化を行うための条件も明確に記載され)
ていない。段落【0049】には「電気炉で1200℃の温度に2時間保持し,
て焼成し,複合化した後・・・」と記載されているが,焼成以外に複合化させる
ための条件はまったく不明である。
(2)確かに「JIS工業用語大辞典(乙A16の2・1965頁)には「複合,」,
材料」は掲載されており「結合材料(マトリックス)と微粒子又は繊維状材料,
を含む2又はそれ以上の異なる相からなる固体製品」と定義されている。しかし
ながら,仮に,本件発明の構成要件Eの「複合化」が「複合材料を形成する」と
いう意味であるとすれば,本件明細書には,セラミックス遠赤外線放射材料の成
分とモナザイトの成分の内,いずれが「結合材料(マトリックス」で,いずれ)
が「微粒子」であるのかの記載がなければならないが,本件明細書には,その点
の記載もない「複合化」が技術用語として通用するものでなければ,本件明細。
書にはその用語の定義がなければならないところ,本件明細書には,複合化の条
件も,複合化の結果,得られる物の構成もまったく記載されていないのである。
(3)したがって,本件特許は,特許請求の範囲に「複合化してなること」と記載
されていても,その技術的意味が不明であるから,特許法36条6項2号の明確
性要件を満たしておらず,また,当業者がその実施をすることができる程度に明
確かつ十分に「複合化」するための実施条件が記載されているものともいえない
から,改正前特許法36条4項の実施可能要件を満たしていないという無効理由
がある。
【原告の主張】
以下のとおり,被告ら主張の記載不備はない。
(1)被告らは,本件発明の構成要件Eの「複合化」の意味及び「複合化」を行う
ための条件が不明である旨主張する。しかし,特許請求の範囲の記載の「セラ
ミックス遠赤外線放射材料の粉末と・・・モナザイトの粉末とを共に10μm,
以下の平均粒子径としてなる混合物を,焼成し,複合化してなる・・・」は,セ
ラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナザイトの粉末との混合物を,焼成する
ことにより複合化したものであり,また,同混合物をバインダーと共に焼成する
ことにより複合化するものであることは自明である。また,このことは,特許公
報(甲2)の段落【0033,段落【0040】等にも記載されている。被告】
らは,恣意的に記載のない自明事項箇所を挙げて記載がないと主張しているにす
ぎない。
(2)被告らは「複合化」が「複合材料を形成する」という意味であるとすれば,,
本件明細書には,セラミックス遠赤外線放射材料の成分とモナザイトの成分の内,
いずれが「結合材料(マトリックス」で,いずれが「微粒子」であるのかの記)
載がなければならないが,その点の記載もないとか「複合化」が技術用語とし,
て通用するものでなければ,本件明細書にはその用語の定義がなければならない
ところ,複合化の条件も,複合化の結果,得られる物の構成もまったく記載され
ていない旨主張する。しかし,セラミックス遠赤外線放射材料の粉末とモナザイ
トの粉末との混合物を,焼成し,複合化すれば実施できるものである。また,本
件発明の特許公報(甲2)の段落【0039】に,実施例として「一般的には,
セラミックス遠赤外線放射材料20∼70重量%,好ましくは30∼50重量%,
放射線源材料5∼60重量%,好ましくは10∼30重量%,及び陶磁器材料1
。,0∼60重量%,好ましくは20∼50重量%の割合である」との記載があり
この部分(請求項3に対応)では,陶磁器材料がバインダー(接合材)となるも
のである。
8争点8(進歩性欠如の無効理由の有無)について(骨子)
【被告らの主張】
本件特許は,その出願日(平成8年2月8日)前に発行された以下に引用する各
先行技術文献に記載された発明及び同日前に公然実施された発明の組合せにより,
その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に
発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に該当し,同法
123条1項2号により無効とされるべきである。
(1)先行技術文献による公知
ア特開昭50−108650号公報(乙A5)
イ特開昭50−113832号公報(乙A6)
ウ「遠赤外線ビジネス」サンマークス商会(乙A24)
エ実開昭61−145548号公報(乙A25)
オ実開昭61−171948号公報(乙A26)
