弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、記録に編綴してある弁護人藤堂真二作成名義の控訴趣意書に
記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
 控訴趣意中事実誤認の主張について。
 論旨は、被告人は株式会社Aの鳶職であり、原審相被告人BはCの運転者である
ところ、AはCとの間に恰も傭船契約と同様自動車のチャーター契約を締結してい
たのであるから、被告人は単に借上自動車の積荷揚卸の指示をする権限があるに止
まり、一旦積込まれた後の荷物の運送行為の責任は挙げてCに存したのであつて、
被告人には何等の関係もない。しかるに、原判決は荷物の運送行為自体についてま
で被告人にCの運転者Bを指揮監督する権限があるとし、これを前提として、被告
人に対し運送途上における注意義務を認めているのであつて、右はAとCとの間の
前記契約関係につき事実を誤認した違法をおかしているものである、というのであ
る。
 しかしながら、原判決挙示の関係各証拠を綜合すれば、CはAに対し、本件貨物
三輪自動車を昭和三六年八月頃から引続き、Aの指揮監督の下に使用させる約の下
に、運転手付で賃料は未定のまま賃貸していたに過ぎず、所論のように荷物運送の
引受を約したものでないことが優に認められ、所論指摘の領収証、請求書をもつて
しても、原審証人Dの証言に対比すると、右契約が所論主張のようなものであつた
とは認め難く、その他記録を精査しても右認定に過誤があるとは思われない。した
がつて、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。
 控訴趣意中法令の適用に誤があるとの主張について。
 論旨は、被告人が本件鉄骨搬送作業現場の総括的責任者であるとしても、三輪自
動車運行中の安全運転義務は運転者B固有の注意義務であるから、これを含めた総
括的責任まで被告人が負わねばならぬ法理はない。しかるに、原判決は被告人に運
転上の注意義務を認めているのであつて、右は注意義務に関する刑法二一一条の解
釈を誤つた違法があるというのである。
 よつて按ずるに、原判決は、被告人は鳶職であると同時に、原判示の作業現場に
おいて、いわゆる現場監督として他の鳶職等を指揮監督し、工事用資材の積荷揚
卸、搬送等の作業の業務に従事していたこと、本件事故現場はやや上り勾配の坂道
であつて道路幅員が狭く、しかも進行方向右手から道の中央近くまで道路上に松の
太枝が地上より約三米一五糎の高さに横に突出していて本件鉄骨を自動車で搬送す
るときはこれと衝突する危険が極めて大であつたこと、被告人は右松枝の状況を知
つていたこと(原判決挙示の証拠によると、本件事故発生の二日前被告人は松の管
理人に右松枝の切除方を要求したが拒絶された事実のあることが認められる)、右
鉄骨は長さ五米余、重さ六〇〇瓩に近く特異の形状をしたものであつたこと等の事
実を認定した上、被告人に対する業務上の注意義務として、本件事故現場の松枝の
高さを検認するとともに本件鉄骨を貨物三輪自動車に積載したときの鉄骨の先端の
高さを検認して、本件事故現場における安全通過の可能度を確かめ(又は他の鳶職
をしてこれを確かめしめ)、かつこれに基づき現場において適宜の措置(一旦停
車、荷直し、松枝の押上、極度の減速徐行、荷台に同乗している人夫の下車、又は
誘導運転等)をなすべき明示の任務を与えられた責任ある見張監視人を現場或は自
動車に配置して運転者の安全運転を監督補助せしめ、右松枝と積荷との接触衝突に
よる事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があることを判示しているも
のと解されるところ右注意<要旨>義務は、本件搬送物件が前記のように特異な形状
をした重量長大物であつて、これを貨物三輪自動車に傾斜積の方法(この積
載方法には原判決の判断しているように過失はない)によつて積載するとその先端
が高さ地上より三米余に及んで前記松枝と衝突することが予想され、又マニラロー
プによる繋縛方法(この繋縛方法には原判決の判断しているように過失はない)に
よつて荷造すると衝突等の場合重量圧によりこれが切断して本件のような重大事故
が発生することが予想されるが、一般の運転者や人夫等は右搬送物件の具有する危
険性に対する認識不足から、慎重な行動に出ず、漫然としていて、不慮の災害をま
ねく虞があるので、鳶職でありかつ工事現場監督である被告人に対し、その業務の
専門的立場から、自動車運転者が通常用いる注意義務とは別に、特別の注意義務が
あるとせらるべきものであつて、斯る注意義務は本来積荷の特性および特異の積
載、繋縛方法に関連して生じるものであり、自動車運転者の注意義務と競合し得べ
きものと解されるから、運転者Bに運転者として安全運転をなすべき注意義務があ
つたからといつて、被告人の注意義務を否定することはできない。したがつて、原
判決が被告人に対して前記のような注意義務を認めたのは正当であつて、所論のよ
うな違法はない。論旨は理由がない。
 よつて、刑訴三九六条、一八一条一項本文により、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 木原繁季 裁判官 加藤龍雄 裁判官 越智伝)

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