弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決中被告人に関する部分を破棄する。
     臨時物資需給調整法に違反する事実について被告人を免訴する。
     被告人を懲役一年三月に処する。
     押収にかかる現金一万八千円はこれを没収する。
     被告人から金二十五万八千円を追徴する。
     第一審における訴訟費用中証人Aに支給した分は被告人と相被告人Bの
連帯負担、証人C、同D、同Eに支給した分は被告人と第一審各相被告人の連帯負
担及び当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 職権で調査するに、被告人が第一審相被告人Fと共謀の上法定の除外事由がない
のに拘らず、昭和二四年二月一二日頃から同年四月二一日頃までの間三回にわたり
飼料配給公団愛知県支所において、G外一名に対し所定の割当証明書によらないで
米糠油粕合計四百二十一俵を譲渡する手続をした旨の公訴事実(第一審判決判示第
四の事実)については、昭和二七年政令第一一七号一条八八号により大赦があつた
ので刑訴四一一条五号、四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三七条三号により
原判決及び第一審判決中被告人に関する部分を破棄し、被告人に対し右公訴事実に
ついて免訴の言渡をする。
 弁護人武藤鹿三の上告趣意第一点及び第二点について
 憲法第三七条第二項の法意は裁判所は被告人又は弁護人から申請した証人を、不
必要と思われる者まで悉く尋問しなければならないという趣旨ではないことは、当
裁判所の判例とするところであり(昭和二三年(れ)第二三〇号同年七月二九日大
法廷判決)、司法警察員に対する被告人の供述調書の任意性の調査は、裁判所が適
当と認める方法によつてこれを行うことができるものであり、必ずしも証人の取調
によつて認定するの要なく(本件において、第一審裁判所は所論供述調書の任意性
について丹羽地区警察署刑事主任Cを証人として取り調べている)、また、自首は
任意的減軽事由であつて減軽するか否かも裁判所の自由裁量に任せられているとこ
ろである。されば、第一審が所論各証人を必要ないものと認めてこれを取り調べな
かつた措置を是認した原判決は正当であつて、論旨は理由がない、
 同第三点について。
 憲法三八条一項の法意は、威力その他特別の手段を用いて供述する意思のない被
告人をして供述を余儀なくせしめることを禁ずる趣意であることは当裁判所の判例
とするところであるが(昭和二三年(れ)第一〇一〇号、同二四年二月九日大法廷
判決)、被告人が丹羽地区警察署において取調を受けた際当該取調官から、自己の
意思に反し、自己に不利益な供述を余儀なくせしめられたとの事実は、記録上これ
を認めるに足る証跡なく、従つて、所論憲法違反の主張は前提を欠き、刑訴四〇五
条の上告理由に当らない。
 よつて、第一審判決が証拠により確定した右大赦にかからない事実(同判決判示
第三の事実)に法律を適用すると、被告人の所為は各刑法一九七条の三第二項、一
項に該当するところ、同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条、一〇条によ
り犯情の重い昭和二四年五月二日の犯行の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告
人を懲役一年三月に処し、主文第四、五項掲記の各金員は同法一九七条の四に従い
これを没収、追徴することとし、訴訟費用は刑訴一八一条一項、一八二条に則り主
文第六項掲記のように被告人にこれを負担させるものとする。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
 検察官 神山欣治出席
  昭和二八年二月一二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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