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平成22年2月25日判決言渡
平成21年(行ケ)第10198号審決取消請求事件
平成21年12月21日口頭弁論終結
判決
原告株式会社ベイクルーズ
同訴訟代理人弁理士金展克
被告特許庁長官
同指定代理人豊田純一
同野口美代子
同小林和男
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2008−19745号事件について平成21年6月3日にし
た審決を取り消す。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯
(1)本願商標
原告は,別紙1記載のとおり,「EDIFICE」(冒頭の「E」は「
´」(アクサンテギュ)が付されている。以下同じ。)の欧文字を横書きに
書してなり,第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務とし,登
録第4976678号商標(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章
登録出願として,平成19年1月16日に登録出願をしたが(甲42。以下
この商標を「本願商標」という。),平成20年1月9日付けで拒絶理由通
知を受け(甲43),同年2月27日付け手続補正書を提出したが(甲4
5),平成20年6月25日付けで拒絶査定を受けた(甲46)。原告は,
平成20年8月4日,これに対する不服審判を請求し(甲47。不服200
8−19745号),同年10月14日付け手続補正書(甲49)及び当審
における平成21年3月30日付け手続補正書(甲52の2)を提出したこ
とにより,本願商標の指定役務は,第35類「オリジナル及びセレクト編集
型製造小売業態の紳士服専門店における紳士服その他の男性用服飾品の販
売に関する情報の提供」となった。
(2)原登録商標
原登録商標は,別紙2記載のとおり,「EDIFICE」の欧文字を横書
きに書してなり,平成18年2月13日に登録出願をし,第3類「せっけん
類,化粧品」,第9類「眼鏡」,第18類「かばん金具,がま口口金,皮革
製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,
傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,皮革」,第20類「
クッション,座布団,まくら,マットレス,家具」及び第25類「被服,ガ
ーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動
用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同年8月4日に設定登録さ
れたものである(争いのない事実)。
なお,原登録商標と本願商標が同一であることについて,当事者間に争い
はない。
(3)本件審決
特許庁は,審理の結果,平成21年6月3日,「本件審判の請求は,成
り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年6月30日,原告に送達
された(争いのない事実)。
2審決の内容
審決の内容は,別紙審決書の写しのとおりである。要するに,審決は,原登
録商標は「需要者の間に広く認識された商標」ということはできないから,商
標法64条1項に規定する要件を具備するものではなく,登録することができ
ないと判断した。
第3原告主張の取消事由
審決には,以下のとおり,商標法64条1項該当性の判断に誤りがあるか
ら,取り消されるべきである。
1審決は,「1997年から2008年において,男性向けファッション雑誌
に原登録商標に関連する記事を掲載している。」として,原告自身が広告目的
で掲載したことを理由に,雑誌掲載の事実を,原登録商標の周知性の認定に当
たって評価しなかった。しかし,同判断は,以下のとおり誤りである。
すなわち,上記の雑誌記事は,原告が掲載を依頼したのではなく,雑誌各社
が自発的に掲載したものである。雑誌掲載が継続的にされていることは,原登
録商標が,業界内で一定の周知性を有していることを示すものと理解すべきで
ある。審決が,雑誌掲載の事実から,原登録商標の著名性を認定しなかった点
は,誤りである。
2審決は,「請求人が原登録商標の著名性を立証するために提出したファッシ
