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平成29年1月18日判決言渡
平成27年(行ケ)第10163号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成28年12月6日
判決
原告億光電子工業股份有限公司
(審決の表示)エヴァーライトエレクトロニクスカンパニーリミテッド
訴訟代理人弁護士黒田健二
同吉村誠
被告日亜化学工業株式会社
訴訟代理人弁護士古城春実
同宮原正志
同牧野知彦
同加治梓子
訴訟代理人弁理士鮫島睦
同言上惠一
同山尾憲人
同田村啓
同玄番佐奈恵
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定
める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2011-800159号事件について平成27年4月16日にし
た審決を取り消す。
第2前提となる事実
1特許庁における手続の経緯等(争いがない。)
(1)被告は,平成21年3月18日,名称を「発光ダイオード」とする発明につ
いて原出願日を平成9年7月29日としてした特許出願(特願平10-50869
3号。国内優先権主張日:平成8年7月29日,同年9月17日,同月18日,同
年12月27日及び平成9年3月31日。以下「最初の原出願」という。)について
分割出願(特願2009-65948号。以下「本件出願」という。)をし,平成2
2年6月18日,設定の登録(特許第4530094号)を受けた(甲48。請求
項の数4。以下,この特許を「本件特許」という。)。
本件特許の設定登録までに至る手続の経緯の詳細は次のとおりである。
ア平成9年7月29日
最初の原出願(特願平10-508693号)
優先権主張の基礎:特願平8-198585号(甲20。優先日:平成8年
7月29日。優先権主張国:日本。以下「第1基礎出願」という。),特願平8
-244339号(甲21。優先日:平成8年9月17日。優先権主張国:日
本。以下「第2基礎出願」といい,第1基礎出願と併せて,単に「基礎出願」
ということがある。),特願平8-245381号(甲22),特願平8-359
004号(甲23)及び特願平9-81010号(甲24)
イ平成20年1月7日
分割出願(第4世代)(特願2008-000269号)(甲16)
(以下「原出願」という。また,原出願の願書に最初に添付した明細書,特
許請求の範囲及び図面を「原出願明細書」という。)
ウ平成21年3月18日
分割出願(第5世代,本件出願)(特願2009-065948号)
エ平成22年6月18日
本件特許の設定登録(甲48)
(2)原告は,平成23年9月5日,特許庁に対し,本件特許を無効にすることを
求めて審判の請求をした。特許庁は,上記請求を,無効2011-800159号
事件(以下「本件審判請求事件」という。)として審理した結果,平成24年6月1
2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。原告は,同年10月
18日,上記審決の取消しを求める審決取消訴訟を提起した(知的財産高等裁判所
平成24年(行ケ)第10362号)。
(3)訂正審判の確定
被告は,上記訴訟係属中の平成24年12月17日,特許請求の範囲及び明細書
を訂正(以下「一次訂正」という。)する審判を請求し,訂正2012-39016
8号として係属したところ(甲49),特許庁は,平成25年2月28日,上記訂正
をすることを認める旨の審決をし,同審決は確定した。そこで,知的財産高等裁判
所は,審決は,結果として,請求項1ないし4について判断の対象となるべき発明
の要旨の認定を誤ったこととなり,この誤りが各請求項についての審決の結論に影
響を及ぼすことは明らかであるとして,同年6月27日,本件審判請求事件につい
ての上記審決を取り消す旨の判決を言い渡し,その後,同判決は確定した。
(4)特許庁は,本件審判請求事件についてさらに審理した上,平成26年5月1
日,本件特許を無効とする旨の審決をした。被告は,同年6月9日,同審決の取消
しを求める審決取消訴訟を提起するとともに(知的財産高等裁判所平成26年(行
ケ)第10142号),特許庁に対し,同年9月3日,本件特許の特許請求の範囲の
減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として,本件特許の特許請求の範囲及び
明細書についての訂正審判を請求した(訂正2014-390128号。以下,こ
の訂正を「本件訂正」という。)。知的財産高等裁判所は,平成26年12月1日,
平成23年法律第63号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)1
81条2項に基づき,上記審決を取り消す旨の決定をし,その後,同決定は確定し
た。
特許庁は,本件審判請求事件について,上記訂正審判請求に係る請求書に添付さ
れた明細書を援用する訂正の請求がされたものとみなした上,さらに審理をし,平
成27年4月16日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審
決をし,審決の謄本を,同月24日,原告に送達した。
2特許請求の範囲の記載
本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載(請求項の数は1)は,次のとお
りである(甲48,50。以下「本件訂正発明」という。また,一次訂正後の本件
特許に係る明細書及び図面を「本件明細書」といい,本件訂正後の本件特許に係る
明細書及び図面を「本件訂正明細書」という。なお,訂正箇所には下線を付した。)。
「【請求項1】
窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,該LEDチップを直接覆
うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を
吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミ
ネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,
前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペ
クトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発
光ダイオードであって,
前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティン
グ樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており,
かつ,前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり,
前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ,Y,
Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を
含んでおり,かつ,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの
元素を含んでなるCeで付括(判決注・「付活」の誤記と認める。)されたガーネッ
ト系フォトルミネセンス蛍光体であることを特徴とする発光ダイオード。」
3本件訂正における訂正事項
本件訂正における特許請求の範囲に係る訂正事項は,以下の「訂正事項a」及び
「訂正事項b」のとおりである(なお,訂正部分については下線を付した。訂正事
項cないしoは省略。)。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において,
「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,該LEDチップを直接
覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部
を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトル
ミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,
前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペ
クトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発
光ダイオードであって,
前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティン
グ樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており,
かつ,前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であるこ
とを特徴とする発光ダイオード。」
とあるのを,
「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,該LEDチップを直接
覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部
を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトル
ミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,
前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペ
クトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発
光ダイオードであって,
前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティン
グ樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており,
かつ,前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり,
前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ,Y,
Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を
含んでおり,かつ,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの
元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である
ことを特徴とする発光ダイオード。」
と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2ないし4を削除する。
4審決の理由
(1)審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。その要旨は,①本件訂正は,
本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正と認められるから,改正前特許法134
条の2第1項,第5項で準用する同法126条3項,4項の規定に適合するので,
適法な訂正と認める,②本件訂正発明(特許請求の範囲)は,特許法36条6項1
号の規定(サポート要件)に違反するものではなく,また,本件訂正明細書は同条
4項1号の規定(実施可能要件)に違反するものではないから,同法123条1項
4号に該当せず,本件特許を無効とすることはできない,③本件特許は,適法にさ
れた分割出願であると認められ,本件特許は,最初の原出願の時(平成9年7月2
9日)にしたものとみなされるから,原出願の公開特許公報である特開2008-
160140号公報(甲16。以下「甲16文献」という。)は同法29条1項3号
に規定する刊行物に該当せず,特許法29条1項3号又は同法29条2項の規定に
より,本件特許を無効とすることはできない,④第264回蛍光体同学会講演予稿
「白色LEDの開発と応用」(甲25。以下「甲25文献」という。)は,同法29
条1項3号に規定する刊行物に該当せず,また,本件訂正発明は,甲25文献に記
載された発明(以下「甲25発明」という。)と同一ではないし,甲25発明に基づ
いて当業者が容易に発明することができたものではないから,同号及び同法29条
2項の規定により,本件特許を無効とすることはできない,⑤P.Schlott
er他「Luminescenceconversionofbluel
ightemittingdiodes」(AppliedPhysics
A,April1997,Volume64,Issue4,pp417-41
8)(甲26の1。以下「甲26文献」という。)は,同法29条に規定する刊行物
に該当せず,また,本件訂正発明は,甲26文献に記載された発明(以下「甲26
発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから,
同法29条1項3号及び同法29条2項の規定により,本件特許を無効とすること
はできない,というものである。
(2)審決が認定した甲25発明の内容,本件発明と甲25発明との一致点及び
相違点は,次のとおりである。
ア甲25発明の内容
「リードフレームのカップ底面にLEDチップをマウントし,
蛍光体を樹脂に分散し,LEDチップの表面に薄くコーティングし,
チップを外部環境から保護するために集光レンズを兼ねたエポキシ樹脂で周囲を
封止した白色LEDであって,
前記LEDチップは,InGaN系の青色SQW-LEDであり,
蛍光体は,(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの組成式で表され,Y3Al
5012のAlをGaで置換すると短波長側へ(②,③),YをGdで置換すると長波
長側へ(④,⑤,⑥)へ,置換量に応じて連続的に発光波長が移動し,
前記LEDの発光は,465nmをピークとする青色光であり,この青色光の一
部は散乱を繰り返す内に蛍光体に吸収され,蛍光体から淡黄緑色の蛍光が発せられ,
LEDの青色光と淡黄緑色の蛍光を足し合わせた光が外部へ取り出される,
白色LED。」
イ一致点
「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,該LEDチップを直接
覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部
を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトル
ミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,
前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペ
クトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発
光ダイオードであって,
前記フォトルミネセンス蛍光体は,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからな
る群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり,かつ,Al,Ga及びIn
からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガー
ネット系フォトルミネセンス蛍光体であることを特徴とする発光ダイオード。」
ウ相違点
(ア)相違点1
本件訂正発明は,「前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度
