弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件を上告審として受理しない。
       申立費用は申立人の負担とする。
         理    由
 申立ての理由によれば,本件は,民訴法318条1項により受理すべきものとは
認められない。
 よって,裁判官福田博,同亀山継夫の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意
見で,主文のとおり決定する。
 裁判官福田博,同亀山継夫の反対意見は,次のとおりである。
 本件は,法人である飲食業者が静岡県に対し代金の支払を請求した際に送金先と
して示した金融機関名,預金種別,口座番号が,静岡県公文書の開示に関する条例
(平成元年静岡県条例第15号)9条3号が定める「法人その他の団体(国及び地
方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の
当該事業に関する情報であって,開示することにより,当該法人等又は当該事業を
営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認めら
れるもの」に当たるかどうかが争われている事案である。上記情報は事業者の内部
管理情報とされるものであるが,自己に関する情報を開示する範囲を選択すること
ができる法的利益が問題となることからすれば,個人の場合のプライバシーの権利
によって保護される情報又はこれに準じるものとして,保護を受け得るものかどう
かについて,検討する必要があるというべきである。
 また,奈良県情報公開条例における同趣旨の規定に該当するかどうかが問題とさ
れた本件と類似の事案につき,第一小法廷平成14年9月12日判決(最高裁同1
1年(行ヒ)第50号,裁判所時報1323号7頁〔編注:裁判集(民事)207
号77頁〕)は,一般的な飲食業者の業務態様をみれば,不特定多数の者が新規に
その顧客となり得るのが通例であり,代金の請求書に口座番号等を記載して顧客に
交付している飲食業者にあっては,口座番号等を内部限りにおいて管理することよ
りも,決済の便宜に資することを優先させているものと考えられ,請求書に記載し
て顧客に交付することにより,口座番号等が多数の顧客に広く知れ渡ることを容認
し,当該顧客を介してこれが更に広く知られ得る状態に置いているものということ
ができるとして,顧客が奈良県であるからこそ特別に開示したなどという特段の事
情がない以上,口座番号等は,これを開示しても飲食業者の正当な利益が損なわれ
ると認められるものに当たらないという判断を示している。しかし,本件では,記
録によれば,飲食業者があらかじめ用意して顧客である静岡県に交付した請求書に
口座番号等が記載されていたものと,静岡県が定めた様式の請求書用紙の預金口座
の記入欄に飲食業者が記入して提出したものとがある。本件のような場合に,静岡
県への請求書の交付又は提出によって,飲食業者において,口座番号等が多数の顧
客に広く知れ渡ることを容認し,更にこれが広く知られ得る状態に置いたものとい
うことができるかどうかという点は,非開示事由に該当するかどうかを判断する上
において,基礎となる事実関係の確認を含めて,検討すべき重要な問題点である。
 したがって,本件は,法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められるか
ら,本件を上告審として受理するのが相当である。
(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄) 

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