弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し金二一、六五一、
〇〇〇円およびこれに対する昭和五〇年七月一九日から支払済みに至るまで年五分
の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」
との判決ならびに仮執行の宣言を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張ならびに証拠関係は、原判決事実摘示のとおりである
からこれを引用する。
         理    由
 控訴人が、債権者株式会社静岡相互銀行、債務者被控訴人、所有者A間の横浜地
方裁判所昭和四四年(ケ)第二六八号不動産競売事件において、昭和四九年三月一
日に、右競売の目的物である本件建物につき競買価額二一、六五一、〇〇〇円をも
つて競落許可決定を受け、同年九月一〇日右代金額を納付したこと、本件建物の敷
地には、借地権その他の敷地利用権が設定されていなかつたこと、はいずれも当事
者間に争いがなく、控訴人が昭和五〇年七月一八日被控訴人に送達された本件訴状
をもつて、被控訴人に対し右競売における契約を解除する旨の意思表示をなしたこ
とは記録上明らかである。
 <要旨>そして、控訴人は、右のような場合には民法第五六八条第一項、第五六六
条第二項の類推により競落人は債務者に対して契約の解除をすることができ
る旨を主張するのであるが、民法第五六八条第一項の規定が任意競売にも適用せら
れるべきことは控訴人主張のとおりとしても、第五六六条第二項の規定は、売買の
目的たる権利に同条所定の瑕疵が存する場合につき、取引における信用の保持およ
び公平の見地から特別の定を設けたものと解され、他方、抵当権実行による建物の
競売は、必ずしもその敷地使用権の存在を前提として行われるものではなく、した
がつて、その競売における建物移転の契約において敷地使用権の移転が当然に予定
されているものとみることはできないばかりでなく、債務者ないし所有者の意思に
基かない建物の任意競売において、建物の敷地使用権の設定がなく、その事実が予
め告知されなかつたとしても、その責を債務者ないし所有者に帰せしめることがで
きないことも明らかといわなければならないから右のような場合につき民法第五六
八条第一項、第五六六条第二項を類推適用することは許されないものと解するのが
相当である(なお、この点を積極に解するとしても、民法第五六八条第一項による
解除をする場合において、債務者と物上保証人とが存するときは、解除の意思表示
は債務者に対してではなく、物上保証人に対してなすのを相当と解する。)。
 そうすると、控訴人の右主張は、いずれの点からいつても失当というほかはない
から、本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄
却すべきである。
 よつて、これと同趣旨の原判決は相当であつて、控訴人の本件控訴は理由がない
から棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文
のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 江尻美雄一 裁判官 滝田薫 裁判官 桜井敏雄)

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