弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1八尾市長が平成19年7月2日付けで有限会社Aに対してした,別紙物件目
録記載1の土地及び同目録記載2の建物に係る平成19年度の固定資産税及び
都市計画税のうち同目録記載3の免除措置対象部分に係る固定資産税及び都市
計画税の免除措置を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨。
第2事案の概要
本件は,八尾市の住民である原告が,有限会社A(以下「A」という)の。
所有する別紙物件目録記載1の土地及び同目録記載2の建物に係る平成19年
度の固定資産税及び都市計画税(以下併せて「固定資産税等」という)のう。
ち同目録記載3の免除措置対象部分(以下「本件減免対象部分」という)に。
ついてした減免措置(以下「本件減免措置」という)が違法である旨主張し。
て,被告に対し,地方自治法242条の2第1項2号に基づき,その取消しを
求めている住民訴訟である。
1前提事実等(事実については,争いがないか,証拠〔書証の番号は特に断ら
ない限り枝番を含む〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる)。。
(1)当事者等
ア原告は,八尾市の住民である。
イ八尾市長は,市の執行機関であり,本件減免措置の処分行政庁である。
ウAは,別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という)及びそ。
の敷地である同目録記載1の土地(以下「本件敷地」という)の所有者。
であり,その固定資産税等の納税義務者である。
エ本件建物は,建築された平成13年5月以来,Aから在日本朝鮮人総聯
合会大阪府B支部(以下「朝鮮総聯B支部」という)に無償で貸与され。
ており,同支部は「B同胞会館」として使用している。
(以上につき,いずれも争いなし)
(2)関係する法律,条例及び規則の定め
ア地方税法367条は「市町村長は,天災その他特別の事情がある場合,
において固定資産税の減免を必要とすると認める者,貧困に因り生活のた
め公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り,当該市町村の
条例の定めるところにより,固定資産税を減免することができる」と定。
めている。
イ八尾市では,上記地方税法の規定を受け,八尾市市税条例(平成12年
条例第39号。以下「本件条例」という)において,固定資産税の減免。
について,次のとおり定めている。
(ア)市長は,次の各号のいずれかに該当する固定資産のうち必要がある
と認めるものについては,その所有者に対して課する固定資産税を減免
することができる(本件条例75条1項。)
一公共事業実施のために使用収益することができない固定資産
二生活保護法の規定により生活扶助を受けている者が所有し,かつ,
自ら居住の用に供する固定資産
三災害により著しく価格を減じた固定資産
(イ)前項に定めるもののほか,市長は公益上その他の事由により特に必
要と認めるときは,固定資産税を減免することができる(同条2項。)
ウ八尾市では,八尾市市税条例施行規則(平成13年規則第18号。以下
「本件規則」という)において,本件条例75条に基づいてする固定資。
産税の減免について,次のとおり定めている。
(ア)本件条例75条1項の規定による固定資産税の減免は,次の各号に
掲げる固定資産について,当該各号に定める減免率により行う(本件規
則7条1項。)
1号から3号まで(略)
(イ)本件条例75条2項の規定による固定資産税の減免は,次の各号に
掲げる固定資産について,当該各号に定める減免率により行う(同条2
項。)
1号から4号まで及び6号から10号まで(略)
5号地方自治法(昭和22年法律第67号)に規定する地縁による団
体等が所有し,又は借り受けて管理運営を行い,かつ,次に掲げる用
途のいずれかに供する家屋及びその敷地(家屋を有料で借り受けた者
が当該家屋として使用する場合を除く)月割減免率。
ア専ら公益のために使用する集会所
イ専ら公益のために使用する集合住宅の集会室
ウその他専ら公益のために使用する家屋
(ウ)前2項に定めるもののほか,市長は,公益上その他の事由により特
に必要と認めるときは,固定資産税を減免することができる(同条3
項。)
エなお,地方税法702条の8第7項は,都市計画税を固定資産税とあわ
せて賦課徴収する場合において,市町村長が同法367条の規定によって
固定資産税を減免したときは,当該納税者に係る都市計画税についても当
該固定資産税に対する減免額の割合と同じ割合によって減免されたものと
,,,する旨定めているところ本件条例141条は都市計画税の賦課徴収は
固定資産税の賦課徴収の例により,特別の事情がある場合を除き,固定資
産税を賦課徴収する場合にあわせて賦課徴収する旨定めている。
(以上イ,ウ及びエにつき,乙1)
(3)本件減免措置の経緯
アAは,平成19年6月5日,本件敷地及び本件建物に係る平成19年度
の固定資産税等について,本件規則7条3項に該当するとして,その減免
を申請した(甲5。)
イ八尾市長は,平成19年7月2日,Aに対し,本件条例75条2項,本
件規則7条3項に基づき,本件減免対象部分に係る平成19年度の固定資
産税等を免除するという本件減免措置を行った。
なお,本件建物のうち,2階集会室(以下「課税対象部分」という)。
については,朝鮮総聯B支部の関係団体の事務所として利用されているこ
とから,減免措置の対象とせず,集会等に利用されている1階の和室並び
に3階の集会室及び給湯室(以下「減免対象部分」という)を減免措置。
の対象とした。また,本件建物のうち,1階事務室及び各階の共用部(ト
イレ等)についてはその床面積を,本件敷地についてはその地積を,減免
対象部分(97.57㎡)と課税対象部分(61.65㎡)との床面積割
