弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人松崎勝一、同小谷野三郎、同栂野泰二の上告趣意第一点および第二点につ
いて。
 所論は、昭和四〇年法律第六八号による改正前の公共企業体等労働関係法(以下
公労法という。)四条三項が憲法二八条および国際労働機関第八七号条約(結社の
自由及び団結権の保護に関する条約)並びに同第九八号条約(団結権および団体交
渉権についての原則の適用に関する条約)に違反しないとした原判決の判断は、憲
法二八条および同九八条の解釈を誤つたものであるというのである。
 しかし、原判決の維持した第一審判決認定の罪となるべき事実によれば、被告人
は、第一審判決判示の次長室において、その東側隣にある局長室のドアに錠が施さ
れていることを知り、同判示の日午前一〇時頃、次長室の窓から庇に出て局長室の
窓辺にいたり、A局長が同室内にあつて組合員との面会を拒んでいることを了知し
つつ、その承諾のないまま、窓から右局長の看守にかかる局長室内に故なく侵入し
たというのであるから、被告人の右所為は、単に労務の提供を拒むとか、静穏に局
長に面会を求めるとかいうのとは異り、実力を行使して右局長室に侵入したもので、
労働組合法一条二項の労働組合の正当な行為とは到底いえないものである。したが
つて、原判決のこの点の判断は正当であつて、所論は、原判決が傍論として示した
判決の結論に影響のない憲法ならびに国際条約に関する判断を非難するに過ぎない
もので、適法な上告理由に当らない。
 同第三点について。
 所論中違憲をいう点は、その実質は、被告人の行為をもつて労働組合の団体行動
として正当な行為であるという単なる法令違反の主張であり、その余は、事実誤認
の主張であつて、いずれも適法な上告理由にあたらない(なお、原判決の維持した
第一審判決認定の事実に徴すれば、本件被告人の行為は、常軌を逸した実力の行使
というべきであるから、これを正当な行為と認めなかつた原判断は、相当である。)。
 同第四点について。
 所論は、量刑不当の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、
主文のとおり決定する。
  昭和四二年一〇月二五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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