弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人Aに対し原判決を、その余の被告人に対し原判決及び第一審判決
を破棄する。
     被告人等を免訴する。
         理    由
 被告人等は、所定の期間内に上告趣意書を差し出さないが、本件公訴にかかる公
職選挙法違反の罪については、原判決に対し上告の申立があつた後に、昭和三一年
政令第三五五号大赦令により大赦があつたので、刑訴四一一条五号、四一三条但書、
四一四条、四〇四条、三三七条三号により主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官垂水克己の補足意見があるほか裁判官全員の一致した意見によ
るものである。裁判官垂水克己の補足意見は次のとおりである。
 一、上告申立書は適法に提出されたが趣意書を提出しないで差出最終日を徒過し
た後大赦があつたという場合は、職権で免訴判決ができる、と、私は考える。
 上告審は法律審であつて、しかも原判決に刑訴四〇五条所定の違法(違憲を含む)
ありとの上告当事者の主張があつた場合に、主張事項についてのみ、上告裁判所は
判決をもつて判断を示すべき権利義務(一種の訴訟係属ともいうべき法的拘束力)
を持つにいたる。しかし実体的真実主義、職権主義が作用するので、上告に伴ない
上告裁判所は職権調査をして、法令違反その他一定の事由があつて原判決を破棄し
なけば著しく正義に反すると認めるときは原判決を破棄する権限を持つ(刑訴四一
一条)。すなわち、上告裁判所は、上告に対する審判をし、及び、上告に随伴して
職権で調査判決する権限を持つ。
 とはいえ、「上告なければ職権調査なし」。そして、上告とは上告した当事者が
原判決を取り消す自己に有利な判決を求め、その理由として原判決の違法(同四〇
五条所定のものに限られる)を主張することである。判決を求める申立は上告申立
書を期間内に差し出してしなければならないが、上告理由の主張はその後の所定期
間内に上告趣意書を差し出すという形ですることを要しかつこれをもつて足る。従
つて、第一に、適法に趣意書の提出がないときは「主張がないから判決しない。」
という非本案裁判をする(同四一四条、三八六条一項一号による上告棄却決定)。
第二に、合式に趣意書の提出があつてもその主張が同四〇五条で限定された以外の
不適法のもので、上告裁判所をして判決をもつてこれに対する判断を示させるべき
拘束力を生じないものであるときは、「許された主張でないから、従つて、主張理
由の当否を判決するを要しないから、判決しない。」という非本案裁判をする(同
四〇五条の上告理由に当らないとの意味で同四一四条、三八六条一項三号による上
告棄却決定)。原判決の事実誤認をいうものや、その他原判決の違法を主張しない
ものや、被告人による自己に不利な違法の主張の如きはすべてこれに属する。上告
裁判所はその職権調査事項に過ぎないことを上告理由とする主張に対し、上告理由
の当否の判断を与えなくても判断遺脱の違法はない。
 上告裁判所が刑訴四一一条所定の裁判の実体に関し職権で調査判決するには、先
ずもつて事件が適法に上告審に係属しなければならない。問題となるのは、適法な
上告ありとするには単に(1)適法な上告申立書の提出があればよいか、更に(2)
適法な上告趣意書の提出或に更に(3)上告適法の理由を具えた趣意書の提出がな
ければならないかである。私は適法な上告申立書の提出さえあれば事件は適法に上
告審に係属すると考える。けだし職権調査は当事者の主張の有無、主張の適法不適
法に拘わりなくすることができるのを本質とするからである。上告裁判所が再審事
由若くは非常上告事由があることを認めつつ事件を確定させ、確定後再審若くは非
常上告手続を行う如きはナンセンスというよりは正義に反する。
 二、大赦のあつた罪については「まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴
権は消滅する」(恩赦三条二号)から、新たな公訴も現存の公訴も不適法となり、
裁判所は刑訴三三七条三号に従い免訴の判決をしなければならない。免訴判決によ
り、その公訴事実については永久に公訴を提起・維持することも、従つて公訴に基
く実体的裁判をすることも不適法となる。提出された趣意書に適法な上告理由の主
張がない場合には上告裁判所は判決しないというのは上告理由の当否の本案裁判を
しないということである。公訴権の消滅により全体としての訴訟につき本案の実体
裁判権そのものが根本から失われる場合に今更ら上告理由の主張の有無、適法不適
法を検討し判決を二、三にすべき理由はない。趣意書差出期限後に大赦があつたと
きは、趣意書においてこの事由を主張するに由なく、差出期限前に上告適法の理由
を主張したことは免訴判決を受ける上に何の足しにもならない。差出期限前趣意書
未提出被告人に対し免訴判決をしないのも不合理である。
  昭和三二年二月二七日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    高   橋       潔

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