合で案分した上,減免対象部分に対応する割合(61.3%)の限度で減
免措置の対象とた。
(以上につき,甲6)
(4)住民監査請求及び本件訴えの提起
ア原告は,平成20年3月14日,本件敷地及び本件建物に係る固定資産
税等についてされた減免措置は違法であるとして,地方自治法242条に
基づき住民監査請求をし(以下「本件住民監査請求」という,減免措。)
置の違法無効であることを確認し,八尾市長に対し,少なくとも過去5年
分にさかのぼって適正な徴税の措置をとることを勧告するよう求めた(甲
1。)
イ八尾市監査委員は,平成19年度の減免措置のみを監査の対象とした上
で,本件住民監査請求の理由の有無について監査を行ったが,4名の監査
委員のうち3名が請求に理由があるとし,その余の1名が請求に理由がな
いとしたことから,監査委員の合議に至らず,平成20年5月13日付け
でその旨を原告に通知した(甲1。)
ウ原告は,平成20年6月6日,本件訴えを提起した(顕著な事実。)
2本件の争点は,本件減免措置の適法性であり,争点に関する当事者の主張は
以下のとおりである。
(1)被告の主張
本件建物は,朝鮮総聯B支部によって管理運営が行われているが,主に八
尾市に居住する在日朝鮮人の民生福祉等の向上を図る目的から,各種集会,
生活相談,文化伝承等の場として利用されていることに加え,管理運営規
約に基づき地域住民に対しても集会所として開放されていること,八尾市
の韓国・朝鮮籍人口は全住民の約1.6%を占めていることから,地縁団
体等の集会所と同等の公益性がある。
よって,本件条例75条2項,本件規則7条3項に該当する。
なお,原告は,本件建物が街かどデイハウス「C」として利用されている
ところ,八尾市内にある他の街かどデイハウスのうち固定資産税等の減免
を受けている施設は本件建物以外にないことを本件減免措置の違法事由と
して主張しているが,本件減免措置を行うに当たり,本件建物が街かどデ
イハウスとして利用されていることは,考慮されていない。
(2)原告の主張
本件減免措置は,朝鮮総聯に対する特権の付与というべきものであり,そ
の適法性に係る被告の主張についてはいずれも争う。
アAに係る固定資産税等の減免事由について
固定資産税等の減免事由の存否は,当該固定資産の納税義務者とされて
いる者,すなわち,不動産登記記録において所有者として登記等されてい
る者について判断すべきものであるところ,本件建物の所有者として登記
されているAは商事会社であるから,本件建物が朝鮮総聯B支部に貸与さ
れ,被告の主張する用途にあてられているとしても,Aについても当然に
固定資産税等の減免事由があるとはいえない。
イ固定資産税等の減免に係る市長の裁量権について
本件規則7条3項は「市長は,公益上その他の事由により特に必要と,
認めるときは,固定資産税を減免することができる」と規定しているが,
租税法律主義の下で市長の裁量が自由裁量であることはなく,その裁量は
公益性の有無の判断に限定されるべきである。
ウ本件建物の使用実態及びその公益性の有無について
管理運営規約によれば,朝鮮総聯B支部が本件建物の管理運営を行い,
B在住の在日朝鮮人及び韓国人並びに地域住民及び公共団体等に広く開
放することとされているが,本件減免対象部分が専ら「公益のために」
使用されるという定めがあるわけではない。また,本件建物は,その使
用実績において,街かどデイハウス「C」の利用者がその半数を占めて
いるというが,八尾市内に14か所ある街かどデイハウスのうち固定資
産税等の減免を受けている施設は本件建物以外になく,街かどデイハウ
スとして利用されていることが固定資産税等の減免事由に直ちに結びつ
くものでもない。さらに,集会所としての使用実態についてみても,原
告の調査によれば,1階の和室,事務室,3階の集会室及び給湯室は,
集会所として利用されているものの,朝鮮総聯の関連団体の行事又は活
動に係る会議のための使用が大半を占めており,公共団体による利用は
なく,地域住民からの使用の申込みがされた事実も認められないから,
本件建物について公益性を基礎付けることのできる事情は認められない。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前記前提事実等(第2の1)に加え,証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,
次の事実を認めることができる。
(1)A及び本件施設について
アAは,平成11年8月3日に設立された,八尾市ab丁目c番d号に
本店を有する有限会社であり,商業登記簿の記載によれば,同会社の目
的は,①高麗文化(韓国,朝鮮)の資料の収集,展示及び会館の経営,
②民族舞踊,民族音楽,書画,朝鮮歴史教室の経営,③前各号に附帯関
連する一切の事業とされている(甲2。)
イAは,平成12年6月30日,本件敷地を売買により取得し,平成1
3年5月1日,本件敷地上に鉄骨造スレート葺3階建の本件建物を新築
し,同月12日付けで朝鮮総聯B支部との間で使用貸借契約を締結して,
本件建物を引き渡した。
上記使用貸借契約に係る「B同胞会館」使用契約書(乙6)によれば,
使用貸借の目的は「B同胞会館」としての利用であり,具体的には「B,,
同胞会館を在日朝鮮人,韓国人同胞の民主的,民族的諸権利の擁護およ
び母国語,学術,文化の教育と,日本をはじめとする世界民族の平和と
友好,親善,文化交流の場として会館を使用する為,在日本朝鮮人総聯
合会大阪府B支部常任委員会にその活動を委任し,会館建設意義に基づ
き使用を無料で認める」と記載されている。。
(以上につき,甲3,4,乙6,弁論の全趣旨。)
(2)本件施設の構造並びに固定資産税等に係る課税及び減免状況等
ア本件施設の用途別床面積は,次のとおりである。
鉄骨造スレート葺3階建,床面積合計243.52㎡
1階79.59㎡(和室31.17㎡,事務室30.48㎡,共用
部(トイレ等)17.94㎡)
2階79.59㎡(集会室61.65㎡,共用部(トイレ等)17.
