弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人戸田宗孝上告趣意第一点について。
 原判決判示第一及び第二の事実は、まさに「連続したる数個の行為にして同一の
罪名に触るゝとき」に該当するむしろ典型的な場合である。されば、刑法の一部改
正に当り、刑法第五五条が削除された以前の法律状態の下においては、連続犯に該
当し、「一罪として処断す」べきものであつた。そして、同条削除の後は、前記二
個の犯行を併合罪として処断すべきは当然であつて、原判決が刑法第四五条前段を
適用したのは、まことに正当である。論旨は、それ故に理由がない。
 同第二点について。
 所論は、先に懲役一年執行猶予三年間の判決の言渡を受け、判決確定し、執行猶
予中の状態にあつた被告人が、さらに他の犯罪を行い懲役十月の言渡を受けた場合
に、その刑につき執行猶予の言渡をすることが、法律上可能であるか否かの問題に
触れている。そして、論旨は、刑法第二五条第一号にいわゆる「前に禁錮以上の刑
に処せられたることなき者」とは、「前に禁錮以上の刑の言渡を受けその刑の執行
を受けたることなき者」という意味であるから、本件の場合においても刑の執行猶
予を言渡すことは、法律上不可能ではないと主張するのである。
 しかしながら、刑の執行猶予の制度は、犯罪の情状比較的軽く、そのまゝにして
改過遷善の可能性ありと認められる被告人に対しては、短期自由刑の実刑を科する
ことによつて、被告人が兎もすれば捨鉢的な自暴自棄に陥つたり、刑務所内におけ
るもろもろの悪に汚染したり、又は釈放後の正業復帰を困難ならしめたりすること
のないように、刑の宣告をする裁判所が、刑の宣告と同時に、一定期間刑の執行を
猶予することを言渡すものである。そして、一方においては、執行猶予の言渡を取
消されることなく無事に猶予期間を経過したときは、刑の言渡は終局的にその効力
を失うものとして、被告人の改過遷善を助長すると共に、他方においては、被告人
が再び犯罪を行つたごとき場合には、いつでも執行猶予の言渡を取消し実刑を執行
すべき警告をもつて、被告人の行動の反省と謹慎を要請しているのである。すなわ
ち、これによつて刑罰の目的を妥当に達成せんとする刑事政策的配慮を多分に加味
したものであることは、言うを待たない。
 そこで、刑法第二五条について考えると、(一)前に禁錮以上の刑の確定判決を
受けたことのない者、(二)かゝる確定判決を受けたことはあるがその執行を終り
又はその執行の免除を得た日から七年間も謹慎生活を続け七年以内には再び禁錮以
上の刑の確定判決を受けたことがない者に対しては、実刑を科さなくとも改過遷善
の可能性ありと裁判所が認めた場合には、執行猶予の言渡ができるものとしたので
ある。かゝる確定判決を受けた者は、たとい刑の執行猶予中であるにしても、再び
犯罪を行つた場合には実刑を科せずして改過遷善の可能性ありとは法律上認め難い
のであつて執行猶予を附することはできないものと言わなければならぬ。さらに、
刑法第二六条第一号によれば、「猶予の期間内更に罪を犯し禁錮以上の刑に処せら
れたるとき」は、先になされた刑の執行猶予さえ取消さるべきものである。かゝる
場合に新犯罪の刑につき執行猶予を言渡すことができないと解すべきは、まさに理
の当然である。また、刑法第二五条第二号をよく見れば、「刑に処せられ」という
は、所論のごとく刑の執行を受けたることゝ関連がないことは、容易に理解される
であろう。論旨は、それ故にこの点において理由がない。
 同第三点について。
 原審が、挙示の証拠によつて判示事実を認定したことは、肯認し得るところであ
る。所論は、結局原審の証拠の取捨又は事実の認定を非難するに帰着し、法律審適
法の上告理由として認めることはできない。
 同第四点について。
 所論の字句は、当該公判調書を通覧すれば権限ある書記によつて記載されたもの
であることは、容易に認め得られる。論旨は、それ故に採ることができない。
 よつて旧刑事訴訟法第四四六条に従い主文の如く判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 長部謹吾関与
  昭和二四年三月三一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔

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