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裁判例


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平成12年(行ケ)第345号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成13年2月13日
判          決
   原      告     財団法人日本美容医学研究会
 訴訟代理人弁理士    網   野       誠
同            網   野   友   康
同            初   瀬   俊   哉
被      告     日本美容医学研究会
訴訟代理人弁理士     宇   海   晴   海
主          文
特許庁が平成9年審判第7916号事件について平成12年8月2日
にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
主文と同旨
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表による商
品区分第26類の「書籍,雑誌,新聞」を指定商品として,別紙審決書の理由の写
し末尾記載の構成から成る,「財団法人日本美容医学研究会」の文字についての登
録第2713135号の商標(昭和52年3月10日登録出願,昭和56年4月2
5日出願公告,平成8年3月29日設定登録,以下「本件商標」という。)の商標
権者である。被告(いわゆる権利能力なき社団である。)から,本件商標につい
て,登録無効審判の請求があり,特許庁は,これを平成9年審判第7916号事件
として審理した結果,平成10年10月16日に,被告は,法人格のない団体であ
って権利能力を有しないので,本件商標の登録を無効とする利益を享受することが
できないから,商標法4条1項8号の「他人」に当たらず,本件商標の登録を無効
とすることはできないとの理由により,「本件審判の請求は成り立たない。」との
審決をした。同審決に対し,審決取消訴訟(東京高等裁判所平成10年(行ケ)第
380号)が提起され,当庁は,平成11年9月30日に,いわゆる権利能力なき
社団である被告は,無効審判の請求についてあたかも法人格を有するのと同じよう
に扱われるべきであって,同審決が,被告に対し,法人格を有しない団体であるこ
とのみを理由に,商標法4条1項8号の「他人」に当たらないとして,本件商標を
無効にする利益の享受を否定したのは誤りであるとして,同審決を取り消す旨の判
決をし(以下「前件判決」という。),同判決は確定した。特許庁は上記審判事件
について,改めて審理した結果,平成12年8月2日に「登録第2713135号
の登録を無効とする。」との審決をし,その謄本は同月21日に原告に送達された
(送達の点につき弁論の全趣旨)。
 2 審決の理由
別紙審決書の理由の写しのとおり,本件商標は,被告の名称である「日本美
容医学研究会」と同一の文字を含むものであるから,商標法4条1項8号に該当す
ると認定判断した。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
審決は,本件商標につき,被告の名称と同一の文字を含んでいても,商標法
4条1項8号該当性を否定すべき理由があるにもかかわらず,この理由を十分に考
慮することなく,本件商標が商標法4条1項8号に該当するとの誤った判断をした
ものであり,この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として
取り消されるべきである。
1 商標法4条1項8号の他人の名称等は,悪意ないし不正競争の目的により採
択されたものでないことを要することについて
(1) 商標法4条1項8号は,他人の名称又はその名称の著名な略称を含む商標
は,その登録を受けることができない旨規定している。同号の文理上は,他人の名
称又は著名なその略称を含むものである場合には,その他人は,承諾を与えない限
り,制限なくその登録を排除することができるようにみえる。
しかし,同号の趣旨は,自己の氏名,名称等が他人によりその商品又は役
務の商標として使用され,それによって,一般人により,その氏名,名称等とそれ
が使用されている商品又は役務との間に何らかの関係があるかのように認識され,
そのためにその氏名,名称を有する者がこれを不快とし,その人格権を毀損された