カ特開昭61−293463号公報(乙A27)
キ特開昭60−160971号公報(乙A28)
ク特開平5−186767号公報(乙A29)
ケ特開平2−132166号公報(乙A30)
コ窯業協会誌(Vol.82)941号90頁(乙A46)
サ特開平2−101003号公報(乙A47)
(2)公然実施
ア「陳述書(乙A31)」
イミネラル鉱石・ミネゲンV5
(ア)「ミネラル製品販売の手引き」訴外東洋ミネラル(乙A32の1)
(イ)「試験検査成績書」社団法人日本食品衛生協会(乙A32の2)
ウパワートロン
(ア)パワートロンのカタログ(乙A33)
(イ)ショッピングクレジットの契約書(乙A34の1及び2)
(ウ)パワートロンの写真(乙A35の1ないし5)
(エ)パワートロンの定性分析結果(乙A36の1ないし2)
エモナザイト含有遠赤外線放射体
(ア)モナザイト含有遠赤外線放射体の写真(乙A37)
(イ)モナザイト含有遠赤外線放射体の定性分析結果(乙A38の1ないし
2)
オトロンパワー
(ア)トロンパワーの商品説明書(乙A39)
(イ)トロンパワーの写真(乙A40)
カアクアハイトロンセット
(ア)アクアハイトロンセットの商品説明書(乙A41の1・2)
(イ)アクアハイトロンセットの保証書(乙A42)
(ウ)アクアハイトロンセットの写真(乙A43)
キスーパーラドン
(ア)スーパーラドンの写真(乙A44)
(イ)オート株式会社の履歴事項全部証明書(乙A45)
(3)結論
本件発明の構成要件と本件特許の出願前の公知技術を比較すると,本件発明が,
構成要件Bで酸化トリウムの配合割合を限定している点,及び,構成要件Cで混
合物の平均粒子径を共に10μm以下に特定している点は,格別の困難性を伴う
ものではないことが明らかである。本件発明は,上記の公知文献に記載された発
明及び公然実施された発明の組合せにより,当業者であれば容易にその発明をす
ることができたものであることは明らかであるので,特許法29条2項の規定に
該当するという無効理由がある。
【原告の主張】
争う。
9争点9(訂正要件違反の無効理由の有無)
【被告らの主張】
平成16年1月30日付け訂正審判による特許請求の範囲の訂正は,実質上特許
請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるから,本件特許には,特許法第12
6条4項の規定に違反しているという無効理由(特許法123条1項8号)がある。
すなわち,本件訂正は「0.3以上2.0重量%以下に調整した」のが「自然,
放射性元素」であり,前記重量割合はモナザイトに対しての数値限定と解釈した場
合(以下「第1解釈」という)は,クレームの技術的範囲外となり非侵害と判断,。
されていた物が「調整した」のが「モナザイト」であり,前記重量割合は遠赤外,
線放射体に対しての数値限定と解釈した場合(以下「第2解釈」という)は,ク,。
レームの技術的範囲に属するものとなり侵害と判断されるケースがあり得るのであ
るから,明りょうでない記載の釈明を目的としている点は認められると仮定しても,
特許請求の範囲の訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであっ
てはならないという特許法126条4項の要件に違反しているものといわざるを得
ない。原告は,訂正審判の審判請求書(乙A20の1・13頁1行目∼)において,
【特許請求の範囲の請求項1,請求項2,請求項3の記載に「全体に対し」と限,
定することは,不特定の事項を特定することにより,特定されていなかった権利範
囲を減縮するものであり「特許請求の範囲の減縮」に該当する】と主張している,。
が,第1解釈では酸化トリウムの換算値は2.0重量%を超えると計算されていた
ものが,第2解釈を採った場合は換算値が小さく計算されて0.3以上2.0重量
%以下の範囲に入ることになるケースがあり得るから,原告の主張が失当であるこ
とは明らかである。
【原告の主張】
争う。
すなわち,本件発明の「0.3以上2.0重量%以下に調整する」のは「自然,
放射性元素」の「モナザイト」であり「セラミックス遠赤外線放射材料」は放射,
性元素でないので「全体に対して」0.3以上2.0重量%以下に調整する希釈,
材として作用する。被告らの第1解釈もあり得た特許請求の範囲を第2解釈と特定
するのは「本件特許の特許公報(甲2)に記載された特許請求の範囲の表示を信,
頼する第三者の利益を著しく害することになる」との主張は根拠のないものであり,