が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなって」
いるのに対し,甲25発明は,LEDチップの表面にコーティングする樹脂に蛍光
体を分散しているものの,蛍光体の濃度がLEDチップに向かって高くなるものか
否か明らかでない点。
(イ)相違点2
Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの
元素を含んでおり,かつ,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも
1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体
が,本件訂正発明では,「互いに組成の異なる2種類以上」であるのに対し,甲25
発明では,そのように特定されるものか否か明らかではない点。
(3)審決が認定した甲26発明の内容,本件発明と甲26発明との一致点及び
相違点は,次のとおりである。
ア甲26発明の内容
「窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオード,黄色発光Y3Al5O12:Ce
3+
(4f1
)変換体,反射カップ,エポキシ樹脂,エポキシレンズを備える白色発光
LEDであって,
前記エポキシ樹脂は,黄色発光Y3Al5O12:Ce3+
(4f1
)変換体を包含し,
前記エポキシ樹脂は,反射カップに接合された窒化ガリウム(GaN)系青色発
光ダイオードを封入し,
前記エポキシレンズは,前記窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオード,黄
色発光Y3Al5O12:Ce3+
(4f1
)変換体,反射カップ,エポキシ樹脂を覆う,
白色発光LED。」
イ一致点
「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと,該LEDチップを直接
覆うコーティング樹脂であって,該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部
を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトル
ミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し,
前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペ
クトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発
光ダイオードであって,
フォトルミネセンス蛍光体は,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群
から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり,かつ,Al,Ga及びInから
なる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネッ
ト系フォトルミネセンス蛍光体である発光ダイオード。」
ウ相違点
(ア)相違点3
コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,本件訂正発明では,
「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなって」い
るのに対し,甲26発明では,そのようになっているのか否か不明な点。
(イ)相違点4
本件訂正発明では,「前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種
類以上」であるのに対し,甲26発明では1種類である点
第3原告主張の取消事由
1取消事由1(訂正の適否に関する判断の誤り)
(1)改正前特許法126条3項適合性について
審決は,訂正事項aについて,本件明細書に記載した事項の範囲内であると判断
した。しかし,本件訂正は,訂正要件を満たさないものであるから,審決の上記判
断は誤っている。すなわち,本件明細書には,以下のとおり,「組成の異なる2種類
以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセ
ンス蛍光体」について,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ば
れた少なくとも1つの元素」と「Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少な
くとも1つの元素」のうち,「Lu,Sc,La」と「In」を含むことは記載され
ていない。したがって,訂正事項aは,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正
ではなく,特許法126条3項に適合しない。
ア実施形態1について
(ア)本件明細書の段落【0046】には実施形態1の発光ダイオードに用いられ
るフォトルミネセンス蛍光体として,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからな
る群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり,かつ,Al,Ga及びIn
からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付活されたガー
ネット系フォトルミネセンス蛍光体」についての記載がある。しかし,この記載は,
フォトルミネセンス蛍光体が1種類の実施形態にすぎない。
(イ)本件明細書の段落【0064】には,組成の異なる2種類以上のフォトルミ
ネセンス蛍光体を組み合わせることが記載されているものの,上記組成のフォトル
ミネセンス蛍光体には,本件訂正発明の構成元素のうち,「Lu,Sc,La」と「I
n」が含まれていない。
イ実施形態2について
(ア)本件明細書の段落【0079】,【0084】の記載から明らかなとおり,実
施の形態2で用いられるフォトルミネセンス蛍光体は,「Y,Gd,La及びSm」
と「Al及びGa」のみである。
(イ)本件明細書の段落【0079】,【0080】には,非常に抽象的で広い範囲
の蛍光体を示す,「フォトルミネセンス蛍光体」や「セリウムで付活されたフォトル
ミネセンス蛍光体」が記載されているにすぎず,(Re1-rSmr)3(Al1-SGa
S)5O12:Ce等以外の「Lu,Sc,La」と「In」を含むことは一切記載も
示唆もされていない。
ウ本件明細書の段落【0011】の記載について
本件明細書には,「Lu,Sc,La」及び「In」の元素が組み合わされたガー
ネット系蛍光体について,段落【0011】に記載された要件を満たすかどうかに
ついて,何も記載されていない。むしろ,段落【0138】には,Y3In5O12:
Ce蛍光体を用いると輝度が低いことが記載されているのであって,「高輝度の発
光が可能」という要件を満たしていないことは明らかである。
エ被告のファミリー出願への対応について
被告は,本件特許の親出願を含む複数のファミリー出願にかかる特許について,
登録時のクレームを訂正し,「Lu,Sc,La」を請求項から削除した(甲60な
いし65)。これは,これらの特許権者でもある被告が,本件特許の元の明細書には,
「Lu,Sc,La」という元素の組合せによるガーネット系蛍光体によっては発
明の効果が達成し得ないと認識していたからにほかならない。
(2)本件訂正について通常実施権者の承諾
被告は,●●●●●●●●●●●●●●に対し,本件特許権につき通常実施権を
許諾していると認められるところ,本件訂正について,実施権者である●●●●か
らの承諾(改正前特許法134条の2第5項,127条)を得ていないから,本件
訂正は認められない。
一般的に,特許の有効性は市場全体への影響が大きく(特に,LED産業におい
ては実施権者以外の競業メーカーへの影響が極めて大きい。),実施権者以外にとっ
ても,訂正の適否について実質的な利害関係があるから,通常実施権者の承諾の欠
缺を主張し,訂正の適法性を主張し得るのが通常実施権者に限られるということは
ない。
被告は,原告が本件特許の通常実施権者であると主張する者から,訂正に関する
承諾を得ていると主張するけれども,その根拠として提出する事実実験公正証書(乙
10)は,承諾相手や承諾権限について疑問がある。また,訂正に関しては,個別
具体的な承諾がなければ,通常実施権者が不測の損害を被るおそれがあるといえる
から,ライセンス契約書等で一般的包括的な承諾を得ているとしても,改正前特許
法127条の「承諾」に当たるということはできない。
したがって,被告が本件特許権の通常実施権者から,本件訂正に関する承諾を得
ているとはいえず,本件訂正は特許法127条に反するものであるから,本件訂正
は認められない。
2取消事由2(分割要件に関する判断の誤り)
審決は,本件訂正発明は,原出願明細書(甲16)に包含された発明となった旨
判断する。しかし,原出願明細書の段落【0078】ないし【0080】,【008
2】ないし【0083】の記載によれば,原出願明細書の実施の形態2で用いられ
るフォトルミネセンス蛍光体は,「Y,Gd,La及びSm」と「Al及びGa」の
みであるから,「組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わ
せ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」について,「Y,Lu,Sc,L
a,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」と「Al,Ga
及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」のうち,「Lu,Sc」と
「In」は含まれていない。
したがって,原出願明細書に記載されていない特定をする本件特許(分割出願)
は分割要件に反するものである。審決は分割要件の判断を誤っており,この誤りは
審決の結論に影響を及ぼすものである。
3取消事由3(特許法36条6項1号(サポート要件)及び同条4項1号(実
施可能要件)に関する判断の誤り)
(1)本件訂正明細書の段落【0064】,【0079】ないし【0081】,【00
83】ないし【0084】においては,「組成の異なる2種以上のフォトルミネセン
ス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」について,
「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの
元素」と「Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」の
うち,「Lu,Sc,La」と「In」を含むことは記載されていないから,本件訂
正後の特許請求の範囲の請求項1の「フォトルミネセンス蛍光体」について,「Y,
Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」
と「Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」は,本件
訂正明細書においてサポートされていないといえる。また,本件訂正明細書の発明
の詳細な説明には,課題を解決できる発明を製造でき使用できるようには記載され
ていない。
したがって,本件訂正発明はサポート要件に違反し,また,本件訂正明細書の記
載は実施可能要件に違反することが明らかであるから,審決は,上記各要件の判断
を誤っており,審決の結論に影響を及ぼすものであるといえる。
(2)また,被告は,2種類の蛍光体がどちらも「YAG:Ce」となる場合であ
っても,賦活剤であるCeの量を変化させることで発光色の異なる2種類の蛍光体
を得ることができると主張しているものと解される。
しかし,本件訂正明細書の記載によると,Ceの濃度の変化によって変化させる
ことができるのは,発光「輝度」であり,発光「色」自体を変化させることができ
ることは記載されていないし,本件訂正発明の「組成の異なる」に「Ceの濃度を
変化させること」が含まれるとも一切記載されていない。Ceの濃度変化により,
発光色を変化させることが,本件訂正発明の組成の異なる「2種類の蛍光体」に含
まれるということであれば,これらは本件訂正明細書によってサポートされていな
いこととなるから,本件訂正発明にはサポート要件違反があることになる。
4取消事由4(本件訂正発明と基礎出願に記載された発明との共通部分の存否
についての判断の誤り)について
本件訂正発明の「2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体」は,「2種類以上」で
ある以上,2種類のものに加えて3種類や4種類の蛍光体も技術的事項として存在
することは明らかであるところ,第2基礎出願の実施例2には,「2種類」のフォト
ルミネセンス蛍光体しか記載されておらず,「2種類以上のフォトルミネセンス蛍
光体」のフォトルミネセンス蛍光体についての技術的事項は記載されていない。
また,蛍光体について,「Y,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1
つの元素を含んで」という技術的事項については,「含んで」いれさえすれば良いわ
けであるから,第1基礎出願や第2基礎出願の明細書に記載のない,(Y,Lu)3
Al5O12という蛍光体や,(Y,Tb)3Al5O12という蛍光体も含まれてしまう
ことになる。同様に,蛍光体についての「Al,及びGaからなる群から選ばれる
少なくとも1つの元素を含んで」という技術的事項についても「含んで」いれさえ
すれば良いわけであるから,第1基礎出願や第2基礎出願の明細書に記載のない,
Y3(Al,In)5O12という蛍光体も含まれてしまうことになる。したがって,
本件訂正発明の「Y,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素
を含んで」及び「Al,及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を
含んで」という技術的事項について,第1基礎出願や第2基礎出願の明細書に記載
がないことは明らかである。第2基礎出願の明細書に開示されているのは,あくま
でも,組成が極めて限定された特定の実施例の構成のみである。
以上のとおり,審決は,本件訂正発明と基礎出願に記載された発明との共通部分
の存否についての認定判断を誤っており,その誤った判断に基づき,甲25文献及
び甲26文献の刊行物性を否定しているのであるから,この誤りが審決の結論に影
響を及ぼすことは明らかである。
5取消事由5(本件訂正発明と甲25発明の相違点の認定,判断の誤り)
(1)相違点1について
相違点1の技術的事項については,実質上,甲25文献に記載されている技術的
事項であるから,相違点とはならない。
ア審決は,甲25文献の図1に「樹脂に分散」と記載されていることから,そ
の濃度分布が不明であると誤解している。しかし,特公昭52-40959号公報
(甲12。以下「甲12文献」という。)に記載されているとおり,蛍光体を発光部
分に集中して接近させる必要があるということが技術常識であったことからも,蛍
光体を発光ダイオード付近に集中させる必要があることは明らかである。したがっ
て,甲25文献における「薄く塗布」という記載から,蛍光体がチップ表面にある
ということは明らかである。
仮に,甲25文献に「蛍光体の濃度分布をLEDチップに向かって高くすること」
が明示的に記載されていないとしても,甲12文献の,「少量のけい光体を発光部分
に集中し接近させて塗布する必要がある」ことから,「刷毛塗りあるいは沈降法など
の方法がとられている」という記載から,「蛍光体の濃度分布をLEDチップに向か