ョン雑誌の記事等における使用例は,原登録商標と構成態様を異にする『エデ
ィフィス』の片仮名文字等が使用されている例が大多数である。」として,原
登録商標が,一般需要者の間にまで,広く認識されているものではないと判断
したが,同判断は,誤りである。
すなわち,原告が運営する各店舗においては,原登録商標と同一の商標を用
いて営業を行い,雑誌においても,これらの店舗の商品を示すものとして,掲
載されている(甲22の1ないし33の3,54の1ないし60の4)。
原告は,多数のセレクトショップブランドを取り扱っているが,ロゴ使用に
ついては,一定の基準を定めて,ブランドの管理をしている(甲61)。雑誌
記事が片仮名文字を表記していること(甲22の1ないし33の3)は,編集
の便宜上のものにすぎない。ルイヴィトンやシャネルなどの世界的に著名なブ
ランドについても同種の表記がされる例がある。このような編集の便宜から表
記態様を変えたことについて,原登録商標と同一の商標が用いられていないと
して,著名性の判断に当たり評価をしなかった点は,誤りである。
3審決は,「請求人提出による『マガジンデータ2007』を徴するに,請求
人の提出したファッション雑誌は,男性需要者向けに発行されたものであると
認められる。」と認定したが,本願商標についての需要者層が限定されている
と認定した点で誤りである。
4審決は,「請求人提出による証拠資料を見ても,一般需要者が接する機会が
多いと認められるテレビや一般誌等の大衆向けマスメディアにおいて,請求人
が,原登録商標を付した商品等に関し,テレビCM等の宣伝・広告を行ってい
る事実は認めることができない。」と判断したが,同判断は,以下のとおり誤
りである。
すなわち,原告は,被服を中心とするセレクトショップ事業を営んでおり,
セレクトショップ事業における広告は,テレビCM等よりファッション雑誌へ
の掲載の方が,宣伝効果が高い。原登録商標は,多数の雑誌に掲載されている
から,著名であるといえる(甲22の1ないし33の3)。したがって,テレ
ビCM等の宣伝・広告例がないことを理由として,原登録商標が著名でないと
した審決の判断は,誤りである。
5審決は,「請求人が,『EDIFICE』の標章を付した店舗については,
11店舗と数も少ないうえ,その半数以上は,首都圏に集中し,その他の店舗
も地方の大都市圏のみに存するものであることからすれば,一般需要者の多数
が,その店舗の存在を知り,かつ,原登録商標に接しているとはいい難い。」
と判断したが,同判断は,以下のとおり,誤りである。すなわち,
(1)防護標章の登録されるためには,原登録商標が,全国的に一般需要者の
多数に浸透していることを要件とするとの解釈は,誤りである。商標法64
条1項所定の「広く認識されている」との要件が,商標法4条1項10号又
は同法32条にいう「広く認識されている」との要件より厳格であるとして
も,上記要件は,防護標章登録出願に係る指定商品・役務,その他取引の実
情を考慮して判断すべきであり,「全国的に一般需要者の多数に浸透してい
ること」を要件とすべきでない。
原登録商標は,全国的に展開されており,過去10年にわたって発行部数
の多い雑誌多数で継続的に紹介されていること,本件防護標章登録出願に係
る指定役務は「オリジナル及びセレクト編集型製造小売業態の紳士服専門
店における紳士服その他の男性用服飾品の販売に関する情報の提供」であ
ることに照らすならば,防護標章登録を受けるに値する著名性があるといえ
る。
(2)原登録商標を付した商品の売上高が過去3年間いずれも50億円程度の
売上を示していること,広告宣伝・販売促進費も多額であること,原告が毎
年1月及び6月に実施している「BAYCRREW’SFAMILY
SALE」(以下,「ファミリーセール」という。)において高い売上を記
録していること(甲66の7ないし12)に照らすならば,本願商標は著名
であるというべきである。
(3)審決の前記判断は,セレクトショップの中心的顧客層がファッションに
敏感な顧客層であり,お洒落のためには地方からでもファッション感度の高
い近隣の大都市へ足を運ぶのが常態であるとことに照らすならば,審決の認
定は失当である。
第4被告の反論
原告主張の取消事由には理由がなく,審決に違法はない。
1防護標章登録制度は,商標の使用意思の存在を前提とする商標登録制度の例
外をなすものであること,防護標章制度は,商標権の禁止的効力を画一的に拡