第1解釈と第2解釈が混在していた特許請求の範囲からは,第1解釈又は第2解釈
のいずれもが権利侵害となるものであり,存在しなかったものが新たに発生するも
のではないから,特許請求の範囲の記載を信頼する第三者の利益を著しく害するこ
とにならないばかりか,それを訂正することが信義則に沿った運用になるものであ
る。仮に,被告ら主張の第1解釈及び第2解釈が混在していた特許請求の範囲から,
その一方だけに限定するという訂正は,特許請求の範囲の「拡張」にならない。ま
た,特許請求の範囲の記載内容のシフトを意味する「変更」にも該当しない。その
ように訂正するのが合理的であり,それが訂正審判の目的とするものである。
10争点10(原告の損害)について
【原告の主張】
(1)甲事件
ア甲事件被告は,少なく見積もっても,甲イ号物件を1年当たり4t(1kg
当たり8000円,甲ロ号物件を1年当たり2t(1kg当たり1万400)
0円)販売している。
甲事件被告は,上記各商品を製造メーカーから購入して販売している可能性
が高く,平均すると上記にように高額に販売できないとしても,甲事件被告が
上記各商品を販売して得る利益は,平均して1kg当たり,甲イ号物件で30
00円,甲ロ号物件で5000円を下らない。
したがって,甲事件被告は,過去3年間において下記のとおりの利益を得た
ものであり,特許法102条2項により,原告が同額の損害を被ったと推定さ
れる。
甲イ号物件3600万円(3,000円×4,000kg×3年=36,000,000円)
甲ロ号物件3000万円(5,000円×2,000kg×3年=30,000,000円)
合計6600万円
イ本件訴訟と相当因果関係にある弁護士・弁理士費用相当の損害は,各200
万円(合計400万円)を下らない。
ウよって,甲事件被告は,原告に対し,甲イ号物件及び甲ロ号物件を販売して
本件特許権を侵害したことによる損害賠償として,合計7000万円及びこれ
に対する訴状送達の日の翌日である平成18年11月22日から支払済みまで
民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。
(2)乙事件
ア乙事件被告は,乙イ号物件を主要な充填材料とした「美石の湯(ヒノキタ」
イプ)及び「美肌温泉」を1個当たり1万9800円で販売しており,これを
過去3年間において少なくとも年間1000個以上,全体で3000個以上販
売している。
この場合,乙事件被告が原告に支払うべき本件発明の実施料相当額は,1個
)。当たり2000円(販売価額の1割,合計600万円とするのが相当である
イ乙事件被告は,乙イ号物件を主要な充填材料とした「美石の湯(ステンレ」
スタイプ)ないし「秘湯の郷土」を製造販売している。乙事件被告は,小売業
者に対し,メーカー希望小売価額35万8000円(特別価額29万8000
円)で販売することを勧めており,卸価額がその6割程度で18万円を下るこ
とはない。乙事件被告は,上記商品を過去3年間で1年当たり300個以上合
計900個以上を販売している。
この場合,乙事件被告が原告に支払うべき本件発明の実施料相当額は,1個
)。当たり9000円(販売価額の5%,合計810万円とするのが相当である
ウ本件訴訟と相当因果関係にある弁護士・弁理士費用相当の損害は,各100
万円(合計200万円)を下らない。
エよって,乙事件被告は,原告に対し,乙被告物件を販売して本件特許権を侵
害したことによる損害賠償として,合計1610万円及びこれに対する訴状送
達の日の翌日である平成18年11月23日から支払済みまで民法所定年5分
の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。
(3)丙事件
ア丙事件被告は,少なく見積もっても,丙被告物件を1年当たり10t販売し
ている。
そして,原告は,同様のセラミックボールを販売しているが,1kg当たり
の製造原価が1500円を超えることはなく,丙事件被告も同様の製造原価と
推測される。他方,丙事件被告は,丙被告物件を1kg当たり3000円で販
売し,1kg当たり少なくとも1500円の利益を得ている。
したがって,丙事件被告は,過去3年間において下記のとおり4500万円
の利益を得たものであり,特許法102条2項により,原告が同額の損害を受
けたと推定される。
1,500円×10,000kg×3年=45,000,000円