って高くすること」が甲12文献に記載されているといえる。
イ液体(樹脂)と固体(蛍光体)がある場合に,比重が異なれば,固体が浮く
(浮揚)か,沈む(沈降)かのいずれかとなることは明らかである。そして,無機
蛍光体とエポキシ樹脂では,無機蛍光体の比重が圧倒的に大きいことも技術常識で
ある(甲14,15)。そのため,無機蛍光体は沈降していくことも,本件特許出願
前から技術常識であった(甲10)。さらに,本件特許の審査過程において出願人た
る被告自身も認めたとおり(甲13),蛍光体が沈殿するのは周知の事実であった。
したがって,YAG蛍光体が樹脂中で沈降することは当然のことであって,この
ことは,少なくとも,甲25文献に実質的に記載されているに等しい事項である。
ウ本件特許の対応外国特許である米国7531960特許(甲57)に関する
訴訟において,本件特許の登録時のクレームに対応する請求項(当該特許の請求項
2)は無効とされている(甲58)。上記判決では,甲12文献の図1(c)が米国
特許における蛍光体の濃度勾配を示しており,甲12文献の「少量のけい光体を発
光部分に集中し接近させて塗布する必要がある」という記載から,甲12文献は,
米国特許における蛍光体の濃度勾配を示していると判断し,かつ,組み合わせも容
易であると判断している。
(2)相違点2について
相違点2の技術的事項は,実質上は甲25文献に記載されている技術的事項であ
るから,相違点とはならない。
ア甲25文献の表2には,組成の異なる7種(①~⑦)のYAG系蛍光体が記
載されている。①~⑦の蛍光体のみでは,図8における,特定の直線上の色しかカ
バーできないにもかかわらず,「①~⑦の蛍光体を使用することで色度図中央の広
範な白色領域をすべてカバー」とあり,図8に「扇形部分」とあることから,表2
の①~⑦の蛍光体を任意の比率で「複数」組み合わせて用いることも記載されてい
るといえる。すなわち,上記の①~⑦の7種のYAG系蛍光体のみで扇形部分の領
域をすべてカバーするためには,蛍光体を2種類以上組み合わせなければならない
のである。したがって,甲25文献には,2種類以上の蛍光体を用いることが開示
されているといえる。
また,甲25の図2においては,蛍光体について「緑~赤」と記載されており,
これらの記載からすれば,蛍光体を2種類以上組み合わせることが開示されている
といえる。すなわち,甲25の図2の記載からは,緑から赤の2種類の蛍光体を用
いることも開示されているといえるのである。
イ2種類の蛍光体を用いることについて,青色LEDに緑色と赤色の蛍光体を
用いて白色光を生成することは技術常識であったといえる(甲26の1,27,2
8)。したがって,審決は,相違点2の容易想到性の判断も誤っており,これが審決
の結論に影響を及ぼすことも明らかである。
6取消事由6(本件訂正発明と甲26発明の相違点の認定,判断の誤り)
(1)相違点3の認定の誤り
甲26文献には,「BASFLumogenF」を用いることが記載されてい
る。本件特許出願時に通常用いられていたエポキシ樹脂の密度よりも,「BASF
LumogenF」の密度の方が大きいことから,甲26発明において,エポキ
シ樹脂に添加された緑色及び赤色の発光色素が自然と沈降することも明らかである。
したがって,相違点3の技術的事項については,実質上,甲26文献に記載され
ている技術的事項であるから,相違点とはならない。
(2)相違点4の判断の誤り
審決は,相違点4について,甲26発明は,黄色発光の変換体であるところ,青
色LEDと黄色発光の蛍光体とで構成される白色LEDにおいて,組成の異なる蛍
光体を更に備えることは,当業者が容易に想到し得るものではないと判断した。
しかし,青色LEDに緑色と赤色の蛍光体を用いて白色光にすることは甲26文
献に記載されている(418頁左欄1行ないし下から3行)。また,Yuichi
SATO他「Full-ColorFluorescentDisplay
DevicesUsingaNear-UVLight-Emittin
gDiode」(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996)p
p.L838-839Part2,No.7A,1July1996)(甲28。
以下「甲28文献」という。)にも,青色LEDに緑色と赤色の蛍光体を用いること
が明記されている。特開平1-260707号公報(甲27。以下「甲27文献」
という。)においても,LEDと二色の蛍光体を用いて,三原色による白色光を生成
することが記載されている。このように,青色LEDに緑色と赤色の蛍光体を用い
て白色光を生成することは技術常識であったといえる。
そして,甲26文献に記載されたYAG系蛍光体(Y3Al5O12:Ce3+
)のY
やAlを,GdやGaで置換すれば,緑色から赤色になることも技術常識であるか
ら,甲26文献の記載及び技術常識から,甲26発明のYAG系蛍光体(Y3Al5
O12:Ce3+
)を「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少なくと
も1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含
み,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」とすることも容易である。
したがって,審決は,相違点4の容易想到性の判断を誤っており,これが審決の
結論に影響を及ぼすことも明らかである。
第4被告の主張
1取消事由1(訂正の適否に関する判断の誤り)について
(1)改正前特許法126条3項適合性について
本件明細書において,組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体を用
いる形態として開示された実施の形態2は,審決が認定するとおり,フォトルミネ
センス蛍光体を,具体例として記載された(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5
O12:Ce等(【0079】)に限定するものではなく,実施の形態1の欄で説明
された蛍光体を含む任意の組成の蛍光体を適用して構成してよいものであること
は,本件明細書のすべての記載,特に段落【0079】及び【0080】の記載か
ら,当業者には明らかであるといえる。
したがって,実施の形態2の「セリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光
体」として,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少な
くとも1つの元素を含んでおり,かつ,Al,Ga及びInからなる群から選ばれ
る少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネ
センス蛍光体」を適用できることは,本件明細書の記載等から自明な事項であり,
蛍光体の組成をこのように限定したことは,新たな技術的事項を導入するものでは
なく,本件訂正は,願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であっ
て,特許法126条3項に適合するから,その旨の審決の判断に誤りはない。
(2)通常実施権者の承諾について
特許法は,念のために,訂正審判の請求又は訂正の請求に際し,通常実施権者が
その利益を損なわれないようにする機会を与えるべく,通常実施権者の承諾につい
て規定したものと解される。このように,特許法127条の趣旨は,通常実施権者
という一私人に帰属する競争上の利益を保護することにあるから,特許権者が通常
実施権者の承諾なく訂正審判の請求又は訂正の請求をした場合に,承諾の欠缺を主
張し得るのは通常実施権者に限られると解すべきである。したがって,本件特許権
の通常実施権者等でない原告が特許法127条違反の主張をすることは許されな
い。
また,特許法が訂正審判の請求又は訂正の請求において通常実施権者の承諾を必
要としたのは,通常実施権者の特許権に由来する競争上の利益を保護するためであ
るところ,そのような通常実施権者の私的な利益はその自由な処分に委ねられるべ
きものであるから,通常実施権者が特許権者による訂正審判の請求又は訂正の請求
について事前に包括的な承諾を与えている場合には,特許法127条の「承諾」に
該当し,特許権者は,通常実施権者の個別の承諾なしに訂正審判の請求又は訂正の
請求をし得るものと解すべきである。
本件において,被告は,本件特許権の通常実施権者であると原告が指摘する●●
について,被告が行う訂正に関し承諾を得ている。原告は,被告が上記承諾を得た
ことの根拠として提出する事実実験公正証書(乙10)について,承諾相手や承諾
権限について疑問があると主張するけれども,いずれも理由がない。
したがって,仮に,原告が指摘する●●が本件特許権の通常実施権者であるとし
ても(営業秘密である。),被告は,上記の通常実施権者全てから,訂正審判の請求
又は訂正の請求に関する承諾を得ているから,本件再訂正が特許法127条に反す
ることはない。
2取消事由2(分割要件に関する判断の誤り)について
原出願明細書の記載によれば,本件訂正発明は,原出願に包含された発明である
といえるから,本件特許は,分割要件を充足するものであり,分割要件違反を否定
した審決の判断に誤りはない。
3取消事由3(特許法36条6項1号(サポート要件)及び同条4項1号(実
施可能要件)に関する判断の誤り)について
(1)サポート要件について
実施の形態2に関して,組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体
を,実施の形態1に記載された「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群
から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり,かつ,Al,Ga及びInから
なる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネッ
ト系フォトルミネセンス蛍光体」とし得ることは,本件訂正明細書の記載から自明
である。そして,この組成のフォトルミネセンス蛍光体を用いて構成した本件訂正
発明の発光ダイオードが,外部環境からの水分による蛍光体の劣化という課題を解
決できることは,本件訂正明細書の段落【0050】,【0048】,【0081】の
記載から明らかである。
したがって,本件訂正発明は,発明の詳細な説明において発明の課題が解決でき
ることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではないから,本
件訂正発明についてサポート要件違反を否定した審決の認定に誤りはない。
(2)実施可能要件について
本件訂正発明のフォトルミネセンス蛍光体を用いた場合に,外部環境からの水分
による蛍光体の劣化という発明の課題を解決することができることは,本件訂正明
細書の段落【0050】の記載から明らかであり,本件訂正明細書の発明の詳細な
説明は,水分による蛍光体の劣化という課題を解決することができる発明(発光ダ
イオード)を製造し使用することができるように記載されたものであるといえる。
また,本件訂正明細書の段落【0048】,【0081】によれば,当業者であれ
ば,本件訂正発明の特定組成の蛍光体を用いて,本件訂正発明の実施をすることは
十分に可能であり,本件訂正発明の実施をするに当たり,当業者に期待し得る程度
を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要は一切ない。
以上のとおり,本件訂正明細書の発明の詳細な説明は,当業者が発明の実施をす
ることができる程度に明確かつ十分に記載されているから,本件訂正明細書につい
て実施可能要件違反を否定した審決の認定に誤りはない。
4取消事由4(本件訂正発明と基礎出願に記載された発明との共通部分の存否
についての判断の誤り)について
本件訂正発明と基礎出願に記載された発明との共通部分の存否についての審決の
判断に誤りはない。また,審決は,甲25発明及び甲26発明に基づく新規性及び
進歩性について実体的な判断をしているところ,この審決の判断に誤りはないか
ら,取消事由4は,審決の結論に影響を及ぼすものではない。
したがって,いずれにせよ,取消事由4は理由がない。
5取消事由5(本件訂正発明と甲25発明の相違点の認定,判断の誤り)につ
いて
(1)相違点1について
ア原告は,甲25文献に「蛍光体をLEDチップ表面に薄く塗布して」と記載
されていることを根拠に,甲25発明は,「前記コーティング樹脂中のフォトルミ
ネセンス蛍光体が,LEDチップの表面に塗布されている」構成である旨主張す
る。しかし,甲25文献の図2は,コーティング樹脂において蛍光体がコーティン
グ樹脂中で均一に分散している構成を開示しているといえる。したがって,原告の
上記主張は明らかに失当である。
イ原告は,蛍光体を発光部に集中して接近させることが必要であることは技術
常識であり(甲12),甲25発明においても蛍光体を発光ダイオード付近に集中
させている旨主張する。しかし,甲12文献では,蛍光体の具体的な配置は明らか
にされていないことなどから,甲12文献は上記主張の根拠となるものではない。
ウ原告は,無機蛍光体とエポキシ樹脂では前者の比重が圧倒的に大きいことが
技術常識であり(甲14,15),無機蛍光体が沈下することも技術常識であるこ
と,被告自身も審査過程で蛍光体が沈殿することが周知であることを認めているこ
とを根拠として,相違点1の構成は,甲25文献に記載されているに等しい事項で
あると主張する。しかし,被告は,「コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍
光体の濃度が,コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くな
る」という構成が発光ダイオードの構成として自明であったということまでは認め
ていない。また,そもそも,本件出願当時,樹脂中に蛍光体を均一に分散させると
いうのが技術常識であった上,現に,当時の一般的な樹脂を用いても,蛍光体は樹
脂中に均一に分散するのであるから(甲13),蛍光体が沈降することが技術常識
であったとか,甲25文献でも蛍光体は沈降していたという趣旨の原告の上記主張
に根拠がないことは明白である。
エしたがって,審決が相違点1を認定した点に誤りはない。
(2)相違点2について
甲25文献は,蛍光体の組成の変化が白色LEDの発光色に及ぼす影響を説明す
るにすぎず,当該説明から,組成の異なる2種類以上の蛍光体を用いることを読み
取ることはできない。また,甲25文献は,2種類以上の蛍光体を用いたときに色
再現範囲が具体的にどのようなものとなるかについて,何らの開示も示唆も与えて
いない。
したがって,甲25文献は,2種類以上の蛍光体の使用を開示しているとはいえ
ないから,相違点2は実質的に甲25文献に開示されているとの原告の主張は失当
であり,審決が相違点2を認定した点に誤りはない。
(3)まとめ
以上のとおり,そもそも甲25文献は特許法29条1項3号の刊行物に該当しな
いし,また,本件訂正発明と甲25発明について,相違点1及び2を認定した審決
の判断に誤りはないから,取消事由5は理由がない。
6取消事由6(本件訂正発明と甲26発明の相違点の認定,判断の誤り)につ
いて
(1)相違点3について
原告は,甲26文献には,「BASFLumogenF」を用いることが記
載されており,甲26発明において,エポキシ樹脂に添加された緑色及び赤色の発
光色素が自然と沈降することも明らかである旨主張する。しかし,本件訂正発明の
蛍光体の特定組成にあたらない「BASFLumogenF」が沈降すること
を主張しても意味はない。また,そもそも,原告が指摘するLumogenF
は,染料の一種であって,いったん樹脂に溶解し,分子レベルで樹脂中に存在する
こととなれば,その濃度分布を議論し得ないことはいうまでもない。そして,甲2