大することになり,第三者の商標選択の自由を奪うおそれがあること等に照ら
すならば,商標法64条1項の「広く認識されている」との要件は,原登録商
標と同一の商標が周知著名に至っていることと解すべきである。
本件における雑誌の片仮名表記の掲載態様は,原登録商標の態様と異なって
いることから,原登録商標の著名性を認定することは困難というべきである。
原登録商標の雑誌掲載が,原告の広告意図に基づくか,雑誌社の編集上の便
宜によるか否かにかかわらず,原登録商標が,著名であると認めるに足りる状
況はない。
2原登録商標の指定商品中の「被服」を中心とするファッション関連商品の業
界は,「セレクトショップ」業態に限定されるものではなく,アパレル業界全
体であるから,原登録商標の指定商品に関連する業界を「セレクトショップ」
の業態に限定して,その中での規模の大きさ等を主張することは失当である。
原登録商標に係る店舗での売上データは示されているものの,他社の売上デ
ータや,市場規模に関するデータは示されていない。原登録商標に係る店舗で
の売上高は2008年(平成20年)のデータで約56億円であるが,仮に,
業界全体の市場規模約を約10兆円と想定すると約0.056パーセントにす
ぎないものであり,市場規模を約4兆円と想定すると,約0.14パーセント
にすぎないことに照らすならば,原告の売上高が,50億円を超えているから
といって,原登録商標が周知著名性を有するとするものとはいえない。ファミ
リーセールでの売上高も年間の売上額の一部を構成するにすぎず,その事実の
みをもって,原登録商標が,周知著名であると認定することはできない。原告
の上記主張は,失当である。
第5当裁判所の判断
当裁判所は,原告主張の取消事由には理由がなく,原告の請求を棄却すべき
ものと判断する。以下理由を述べる。
1商標法64条1項について
防護標章登録制度に係る商標法64条1項は,「商標権者は,商品に係る登
録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認
識されている場合において,その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する
商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商
標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが
混同を生ずるおそれがあるときは,そのおそれがある商品又は役務について,
その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」
旨規定する。
同項の規定は,原登録商標が需要者の間に広く認識されるに至った場合に
は,第三者によって,原登録商標が,その本来の商標権の効力(商標法36
条,37条)の及ばない非類似商品又は役務に使用されたときであっても,出
所の混同をきたすおそれが生じ,出所識別力や信用が害されることから,その
ような広義の混同を防止するために,「需要者の間に広く認識されている」商
標について,その効力を非類似の商品又は役務について拡張する趣旨で設けら
れた規定である。そして,防護標章登録においては,①通常の商標登録とは異
なり,商標法3条,4条等が拒絶理由とされていないこと,②不使用を理由と
して取り消されることがないこと,③その効力は,通常の商標権の効力よりも
拡張されているため,第三者の商標の選択,使用を制約するおそれがあること
等の諸事情を総合考慮するならば,商標法64条1項所定の「登録商標が・・
・需要者の間に広く認識されていること」との要件は,当該登録商標が広く認
識されているだけでは十分ではなく,商品や役務が類似していない場合であっ
ても,なお商品役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えていること,す
なわち,そのような程度に至るまでの著名性を有していることを指すものと解
すべきである。
上記の観点から検討する。
2事実認定
(1)原告は,アパレルメーカーとして1977年(昭和52年)に設立され
た。その業態は,いわゆる「セレクトショップ」といわれる経営形態を採用
し,特定のメーカーやブランドに固執せず,小売店のコンセプトに応じた多
数の商品やブランドに係る衣類,家具,小物,雑貨などの商品を仕入れ,小
売店に販売する等の業務を行っていた。2002年(平成13年)度の売上