イ本件訴訟と相当因果関係にある弁護士・弁理士費用相当の損害は,各200
万円(合計400万円)を下らない。
ウよって,丙事件被告は,原告に対し,丙被告物件を販売して本件特許権を侵
害したことによる損害賠償として,合計4900万円及びこれに対する訴状送
達の日の翌日である平成18年11月22日から支払済みまで民法所定年5分
の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。
【被告らの主張】
争う。
第4争点に対する当裁判所の判断
事案にかんがみ,まず,争点4(構成要件C「平均粒子径」に関する記載不備の
無効理由の有無)について判断する。
1はじめに
被告らは,本件明細書中には「平均粒子径」の定義及び説明がどこにも記載され
ていない上,平均粒子径を共に10μm以下とするための具体的手段や確認方法が
記載されていないから,一般的技術常識を考慮しても,本件発明のいう「平均粒子
径」の意味するところは明確でなく,また,当業者が過度の試行錯誤を強いられる
ことなく「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物」を実施することが可
能であるとは認められないから,本件特許は,特許法36条6項2号の「特許を受
けようとする発明が明確であること」との要件及び改正前特許法36条4項の実施
可能要件を満たしていない旨主張する。
そこで,まず「平均粒子径」の一般的技術的意義について検討する。,
2学術文献上の「平均粒子径」の定義
(1)「微粒子ハンドブック・朝倉書店(乙A12)には,以下の記載がある。」
ア「2.2.1粒子径
粒子の大きさを表す場合,次の三つのものが重要となる。i)1個の粒子の大
きさをどのように表すか〔代表径のとり方,ii)粒子の大きさに分布がある粒〕
子群をどのように表すか〔粒度分布(→2.2.2)の表し方,および,iii)〕
粒子群を代表する平均的な大きさをどのように選ぶか〔平均粒子径(→2.2.
3)の選び方。〕
1個の粒子(とくに非球形の粒子)の大きさを表すのに種々の表し方があり,
それらを代表径という。表1は主な代表径を示したものである。代表径には大
きく分けて,幾何学的な寸法から定まるものと,何らかの物理量と等価な球の
直径におきかえた相当径の二つがある(判決注・表1は「主な代表径とその。
意味」を示すものであり,幾何学的径として定方向径,マーチン径,ふるい径
等が掲げられ,相当径として投影面積円相当径,等表面積球相当径,等体積球
相当径,ストークス径,空気力学的径,流体抵抗相当径,光散乱径が挙げられ
ている)また,代表径は単に粒子径または粒径とよばれることが多いが,そ。
の場合にはどの代表径によるものであるのかをあらかじめ明示しておくことが
必要である。…
顕微鏡写真を撮ってそれから粒径を求める場合,定方向径がよく用いられる。
これは,粒子が三次元的にランダムに配向しているものとして,表1中の図の
ように一定の方向に粒子の寸法を測ることで得られるものである。…
ふるい径は相隣る目開きの間にふるい分けられた粒子径である。標準ふるい
についてはJISで針金の直径および目開きが定められている。それによると
網目の開きは,2(Nは整数)の割合となっており,1mmの目開きを基準N/4
にとると,N=0で1mm,N=1で1.19mm,N=2で1.41mm,
…,N=10で5.66mmである。一方小さい方は,N=−1で0.84m
m,…,N=−19で0.037mmである。
…投影面積円相当径は,表1に示すように,粒子の投影面積と等しい面積を
もつ円の直径である。粒子に平行光線を照射したときのさえぎり光量を検知し
て粒径を求める粒径測定法で得られる粒子径がこれに相当する。等表面積球相
当径は,粒子の表面積と同じ表面積をもつ球の直径である。等体積球相当径は
粒子の体積と等しい体積をもった球の直径であり,電気的検知帯法(→3.3.
5.c)によって測定される粒子径はこれに相当する。
…ストークス径は,…流体の粘度や粒子・流体密度が既知のときには,沈降
速度vtを測定することから求められるし,またそれ以外の慣性法(→3.3.
5.g)といわれる粒径測定法によってもこれが求められる。ストークス径は
等沈降速度球相当径ともよぶことができる。
…流体抵抗力相当径は,ある粒子の流体から受けるストークスの流体抵抗力
と等しい抵抗力をもった球形粒子の直径として定義される。拡散法(→3.3.
5,モビリティアナライザー(→3.3.5.i,光子相関法(→3.3.))
