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平成14年(行ケ)第127号 特許取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成14年11月14日
判          決
原      告    日立金属株式会社
訴訟代理人弁理士    高 石 橘 馬
被      告    特許庁長官 太 田 信一郎
指定代理人       西 川 正 俊
同    石 井 茂 和
同    小 林 信 雄
同    大 橋 良 三
同    涌 井 幸 一
同    高 橋 泰 史
主           文
1 特許庁が異議2000-72184号事件について平成14年1月30
日にした決定中,特許第2983016号の請求項2,5ないし8に係る特許を取
り消す,とした部分を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
(1) 主文1項と同旨。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「マルチバンド用高周波スイッチモジュール」とする
特許2983016号の特許(平成10年8月10日出願(国内優先権平成9年1
2月3日),平成11年9月24日設定登録,以下「本件特許」といい,その発明
を「本件発明」という。)の特許権者である。
本件特許につき,請求項1ないし9に対し,特許異議の申立てがなされた。
特許庁は,これを異議2000-72184号事件として審理し,原告は,
その審理の過程で,請求項1ないし9を,後記(4)(ア)のとおりとする訂正を含む訂
正の請求をした。特許庁は,審理の結果,平成14年1月30日,「訂正を認め
る。特許第2983016号の請求項2,5ないし8に係る特許を取り消す。同請
求項1,3ないし4に係る特許を維持する。」との決定をし,同年2月16日に,
その謄本を原告に送達した。
(2) 決定の理由
請求項2,5ないし8についての決定の理由は,要するに,請求項2,5な
いし8に係る発明の特許は,いずれも,特許法29条2項の規定に違反して登録さ
れたものである,とするものである。
(3) 原告は,本訴係属中の平成14年8月26日,本件特許の出願の願書に添付
された明細書の訂正をすることについて審判を請求した。特許庁は,これを訂正2
002-39176号事件として審理し,その結果,平成14年10月18日に上
記訂正をすることを認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし,これが確
定した。
(4) 訂正審決による訂正の内容のうち,特許請求の範囲に係る部分は,次のとお
りである。
(ア) 訂正審決による訂正前の本件特許の特許請求の範囲
「【請求項1】 複数の異なる帯域に対応した携帯電話に用いるマルチバン
ド用高周波スイッチモジュールであって,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異
なる複数の送受信系に信号を分波する分波回路を有し,前記各送受信系のそれぞれ
に送信系と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記分波回路はLC回路で構
成され,前記スイッチ回路はダイオードと伝送線路を主構成とし,前記分波回路の
LC回路及び前記スイッチ回路の伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体
内に,前記電極パターンにより構成され,前記ダイオードは,前記積層体上に配置
して構成され,前記積層体内において,前記スイッチ回路の伝送線路用の電極パタ
ーンは,グランド電極に挟まれた領域に形成され,前記分波回路の容量成分用の電
極パターンは,前記伝送線路用の電極パターンを挟むグランド電極の内,上側のグ
ランド電極の上部に誘電体層を介して形成され,前記分波回路のインダクタンス成
分用の電極パターンは,前記容量成分用の電極パターンの上部に誘電体層を介して
形成され,前記積層体の外表面には,前記複数の送受信系の共通端子,前記各送受
信系のそれぞれの送信系端子,受信系端子が形成されており,もって前記携帯電話
がある帯域を利用可能であるときには,その帯域に対応した送受信系のみに送信信
号及び受信信号が流れることを特徴とする通過帯域の異なる複数の送受信系を扱う
マルチバンド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項2】 アンテナを共用し,複数の異なる帯域に対応した携帯電話
に用いるマルチバンド用高周波スイッチモジュールであって,前記アンテナに接続
され,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異なる複数の送受信系に信号を分波す
る分波回路を有し,前記分波回路に接続され,前記各送受信系のそれぞれに送信系
