弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。
       上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人竹内浩史,同佐久間信司,同新海聡,同西野昭雄,同杉浦英樹,同滝
田誠一,同平井宏和,同森田茂,同高森裕司の上告受理申立て理由について
 1 市町村の議会の議員の定数については,地方自治法(平成11年法律第87
号による改正前のもの。以下同じ。)91条1項が,各市町村の人口数に応じた定
数の基準等を定めているが,同条2項により,条例で特にこれを減少することがで
きるものとされている。公職選挙法(以下「公選法」という。)は,地方自治法2
52条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)の議会の議員の選挙
につき,区の区域をもって選挙区とし(公選法15条6項ただし書),各選挙区に
おいて選挙すべき議員の数は,人口に比例して,条例で定めなければならないが(
同条8項本文),特別の事情があるときは,おおむね人口を基準とし,地域間の均
衡を考慮して定めることができることとしている(同項ただし書)。
 公選法15条8項は,憲法の定める選挙権の平等の原則を受け,地方公共団体の
議会の議員の定数配分につき,人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし,各選挙
人の投票価値が平等であるべきことを強く要求している。もっとも,前記のような
指定都市の議会の議員の定数,選挙区及び選挙区への定数配分に関する現行法の定
めからすれば,区のうち配当基数(当該指定都市の人口を当該市議会の議員定数で
除して得た数をもって当該区の人口を除して得た数)が1を大きく下回るものにつ
いても,これを1選挙区として定数1人を配分すべきことになるから,このような
選挙区と他の選挙区とを比較した場合には,投票価値の較差が相当大きくなること
は避けられない。また,公選法15条8項ただし書の規定を適用していかなる事情
の存するときにその修正を加えるべきか,また,どの程度の修正を加えるべきかに
ついて客観的基準が存するものでもない。したがって,議員定数の配分を定めた条
例の規定(以下「定数配分規定」という。)が同項の規定に適合するかどうかにつ
いては,指定都市の議会の具体的に定めるところが上記のような選挙制度の下にお
ける裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決するほかはない。
しかし,定数配分規定の制定又はその改正により具体的に決定された定数配分の下
における選挙人の投票の有する価値に不平等が存し,あるいはその後の人口の変動
により上記不平等が生じ,それが指定都市の議会において地域間の均衡を図るなど
のため通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお,一般的に合理性を有す
るものとは考えられない程度に達しているときは,上記のような不平等は,もはや
当該議会の合理的裁量の限界を超えているものと推定され,これを正当化すべき特
別の理由が示されない限り,同項違反と判断されざるを得ないものというべきであ
る。以上は,当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和58年(行ツ)
第115号同59年5月17日第一小法廷判決・民集38巻7号721頁,最高裁
昭和63年(行ツ)第176号平成元年12月18日第一小法廷判決・民集43巻
12号2139頁,最高裁平成元年(行ツ)第15号同年12月21日第一小法廷
判決・民集43巻12号2297頁,最高裁平成2年(行ツ)第64号同3年4月
23日第三小法廷判決・民集45巻4号554頁,最高裁平成4年(行ツ)第17
2号同5年10月22日第二小法廷判決・民集47巻8号5147頁参照)。
 2 本件は,平成12年7月30日施行の名古屋市議会議員中区選挙区補欠選挙
(以下「本件選挙」という。)の選挙の効力を争う定数訴訟である。上告人らは,
本件選挙の前提となった同11年4月11日施行の名古屋市議会議員一般選挙(以
下「11年一般選挙」という。)当時における定数配分規定が公選法に違反してお
り,その違法事由が本件選挙の時点においても存在していたことを主張するものと
解される。
 原審の適法に確定したところによれば,11年一般選挙当時の名古屋市議会の議
員の定数及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例(昭和42年名古
屋市条例第4号。平成12年名古屋市条例第67号による改正前のもの。以下「本
件条例」という。)における定数及び定数配分の状況は,以下のとおりである。1
1年一般選挙当時の名古屋市の人口(平成7年国勢調査人口。以下同じ。)からす
れば,地方自治法91条1項に基づく定数は88人となるが,本件条例による現実
の定数は78人にとどまっている。選挙区間における議員1人当たりの人口の最大
較差は1対1.81(中区対緑区。以下,較差に関する数値はいずれも概数である。)
であり,いわゆる逆転現象は20通り,そのうち定数2人の差のある顕著な逆転現
象は9通りあった。そして,11年一般選挙当時における各選挙区の人口,配当基
数及び配当基数に応じて定数を配分した人口比定数(公選法15条8項本文の人口
比例原則に基づいて配分した定数)は,原判決添付別紙のとおりであって,いずれ
の選挙区においても人口比定数は2人以上であり,上記人口比定数による選挙区間
における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対1.31となる。
 地方公共団体の議会の議員の定数配分については,選挙区の人口と配分された定
数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準となるところ,本件において,その
比率の最大較差は,上記のとおり,1対1.81という値である。この値は,人口
比定数によった場合の最大較差をかなり上回るが,公選法15条8項ただし書の定
めがある以上,上記の点を理由に直ちに違法ということはできない。もっとも,本
件条例による定数配分には,上記の点に加えて逆転現象が少なからず存在するなど
,人口比例原則に反する点があることは否定し難いところである。しかしながら,
【要旨】公選法が定める前記のような指定都市の議会の議員の選挙制度の下におい
ては,11年一般選挙当時における上記のような投票価値の不平等は,前示の諸般
の要素をしんしゃくしてもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度
に達していたものとはいえず,議会に与えられた裁量権の合理的な行使の限界を超
えるものと断定することはできない。したがって,本件条例の定数配分規定は,公
選法15条8項に違反するものとはいえない。
 3 以上によれば,本件条例の定数配分規定が公選法15条8項に違反するもの
ではないとした原審の判断は,是認することができ,所論引用の判例に抵触するも
のではない。論旨は,採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道 裁判官 濱田
邦夫)

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