6文献は本件訂正発明の課題について何ら言及していない。したがって,相違点と
して相違点3を認定した審決の判断は正当である。
(2)相違点4の判断について
原告は,青色LEDに緑色と赤色の蛍光体を用いて白色光にすることは甲26文
献に記載されており,技術常識であったとして(甲27,28),相違点2に係る
構成は当業者が容易に想到し得るものである旨主張する。しかし,本件訂正発明の
蛍光体の特定組成にあたらない緑色や赤色の蛍光体について主張しても意味はな
い。甲26文献には,青色LEDと蛍光体の組み合わせとして,青色LEDチップ
とY3Al5O12:Ce3+
(4f1
)(黄色発光の変換体)が開示されているのみで
あるし,甲28文献及び甲27文献にも本件訂正発明の特定組成の蛍光体を2種類
以上組み合わせることは記載されていない。したがって,相違点4に係る構成の容
易想到性を否定した審決の認定は正当である。
(3)まとめ
以上のとおり,そもそも甲26文献は特許法29条1項3号の刊行物に該当しな
いし,また,本件訂正発明と甲26発明について,相違点3及び4を認定し容易想
到性を否定した審決の判断に誤りはないから,取消事由6は理由がない。
第5当裁判所の判断
当裁判所は,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消され
るべき違法はないと判断する。その理由は次のとおりである。
1本件訂正発明の内容
本件訂正明細書(甲48,50の3)によれば,本件訂正発明の内容は次のとお
りであると認められる(図1及び図2については,別紙本件明細書図面目録参照)。
本件訂正発明は,LEDディスプレイ,バックライト光源,信号機などに利用さ
れる発光ダイオードに関し,特に発光素子が発生する光の波長を変換して発光する
フォトルミネセンス蛍光体を備えた発光装置に関する(【0001】)。
発光ダイオードを用いて,白色発光光源を構成する試みが種々なされていたとこ
ろ,被告が先に発表した発光ダイオードは,一種類の発光素子を用いて白色系など
他の発光色を発光させることができるというものであり,発光素子として,青色系
の発光が可能な発光素子を用いて,該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を
発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより,混色により白色
系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる(【0003】ないし
【0006】)。
しかし,従来の発光ダイオードは,蛍光体の劣化によって色調がずれたり,ある
いは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があ
った。また,発光素子の近傍に設けられた蛍光体は,発光素子の温度上昇や外部環
境(例えば,屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさら
され,この熱によって劣化する場合がある。さらに,蛍光体によっては,外部から
侵入する水分や,製造時に内部に含まれた水分と,上記光及び熱とによって,劣化
が促進されるものもある(【0007】ないし【0009】)。
本件訂正発明は,上記課題を解決し,より高輝度で,長時間の使用環境下におい
ても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供すること
を目的とする(【0010】)。
本件訂正発明に係る発光ダイオードは,窒化ガリウム系化合物半導体を有するL
EDチップと,該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって,該LEDチ
ップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長
の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング
樹脂を有し,前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光
の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を
発光する発光ダイオードであって,前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス
蛍光体の濃度が,前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって
高くなっており,かつ,前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種
類以上であり,前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体は
それぞれ,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくと
も1つの元素を含んでおり,かつ,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少
なくとも1つの元素を含んでなるCeで付活されたガーネット系フォトルミネセン
ス蛍光体であることを特徴とする(【0012】)。
本件訂正発明の発光装置は,高輝度の発光が可能な窒化物系化合物半導体からな
る発光素子を用いているので,高輝度の発光をさせることができる。また,フォト
ルミネッセンス蛍光体は,長時間,強い光にさらされても蛍光特性の変化が少なく
極めて耐光性に優れている。これによって,長時間の使用に対して特性劣化を少な
くでき,発光素子からの強い光のみならず,野外使用時等における外来光(紫外線
を含む太陽光等)による劣化も少なくでき,色ずれや輝度低下が極めて少ない発光
装置を提供できる。また,この発光装置は,使用している前記フォトルミネッセン
ス蛍光体が,短残光であるため,例えば,120nsecという比較的速い応答速
度が要求される用途にも使用することができる(【0014】)。
図1の発光ダイオード100は,マウント・リード105とインナーリード10
6とを備えたリードタイプの発光ダイオードであって,マウント・リード105の
カップ部105a上に発光素子102が設けられ,カップ部105a内に,発光素
子102を覆うように,所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング樹
脂101が充填された後に,樹脂モールドされて構成される。ここで,発光素子1
02のn側電極及びp側電極はそれぞれ,マウント・リード105とインナーリー
ド106とにワイヤー103を用いて接続される(【0034】)。
以上のように構成された発光ダイオードにおいては,発光素子(LEDチップ)
102によって発光された光(LED光)の一部が,コーティング樹脂101に含
まれたフォトルミネッセンス蛍光体を励起してLED光と異なる波長の蛍光を発生
させて,フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と,フォトルミネッセンス蛍
光体の励起に寄与することなく出力されるLED光とが混色されて出力される。そ
の結果,発光ダイオード100は,発光素子102が発生するLED光とは波長の
異なる光も出力する(【0035】)。
また,図2に示すものはチップタイプの発光ダイオードであって,筺体204の
凹部に発光素子(LEDチップ)202が設けられ,該凹部に所定のフォトルミネ
ッセンス蛍光体を含むコーティング材が充填されてコーティング部201が形成さ
れて構成される。ここで,発光素子202は,例えばAgを含有させたエポキシ樹
脂等を用いて固定され,該発光素子202のn側電極とp側電極とをそれぞれ,筺
体204に設けられた端子金属205に,導電性ワイヤー203を用いて接続され
る。以上のように構成されたチップタイプの発光ダイオードにおいて,図1のリー
ドタイプの発光ダイオードと同様に,フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光
と,フォトルミネッセンス蛍光体に吸収されることなく伝搬されたLED光とが混
色されて出力され,その結果,発光ダイオード200は,発光素子102が発生す
るLED光とは波長の異なる光も出力する(【0036】)。
2取消事由1(訂正の適否に関する判断の誤り)について
(1)改正前特許法126条3項適合性について
原告は,本件明細書には,「組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体
を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」について,「Y,Lu,
Sc,La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」と「A
l,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」のうち,「Lu,
Sc,La」と「In」を含むことは記載されていないとして,審決の訂正事項a
についての判断に誤りがあると主張する。そこで,訂正事項aの適否について検討
する。
ア本件明細書(甲49の3)には,以下の記載がある。
「【0044】
実施の形態1.
本願発明に係る実施の形態1の発光ダイオードは,発光層に・・・青色系の発光
が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子と,黄色系の発光が可能なフォトルミネ
センス蛍光体である,セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍
光体とを組み合わせたものである。これによって,この実施形態1の発光ダイオー
ドにおいて,発光素子・・・からの青色系の発光と,その発光によって励起された
フォトルミネセンス蛍光体からの黄色系の発光光との混色により白色系の発光が可
能になる。
【0045】
また,この実施形態1の発光ダイオードに用いた,セリウムで付活されたガーネ
ット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候性を有するので,発光素子・・・
から放出された可視光域における高エネルギー光を長時間その近傍で高輝度に照射
した場合であっても発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない白色光が発光
できる。
【0046】
以下,本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。
(フォトルミネセンス蛍光体)
本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は,半導
体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて,励起した光と異なる波長を
有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセ
ンス蛍光体として,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少なくと
も1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含
み,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では,該蛍光体とし
て,YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネッ
ト系蛍光体,又は,一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce(但
し,0≦r<1,0≦s≦1,Reは,Y,Gdから選択される少なくとも一種)
であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用
いた発光素子が発光するLED光と,ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセ
ンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合,LED光と,蛍光光とを混色
して出力することにより,全体として白色系の光を出力することができる。」
「【0048】
このフォトルミネセンス蛍光体の含有分布は,混色性や耐久性にも影響する。例
えば,フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表
面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合
は,外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止
することができる。他方,フォトルミネセンス蛍光体を,発光素子からモールド部
材等の表面側に向かって分布濃度が高くなるように分布させると,外部環境からの
水分の影響を受けやすいが発光素子からの発熱,照射強度などの影響をより少なく
でき,フォトルミネセンス蛍光体の劣化を抑制することができる。このような,フ
ォトルミネセンス蛍光体の分布は,フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材,形
成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整することに
よって種々の分布を実現することができ,発光ダイオードの使用条件などを考慮し
て分布状態が設定される。」
「【0079】
発明の実施2.
本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは,発光素子として発光層に・・・
窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い,フォトルミネセンス蛍光体として,互
いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体,好ましくはセリウムで
付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用い
る。これにより実施の形態2の発光ダイオードは,発光素子によって発光されるL
ED光の発光波長が,製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも,2種類以
上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を持った発光ダイオードを
作製できる。・・・
蛍光体に関して言うと,フォトルミネセンス蛍光体として,一般式(Re1-rS
mr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用
いることもできる。但し,0<r≦1,0≦s≦1,Reは,Y,Gd,Laから
選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域に
おける高エネルギーを有する光が長時間高輝度に照射された場合や種々の外部環境
の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので,発光色の色ずれや発光輝度
の低下が極めて少なく,かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構
成できる。
【0080】
(実施の形態2のフォトルミネセンス蛍光体)
実施の形態2の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体について
詳細に説明する。実施の形態2においては,上述したように,フォトルミネセンス