5.b)などによって測定される粒子径はこれに相当する。
…代表径は粒径測定法と密接に関係しており,多くの場合測定法がきまると
代表径はきまる」。
イ「2.2.2粒度分布
ある粒子群の個々の粒子の大きさがある代表径(→2.2.1)で測定され
たとする。測定された個々の粒子の大きさが不揃いである粒子群を多分散とい
い,非常に揃っている粒子群を単分散であるという。多分散粒子の特徴は,通
常,頻度分布またはこれを積算した積算分布−これらを総称して粒度分布と
いう−の形で表される。ある粒子群の粒度分布を表示する場合,代表径を明
示しておくことと,粒子の量がどのような基準−個数,長さ,面積,体積
(または質量)−で測定されたかを明確に区別しておくことが必要である。
これらによって粒度分布が異なるからである」。
ウ「2.2.3平均粒子径
ある代表径(→2.2.1)を用いて,ある基準で測定された粒度分布(→
2.2.2)が与えられたとき,ある粒径区分dp±Δdp/2(ただし,Δ
dpは粒径区分の幅)内にある粒子群の個数,長さ,表面積,質量をそれぞれ
n,l,s,m…とし,…表1に示すような種々の平均粒子径が定義できる
(判決注・表1は「各種平均粒子径とその定義式」を示すものであり,平均粒
子径の種類として,個数平均径,長さ平均径,面積平均径,質量(または体
,積)平均径,平均面積径,平均体積径,調和平均径,個数中位径・幾何平均径
質量(または体積)中位径が掲げられるとともに,その定義式が掲げられてい
る。…結果を図1に示した。この図から,平均粒子径はその定義のしかたに。)
よってずいぶん異なることが理解できるであろう」。
(2)「粉粒体計測ハンドブック・日刊工業新聞社(乙A13)には,以下の記載」
がある。
ア「5・1・1粒度の表現
(1)粒度分布
粒度と粒子径はよく混同されるが,粒子径は個々の粒子を対象にしたとき
のそれぞれの大きさであり,粒度は粉体を構成している多数の粒子群を代表
する粒子の大きさの概念である。現実の粒子は必ず大きさの分布をもつ多数
の粒子群からなっているから,粒度の表現には分布を考慮しないわけにはい
かない。…
大きさという言葉には実は長さ,面積,重さの三つの次元が含まれている。
それに個数というゼロ次元を加えた4種を考えると,試料中に含まれる粒子
の中で粒子径区分DiとDi+1の間に属する粒子が,
)全粒子個数Σnの中の何個か?ⅰ
)全粒子の径の総和ΣnDの中でどれだけの長さを占めるか?ⅱ
)全粒子の表面積の総和ΣnDの中でどれだけの面積を占めるか?ⅲ2
)全粒子の重量の総和ΣnDの中でどれだけの重さを占めるか?ⅳ3
の四つの表現があることになる。…これらの関係を図5・2に示しておく(判
決注・図5・2は「いろいろの基準量による粒度分布と平均粒子径」を示すも
のであり,個数基準,長さ基準,面積基準及び体積基準による基準量の関係が
図示されている。…。)
同じ試料でも,どの”大きさ”を基準にして粒度分布を表示するかによって
”見掛けの粒度”は図5・1(a)のように当然異なってくる。…」
イ「5・1・2粒度測定法
現在,粉体の粒度測定に利用され,市販されているものを原理的に分類し,
測定範囲,測定された粒度の意味などをまとめると表5・2のようになる(判
決注・表5・2は「粒度測定法の分類」を示すものであり「計数「ふるい」,」,
というような各原理ごとに種々の測定方法が記載されている。…。)
(1)計数法
試料に含まれる個々の粒子の大きさを測定して分布を求める。きわめて微量
の粒子の測定結果から多量の粉体の粒度を決める点に問題があり,測定試料の
採取法と縮分法に十分注意しなければならない。また,粒度分布の広い試料で
は測定誤差が増すからあらかじめ何らかの方法で分級して,そのおのおのにつ
いて測定するほうがよい。
(2)ふるい分け法
試料の粒度と測定の目的によって粒度の上限と下限を定め,その間を5∼6
段に分けて,標準ふるいの目開きの大きいものから順に重ね,最上級に試料を
入れて振とうし,各ふるい網上残量をひょう量して粒度分布を求める。
…」
ウ「5・3ふるい分け法
(1)標準ふるい
粒度測定用ふるいとして規格化されているふるいは標準ふるいと呼ばれ,正
方形網目が最も広く用いられている。JIS標準のふるいの規格を表5・4に
示す。…」
(3)「現場で役立つ粒子径計測技術・日刊工業新聞社(乙A14)には以下の」
記載がある。
ア「1.2粒子の大きさの決め方
粒子の大きさを一つの数値で表すことは,結構難しいことである。図1.3