高は約250億円,2007年(平成19年)8月期における売上高は50
0億円であった。セレクトショップ業界で,原告は,「ユナイテッドアロー
ズ」,「ビームス」,「シップス」と並ぶ売上高を上げている(甲2の1,
甲44,乙18の1,2,弁論の全趣旨)。
(2)原告は,その商号を営業等表示とすることはなく,原登録商標である「
EDIFICE」の他に,「JOURNALSTANDARD」,「IE
NA」,「Spick&Span」,「DEUXIEMECLASSE」
等の表示を用いて営業をしている(甲2の1,甲44,職務上顕著な事
実)。
「EDIFICE」は,比較的若年層の男性を対象とし,その商標を付し
た店舗が,渋谷店,銀座店,丸の内店,新宿店,新宿LeDome店,池袋
店,横浜店,名古屋店,大阪店,神戸店,福岡店として運営されている(甲
3の1ないし甲13の2)。
他方,「UNIQLO」を有する株式会社ユニクロの店舗数は全国に76
6店舗(2008年(平成20年)12月31日現在,乙7),「ファッシ
ョンセンターしまむら」を有する株式会社しまむらは1123店舗(200
9年(平成21年)2月20日現在,乙8),「BEAMS」を有する株式
会社ビームスは93店舗(2009年(平成21年)11月現在,乙9)を
展開している。
また,ファッションブランドに関連する出版物,すなわち,繊研新聞社発
行の「ファッションブランドガイドSENKENFB2009」(乙1
3の1),「ファッションブランドガイドSENKENFB200
6」(乙13の2),株式会社チャネラー発行の「ファッション・ブランド
年鑑2005年度版」(乙14),ボイス情報株式会社発行の「メンズファ
ッション店名鑑2009【東日本編】」(乙15の1),「レディスファッ
ション店名鑑2008【東日本編】」(乙15の2),株式会社新書館発行
の「ファッション・ブランド・ベスト101」(乙16),株式会社同文書
院発行の「新田中千代服飾事典」(乙17)にはいずれも,原告及び原登録
商標に関する掲載記事は存在しない。これに対して,これらの出版物には,
同様のセレクトショップである「BEAMS(ビームス)」,「シップ
ス」,「ユナイテッドアローズ」について,記事が掲載されている。
さらに,「知恵蔵2007」(乙18の1),「知恵蔵2006」(乙1
8の2)の「セレクトショップ」の項目には,「・・新進のデザイナーや日
本ではまだ知名度の低い海外ブランドの商品を積極的に取り扱う。ビームス
やシップス,ユナイテッドアローズが良く知られているが,これらの企業
は,仕入商品だけでなく,SPA(判決注:自社で製造し販売する業態。乙
12)として,自社開発商品の品揃えにも取り組んでいる。」との記載があ
るが,原告ないし原登録商標についての記述はない。
(3)「EDIFICE」の店舗の売上高は,第27期(2005(平成17
年)年9月∼2006年(平成18年)8月)は40億2489万6803
円,第28期(2006年9月∼2007年(平成19年)8月)は49億
0118万0276円,第29期(2007年9月∼2008年(平成20
年)8月)は56億2472万4033円である(甲63)。
他方,「繊維白書2006年版」(乙11)によると,2004年(平成
16年)における「衣料品総小売市規模」は,「紳士服・洋品」,「婦人服
・洋品」,「子供・ベビー服・洋品」の市場の合計で,10兆130億円と
され,「アパレル産業白書2005」(乙12,19)によると,アパレル
関連企業227社の売上高の合計が,2004年度に約4兆円とされ,原告
を含む主要セレクトショップ6社の売上高の合計額は,2000年(平成1
2年)度1097億円,2001年(平成13年)度1338億8200万
円,2002年度1502億7000万円,2003年度1679億400
0万円,2004年度1802億5900万円である。また,同業他社と比
較すると,株式会社ユニクロのウェブサイトにおける「会社情報」(乙7)
中の「売上高」の欄によると,2008年8月期の売上高は,4623億円
とされ,株式会社しまむらのウェブサイトにおける「会社概要」(乙8)中
の「売上高」の欄によると,約3663億円(2009年2月20日決算)
とされている。
(4)原登録商標は,「EDIFICE」の店舗の看板,フロアーマット,メ
ッセージボード,フロアガイドボード,外壁,垂れ幕,商品の襟ネーム部や
タグに付されている(甲3の3ないし6,16,甲54の1ないし甲60の