蛍光体として組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス
蛍光体を使用した以外は,実施の形態1と同様に構成され,蛍光体の使用方法は実
施の形態と同様である。
【0081】
また,実施形態1と同様に,フォトルミネセンス蛍光体の分布を種々変える(発
光素子から離れるに従い濃度勾配をつける等)ことによって耐候性の強い特性を発
光ダイオードに持たせることができる。このような分布はフォトルミネセンス蛍光
体を含有する部材,形成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布
などを調整することによって種々調整することができる。
したがって,実施形態2では,使用条件などに対応させて,蛍光体の分布濃度が
設定される。・・・」
「【0127】
(実施例10)
実施例10の発光ダイオードは,リードタイプの発光ダイオードである。
実施例10の発光ダイオードでは・・・450nmのIn0.05Ga0.95Nの発光
層を有する発光素子を用いた。そして,銀メッキした銅製のマウントリードの先端
のカップに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングし,発光素子の各電極とマ
ウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ金線でワイヤーボンディングし
電気的に導通させた。
【0128】
一方,フォトルミネセンス蛍光体は,一般式Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:C
eで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y0.2Gd0.8)3Al5O
12:Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体とをそれぞれ以下のようにし
て作製して混合して用いた。すなわち,必要なY,Gd,Ceの希土類元素を化学
量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸
化物と,酸化アルミニウム,酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。こ
れにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め,空気中140
0℃の温度範囲で3時間焼成してそれぞれ焼成品を得た。焼成品を水中でボールミ
ルして,洗浄,分離,乾燥,最後に篩を通して所定の粒度の第1と第2の蛍光体を
作製した。
【0129】
以上のようにして作製された第1の蛍光体及び第2の蛍光体それぞれ40重量部
を,エポキシ樹脂100重量部に混合してスラリーとし,このスラリーを発光素子
が配置されたマウント・リード上のカップ内に注入した。注入後,注入されたフォ
トルミネセンス蛍光体を含有する樹脂を130℃1時間で硬化させた。こうして発
光素子上に厚さ120μのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部
材を形成した。なお,このコーティング部材は,発光素子に近いほどフォトルミネ
センス蛍光体の量が徐々に多くなるように形成した。その後,さらに発光素子やフ
ォトルミネセンス蛍光体を外部応力,水分及び塵芥などから保護する目的でモール
ド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。モールド部材は,砲弾型の型枠の中
にフォトルミネセンス蛍光体のコーティング部が形成されたリードフレームを挿入
し透光性エポシキ樹脂を混入後,150℃5時間にて硬化させて形成した。このよ
うにして作製された実施例10の発光ダイオードは,発光観測正面から視認すると
フォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されて
いた。」
イ実施の形態1のフォトルミネセンス蛍光体材料について
上記アによれば,本件明細書には,実施の形態1の発光ダイオードに用いられる
フォトルミネセンス蛍光体として,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択
された少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1
つの元素とを含み,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」(【0046】)が記
載されている。上記記載の他に,実施の形態1に用いられるフォトルミネセンス蛍
光体として,「一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce(但し,0
≦r<1,0≦s≦1,Reは,Y,Gdから選択される少なくとも一種)であら
わされる蛍光体を用いることが好ましい。」(【0046】)との記載があるものの,
この記載は,好ましい例をいうにとどまるものであるから,上記一般式に含まれな
いLu,Sc,La及びInをフォトルミネセンス蛍光体の構成元素から除外する
趣旨のものではないと認められる。
また,本件明細書の段落【0048】には,実施の形態1における「外部環境か
らの水分などの影響をより受けにくくでき,水分による劣化を防止することができ
る」フォトルミネセンス蛍光体の含有分布として,「フォトルミネセンス蛍光体が含
有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトル
ミネセンス蛍光体の分布濃度を高く」することが記載されている。
ウ実施の形態2のフォトルミネセンス蛍光体材料について
上記アによれば,本件明細書には,実施の形態2の発光ダイオードに用いられる
フォトルミネセンス蛍光体について,「互いに組成の異なる2種類以上のフォトル
ミネセンス蛍光体,好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・
ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる」こと(【0079】),「組成の異なる2
種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は,実
施の形態1と同様に構成され」ること(【0080】)が記載されているから,上記
イの実施の形態1のフォトルミネセンス蛍光体材料を考慮すると,本件明細書には,
実施の形態2で用いられるフォトルミネセンス蛍光体として,Y,Lu,Sc,L
a,Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInか
ら選択された少なくとも1つの元素とを含み,セリウムで付活され,互いに組成の
異なる2種類以上のガーネット系蛍光体が記載されているものと認められる。
他方で,本件明細書には,実施の形態2で用いられるフォトルミネセンス蛍光体
として,上記記載の他に,「一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:C
eで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し,0<r≦
1,0≦s≦1,Reは,Y,Gd,Laから選択される少なくとも一種である。」
(【0079】)との記載があるものの,この記載は,単に例示にとどまるものであ
るから,上記一般式に含まれないLu,Sc及びInをフォトルミネセンス蛍光体
の構成元素から除外する趣旨のものではないと認められる。また,同様に,本件明
細書には,実施の形態2の実施例である実施例10で用いられるフォトルミネセン
ス蛍光体として,一般式Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceで表される緑色系が
発光可能な第1の蛍光体と,一般式(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ceで表され
る赤色系が発光可能な第2の蛍光体が記載されているものの(【0128】),この記
載は,単に一実施例をいうにとどまるものであるから,上記一般式に含まれないL
u,Sc,La及びInをフォトルミネセンス蛍光体の構成元素から除外する趣旨
のものではないと認められる。
また,上記アによれば,本件明細書には,実施の形態2のフォトルミネセンス蛍
光体の分布に関し,「実施形態1と同様に,フォトルミネセンス蛍光体の分布を種々
変える(発光素子から離れるに従い濃度勾配をつける等)ことによって耐候性の強
い特性を発光ダイオードに持たせることができる。」(【0081】)と記載されてお
り,また,実施の形態2の実施例である実施例10に関しては,「発光素子上に・・・
フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部材を形成した。なお,この
コーティング部材は,発光素子に近いほどフォトルミネセンス蛍光体の量が徐々に
多くなるように形成した。」(【0129】)と記載されている。
エ以上によれば,本件明細書には,実施の形態2で用いられるフォトルミネセ
ンス蛍光体として,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少なくと
も1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含
み,セリウムで付活され,互いに組成の異なる2種類以上のガーネット系蛍光体が
記載されているものと認められる。また,互いに異なる2種類以上の蛍光体であっ
たとしても,それぞれについて,コーティング部の表面側から発光素子に向かって
フォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くすることが記載されているものと認め
られる。
したがって,訂正事項aに係る訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内の訂
正であり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しないとした
審決の判断に誤りはない。
オ原告の主張について
(ア)実施の形態1について
原告は,本件明細書の段落【0046】には,フォトルミネセンス蛍光体が「1
種類」の実施形態が記載されているにすぎない旨主張する。
しかし,上記エのとおり,本件明細書には,実施の形態2の発光ダイオードに用
いられるフォトルミネセンス蛍光体について,「組成の異なる2種類以上のセリウ
ムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は,実施の形態1と同様
に構成され」ること(【0080】)が記載されているから,本件明細書には,実施
の形態2で用いられるフォトルミネセンス蛍光体として,実施の形態1と同様に,
Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と,A
l,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み,セリウムで付活
され,互いに組成の異なる2種類以上のガーネット系蛍光体を用いることが記載さ
れているものと認められる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
また,原告は,本件明細書の段落【0064】には,組成の異なる2種類以上の
フォトルミネセンス蛍光体を組み合わせることが記載されているものの,上記組成
のフォトルミネセンス蛍光体には,本件訂正発明の構成元素のうち,「Lu,Sc,
La」と「In」が含まれていない旨主張する。
しかし,上記段落【0064】の記載は,単なる例示にとどまるものであって,
(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3Al5O12フォトルミネセンス蛍光体に含まれな
いLu,Sc,La及びGa,Inをフォトルミネセンス蛍光体の構成元素から除
外する趣旨のものではないことは前記認定のとおりである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ)実施の形態2について
原告は,本件明細書の段落【0079】,【0084】の記載から明らかなように,
実施の形態2で用いられるフォトルミネセンス蛍光体は,「Y,Gd,La及びSm」
と「Al及びGa」のみであるし,段落【0079】,【0080】には,非常に抽
象的で広い範囲の蛍光体を示す,「フォトルミネセンス蛍光体」や「セリウムで付活
されたフォトルミネセンス蛍光体」が記載されているにすぎず,(Re1-rSmr)
3(Al1-SGaS)5O12:Ce等以外の「Lu,Sc,La」と「In」を含むこ
とは一切記載も示唆もされていない旨主張する。
しかし,前記エのとおり,本件明細書の段落【0079】の記載は,単なる例示
にとどまるものであって,上記一般式(Re1-rSmr)3(Al1-SGaS)5O12:
Ce(0<r≦1,0≦s≦1,Reは,Y,Gd,Laから選択される少なくと
も一種)に含まれないLu,Sc及びInをフォトルミネセンス蛍光体の構成元素
から除外する趣旨のものではなく,製造方法が記載された段落【0084】につい
ても同様に,Lu,Sc及びInをフォトルミネセンス蛍光体の構成元素から除外
する趣旨のものではない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)本件明細書の段落【0011】の記載について
原告は,本件明細書には,「Lu,Sc,La」及び「In」の元素が組み合わさ
れたガーネット系蛍光体について,段落【0011】に記載された要件を満たすか
どうかについて,何も記載されておらず,段落【0138】には,Y3In5O12:
Ce蛍光体を用いると輝度が低いことが記載されているのであるから,本件訂正発
明が,上記の段落【0011】の「高輝度の発光が可能」という要件を満たしてい
ないことが明らかである旨主張する。
そこで,検討するに,本件明細書の段落【0011】の記載は以下のとおりであ
る。
「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは,この目的を達成するために,発光素子と蛍光体とを備えた発光装
置において
(1)発光素子としては,高輝度の発光が可能で,かつその発光特性が長期間の使
用に対して安定していること,
(2)蛍光体としては,上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて,該発光素
子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても,特性変化の少ない耐
光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光
体は,我々の検討によると太陽光に比較して約30倍~40倍に及ぶ強度を有する
光にさらされるので,発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程,蛍光
体に要求される耐光性は厳しくなる),
(3)発光素子と蛍光体との関係としては,蛍光体が発光素子からのスペクトル
幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波
長が発光可能であること,が必要であると考え,鋭意検討した結果,本発明を完成
させた。」
a上記(1)の要件は,発光素子が満たすべき要件であり,フォトルミネセンス蛍
光体が満たすべき要件ではない。
b本件明細書に,「実施形態1の発光ダイオードに用いた,セリウムで付活され
たガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候性を有するので,発