ものであると認識するであろうことが,社会通念上客観的に明らかであると認めら
れるような場合において,人格権保護の建前から,事前にこのような者の承諾を得
させようとすることにある。このような立法趣旨に照らすと,ある商標に使用され
た名称を悪意ないし不正競争の目的で採択した者のように,当該商標の登録を認め
ても,人格権を毀損されたとの認識が生ずる余地のない者については,当該商標の
登録を排除することは認められないと解するのが相当である。
商標法4条1項8号の規定の文理上は,他人の名称等が悪意ないし不正競
争の目的により採択されたものでないことは,適用の要件とはなっていない。
しかしながら,このことは,上記解釈を妨げるものではない。
商標法4条1項10号により,周知商標と抵触する商標であることを理由
に他人の商標の登録を排除するためには,周知商標主は善意でなければならず,悪
意の場合には同号により他人による周知商標の登録を排除することができないとす
るのが判例学説であり,同号の文理上は周知商標主の善意は要件とされていないに
もかかわらず,このように解釈すべき根拠として,商標法32条が挙げられてい
る。これと同様に,商標法4条1項8号の規定により,自己の名称であることを理
由に他人の商標の登録を排除するためにも,自己の名称であることを主張する者は
善意でなければならず,その根拠としては商標法26条2項を挙げることができ
る。同法26条1項1号には,自己の名称等が,その承諾なく他人により商標とし
て登録されても,自己の名称等が普通に用いられる方法で表示される限りにおいて
は,商標権の効力はこれには及ばない旨が定められている。しかし,同条2項に
は,商標権の設定登録があった後,不正競争の目的で,すなわち悪意により自己の
名称等を使用した場合においては,登録商標の商標権の効力は,登録商標と同一の
自己の名称に及ぶ旨が定められている。したがって,そのような場合においては,
自己の名称と同一の商標がその承諾なく登録されたとしても,その登録商標が自己
の名称を含むものであることを理由にその登録を排除することができないことは,
同条項の趣旨及び目的に照らし明らかというべきである。
上記のとおり,商標法26条1項1号及び同条2項の規定の合理的な解釈
に照らし,他人の名称等が悪意ないし不正競争の目的により採択されたものでない
ことが同法4条1項8号の適用の要件となっていると解するのが相当である。
(2) 原告は,昭和24年5月に,医学的裏付けによる美容医学である総合的美
容医学を確立しようとの目的の下に設立された財団法人である。原告が設立された
当時においては,婦人の美容を医学的角度から研究してその要請に応えようという
発想の組織はどこにも存在しなかったため,原告の活動は全国的に評判となり,
「大はやりの美容整形美人創造」といった見出しで新聞記事等にも紹介され,原告
の名称は,A医学博士の名前とともに,全国的に知られるようになった。
日興製薬株式会社は,昭和34年11月8日付け施行の定款により,「医
薬部外品クロロフィルム化粧料の適切なる使用法及び正しい取扱いを調査研究し,
これを広く普及し以て日本美容文化の向上に資することを目的とする団体(権利能
力なき社団)として,原告の名称のうち法人の種類を示す「財団法人」の部分を除
いた名称と同一名称である「日本美容医学研究会」の名で,被告を結成した。原告
の名称が全国的に知れわたった昭和34年ころにおいて,婦人の美容に関係のある
薬品を製造し,その使用方法を調査研究し,日本美容文化の向上に資する意図を有
していた日興製薬株式会社ないし被告が,原告の名称を知らないはずはない。被告
は,原告の存在とその名称を知っていながら,原告の名声にあやかろうとする意図
の下に,原告の名称から「財団法人」の文字を除いたのと同一の名称を採択したの
である。このようにして,同名称を採択した被告は,これにつき,日興製薬株式会
社を権利者として,昭和37年に商標登録をしたものの,この登録は,原告が行っ
た登録無効審判の請求に基づき,これを無効とする審決,これに対する審決取消訴
訟を経て,その無効が確定したという経緯がある。上記訴訟において,東京高等裁
判所昭和52年12月22日判決は,「日本美容医学研究会」が原告の略称として
一般人に広く認識されていることを認めている。
このような経緯からすれば,被告は,悪意ないし不正競争の目的をもっ
て,原告の略称である「日本美容医学研究会」を,被告の名称として採択したもの
ということができるから,原告は,被告の名称を含む本件商標の登録を受けるにつ