4)。
平成9年(1997年)から平成20年(2008年)の間に発行された
男性向けファッション雑誌には,原登録商標の他「エディフィス」,「ED
IFICE」(冒頭の「E」に「´」(アクサンテギュ)が付されていない
もの。),「Edifice(冒頭の「E」は「´」(アクサンテギュ)が
付されている。以下同じ。)」,「Edifice×RobertKei
th」と横書き又は縦書きで記載された標章ないし原告の店舗名が原告の商
品と共に掲載されている。
具体的には,「MEN’SNON−NO」(発行部数24万8333
部。なお,以下の発行部数は甲35による。甲22の1,9,甲23の2,
4,5,7,甲24の1,4,7,12,甲25の2,5,10,14,甲
26の2,5,9,11,甲27の1,6,9,13,16,甲28の4,
8,12,甲29の4,7,12,13,甲30の10,14,19,甲3
1の2,7,9,13,甲32の3,8),「MEN’SCLUB」(発
行部数7万5625部,甲22の2,5,12,甲23の1,3,6,8,
甲24の3,5,8,10,13,甲25の1,3,6,11,13,甲2
6の1,4,8,10,13,甲27の2,5,10,12,15,甲28
の1,3,6,10,11,甲29の1,5,8,9,15,甲30の1,
3,7,13,16,21,甲31の1,3,6,8,11,14,甲32
の2,5,7,12,14),「LEON」(発行部数8万1266部。甲
22の3,7,10,13,16ないし19)「Men’sJOKE
R」(発行部数15万3791部。甲22の4,15),「UOMO」(発
行部数4万1250部。甲22の6,11),「CLASSY」(甲22の
8),「POPEYE」(年間発行部数7万0250部,甲24の2,6,
9,11,甲25の4,7ないし9,12,15,甲26の3,6,7,1
2,甲27の3,4,7,8,11,14,甲28の2,5,7,9,甲2
9の2,3,6,10,11,14,甲30の2,4ないし6,8,9,1
1,12,15,17,18,20,甲31の4,5,10,12,15,
甲32の1,4,6,9ないし11,13,15),「THESUIT
CATALOG」(甲33の1ないし3)に掲載されている。もっとも,こ
のうち雑誌の記事自体又は掲載された商品等に原登録商標が付されたもの
は,合計44誌(甲22の4,13,16,甲23の8,甲24の1,5,
甲25の8,12,15,甲26の5,12,甲27の7,8,11,1
3,16,甲28の3,7,9,10,甲29の10ないし12,甲30の
4ないし6,12,19,20,甲31の4,5,10,11,13,1
4,甲32の3,6ないし8,11ないし13,甲33の2,3)にとどま
る。
また,原告は,ウエブサイトを運営しており,その中で前記店舗を紹介し
ている(甲3ないし13の各1)他,「exite.ism」(甲3の
2),「GinzaVelVia館」(甲4の2),「ZOZO−TOW
N」(甲5,6,11の各2),「池袋PARCO」(甲7の2),「三菱
ビル」(甲8の2),「ルミネ横浜」(甲9の2),「クレアーレナディア
パーク」((甲10の2),「ミント神戸」(甲12の2),「イムズ」(
甲13の2),「マリンピア神戸」(甲14),「千歳アウトレットモー
ル」(甲15),「横浜ベイサイドマリーナ」(甲17),「ガーデンウォ
ーク幕張」(甲18),「ジャズドリーム長島」(甲19),「マリノアシ
ティ福岡」(甲20)のウエブサイトにおいても前記店舗等が紹介されてい
る。これらのウエブサイトでは,原登録商標又は「EDIFICE」と横書
きで記載した商標が付されている。
(5)原告の支出した広告宣伝・販売促進費は,上記第28期が9974万6
296円,第29期が9269万2206円である(甲65の1,2)。宣
伝媒体としては,前記ファッション雑誌への掲載の他に,「YAHOO!J
APAN」における「鈴木一真」を起用してのバナー広告(平成20年8月
開始,甲36の1ないし5)があり,平成20年8月22日から31日まで
の閲覧数は合計54万3597回であった(甲36の6)。また,「エディ
フィス」の商標に係る環境保護活動「MOTTAINAI」との共催企画と
して被服類のリサイクル活動を行ったり(甲37の1,2),平成19年3
月にドコモとの共催企画として,ドコモのプレミア会員に対するキャンペー