と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記スイッチ回路の各送信系にローパ
スフィルタを有し,前記分波回路はLC回路で構成され,前記スイッチ回路はダイ
オードと伝送線路を主構成とし,前記ローパスフィルタはLC回路で構成され,前
記分波回路のLC回路,前記ローパスフィルタのLC回路及び前記スイッチ回路の
伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体内に,前記電極パターンにより構
成され,前記ダイオードは,前記積層体上に配置して構成され,前記積層体の外表
面には,前記複数の送受信系の共通端子,前記各送受信系のそれぞれの送信系端
子,受信系端子が形成されており,もって前記携帯電話がある帯域を利用可能であ
るときには,その帯域に対応した送受信系のみに送信信号及び受信信号が流れるこ
とを特徴とする通過帯域の異なる複数の送受信系を扱うマルチバンド用高周波スイ
ッチモジュール。
 【請求項3】 前記積層体内において,前記スイッチ回路の伝送線路用の
電極パターンは,グランド電極に挟まれた領域に形成され,前記分波回路の容量成
分用の電極パターン及び前記ローパスフィルタ回路の容量成分用の電極パターン
は,前記伝送線路用の電極パターンを挟むグランド電極の内,上側のグランド電極
の上部に誘電体層を介して形成され,前記分波回路のインダクタンス成分用の電極
パターン及び前記ローパスフィルタ回路のインダクタンス成分用の電極パターン
は,前記容量成分用の電極パターンの上部に誘電体層を介して形成されていること
を特徴とする請求項2記載のマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項4】 前記積層体において,前記分波回路と前記ローパスフィル
タ回路とは,前記積層体の水平方向の別領域に別れて形成されていることを特徴と
する請求項2又は3記載のマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項5】 アンテナを共用し,複数の異なる帯域に対応した携帯電話
に用いるマルチバンド用高周波スイッチモジュールであって,前記アンテナに接続
され,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異なる複数の送受信系に信号を分波す
る分波回路を有し,前記分波回路に接続され,前記各送受信系のそれぞれに送信系
と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記分波回路はLC回路で構成され,
前記スイッチ回路はダイオードと伝送線路を主構成とし,前記分波回路のLC回路
及び前記スイッチ回路の伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体内に,前
記電極パターンにより構成され,ダイオードは,前記積層体上に配置して構成さ
れ,前記積層体の外表面には,前記複数の送受信系の共通端子,前記各送受信系の
それぞれの送信系端子,受信系端子が形成され,前記積層体の各側面には,少なく
とも1つのグランド端子が形成されており,もって前記携帯電話がある帯域を利用
可能であるときには,その帯域に対応した送受信系のみに送信信号及び受信信号が
流れることを特徴とするマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項6】 アンテナを共用し,複数の異なる帯域に対応した携帯電話
に用いるマルチバンド用高周波スイッチモジュールであって,前記アンテナに接続
され,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異なる複数の送受信系に信号を分波す
る分波回路を有し,前記分波回路に接続され,前記各送受信系のそれぞれに送信系
と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記分波回路はLC回路で構成され,
前記スイッチ回路はダイオードと伝送線路を主構成とし,前記分波回路のLC回路
及び前記スイッチ回路の伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体内に,前
記電極パターンにより構成され,前記ダイオードは,前記積層体上に配置して構成
され,前記積層体の外表面には,前記複数の送受信系の共通端子,前記各送受信系
のそれぞれの送信系端子,受信系端子が形成され,前記高周波端子(前記共通端
子,各送信系端子,各受信系端子)間には,グランド端子またはスイッチ回路制御
端子が配置され,前記高周波端子が隣り合わない構造に配置されており,もって前
記携帯電話がある帯域を利用可能であるときには,その帯域に対応した送受信系の
みに送信信号及び受信信号が流れることを特徴とするマルチバンド用高周波スイッ
チモジュール。