では,理想的な粒子として球粒子と立方体粒子を,実在粒子の代表として石灰
石を例にとった。球の大きさはと聞かれれば,直径で答えるし,立方体の大き
さはと聞かれれば,たいていの人は一辺の長さで答える。では石灰石の大きさ
はと聞かれると,???となってしまう。石灰石は球や立方体と何が違うか,
違いは2つある。1つは形の表現の問題である「球「立方体」といえば,。」,
誰もが同じ形を思い浮かべる。形を正確に特定できるから,大きさを表す「直
径「一辺」も正確に特定することができる。それに対して石灰石では,形を」,
一言で表現することはできない。
もう1つの違いは,形の相似性である。人間の形はおおむね相似であるため
形を正確に表現できなくとも,身長や体重などで人間の大きさを代表すること
ができる。人間の身長や胴回りのように,粒子の大きさを代表するものを代表
粒子径と呼ぶ。しかし実在粒子は図1.1や図1.3の石灰石粒子のように,
何となく共通する特徴は認められるものの,とても相似といえるような形では
ない。したがって代表粒子径は幾何学的に定義されたり,粒子の大きさが関与
する物理現象を利用して定義される。…
幾何学的な代表粒子径の定義の例は,図1.4に示す粒子影像を平行線で挟
んだフェレー(Feret)径や,図1.5に示すふるい目開きである。また
図1.6に示す,粒子と同じ体積を持つ球の直径も代表径として良く定義され
る。体積の他に表面積や粒子の投影面積,周長が等しい球や円の直径も代表径
としてはよく定義される。…
このように代表粒子径は測定原理に対応して定義されるので,人間の大きさ
を身長で表した場合と肩幅で表した場合のように,原理的には代表粒子径が異
なれば,同じ粒子でも異なる粒子径となる」。
イ「1.3.4平均粒子径
粒子径X,X,X,…Xの粒子がそれぞれn,n,n,…n123n123
個,総計でN個あるとき,算術平均,幾何平均,調和平均の値はそれぞれ次n
式で与えられる。
算術平均;・・・(1.19)
幾何平均;・・・(1.20)
調和平均;・・・(1.21)
粒子径Xiの質量をwi,全質量をWとすると,質量基準の平均粒子径は,
式(1.19)∼(1.21)のni/Nを質量wi/Wで置き換えて与え
られる。
粒子径Xの頻度分布関数q(x)が与えられている場合,算術平均,幾何r
平均,調和平均の値はそれぞれ次式で与えられる。
算術平均;・・・(1.22)
幾何平均;・・・(1.23)
調和平均;・・・(1.24)
同じようにして,平均体積径,平均表面積径は次式で与えられる。
平均体積径;・・・(1.25)
平均表面積径;・・・(1.26)
…」
(4)「粘土ハンドブック第二版・技報堂出版(乙A15)には,以下の記載が」
ある。
ア「2.2.1粒径及び分布の表示
a.粒径表示
(i)粒子の2次元平面への投影像
光学顕微鏡や電子顕微鏡などで,平面に投影された粒子の尺度としては,定
方向径,長軸径,二軸平均径,粒子に外接する円の直径などが用いられる。
(ii)ストークス径(沈降速度相当径)
粒子の沈降速度と同じ速度で沈降する球の直径である。沈降法で得られる粒
径がこの径に相当する。
(iii)表面積径
…」
イ「b.平均径の表示
図2.1からわかるように,同一粉体でも表2.1に示す平均径の定義に
よってかなり差がある。図の実線は個数分布であり,メジアン径が個数分布に
おける多数径であるモード径に最も近く,重量平均径が最も大きい径のところ
にある。実際にどのような平均径を用いるべきかについては一定のルールはな
い。しかし,粉体の関与する種々な現象と粉体の平均径との関連性を検討する
うえで平均径の選択は重要である。フィラーとして使う粉体では複合材料の強
度に粒径依存性があり,粒子と複合材料のマトリックスとの間の親和性は基本
的特性の1つである。このような場合には表面積に関係する体面積平均径,平
均面積径や表面積径などを用いるのが適当といえる。…」
(5)学術文献上の「平均粒子径」の意義のまとめ
上記学術文献上の記載によれば,1個の粒子の大きさ(粒子径,代表径)の表
し方としては種々のものがあり,大きく幾何学的径と相当径(何らかの物理量と
等価な球の直径に置き換えたもの)とがあり,幾何学的径には定方向径,マーチ
ン径,ふるい径などがあり,相当径には投影面積円相当径,等表面積球相当径,
等体積球相当径,ストークス径,空気力学的径,流体抵抗相当径,光散乱径など
種々のものがある。平均粒子径とは,粒子群を代表する平均的な粒子径(代表