光素子・・・から放出された可視光域における高エネルギー光を長時間その近傍で
高輝度に照射した場合であっても発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない
白色光が発光できる。」(【0045】),「実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は,
発光素子102,202と接したり,あるいは近接して配置され,照射強度(Ee)
として,3W・cm-2
以上10W・cm-2
以下においても高効率でかつ十分な耐光
性を有するので,該蛍光体を用いることにより,優れた発光特性の発光ダイオード
を構成することができる」(【0049】)と記載されており(実施の形態2において
も,同じフォトルミネッセンス蛍光体を用いることができる。),これらの記載は,
「Lu,Sc,La」及び「In」の元素が組み合わされた実施の形態1,2のガ
ーネット系蛍光体についての説明でもあると解されるから,これらのガーネット系
蛍光体も上記(2)の要件を満たすものと認められる。
c上記(3)の要件については,本件明細書に,「実施形態1,2の発光ダイオー
ドは,図1又は図2に示す構造を有する発光ダイオードにおいて,可視光域におけ
る光エネルギーが比較的高い窒化物系化合物半導体を用いた発光素子と,特定のフ
ォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたことを特徴とし,これによって,高輝
度の発光を可能にし,長時間の使用に対して発光効率の低下や色ずれが少ないとい
う良好な特性を有する。」(【0038】),「本願発明の発光ダイオードに用いられる
発光素子は,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体を効率よく励起できる窒化
ガリウム系化合物半導体である。」(【0065】)と記載されているから,実施の形
態1,2の発光素子とフォトルミネセンス蛍光体が上記要件を満たすことも明らか
である。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(エ)原告は,被告は,本件特許の親出願を含む複数のファミリー出願にかかる特
許において,登録時には「Lu,Sc,La」が含まれるクレームだったものを,
その後,訂正により,「Lu,Sc,La」を請求項から削除しており(甲60~6
5),これは,これらの特許権者でもある被告が,本件特許の元の明細書には,「L
u,Sc,La」という元素の組合せによるガーネット系蛍光体によっては発明の
効果が達成し得ないと認識していたからにほかならない旨主張する。
しかし,被告によって複数のファミリー出願に係る特許の訂正が行われたとして
も,その理由は明らかではなく,上記のような訂正がされたことをもって直ちに,
被告が「Lu,Sc,La」という元素の組合せによるガーネット系蛍光体によっ
ては発明の効果が達成し得ないと認識していたと認めることはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(2)通常実施権者の承諾について
原告は,本件特許を含む被告保有の知的財産権について,被告は,●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●に対し,
通常実施権を許諾しているところ,本件訂正について,上記各社から承諾(特許法
134条の2第5項で準用する同法127条)を得ていないから,本件訂正は認め
られない旨主張する。これに対し,被告は,ライセンスの内容について秘密保持義
務を負っているから,その内容について明らかにすることはできないと主張する。
そこで,検討するに,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●
以上の事実によれば,被告との間で,提携,クロスライセンス及び和解等をした
企業は,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であると認められる。
そして,証拠(乙9,10)及び弁論の全趣旨によれば,●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●について,本件特許に
ついて,最初の訂正審判請求(甲49の1)がされた平成24年12月17日より
も前に,被告が保有する特許の訂正に関して包括的な承諾を得ていたものと認めら
れる。また,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●についても,被告が保有する特許の訂正に関して包括的な承諾を得て
いたものと認められる。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●
原告は,事実実験公正証書(乙10)において,●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●については,いずれも代
表取締役等代表権を有する者の記名押印はなく,訂正に関する承諾権限があること
の立証はない旨主張する。しかし,本件訂正のような特許請求の範囲を減縮する訂
正は,特許権者が特許の無効理由を避けるために,その必要に応じてなすのが通例
であり,訂正の内容は,特許の専門的,技術的事項に関するものが多く,これを承
諾するか否かは,各社の代表取締役等の代表権者が知的財産部長等に委任してその
判断に委ねるのが合理的であり,通例であると解されるところである。そして,上
記事実実験公正証書は,上記各社が訂正に関し承諾したことを上記各社の知的財産
部長等の担当者が確認した旨をその内容とするものであるから,これによれば,上
記各社とも,その知的財産担当部長等の担当者が訂正に関する承諾という事項につ
いて,その代表者から委任を受けており,その上でこれを承諾したと推認するのが
合理的であり,これらの者が各社代表取締役等の代表権を有する者でなかったとし
ても,それによって上記各社が訂正に関し承諾したとの認定が左右されるものでは
ない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
また,本件特許が●●●●の契約の対象になっているか否かは明らかではないと
いわざるを得ないものの,本件特許は,白色LEDを実現するために重要な技術的
意義を有するものと認められ(弁論の全趣旨),これを対象から除外して契約を行う
ことは考えにくい(合理的根拠はない。)ものと認められるから,本件特許が,原告
が主張するように●●●●の契約の対象となっているものと推認することができる。
そして,●●●●の各承諾は,いかなる訂正を目的とするかまで明確にした承諾で
あるということはできないものの,いずれも訂正審判を請求することを承諾すると
いう趣旨でなされたものと解される。
以上によれば,被告は,本件特許の訂正について,●●●●から特許法127条
の承諾を得ていたものと認められる。
(3)以上によれば,原告の主張する取消事由1は理由がない。
3取消事由2(分割要件に関する判断の誤り)について
原告は,原出願明細書の段落【0078】ないし【0080】,【0082】ない
し【0083】の記載によれば,原出願明細書の実施の形態2で用いられるフォト
ルミネセンス蛍光体は,「Y,Gd,La及びSm」と「Al及びGa」のみであり,
「組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合にお
ける「フォトルミネセンス蛍光体」について,「Y,Lu,Sc,La,Gd及びS
mからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」と「Al,Ga及びInからな
る群から選ばれる少なくとも1つの元素」のうち,「Lu,Sc」と「In」は含ま
れていないから,原出願明細書に記載されていない特定をする本件特許(分割出願)
は,分割要件に反するものである旨主張する。
そこで,本件出願(分割出願)の適法性について検討するに,原出願明細書(甲
16)の段落【0044】ないし【0046】,【0048】,【0079】ないし【0
081】,【0127】ないし【0129】には,それぞれ,前記1(1)アのとおり,
本件明細書の段落【0044】ないし【0046】,【0048】,【0079】ない
し【0081】,【0127】ないし【0129】と同一の記載がある。
そうすると,前記1(1)のとおり,原出願明細書には,実施の形態2で用いられる
フォトルミネセンス蛍光体として,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択
された少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1
つの元素とを含み,セリウムで付活され,互いに組成の異なる2種類以上のガーネ
ット系蛍光体が記載されているものと認められる。
したがって,本件訂正発明は,原出願明細書に包含された発明であり,本件特許
は,特許法44条1項所定の要件を満たす適法な分割出願であると認められるとし
た審決の判断に誤りはなく,原告の上記主張は採用することができない。
以上によれば,原告の主張する取消事由2は理由がない。
4取消事由3(特許法36条6項1号(サポート要件)及び同条4項1号(実
施可能要件)に関する判断の誤り)について
(1)サポート要件について
ア本件訂正明細書の段落【0044】ないし【0046】,【0048】,【00
79】ないし【0081】,【0127】ないし【0129】の記載は,いずれも,
前記2(1)アのとおり,本件明細書の記載と同一である。
したがって,前記2(1)のとおり,本件訂正明細書には,実施の形態2で用いられ
るフォトルミネセンス蛍光体として,Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選
択された少なくとも1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも
1つの元素とを含み,セリウムで付活され,互いに組成の異なる2種類以上のガー
ネット系蛍光体が記載されているものと認められ,また,コーティング部の表面側
から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くすることも記
載されているものと認められる。
イ本件訂正発明の解決しようとする課題は,「より高輝度で,長時間の使用環境
下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供
すること」(【0010】)であるところ,本件訂正明細書には,「実施形態1,2の
発光ダイオードは・・・高輝度の発光を可能にし,長時間の使用に対して発光効率
の低下や色ずれが少ない」(【0038】),「実施形態1の発光ダイオードに用いた,
セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候
性を有するので・・・発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない白色光が発
光できる。」(【0045】),「実施形態2に用いられるセリウムで付活されたイット
リウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)は,実施形態1と
同様,ガーネット構造を有するので,熱,光及び水分に強い。」(【0083】)と記
載されているのであるから,上記アのフォトルミネセンス蛍光体を用いた場合に,
本件訂正発明の課題が解決できることは,当業者にとって明らかであるといえる。
ウ以上のとおり,本件訂正発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであっ
て,サポート要件を満たしているから,その旨の審決の判断に誤りはない。
(2)実施可能要件について
ア本件訂正明細書には,実施の形態1におけるフォトルミネセンス蛍光体の作
製方法として,「このようなフォトルミネセンス蛍光体は,Y,Gd,Ce,Sm,
Al及びGaの原料として酸化物,又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し,
それらを所定の化学量論比で十分に混合して混合原料を作製し,作製された混合原
料に,フラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰
め,空気中1350~1450℃の温度範囲で2~5時間焼成して焼成品を得,次
に焼成品を水中でポールミルして,洗浄,分離,乾燥,最後に篩を通すことにより
作製できる。」(【0057】),「上述の作製方法において,混合原料は,Y,Gd,
Ce,Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したもの
を焼成して得られる共沈酸化物と,酸化アルミニウム,酸化ガリウムとを混合する
ことにより作製してもよい。」(【0058】)と記載されており,実施の形態2にお
けるフォトルミネセンス蛍光体の作製方法として,「Y,Gd,Ce,La,Al,
Sm及びGaの原料として酸化物,又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し,
それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は,Y,Gd,Ce,La,
Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成
して得られる共沈酸化物と,酸化アルミニウム,酸化ガリウムとを混合して混合原
料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合し
て坩堝に詰め,空気中1350~1450℃の温度範囲で2~5時間焼成して焼成
品を得,次に焼成品を水中でボールミルして,洗浄,分離,乾燥,最後に篩を通す
ことで得ることができる。」(【0084】)と記載されている。
本件訂正明細書の上記記載には,フォトルミネセンス蛍光体の構成元素がLu,
Sc,Inである場合が含まれていないものの,Lu,Scは,Y,Gd,Ce,
La,Smと同様,希土類元素であり,Inは,Al,Gaと同様,第13族元素
でありその酸化物である酸化インジウムも知られているから(上記各構成元素を同
等に扱うことができないとする事情はない。),本件訂正明細書の上記記載に接した
当業者であれば,構成元素がLu,Sc,Inである場合にも,同様にして,フォ
トルミネセンス蛍光体を作製できるものと認められる。
イまた,本件訂正明細書には,実施形態1におけるフォトルミネセンス蛍光体
の濃度分布について,「フォトルミネセンス蛍光体の分布は,フォトルミネセンス蛍
光体を含有する部材,形成温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分
布などを調整することによって種々の分布を実現することができ,発光ダイオード
の使用条件などを考慮して分布状態が設定される。」(【0048】)と記載されてお
り,実施形態2についても,「実施形態1と同様に,フォトルミネセンス蛍光体の分
布を種々変える・・・ことによって耐候性の強い特性を発光ダイオードに持たせる
ことができる。このような分布はフォトルミネセンス蛍光体を含有する部材,形成
温度,粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状,粒度分布などを調整することによ
って種々調整することができる。」(【0081】)と記載されているから,フォトル
ミネセンス蛍光体の構成元素がLu,Sc,Inである場合にも,上記の濃度分布
の調整方法を適用できることは,当業者にとって明らかであると認められる。
ウしたがって,フォトルミネセンス蛍光体の構成元素がLu,Sc,Inであ