 【請求項7】 前記スイッチ回路の各送信系にローパスフィルタを有し,
積層体の外表面に形成された前記スイッチ回路制御端子からダイオードに加える電
圧により前記ダイオードを制御して,通過帯域の異なる複数の送受信系の送信系及
び受信系とアンテナとの接続を切り換えることを特徴とする請求項5又は6記載の
マルチバンド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項8】 前記分波回路は2つのノッチ回路を主回路とし,該ノッチ
回路の内の一つとその後段に配置されるスイッチ回路との間に,アースに接続され
るコンデンサが配置され,前記積層体上に配置されたチップ素子を包囲する金属ケ
ースが前記積層体上に配置されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに
記載のマルチバンド用高周波スイッチモジュール。」
(イ) 訂正審決による訂正後の特許請求の範囲(下線部が訂正された箇所であ
る。なお,訂正前の請求項4が訂正後の請求項4及び5に訂正され,訂正前の請求
項5ないし8が,訂正により,順次,請求項6ないし9に訂正されている。)
「【請求項1】 複数の異なる帯域に対応した携帯電話に用いるマルチバン
ド用高周波スイッチモジュールであって,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異
なる複数の送受信系に信号を分波する分波回路を有し,前記各送受信系のそれぞれ
に送信系と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記分波回路はLC回路で構
成され,前記スイッチ回路はダイオードと伝送線路を主構成とし,前記分波回路の
LC回路及び前記スイッチ回路の伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体
内に,前記電極パターンにより構成され,前記ダイオードは,前記積層体上に配置
して構成され,前記積層体内において,前記スイッチ回路の伝送線路用の電極パタ
ーンは,グランド電極に挟まれた領域に形成され,前記分波回路の容量成分用の電
極パターンは,前記伝送線路用の電極パターンを挟むグランド電極の内,上側のグ
ランド電極の上部に誘電体層を介して形成され,前記分波回路のインダクタンス成
分用の電極パターンは,前記容量成分用の電極パターンの上部に誘電体層を介して
形成され,前記積層体の外表面には,前記複数の送受信系の共通端子,前記各送受
信系のそれぞれの送信系端子,受信系端子が形成されており,もって前記携帯電話
がある帯域を利用可能であるときには,その帯域に対応した送受信系のみに送信信
号及び受信信号が流れることを特徴とするマルチバンド用高周波スイッチモジュー
ル。
 【請求項2】 アンテナを共用し,複数の異なる帯域に対応した携帯電話
に用いるマルチバンド用高周波スイッチモジュールであって,前記アンテナに接続
され,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異なる複数の送受信系に信号を分波す
る分波回路を有し,前記分波回路に接続され,前記各送受信系のそれぞれに送信系
と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記スイッチ回路の各送信系にローパ
スフィルタを有し,前記分波回路はLC回路で構成され,前記スイッチ回路の各々
はダイオードと伝送線路を主構成とするとともに,前記ダイオードとして,アンテ
ナ側にアノードが接続され,送信側にカソードが接続された第一のダイオードと,
受信側にカソードが接続され,アース側にアノードが接続された第二のダイオード
とを具備し,前記第一のダイオードと前記第二のダイオードとは伝送線路を介する
がコンデンサを介さずに直列に接続されており,そのために前記第二のダイオード
のアノード側から前記第一及び第二のダイオードに所定の電圧を加えることにより
前記第一及び第二のダイオードは制御され,前記ローパスフィルタはLC回路で構
成され,前記分波回路のLC回路,前記ローパスフィルタのLC回路及び前記スイ
ッチ回路の伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体内に,前記電極パター
ンにより構成され,前記ダイオードは,前記積層体上に配置して構成され,前記積
層体内において,複数の異なる帯域用の全てのスイッチ回路の受信側の伝送線路用
の電極パターンはグランド電極に挟まれた領域に形成され,前記グランド電極のう
ち積層方向の上側のグランド電極が形成された誘電体層にはスルーホール電極が形
成され,前記スルーホール電極を介して前記受信側の伝送線路用の電極パターンが
第一のダイオードのアノードと接続し,前記積層体の外表面には,前記複数の送受
信系の共通端子,前記各送受信系のそれぞれの送信系端子,受信系端子が形成され