径)を意味するものであるが,個数平均径,長さ平均径,面積平均径等といった
種々の平均粒子径及びその定義式(算出方法)があり,同じ粒子であってもその
代表径の算出方法によって異なるものである。したがって,本件発明の構成要件
Cの「共に10μm以下の平均粒子径としてなる混合物」のように,抽象的に平
均粒子径として特定の数値範囲を示すだけでは,それがいかなる算出方法による
ものであるかが明らかにならないから,その範囲が具体的に特定できないことに
なる。
他方,粒子径(代表径)は,測定原理に対応して定義されているように,粒径
測定法と密接に関係していることが認められ,測定方法が決まれば代表径が定ま
るという関係にある。したがって,明細書中に,平均粒子径の定義(算出方法)
を記載するか,又はその測定方法に関する記載があれば,特定の数値範囲に属す
る平均粒子径のものを示すものとして,その特定に欠けるところはないことにな
る。そこで,本件明細書の記載を検討する。
3本件明細書の記載の検討
(1)「平均粒子径」に関し,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の特
許請求の範囲を引用するものや,数値範囲を示すだけのものを除き,次のとおり
の記載がある。
ア【発明の実施の形態】
以下,この遠赤外線放射体について詳細に説明する。
(遠赤外線放射体の製造)
遠赤外線放射体は,基本的には,これらの原材料を粉末として混合し,次い
で焼成することによって焼結し,複合化することによって製造される。これに
よって,放射線源材料は均一に分散,分布されると共に,遠赤外線放射材料と
の粒子間が緻密化される。そのため,特に,遠赤外線放射材料と放射線源材料
はできるだけ細かな粒子の微粉末とすることが好ましく,一般に,10μm以
下の平均粒子径とすることが好ましい。より好ましいのは,0.5∼1μm程
度の平均粒子径である。そして,それらの粒度が細かい程,自然放射性元素の
放射性崩壊によるエネルギ線をより効果的に遠赤外線放射材料に吸収させるこ
とができる。段落【0024,段落【0035】】
なお,これらの原材料の微粉末化と混合は,好適には,ボールミル等を使用
して湿式混合粉砕することによって行うことができる。そしてこの場合には,
得られた原材料粉末の湿式混合物を乾燥した後,焼成する。また,この原材料
粉末の混合物の焼成は,その原材料の種類に応じて,それらの粒子が互いに焼
結され或いは固熔される温度,一般には,700∼1500℃の温度に加熱す
ることによって行うことができる。なお,この焼成は通常の酸化性雰囲気中で
行うことができるが,原材料の種類によっては,例えば,酸化銅(CuO)2
等の有色系の遠赤外線放射材料が使用される場合等には,酸素を遮断した弱還
元性雰囲気中で或いは窒素ガスの雰囲気中で行うことが必要である。段落【0
036】
イ【実施例】以下,本発明を実施例及び比較例によって更に具体的に説明する。
これらの実施例の遠赤外線放射体の作製は具体的には次のように行った。即
ち,磁器製ポットをボールミルとして用い,モナザイトを含む上記の配合の原
材料に,略同量の水を添加し,湿式混合粉砕を24時間行った。次いで,これ
を取出して上水を切り,400℃の温度で乾燥させた後,200メッシュの篩
を通した。そして,この原材料粉末の混合物を,電気炉で1200℃の温度に
2時間保持して焼成し,複合化した後,これを再び試験用ミルで粉砕して実施
例1乃至実施例3の粉体状の遠赤外線放射体を得た。段落【0044,段落】
【0049】
これらの実施例の各遠赤外線放射体の作製は,具体的には次のように行った。
即ち,各種のセラミックス遠赤外線放射材料と,モナザイトと,更に陶石とを,
上記の配合で磁製ポットに入れ,これに略等量の水を加えて湿式混合粉砕し,
それらの原材料の粒子が平均粒子径において約1μm程度になるまで粉砕し,
また混合した。そして,これを濾過して得た坏土を棒状に形成すると共に10
mm程度に切断し,その切断塊を回転造粒機によって小球状に造粒した。次い
で,この造粒物を天日乾燥した後,約1200℃に加熱して焼成し,複合化し
た。その後,バレル研磨処理を適宜施して,径約8mmの小球状成形体からな
る遠赤外線放射体を得た。段落【0065】
(2)本件明細書には,上記記載のほか,平均粒子径の定義(算出方法)やその測
定方法に関する記載はない。このように,本件明細書には「遠赤外線放射材料,
と放射線源材料はできるだけ細かな粒子の微粉末とすることが好ましく,一般に,