き,被告の承諾を必要としないものと解すべきである。
2 商標法4条1項8号の適用につき,法人格のない社団の名称については,
「著名な略称」の問題として,「著名性」を要件とすべきことについて
(1) 仮に法人格のない社団の名称について著名性を要件としないとすると,
「日本美容医学研究会」の文字は,法人格のない被告にとっては,これのみがその
名称であるから,本件商標を商標法4条1項8号に該当するとするためには,これ
に被告名称が含まれていることを主張するのみで足りる。これに対し,「日本美容
医学研究会」の文字は原告にとってはその名称ではなくて略称であるから,被告が
これを登録した場合においては,同号に該当するとするためには,これが,原告の
略称として「著名」であることを立証しなければならないことになる。しかし,同
じ文字について法人格のある原告に対しては著名性を必要とするとし,法人格のな
い被告についてはそれが含まれていれば著名性がなくてもよいとするのは,整合性
を欠くものといわざるを得ない。
また,法人格のない社団については,法人の種類を,その名称中に表示し
なければならないというような規制がないから,濫用される危険性がある。
したがって,商標法4条1項8号の適用につき,法人格のない社団の名称
については,著名性を必要とするものと解すべきである。
(2) 上記のとおり,商標法4条1項8号の規定により,法人格のない社団であ
る被告の名称が含まれるとの理由により原告の登録商標を無効とするためには,被
告の名称である「日本美容医学研究会」が被告を指称するものとして,一般人に広
く認識されていることを要する。しかし,前記のとおり,「日本美容医学研究会」
といえば,一般人には原告を指すものと理解されているものであり,被告の名称と
して著名であることは何ら立証されていない。したがって,本件商標中に,法人格
のない社団である被告の「著名でない」名称が含まれていても,商標法4条1項8
号の適用はなく,本件商標の登録につき被告の承諾を要しないというべきである。
第4 被告の反論の要点
審決の認定,判断は正当であり,審決に原告主張の違法はない。
1 原告の主張1について
(1) 商標法4条1項8号は,「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しく
は著名な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標」につい
て,商標登録を受けることができないと規定しており,他人がその氏名,名称を悪
意ないし不正競争の目的により採択したものでないことは要件としていないから,
被告が「日本美容医学研究会」の名称を使用して現に存在している以上,その名称
を含む本件商標は,同号に該当する,とした審決の判断は正当である。
(2) 仮に,「他人がその氏名,名称を悪意ないし不正競争の目的により採択し
たものでないこと」が要件となっているとしても,被告は,昭和34年に自己の名
称を「日本美容医学研究会」とする際に,原告の存在と名称については,全く知ら
なかったものであるから,自己の名称を「悪意により採択」したなどどいうことは
あり得ない。
原告は,東京高等裁判所昭和52年12月22日の判決は,「日本美容医
学研究会」が,原告の略称として一般人に広く認識されていることを認めたもので
ある旨主張する。しかしながら,上記判決は,「日本美容医学研究会」は「財団法
人日本美容医学研究会」の略称ではなく,それ自体名称であるから,著名性は必要
がないとの原告の主張を認めたものであって,「日本美容医学研究会」が原告の名
称の略称として,一般人に広く認識されていると判断したものではない。
2 原告の主張2について
商標法4条1項8号は,他人の肖像・氏名・名称と雅号・芸名・筆名・略称
とを明確に区別して,前者には著名性を要件とせず,後者については著名性を要件
としていることが明らかである。したがって,同号の適用について,被告の名称が
著名であることは必要でなく,本件商標が被告の名称である「日本美容医学研究
会」を含む商標である以上,原告は,本件商標の登録について,被告の承諾を得る
必要がある。
第5 当裁判所の判断
1 商標法4条1項8号は,他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著
名な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標については,