る場合も含め,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件訂正発明を実施すること
ができる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められるから,その旨の審
決の判断に誤りはない。
(3)原告の主張について
原告は,被告が,2種類の蛍光体がどちらも「YAG:Ce」となる場合であっ
ても,賦活剤であるCeの量を変化させることで発光色の異なる2種類の蛍光体を
得ることができると主張していることを前提に,本件訂正明細書の記載によると,
Ceの濃度の変化によって変化させることができるのは,発光「輝度」であり,発
光「色」自体を変化させることができることは記載されていないし,本件訂正発明
の「組成の異なる」に「Ceの濃度を変化させること」が含まれるとも一切記載さ
れていないから,Ceの濃度変化により,発光色を変化させることが,本件訂正発
明の組成の異なる「2種類の蛍光体」に含まれるということであれば,これらは本
件訂正明細書によってサポートされていないこととなるから,サポート要件違反が
あることになる旨主張する。
しかし,YAG系の蛍光体において,賦活剤であるCeの量を変化させることで
発光色が変化するものと認められるから(乙1),発明の詳細な説明の記載は,当業
者において本件訂正発明の課題が解決されるものと認識することができる程度のも
のであると認められる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
5取消事由4(本件訂正発明と基礎出願に記載された発明との共通部分の存否
についての判断の誤り)について
原告は,審決は,本件訂正発明と基礎出願に記載された発明との共通部分の存否
についての認定判断を誤っている旨主張する。しかし,審決は,優先権主張を認め
ながらも,念のため,甲25発明あるいは甲26発明を主引例とする,本件訂正発
明の新規性,進歩性についても判断しているため,まず,取消事由5及び6につい
て判断する。
6取消事由5(本件訂正発明と甲25発明の相違点の認定,判断の誤り)につ
いて
(1)甲25発明の内容等
ア甲25文献の記載
甲25文献(甲25)には,次のとおりの記載がある(図面は別紙甲25文献図
面等目録参照)。
(ア)「1.はじめに・・・
我々はLEDをより豊かな光源とするためにその色表現力を追求し,LEDと蛍
光体を組み合わせることで,従来にない高輝度の白色LEDを開発,製品化したの
で報告する。」(5頁下3行~末行)
(イ)「3.白色LEDの製法
今回開発した白色LEDの製作プロセスを図1に示す。LEDチップとしては,
InGaN系の青色SQW-LEDを用いた。また蛍光体は,Y2O3,Al2O3,
Gd2O3,Ga3O3,CeO2の原料粉末を所定量ずつ混合したものを,1400℃
程度の高温で焼成し,乾燥,分級などの処理をして合成した。ランプの組立の際,
リードフレームのカップ底面にマウントしたLEDチップに対し,蛍光体を表面に
薄くコーティングした。さらにチップを外部環境から保護するために集光レンズを
兼ねたエポキシ樹脂で周囲を封止した。」(6頁11~19行)
(ウ)「4.基本特性の評価
4.1白色LEDの構造
図2に今回作成した白色LEDの構造図を示す。基本的な構造についてはInG
aNを使った青色LEDランプと同じであるが,蛍光体をLEDチップ表面に薄く
塗布している点が大きく異なっている。
LEDから放出された光は,蛍光体層の中に入射して層内で何回かの吸収と散乱
を繰り返した後,外部へ取り出される。LEDの発光は・・・465nmをピーク
とする青色光であり半値幅30nmの非常に鋭いスペクトルをもっている。この青
色光の一部は散乱を繰り返す内に蛍光体に吸収され,蛍光体から淡黄緑色の蛍光(f
uorescence)が発せられる。放出された蛍光もやはり蛍光体層の中で吸収と散乱を
受けながら外部へ取り出される。結局最終的に外部へ取り出される光は,LEDの
青色光と淡黄緑色の蛍光を足し合わせた・・・スペクトルになる。」(6頁20行~
7頁4行)
(エ)「4.2蛍光体の評価
今回白色LEDに使用した蛍光体は(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの
組成式で表され・・・る。・・・母体材料は,一般にYAG(ヤグ)として知られる
Y3Al5O12(イットリウムアルミニウムガーネット)のYサイト,Alサイトの
一部をGd,Gaでそれぞれ置換したもので,ガーネット構造の非常に安定な酸化
物である。・・・
表2は今回実験に使用した蛍光体の一覧である。輝度や効率については,置換量
=0のY3A15O12:Ceの値を100として規格化した。表2の①~⑥に対応す
る蛍光体について,青色LEDの発光波長に相当する460nmの光で励起した時
の発光スペクトルを図6に示す。図から,Y3Al5O12のAlをGaで置換すると
短波長側へ(②,③),YをGdで置換すると長波長側へ(④,⑤,⑥)へ,置換量
に応じて連続的に発光波長が移動することがわかる。」(8頁8~22行)
(オ)「4.3白色LEDの評価
表2の①~⑦に対応する蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDを組み合わ
せてできる白色LEDの色再現範囲を図8に示す。白色LEDの発光色は,青色L
ED起源の色度点と蛍光体起源の色度点を結ぶ直線上に位置するので,①~⑦の蛍
光体を使用することで色度図中央の広範な白色領域をすべてカバーすることができ
る。図9は,LEDチップ上に塗布する蛍光体のコーティング量を変えてLEDの
発光色変化を調べたものである。予想された通りコーティング分散量を増やすと蛍
光体の発光色へ,逆に減らすと青色LEDの発光色へと近づいていった。」(11頁
1~9行)
イ甲25発明の特徴
上記アによれば,甲25発明の特徴は,次のとおりである。
甲25発明は,LEDと蛍光体を組み合わせることで開発,製品化された高輝度
の白色LEDであって,LEDをより豊かな光源とするためにその色表現力を追求
したものである(ア(ア))。
甲25発明は,リードフレームのカップ底面にLEDチップをマウントし,蛍光
体を樹脂に分散し,LEDチップの表面に薄くコーティングし,チップを外部環境
から保護するために集光レンズを兼ねたエポキシ樹脂で周囲を封止した白色LED
であって,前記LEDチップは,InGaN系の青色SQW-LEDであり(ア(イ),
図1,2),蛍光体は,(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの組成式で表され,
Y3Al5012のAlをGaで置換すると短波長側へ(②,③),YをGdで置換す
ると長波長側へ(④,⑤,⑥),置換量に応じて連続的に発光波長が移動し(ア(エ),
表2,図6),前記LEDの発光は,465nmをピークとする青色光であり,この
青色光の一部は散乱を繰り返す内に蛍光体に吸収され,蛍光体から淡黄緑色の蛍光
が発せられ,LEDの青色光と淡黄緑色の蛍光を足し合わせた光が外部へ取り出さ
れる(ア(ウ)),白色LEDである。
ウ甲25発明の認定
甲25発明の要旨は,前記第2,4(2)アのとおりであると認められる。
(2)本件訂正発明と甲25発明との一致点及び相違点の認定
審決が認定した本件訂正発明と甲25発明の一致点及び相違点は,前記第2,4
(2)イ,ウのとおりであるのに対し,原告は,審決が認定した相違点はいずれも相違
点ではない旨主張するので,以下,相違点の認定について検討する。
ア相違点1について
(ア)審決が認定した本件訂正発明と甲25発明の相違点1は,本件訂正発明は,
「前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,前記コーティン
グ樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなって」いるのに対し,甲2
5発明は,LEDチップの表面にコーティングする樹脂に蛍光体を分散しているも
のの,蛍光体の濃度がLEDチップに向かって高くなるものか否か明らかでない点
である。
(イ)甲25文献には,蛍光体の塗布(コーティング)に関し,「リードフレーム
のカップ底面にマウントしたLEDチップに対し,蛍光体を表面に薄くコーティン
グした。」((1)ア(イ)),「蛍光体をLEDチップ表面に薄く塗布している」((1)ア(ウ))
及び「図9は,LEDチップ上に塗布する蛍光体のコーティング量を変えてLED
の発光色変化を調べたものである。」((1)ア(オ))との記載があり,「図1.白色LE
Dの製作プロセス」には,「YAG蛍光体」を「樹脂に分散」したものを「蛍光体コ
ーティング」することが矢印を用いて表されている。
甲25文献の図1の上記記載を考慮すると,甲25発明においては,樹脂に分散
させない粉末状の蛍光体をLEDチップ表面に塗布(コーティング)するのではな
く,蛍光体を分散させた樹脂をLEDチップ表面に塗布(コーティング)している
ことが認められる。甲25文献には,完成後の白色LEDにおいて,蛍光体を樹脂
中にどのような濃度分布で分散させるのかについての記載はないところ,樹脂中の
蛍光体の濃度分布は,樹脂の種類,粘度,硬化条件,蛍光体の粒径等の条件によっ
て変化するものであるから,蛍光体の比重が樹脂よりも大きいとしても,それのみ
をもって直ちに,蛍光体の濃度が樹脂の表面側からLEDチップに向かって高くな
るということはできないし,当業者にとって,このような蛍光体の濃度分布が技術
常識であったということもできない。
以上によれば,甲25発明が,相違点1に係る本件訂正発明の構成を備えている
ということはできないから,相違点1は実質的な相違点であって,審決の判断に誤
りはない。
イ相違点2について
(ア)審決が認定した本件訂正発明と甲25発明の相違点2は,Y,Lu,Sc,
La,Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり,
かつ,Al,Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んで
なるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体が,本件訂正発明で
は,「互いに組成の異なる2種類以上」であるのに対し,甲25発明では,そのよう
に特定されるものか否か明らかではない点である。
(イ)甲25文献には,組成式が(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの蛍光
体として,組成の異なる7種類の蛍光体が記載されており(①~⑦,表2),これら
蛍光体の種類の選択と含有量の増減によって,図8の色度図中央にある扇形の白色
領域の発光色を実現できることが記載されているところ((1)ア(オ),図8,9),
上記記載は,①~⑦の蛍光体のいずれか1種類を選択し,その含有量を増減するこ
とで,青色LED起源の色度点と当該蛍光体起源の色度点を結ぶ直線上の任意の色
度点を実現でき(直線上の色度点は,蛍光体の含有量を増やせば蛍光体起源の色度
点に近づき,蛍光体の含有量を減らせば青色LED起源の色度点に近づく。),選択
する蛍光体の範囲を①~⑦とすることによって,上記直線が選択した蛍光体に応じ
て異なったものとなって,上記扇形の白色領域の色度点を実現できることを意味す
るものであると解される。そして,上記直線が,青色LED起源の色度点と①~⑦
のいずれか1種類の蛍光体起源の色度点を結ぶことで形成されるものであることを
踏まえれば,甲25文献の上記記載において,蛍光体として①~⑦のいずれか1種
類を選択することを前提にしていることは,当業者にとって明らかであると認めら
れる。甲25文献には,その他,組成の異なる複数種類の蛍光体を樹脂に分散して
用いることは記載も示唆もされていない。
したがって,甲25発明が,相違点2に係る本件訂正発明の構成を備えていると
いうことはできないから,相違点2は実質的な相違点であって,審決の判断に誤り
はない。
ウ原告の主張について
(ア)相違点1について
a原告は,甲12文献に記載されているとおり,蛍光体を発光部分に集中して
接近させる必要があるということが技術常識であったことから,蛍光体を発光ダイ
オード付近に集中させる必要があることは明らかであり,甲25文献における「薄
く塗布」という記載から,蛍光体がチップ表面にあるということは明らかである旨
主張する。
しかし,甲12文献には,赤外発光性の発光ダイオードの発光部分に,赤外線の
励起によって可視光を発する蛍光体を塗布した可視発光性の発光素子を形成する際
に,少量の蛍光体を発光部分に集中し接近させて塗布する必要があるところ,従来
の刷毛塗りあるいは沈降法などの方法では,発光部分の小さい表面上に発光部分か
らの赤外線の全反射をさけて効率良く可視発光を取り出すための均一なドーム状の
蛍光体塗膜を再現性良く得ることは非常に困難であったため,この問題を解決する
ための方法が記載されている。具体的には,発光ダイオード素子の発光部分を有す
る端面に,蛍光体粉末および分散媒を付着させ(第1図(a)~(c)),次いで上
記発光部分が下方に位置する様に上記発光ダイオード素子を倒立して保持し,その
下端に懸垂して付着している上記分散媒の液滴中で上記蛍光体粉末が下方に集中し
て沈降した状態で(同(d)),上記分散媒を乾燥させること(同(e))を特徴とす
る方法が記載されている(第1図については,別紙甲12文献図面目録参照)。
甲12文献の記載によれば,第1図(d)の発光ダイオード素子を倒立状態で保
持することで,蛍光体粉末が,ドーム状の分散媒の頂点付近に沈降した状態となり,
この状態で分散媒中の溶剤を気化させることにより,最終的には,同図(e)によ
うに,蛍光体粉末は発光端面を中心とする付近にドーム状になって付着するものと
認められるところ,甲12文献の「均一なドーム状塗膜」,「均一なドーム状のけい
光体塗膜」という記載を考慮すると,発光ダイオード素子完成後の蛍光体粉末は,
分散媒中に均一に分散しているか,そうでないとしても,ドーム状の分散媒の表面
付近の濃度が発光端面付近の濃度よりも高い状態で分散しているものと認められる。
したがって,甲12文献には,蛍光体の濃度が分散媒の表面側から発光ダイオー
ド素子の発光端面に向かって高くなることが記載されているとはいえないし,その
他,蛍光体を発光部分に集中して接近させる必要があるということが技術常識であ
ることを認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであるから,採用すること
ができない。なお,甲12文献において,従来用いられていたとされる刷毛塗り又
は沈降法は,蛍光体粉末の塗布方法として不適当なものとされているから,これら
の方法を用いることを前提とする原告の上記主張は,この点においても採用するこ
とができない。
b原告は,液体(樹脂)と固体(蛍光体)がある場合に,比重が異なれば,固
体が浮く(浮揚)か,沈む(沈降)かのいずれかとなることは明らかであり,無機
蛍光体とエポキシ樹脂では,無機蛍光体の比重が圧倒的に大きいことも技術常識で
ある(甲14,15)から,無機蛍光体が沈降していくことも,本件特許出願前か
ら技術常識であった(甲10),さらに,本件特許の審査過程において出願人たる被
告自身も認めたとおり(甲13),蛍光体が沈殿するのは周知の事実であったから,
YAG蛍光体が樹脂中で沈降することは当然のことであって,このことは,少なく
とも,甲25文献に実質的に記載されているに等しい事項である旨主張する。
しかし,甲25文献には,完成後の白色LEDにおいて,蛍光体を樹脂中にどの
ような濃度分布で分散させるのかについての記載はなく,樹脂中の蛍光体の濃度分
布は,樹脂の種類,粘度,硬化条件,蛍光体の粒径等の条件によって変化するもの
と認められるから,蛍光体の比重が樹脂よりも大きいとしても,それのみをもって
直ちに,蛍光体の濃度が樹脂の表面側からLEDチップに向かって高くなるという