10μm以下の平均粒子径とすることが好ましい。より好ましいのは,0.5∼
1μm程度の平均粒子径である」というように,抽象的に平均粒子径の数値範。
囲のみが示されているのみで,本件発明の構成要件Cにいう「平均粒子径」がい
かなる算出方法によって算出されるものであるか明示の記載もその手掛りとなる
記載もない。また,本件明細書には,本件発明の実施例の遠赤外線放射体の作製
方法として「磁器製ポットをボールミルとして用い,モナザイトを含む上記の,
配合の原材料に,略同量の水を添加し,湿式混合粉砕を24時間行った。次いで,
これを取出して上水を切り,400℃の温度で乾燥させた後,200メッシュの
篩を通した」とか「各種のセラミックス遠赤外線放射材料と,モナザイトと,。,
更に陶石とを,上記の配合で磁製ポットに入れ,これに略等量の水を加えて湿式
混合粉砕し,それらの原材料の粒子が平均粒子径において約1μm程度になるま
で粉砕し,また混合した」と記載されているのみで,本件発明の構成要件Cに。
いう「平均粒子径」の測定につき採用されるべき測定方法について明示の記載あ
るいは手掛りとなる記載もない。
(3)そうすると,本件明細書の特許請求の範囲の記載中「共に10μm以下の平
均粒子径としてなる混合物(構成要件C)との記載は,それが具体的にどのよ」
うな平均粒子径を有する粒子からなる混合物を指すかが不明であるというほかな
いから,特許法36条6項2号の明確性要件を満たしていないというべきである。
(4)これに対し,原告は,平均粒子径は数学的算出方法が慣用手段であり(乙A
14,それを熟知した上で「平均粒子径」とするものであり,当業者間には光)
学的測定器が市販されており,それを使用して「平均粒子径」を決定しているこ
とは周知の事実であると主張する。しかし,上記のとおり,平均粒子径の算出方
法及び測定方法には複数あるのであって,市販されている光学的測定器を使用し
て平均粒子径を測定するとしても,複数ある算出方法ないし測定方法からいずれ
を選択するかについて,当業者間に共通の理解があると認めるに足りる証拠はな
い。そうであれば,本件発明においていかなる算出方法あるいは測定方法をもっ
て平均粒子径の数値を特定するかは不明であり,やはり特許法36条6項2号の
明確性の要件を満たしていないことになるから,原告の上記主張は採用できない。
また,原告は,本件発明は「平均粒子径の定義「セラミックス遠赤外線放射」,
材料の粉末及びモナザイトの粉末の粒子の形状「代表径の取り方「平均粒子」,」,
径の測定方法」のいずれをも特定しなければ具現化できないものではなく,また,
平均粒子径の算出方法は周知であり,特段の断りがない場合の平均粒子径とは,
算術平均,幾何平均等を意味するものであって,この算術平均でも,幾何平均で
も,またそのほかの平均の算出方法でも,結果に大きな違いがないと思われる旨
主張する。しかし,上記のとおり,本件明細書には「平均粒子径の定義」も「平
均粒子径の測定方法」のいずれも記載がないのであり,かつ,算出方法等も複数
あるのであるから,それらのいずれかが特定されない限り,平均粒子径の数値を
特定することはできないのである。また,どのような算出方法をとっても結果に
大きな違いがないという原告の主張は,上記2掲記の各学術文献の記載に照らし,
採用することができない。
その他,原告は縷々主張するが,いずれも本件明細書に特許法36条6項2号
の明確性要件に欠けるとの上記判断を左右するものではないというべきである。
4結論
したがって,本件特許は,特許法36条6項2号の規定に違反して特許されたも
のであり,同法123条1項4号の無効理由を有する。よって,その余の争点につ
いて判断するまでもなく,本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものと
認められるから,特許法104条の3第1項により,特許権者である原告は,被告
らに対し本件特許権に基づく権利を行使することができない。したがって,原告の
被告らに対する本件各請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することと
して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官田中俊次
裁判官森崎英二
裁判官西理香

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