弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人斎藤忠雄、同佐藤竹三郎、同西村洋の上告理由について。
 所論の市条例は、市内中小企業者に機械等を設置保有させて企業設備の近代化、
合理化を企図するものであること、それは、機械等の使用許可を受けた者の納付す
べき使用料を普通使用料、特別使用料の二種に分けて定めるが、前者は、当初納付
金とともに市が使用者のために購入した機械等の買入代金としての支出額の分割弁
済を意味し、後者は、右支出額の未回収部分に対する利息と認められること、それ
ら納付金の完済までその機械等の所有権を市に留保する定めは、もつぱら市の右支
出金額の回収の確保のためと解しうること、もし右使用許可が機械等の貸付である
とすれば、右条例による使用期間が機械等の耐用年限に比し一般的に短く、しかも
使用期間更新のみちもなく、かつ使用料が上述のような金額であることを理解しが
たいことにかんがみれば、右条例による使用許可は、市と使用者との間に機械等に
つきいわゆる割賦払約款附売買を成立させるものとする原判決引用の第一審判決の
判断は、相当といわなければならない。
 論旨は、右使用許可が取り消され機械等が市に返還されたときは、既納の使用料
は明らかに使用料たる性質をもつことになるといい、また、使用者の使用期間中の
機械等についての損害保険を付する義務、善管義務、その滅失、損傷、亡失等によ
る損害賠償義務、その管理の状況、生産実績の報告義務等をあげて、使用許可の法
律関係を使用料等の完納を停止条件とする所有権移転契約と機械等の賃貸借契約と
が同時になされた混合契約のごとく主張する。しかし、それは、賃貸借のように機
械等がやがて貸主に返還されることを本来予定しているものではなく、使用許可の
取消の場合にも、使用期間内に生じた機械等の減価分を既納の当初納付額、普通使
用料から補償させる建前の特別な清算方法をとつているのであり、その他所論の使
用者の義務も、右使用許可の関係を所有権留保付割賦売買と解することを妨げるも
のではない。
 してみると、叙上の見解に基づき、上告人の納付した普通使用料につき、これを
機械の売買代金の一部を構成するものとして使用中の機械の係争事業年度における
減価償却額の限度においてのみ損金計上を承認した本件更正処分は相当であり、こ
れを支持した原判決に所論の違法は認められず、論旨は理由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    飯   村   義   美

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