ており,もって前記携帯電話がある帯域を利用可能であるときには,その帯域に対
応した送受信系のみに送信信号及び受信信号が流れることを特徴とするマルチバン
ド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項3】 アンテナを共用し,複数の異なる帯域に対応した携帯電話
に用いるマルチバンド用高周波スイッチモジュールであって,前記アンテナに接続
され,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異なる複数の送受信系に信号を分波す
る分波回路を有し,前記分波回路に接続され,前記各送受信系のそれぞれに送信系
と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記スイッチ回路の各送信系にローパ
スフィルタを有し,前記分波回路はLC回路で構成され,前記スイッチ回路はダイ
オードと伝送線路を主構成とし,前記ローパスフィルタはLC回路で構成され,前
記分波回路のLC回路,前記ローパスフィルタのLC回路及び前記スイッチ回路の
伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体内に,前記電極パターンにより構
成され,前記ダイオードは,前記積層体上に配置して構成され,前記積層体の外表
面には,前記複数の送受信系の共通端子,前記各送受信系のそれぞれの送信系端
子,受信系端子が形成されており,前記積層体内において,前記スイッチ回路の伝
送線路用の電極パターンは,グランド電極に挟まれた領域に形成され,前記分波回
路の容量成分用の電極パターン及び前記ローパスフィルタ回路の容量成分用の電極
パターンは,前記伝送線路用の電極パターンを挟むグランド電極の内,上側のグラ
ンド電極の上部に誘電体層を介して形成され,前記分波回路のインダクタンス成分
用の電極パターン及び前記ローパスフィルタ回路のインダクタンス成分用の電極パ
ターンは,前記容量成分用の電極パターンの上部に誘電体層を介して形成されてお
り,もって前記携帯電話がある帯域を利用可能であるときには,その帯域に対応し
た送受信系のみに送信信号及び受信信号が流れることを特徴とするマルチバンド用
高周波スイッチモジュール。
 【請求項4】 アンテナを共用し,複数の異なる帯域に対応した携帯電話
に用いるマルチバンド用高周波スイッチモジュールであって,前記アンテナに接続
され,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異なる複数の送受信系に信号を分波す
る分波回路を有し,前記分波回路に接続され,前記各送受信系のそれぞれに送信系
と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記スイッチ回路の各送信系にローパ
スフィルタを有し,前記分波回路はLC回路で構成され,前記スイッチ回路はダイ
オードと伝送線路を主構成とし,前記ローパスフィルタはLC回路で構成され,前
記分波回路のLC回路,前記ローパスフィルタのLC回路及び前記スイッチ回路の
伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体内に,前記電極パターンにより構
成され,前記積層体において,前記分波回路と前記ローパスフィルタ回路とは,前
記積層体の水平方向の別領域に別れて形成されており,前記ダイオードは,前記積
層体上に配置して構成され,前記積層体の外表面には,前記複数の送受信系の共通
端子,前記各送受信系のそれぞれの送信系端子,受信系端子が形成されており,も
って前記携帯電話がある帯域を利用可能であるときには,その帯域に対応した送受
信系のみに送信信号及び受信信号が流れることを特徴とするマルチバンド用高周波
スイッチモジュール。
 【請求項5】 前記積層体において,前記分波回路と前記ローパスフィル
タ回路とは,前記積層体の水平方向の別領域に別れて形成されていることを特徴と
する請求項3記載のマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項6】 アンテナを共用し,複数の異なる帯域に対応した携帯電話
に用いるマルチバンド用高周波スイッチモジュールであって,前記アンテナに接続
され,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異なる複数の送受信系に信号を分波す
る分波回路を有し,前記分波回路に接続され,前記各送受信系のそれぞれに送信系
と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記分波回路はLC回路で構成され,
かつ前記分波回路の低周波数側はLCノッチ回路で構成されるとともに,前記LC
ノッチ回路にはアースに直接接続されるコンデンサが接続しており,前記スイッチ
回路はダイオードと伝送線路を主構成とし,前記分波回路のLC回路及び前記スイ