ンにおいて「EDIFICE」をネームとして使用したバッグを配付した
り,平成19年3月に「au」との企画で専用ケース等のアクセサリーを製
作したり(同年5月,11月,平成20年1月,4月にも実施),同年12
月に映画「PEACEBED」との共催企画として,Tシャツを製作販売
したり,同年12月に「ネッツトヨタ福島株式会社」からの依頼で「EDI
FICE」に係る制服を製作販売し,平成20年2月に「ANA」との共催
企画として,「マイレージクラブ」に「EDIFICE」に係るバッグを掲
載したり,同月に「LARK」との共催企画として携帯灰皿に「EDIFI
CE」を使用することを許諾したりした(甲38)。
さらに,「横浜マリノス」のウエブサイトにオフィシャルパートナーとし
て原登録商標が付され(甲21),「GQJAPAN」2005年(平成
17年)12月号では,カルロス・ゴーン氏が東京モーターショーのプレゼ
ンテーション用に選んだのが「エディフィス」のスーツであったことが紹介
されている(甲39)。
3判断
(1)以上の認定事実によれば,原告は,「セレクトショップ」の業界で「ユ
ナイテッドアローズ」,「ビームス」,「シップス」と並ぶ売上高を上げて
おり,2007年8月期における売上高は500億円に上ること,原登録商
標を付した原告の店舗が首都圏をはじめ日本各地に存すること,原登録商標
を含め「EDIFICE」又は「エディフィス」の名称を含む記事が,代表
的なファッション雑誌に多数掲載されていること等に照らすならば,需要者
の間において,原登録商標がある程度は知られているということができる。
しかし,①原登録商標は使用が開始されてから約10年にとどまること,
②原告の店舗も首都圏以外は大都市に存在するにとどまること,③ファッシ
ョン雑誌への掲載についても,原登録商標が付されたものは多くはないこ
と,④原告の開設しているウエブサイト等について,原登録商標が付された
ものも存するが,需要者がどの程度,閲覧しているか必ずしも明らかでない
こと,⑤原登録商標を付した商品の,前記雑誌やウエブサイト以外の宣伝広
告についても,平成17年12月のものが一部ある他は平成19年3月以降
のものしか存しない上に,その際どのように原登録商標の付された商品が宣
伝されたのか明らかでないこと,⑥原告店舗ないし原登録商標を付した商品
の売上高は,市場全体からみれば1%にも満たないし,主要セレクトショッ
プ6社全体の売上高と対比しても多いとはいえないこと,⑦前記ファッショ
ンブランドに関連する書籍には,「ユナイテッドアローズ」,「ビーム
ス」,「シップス」に関して紹介されたものがあるが,原告ないし原登録商
標に関して紹介されたものはないこと,「知恵蔵」の「セレクトショップ」
の項目でも,原告ないし原登録商標に関する掲載はないこと等の事実が認め
られる。
以上によれば,原登録商標は,出願時及び審決時において,需要者の間
に,商品や役務が類似していないものに付された場合においてもなお,商
品,役務の出所に混同を来す程に強い識別力,すなわち,そのような程度に
至るまでの著名性を有していると認めることはできない。
(2)原告は,①ファッション雑誌に原登録商標を付すか否かは当該出版社の
判断によるものであるから,審決が,原登録商標を付されたものが少ないこ
とをもって,著名性を否定した点には誤りがあること,②ファッションに関
心のある需要者は,大都市まで赴いて購入するはずであるから,審決が,原
登録商標を付した店舗が首都圏以外では大都市にしか存しないことを理由と
して,原登録商標の著名性を否定した点には誤りがあること等を総合すれ
ば,原登録商標が著名であることが認められるべきであると主張する。しか
し,そのような点があったとしても,原登録商標について,強い識別力ない
し著名性があるとはいえないとの前記認定を左右するものとはいえない。
4結論
以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がない。原告はその他縷々
主張するが,審決を取り消すべきその他の違法は認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
中平健
裁判官
上田洋幸
(別紙1)
(別紙2)

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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