その他人の承諾を得ない限り,商標登録を受けることができない旨定めている。
いわゆる権利能力なき社団が,同号の「他人」に含まれると解すべきこと
は、既に前件判決で確定されているところであるから,いわゆる権利能力なき社
団,すなわち,商標法77条2項により準用される特許法6条にいう,「法人でな
い社団であって,代表者又は管理人の定めがあるもの」に該当する被告が,商標法
4条1項8号にいう「他人」に当たることは,明らかである。
本件商標(財団法人日本美容医学研究会)は,他人である被告の名称である
「日本美容医学研究会」を含む商標であるから,文理上は,商標法4条1項8号に
当たることになる。
2 原告は,商標法26条の規定を根拠に,同法4条1項8号の他人の名称等
は,悪意ないし不正競争の目的により採択されたものでないことを要すると解釈す
べきであるとし,この解釈を前提に,被告は,悪意ないし不正競争の目的をもっ
て,原告の略称である「日本美容医学研究会」を,被告の名称として採択したもの
であるということができるから,本件商標については同法4条1項8号の適用はな
いと主張する。
証拠(甲第1号証の1,2,第2号証の2ないし6,第21号証,第23号
証)によれば,原告は,昭和24年5月31日に「基礎医学と人体美学に立脚して
美容医学を確立するためこれに関する科学の綜合研究を行い美容と医学の進歩発達
を図る」ことを目的として設立された財団法人であること,昭和26年11月27
日の日本経済新聞に掲載された「大はやり美容外科」の見出しの記事中に,「財団
法人日本美容医学研究会が東京で発会式を挙げたがこれは美容整形医学が中心とな
り,内科,産婦人科、ヒフ科,眼科,歯科などの各分科が,美人の創造に協力する
という専門権威者の総合研究会で」との記載があること,昭和30年3月1日発行
の雑誌「財界」に掲載された「新興行師物語 美容医学界の風雲児 A」と題する
4頁余りの文章中に「財団法人日本美容医学研究会を設立」,「財団法人日本美容
医学研究会の基礎基金百万円を作る」との記載があること,昭和30年7月5日発
行の週刊誌に掲載された「美男と美女製造時代」と題する座談会の記事の末尾に小
さな文字で,美容全般についての問い合わせ先として「日本美容医学研究会」名が
記載されていること,昭和31年2月4日の読売新聞には「B夫妻来日」の見出し
の記事中に「空港には日本美容医学研究所A氏らが出迎えた。」との記載があるこ
と,同月9日の読売新聞には,「日本の整形は繊細だ・・・講演するB博士」の見
出しの記事中に「日本医師会,日本美容医学研究会主催,読売新聞社後援の講演会
で」との記載があること,同年2月24日発行の週刊誌に掲載された「最近のアメ
リカ美容医学」という記事中に,「B博士は空路東京を訪れ,去る9日,日本橋三
越ホールの財団法人日本美容医学研究会主催,読売新聞社後援の講演会に臨み」と
の記載があること,昭和34年5月2日の名古屋タイムズの「美のメッカ 十仁病
院」等の見出しの記事中に「財団法人日本美容医学研究会が創立されたのは終戦後
間もなくのころだった。・・・十仁病院はいよいよ日本美容医学研究会と緊密な関
係を持ちつつ,先進国欧米に劣らぬ実績をあげ」との記載があること,がそれぞれ
認められる。
また,証拠(乙第4号証)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,日興製薬株
式会社により,昭和34年11月8日施行の定款により「専門医師の指導と関与の
もとに,医薬部外品クロロフイル化粧料の適切なる使用法及び正しい取り扱いを調
査・研究し,これを広く普及し,以て日本美容文化の向上に資すること」を目的と
して結成された権利能力なき社団であることが認められる。
上記認定によれば,被告は,美容に関する活動を目的として結成されたもの
であることから,その結成当時,上記新聞や雑誌の記事あるいはそれ以外の情報源
を通じて原告の名称を知り,これを自己の名称として採用した可能性は高いものと
認められる。しかしながら,不正競争の目的があるというためには,単に原告の名
称を知っていたというだけでは足りず,原告の信用を利用して不当な利益を得る目
的がなければならないというべきである。上記認定の事実によれば,原告は,昭和
24年の設立後,被告が結成された昭和34年までの間に,雑誌や新聞記事等に,
「財団法人日本美容医学研究会」「日本美容医学研究会」「日本美容医学研究所」
の名前で数回紹介されていることは認められるものの、この事実によって,これら