ことはできず,このような蛍光体の濃度分布が当業者の技術常識であったというこ
ともできないのは前記認定のとおりである。
また,本件特許の審査過程における被告が作成した意見書(甲13)には,「本件
出願当時において,発光ダイオードのコーティング樹脂やモールド樹脂には,シリ
コーン樹脂,エポキシ樹脂,ユリア樹脂などの耐候性優れた透明樹脂を使うことが
一般的でしたが,樹脂の種類,粘度,硬化条件は目的に応じて適宜選択することが
常識であり,また,樹脂中にフォトルミネッセンス蛍光体のような樹脂よりも比重
の重い粒子を含有させる場合に,硬化前における樹脂の粘度を低くし,硬化前の保
持時間を長くすれば,粒子が沈降することも当業者にとっては明白な事項でした。」
との記載があることが認められる。しかし,上記記載は,上記意見書全体の記載内
容に照らしても,硬化前の樹脂の粘度や樹脂の硬化条件等の設定によって,蛍光体
の濃度が樹脂の表面側からLEDチップに向かって高くなるようにすることが可能
であることを一般論として主張したものにすぎず,蛍光体の比重が樹脂よりも大き
ければ,蛍光体の濃度が,無条件に樹脂の表面側からLEDチップに向かって高く
なるという趣旨をいうものではないと解される。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであるから,採用すること
ができない。
cなお,前記認定のとおり,甲12文献には,蛍光体の濃度が分散媒の表面側
から発光ダイオード素子の発光端面に向かって高くなることは記載も示唆もされて
いないから,本件特許の対応米国特許の訴訟結果に基づく原告の主張についても採
用することはできない。
(イ)相違点2について
a原告は,甲25文献の図8等の記載を根拠に,甲25文献には,2種類以上
の蛍光体を用いることが開示されているといえる旨主張する。
甲25文献には,図8について,「表2の①~⑦に対応する蛍光体とピーク波長4
65nmの青色LEDを組み合わせてできる白色LEDの色再現範囲を図8に示す。
白色LEDの発光色は,青色LED起源の色度点と蛍光体起源の色度点を結ぶ直線
上に位置するので,①~⑦の蛍光体を使用することで色度図中央の広範な白色領域
をすべてカバーすることができる。」との記載がある。この記載によれば,「①~⑦
の蛍光体を使用することで色度図中央の広範な白色領域をすべてカバーすることが
できる」ことの根拠として,「白色LEDの発光色は,青色LED起源の色度点と蛍
光体起源の色度点を結ぶ直線上に位置する」とされており,「蛍光体起源の色度点」
は,図8の扇形部分の弧の部分にあり,①~⑦の蛍光体に対応する7つの点(○)
を意味するから,「色度図中央の広範な白色領域をすべてカバーすることができる」
という記載は,青色LED起源の色度点と,①~⑦の蛍光体起源の7つの色度点の
それぞれとを結ぶ7本の直線上にある色度点に対応する白色を実現できることを意
味するものと解される。そうすると,「色度図中央の広範な白色領域をすべてカバー
することができる」という記載は,上記7本の直線上の色度点を表すことができれ
ば,実質的に扇形部分の全ての色度点を表すことになるという趣旨で記載されてい
ると認められる。また,甲25文献の図2に「L:蛍光(緑~赤)」との記載がある
としても,この記載により,蛍光体を2種類以上組み合わせることが開示ないし示
唆されているということはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
b原告は,2種類の蛍光体を用いることについて,青色LEDに緑色と赤色の
蛍光体を用いて白色光を生成することは技術常識であったといえる(甲26の1,
27,28)から,審決は,相違点2の容易想到性の判断を誤っている旨主張する。
しかし,甲25発明は,青色LEDと1種類の蛍光体を組み合わせて,甲25文
献の図8の扇形部分の範囲の白色光を発する白色LEDを実現するものであるとこ
ろ,甲25文献には,複数種類の蛍光体を用いることの記載や示唆はなく,甲26
文献等にも,複数種類の蛍光体を用いることで解決できる課題があることは記載な
いし示唆されていないから,甲26文献等を参酌しても,甲25発明において,当
業者が複数種類の蛍光体を用いることを試みるものとは認められない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
7取消事由6(本件訂正発明と甲26発明の相違点の認定判断の誤り)につい

(1)甲26発明の内容等
ア甲26文献には次の記載がある。
(ア)「青色発光GaN/6H-SiCチップを主要光源として用いて緑色,黄色,
赤色及び白色発光LEDを作成した。」(417頁左欄要約欄1~3行)
(イ)「ベースとなっている物理の原理は,有機ルミネセンス色素分子には一般的
なルミネセンスダウンコンバージョン(ストークスシフト)の原理である。無機変
換体であるY3Al5O12:Ce3+
(4f1
)を用いて,白色発光LEDも実現され
ている。」(417頁左欄要約欄4~8行)
(ウ)「窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオードは現在市販されている。例
えば,サファイア(α-Al2O3)基板,λmax=450nmの日亜[1]製SQ
Wダイオードや,炭化ケイ素(6H-SiC)基板,λmax=430nmのCree
[2]製「青色チップ」がある。これらの主要光源を効率的なポンプとして使用し,
後に低エネルギーで光子発光させる有機系及び無機系のルミネセンス材料を励起で
きることを示していく。このようなルミネセンス変換(LUCO)の原理を図1に
示す。今回は,有機色素分子を包含するエポキシ樹脂基体に埋め込まれ,標準的L
ED技術により透明エポキシ樹脂内に封入された反射体カップに接合されたCre
e製LEDチップを使用する。」(417頁左欄下3行~右欄10行)
(エ)「同じ方法で,エポキシ樹脂に緑色及び赤色の発光色素を添加し,白色発光
のLUCO-LEDも作成した。・・・。
当然ながら,青色発光LEDのルミネセンスダウンコンバーションの原理は,有
機系ルミネセンス材料に限られるものではない。LUCOLEDの応用には,広範
囲の無機系蛍光材料を同様に検討すべきである。一例として,Cree製「青色チ
ップ」を主要光源とし,黄色発光Y3Al5O12:Ce3+
(4f1
)変換体を用いて,
白色発光LUCOLEDを実現した・・・。詳細については,他の機会に伝えるこ
ととする。」(418頁左欄1~13行)
イ甲26発明の認定
甲26発明の要旨は,前記第2,4(3)アのとおりであると認められる。
(2)本件訂正発明と甲26発明との一致点及び相違点の認定
審決が認定した本件訂正発明と甲26発明の一致点及び相違点は,前記第2,4
(3)イ,ウのとおりであるのに対し,原告は,審決が認定した相違点3は相違点では
なく,相違点4の容易想到性の判断は誤っている旨主張するので,以下,検討する。
ア相違点3について
(ア)審決が認定した本件訂正発明と甲26発明の相違点3は,コーティング樹
脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が,本件訂正発明では,「前記コーティング
樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなって」いるのに対し,甲26
発明では,そのようになっているのか否か不明な点である。
(イ)甲26文献には,蛍光体の添加に関し,「有機色素分子を包含するエポキシ
樹脂基体」,「エポキシ樹脂に緑色及び赤色の発光色素を添加」との記載があり,図
1に「LUCO」(ルミネセンス変換)として,蛍光体を含有するエポキシ樹脂が記載
されているものの,完成後の白色発光のLUCO-LEDにおいて,蛍光体をエポ
キシ樹脂中にどのような濃度分布で分散させるのかについての記載はなく,樹脂中
の蛍光体の濃度分布は,樹脂の種類,粘度,硬化条件,蛍光体の粒径等の条件によ
って変化するものと認められるから,甲26発明の蛍光体である黄色発色Y3Al5
O12:Ce3+
(4f1
)変換体の比重がエポキシ樹脂よりも大きいとしても,それ
のみをもって直ちに,当該蛍光体の濃度がエポキシ樹脂の表面側からLEDチップ
に向かって高くなるということはできず,当業者にとって,このような蛍光体の濃
度分布が技術常識であったということもできない。
したがって,甲26発明が,相違点3に係る本件訂正発明の構成を備えていると
いうことはできないから,相違点3は実質的な相違点であって,審決の認定に誤り
はない。
イ相違点4について
(ア)本件訂正発明と甲26発明の相違点4は,本件訂正発明では,「前記フォト
ルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上」であるのに対し,甲26発
明では1種類である点である。
(イ)甲26発明は,前記窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオードと蛍光体
である黄色発光Y3Al5O12:Ce3+
(4f1
)変換体を組み合わせた白色発光L
EDであり,甲26文献には,蛍光体として,有機系ルミネセンス材用である緑色
及び赤色の発光色素を添加して白色発光LEDを形成することが記載されているも
のの,無機材料の黄色発光Y3Al5O12:Ce3+
(4f1
)変換体の代わりに,C
eで付活された緑色及び赤色のYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)
系蛍光体を用いることは,記載も示唆もされていない。また,無機材料の蛍光体に
ついては,青色発光ダイオードと1種類の黄色発光Y3Al5O12:Ce3+
(4f1

変換体を組み合わせることで白色発光LEDを実現しており,この点について格別
の問題点が指摘されていない甲26発明において,あえて蛍光体材料を2種類以上
のCeで付活された緑色及び赤色のYAG系蛍光体に置き換えることに合理性があ
るとはいえない。さらに,甲26発明において,黄色発光Y3Al5O12:Ce3+
(4
f1
)変換体に加えて,これと異なる組成のCeで付活されたYAG系蛍光体を追加
して使用することについても,甲26文献には記載も示唆もされていない。
(ウ)甲27文献には,①赤色LED(又は緑色LED)と,内部に青色及び緑色
(又は赤色)の染料を浸透させた透光性のガラス体を備え,ガラス体を透過した赤
色LEDの赤色光(又は緑色LEDの緑色光)と,外部光が青色及び緑色(又は赤
色)の染料で反射されて外部に放出された青色光及び緑色光(又は赤色光)とを混
合することによって白色光を生成する白色発光装置,②緑色LED,赤色LED,
青色染料を浸透させた透光性の封止体を備え,封止体を透過した緑色LEDの緑色
光及び赤色LEDの赤色光と,外部光が青色染料で反射されて外部に放出された青
色光によって白色光を生成する白色発光装置がそれぞれ記載されているものの,こ
れらの白色発光装置は,青色LEDを励起光源とするものではないから,白色光を
生成する機序は甲26発明とは異なるものと認められる。さらに,甲28文献には,
近UV(近紫外)発光ダイオード(n-UVLED),青色蛍光体(ZnS:Ag),
緑色蛍光体(ZnS:Cu,Al),赤色蛍光体(ZnCdS:Ag)を用いて,近
UV発光ダイオードの近UV光(近紫外光)を励起源とし,上記各蛍光体から発せ
られる青色光,緑色光及び赤色光によって白色光を生成できる技術が記載されてい
るものの,近UV発光ダイオードの近UV光(近紫外光)は,各蛍光体の励起用と
してのみ用いられており,白色光の成分としては用いられていないから,白色光を
生成する機序は甲26発明とは異なるものである。そうすると,甲27文献及び甲
28文献には,相違点4に係る本件訂正発明の構成が開示ないし示唆されていると
いうことはできないし,甲26発明において,蛍光体材料として複数種類のCeで
付活されたYAG系蛍光体を用いることについて,裏付けとなる技術常識を認める
に足りる証拠もない。
また,甲27文献及び甲28文献には,1種類の蛍光体を用いた場合には解決で
きず,複数種類の蛍光体を用いることで解決できる課題があることは記載ないし示
唆されていないのであるから,甲27文献及び甲28文献に記載された内容を考慮
しても,甲26発明において,当業者が,蛍光体材料として複数種類のCeで付活
されたYAG系蛍光体を用いることを試みるものとは認められない。
ウ原告の主張について
(ア)相違点3について
原告は,甲26文献には,「BASFLumogenF」を用いることが記載
されており,本件特許出願時に通常用いられていたエポキシ樹脂の密度よりも,「B
ASFLumogenF」の密度の方が大きいことから,甲26発明において,
エポキシ樹脂に添加された緑色及び赤色の発光色素が自然と沈降することも明らか
であって,相違点1の技術的事項については,実質上,甲26文献に記載されてい
る技術的事項であるから,相違点とはならない旨主張する。
しかし,甲26文献には,発光色素として「BASFLumogenF」を
用いることが記載されているところ,甲26文献には,完成後の白色発光のLUC
O-LEDにおいて,蛍光体をエポキシ樹脂中にどのような濃度分布で分散させる
のかについての記載はなく,樹脂中の蛍光体の濃度分布は,樹脂の種類,粘度,硬
化条件,蛍光体の粒径等の条件によって変化するものと認められるから,甲26発
明の蛍光体である黄色発色Y3Al5O12:Ce3+
(4f1
)変換体(発光色素とし
て用いられる「BASFLumogenF」)の比重がエポキシ樹脂よりも大き
いとしても,それのみをもって直ちに,当該蛍光体の濃度がエポキシ樹脂の表面側
からLEDチップに向かって高くなるということはできず,当業者にとって,この
ような蛍光体の濃度分布が技術常識であったということもできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ)相違点4について
原告は,青色LEDに緑色と赤色の蛍光体を用いて白色光にすることは甲26文
献に記載されており,また,青色LEDに緑色と赤色の蛍光体を用いて白色光を生
成することは技術常識であったといえるから,甲26発明のYAG系蛍光体(Y3A
l5O12:Ce3+
)を「Y,Lu,Sc,La,Gd及びSmから選択された少な
くとも1つの元素と,Al,Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素と
を含み,セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」とすることも容易である旨主
張する。しかし,前記イのとおり,甲26発明において,相違点4に係る本件訂正
発明の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たものとはいえないから,
原告の上記主張は採用することができない。
8結論
以上のとおり,その余の点について判断するまでもなく,審決には,これを取り
消すべき違法はない。よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決
する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官設樂一
裁判官岡田慎吾
裁判官中島基至は,差し支えのため,署名押印することができない。
裁判長裁判官設樂一
(別紙)
本件明細書図面目録
【図1】
【図2】
100発光ダイオード
101コーティング樹脂
102発光素子
103ワイヤー
104モールド部材
105マウント・リード
105aカップ部
105bリード部
106インナーリード
200発光ダイオード
201コーティング部
202発光素子
203導電性ワイヤー
204筐体
205端子金属
(別紙)
甲25文献図面等目録
(別紙)
(別紙)
(別紙)
甲12文献図面等目録

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