ッチ回路の伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体内に,前記電極パター
ンにより構成され,前記コンデンサの電極パターンは,前記LCノッチ回路のイン
ダクタンス成分用の電極パターンと容量成分用の電極パターンとにスルーホールを
介して接続しているとともに,誘電体層を介してグランド電極と面するように形成
されており,前記ダイオードは,前記積層体上に配置して構成され,前記積層体の
外表面には,前記複数の送受信系の共通端子,前記各送受信系のそれぞれの送信系
端子,受信系端子,スイッチ回路制御端子が形成され,前記積層体の各側面には,
少なくとも1つのグランド端子が形成されており,もって前記携帯電話がある帯域
を利用可能であるときには,その帯域に対応した送受信系のみに送信信号及び受信
信号が流れることを特徴とするマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項7】 アンテナを共用し,複数の異なる帯域に対応した携帯電話
に用いるマルチバンド用高周波スイッチモジュールであって,前記アンテナに接続
され,前記複数の帯域に対応して通過帯域が異なる複数の送受信系に信号を分波す
る分波回路を有し,前記分波回路に接続され,前記各送受信系のそれぞれに送信系
と受信系を切り替えるスイッチ回路を有し,前記分波回路はLC回路で構成され,
前記スイッチ回路はダイオードと伝送線路を主構成とし,前記分波回路のLC回路
及び前記スイッチ回路の伝送線路は,電極パターンと誘電体層との積層体内に,前
記電極パターンにより構成され,前記ダイオードは,前記積層体上に配置して構成
され,前記積層体内において,複数の異なる帯域用の全てのスイッチ回路の受信側
の伝送線路用の電極パターンは,一対のグランド電極に挟まれた領域に形成され,
前記一対のグランド電極のうち,積層方向の上側のグランド電極が形成された誘電
体層にはスルーホール電極が形成され,前記スルーホール電極を介して前記受信側
の伝送線路用の電極パターンが送信側のダイオード及び分波回路と接続し,前記積
層体の外表面には,前記複数の送受信系の共通端子,前記各送受信系のそれぞれの
送信系端子,受信系端子が形成され,前記高周波端子(前記共通端子,各送信系端
子,各受信系端子)間には,グランド端子またはスイッチ回路制御端子が配置さ
れ,前記高周波端子が隣り合わない構造に配置されており,もって前記携帯電話が
ある帯域を利用可能であるときには,その帯域に対応した送受信系のみに送信信号
及び受信信号が流れることを特徴とするマルチバンド用高周波スイッチモジュー
ル。
 【請求項8】 前記スイッチ回路の各送信系にローパスフィルタを有し,
積層体の外表面に形成された前記スイッチ回路制御端子からダイオードに加える電
圧により前記ダイオードを制御して,通過帯域の異なる複数の送受信系の送信系及
び受信系とアンテナとの接続を切り換えることを特徴とする請求項6又は7記載の
マルチバンド用高周波スイッチモジュール。
 【請求項9】 前記分波回路は2つのノッチ回路を主回路とし,前記ノッ
チ回路の内の一つとその後段に配置されるスイッチ回路との間に,アースに接続さ
れるコンデンサが配置され,前記積層体上に配置されたチップ素子を包囲する金属
ケースが前記積層体上に配置されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか
に記載のマルチバンド用高周波スイッチモジュール。」
3 当裁判所の判断
上記当事者間に争いのない事実によれば,決定当時の本件特許の請求項2,5
ないし8については,特許法29条2項の規定に違反して登録された特許であるこ
とを理由に特許を取り消した決定の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許に係
る特許請求の範囲の減縮を含む訂正の審決が確定したということになり,決定は,
結果として,判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったものとなる。この誤
りが上記各請求項のいずれについても決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであ
る。したがって,決定中の上記各請求項に係る部分は取消しを免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負
担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟
法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官     山   下   和   明
裁判官     設   樂   隆   一
裁判官     阿   部   正   幸

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