の名称が,被告が結成された昭和34年当時において,それを使用することが原告
の信用を利用して利益を得ることにつながるほどにまで,原告を表すものとして,
知られていたとまでは認めることができず,他にも,これを認めるに足りる証拠は
ない。したがって,被告がその名称を採択した際に,原告の信用を利用して不当な
利益を得る目的を有していたとまでは認めることができない。
したがって,商標法4条1項8号の解釈についての原告の解釈が正当である
としても,それを本件に適用することはできず,審決が,被告の名称採択が原告の
著名性のただ乗りであると認めることができないとしている以上,上記解釈を採用
しなかった審決の結論に影響を及ぼすところはないというべきである。
原告の主張は採用することができない。
 3 原告は,商標法4条1項8号の適用につき,権利能力なき社団の名称につい
ては,著名性を必要とするものと解釈すべきである旨主張する。
法人の名称については,たとえば,商法,有限会社法に基づき設立されるも
ののように,法律上,その種類に従い,名称中に法人の種類を示す文字を用いるこ
とを要するものとされているものが多数存在する(商法17条,有限会社法3条
等)。また,たとえば,公益法人のように,法律上は,その名称中に法人の種類を
示す文字を用いることは要件とされていないもの(民法37条,46条参照)につ
いても,本来,法人の種類を示す文字を用いることが好ましいことから(法人登記
規則5条参照),現実には,原告のようにその名称中に財団法人等の法人の種類を
示す文字を用いている例が多いことは,当裁判所に顕著な事実である。
これに対し,権利能力なき社団は,権利能力なき社団であることの必然的な
結果として,法人の名称(法人の種類を示す文字を含む名称)から,法人の種類を
示す文字の部分を除いたものに相当する名称を採用することになり,また,その名
称の選択について法的な規制を受けないから,名称の選択は自由に行い得る。
そうすると,その名称中に法人の種類を示す文字を用いた法人については,
その名称から法人の種類を示す文字を除いたものは略称となるから(最高裁第2小
法廷昭和57年11月12日判決参照),商標法4条1項8号に基づき,他人がそ
の略称を商標登録するのを阻止するためには,その名称から法人の種類を示す文字
を除いたものが著名であることを主張,立証しなければならないことになる。
これに対し、その性質上,常に法人の名称からその種類を示す文字を除いた
ものに相当するものを自己の名称として採用することになる権利能力なき社団につ
いては,その名称を単に商標法4条1項8号の「名称」に当たるとすると,同条項
に基づき,上記法人の名称を商標登録することを阻止するためには、単に法人の名
称に,自己の名称が含まれていることを主張,立証すれば足り,それが著名である
ことの主張,立証を要しないことになる。しかしながら,このような解釈は,法の
定める手続に従って法人格を取得した法人を,法の定める手続をとらなかった権利
能力なき社団よりも著しく不利に扱うことになり,看過することのできない不均衡
を生じさせるものであるうえ,このような取扱いを認めると,商標法4条1項8号
を利用して,法人の名称の商標登録を阻止するために権利能力なき社団が濫用的に
用いられる危険も大きくなる。
したがって,権利能力なき社団の名称については,法人との均衡上,その名
称は,商標法4条1項8号の略称に準ずるものとして,同条項に基づきその名称を
含む商標の登録を阻止するためには,著名性を要するものと解すべきである。
以上述べたところによれば,審決には,被告の名称の著名性について,何ら
審理,判断することなく,結論を導いた違法があり,この違法が審決の結論に影響
を及ぼすことは明らかであるから,審決は,取り消されるべきである。
第6 よって,原告の本訴請求は理由があるから,これを認容することとし,訴訟
費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のと
おり判決する。
   東京高等裁判所第6民事部
        裁判長裁判官  山   下   和   明
        
           裁判官    阿   部   正   幸
裁判官山田知司は,転勤のため,署名押印することができない。
        裁判長裁判官    山   下   和   明

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