94㎡)
3階84.34㎡(集会室61.65㎡,給湯室4.75㎡,共用
部(トイレ等)17.94㎡)
イ本件敷地については平成13年度から,本件建物については平成14
年度から,いずれもAを納税義務者として固定資産税等が課税されてい
るが,Aの申請に基づき,平成13年度は本件敷地に係る固定資産税等
のうち5月以降の分の,平成14年度から平成17年度までは本件敷地
及び本件建物に係る固定資産税等の全額の,それぞれ減免がされた。そ
の後,平成18年度からは,2階集会室を事務室として利用するなど本
件建物の利用態様に変更があったことから,税額の61.3%の限度で
減免することとされた。
ウ八尾市の関係職員(財政部資産税課)は,本件住民監査請求に関して
監査委員が行った聴取に対し,平成20年度以降,本件建物及び本件敷
地に係る固定資産税等の減免措置を行わない予定である旨を陳述した。
(以上アからウまでにつき,甲1,6,弁論の全趣旨)
(3)本件建物の利用状況について八尾市の行った調査等
アAは,平成19年6月5日付けで本件施設に係る平成19年度の固定
資産税等について本件規則7条3項に該当するとの事由でその減免の申
請をした。八尾市は,添付書類として提出された管理運営規約,使用実
績表を基に,同月12日に実地調査を実施し,本件建物各階における使
用状況,実績等について関係者から聴取を行い,写真撮影をした上,過
去の年度の写真と比較し,使用状況の把握を行った。
イ八尾市長は,朝鮮総聯B支部によって本件建物の管理運営が行われ,
主に八尾市に居住する在日朝鮮人の民生福祉等の向上を図る目的で,集
会,生活相談,文化伝承等の場として利用されていることに加え,管理
運営規約に基づき地域住民に対しても集会所として開放されており,地
縁団体等の集会所と同等の公益性があると判断し,平成19年7月2日,
本件条例75条2項,本件規則7条3項に基づき,本件減免措置を行っ
た。
(以上ア,イにつき,甲1,弁論の全趣旨)
(4)平成19年当時の利用状況等
アA提出に係る「B同胞会館管理運営規約(甲7,乙3)及び「B同胞」
会館使用に関するご案内」と題する書面(甲8,乙4)には,本件建物
の利用対象者がB在住の在日朝鮮人及び韓国人だけでなく,広く地域住
民を対象にしている旨が記載されている。
イA提出に係る「B同胞会館使用実績集計表(平成18年4月から平成
19年3月」(乙5)によれば,上記期間における本件建物の利用者数は)
延べ4408人であるが,そのうち半数以上に当たる2302人がデイ
ハウス(地域の高齢者の自立生活を支援するため,給食・健康チェック
等の活動を行うもので,八尾市が支援を行っているもの。甲12)の利
用者であり,これを除く部分(役員会議,各種行事の準備会合,生活相
談等)についてみれば,朝鮮総聯関係者による利用とそれ以外の者の利
用とを区別することはできない。
ウ1階の和室,事務室,3階の集会室及び給湯室は,集会所として利用
されているものの,朝鮮総聯B支部の関連団体の行事又は活動に係る会
議のための利用が大半を占めており,公共団体による利用はなく,地域
住民からの使用の申込みもなかった。なお,本件住民監査請求に際し,
監査委員から,地域の集会所的な利用について具体的な活動内容を把握
できる資料の提出が求められたが,被告の関係職員から,その提示はな
かった(甲1)。
2検討
(1)地方税法367条は,条例の定めによって固定資産税を減免することの
できる者として「天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の,
減免を必要とすると認める者」及び「貧困に困り生活のため公私の扶助を
受ける者」を規定した上「その他特別の事情がある者」を挙げている。こ,
のうち前二者は,固定資産税を負担する経済的能力が一時的に又は相当期
間欠けると認められるような個別的な事情のある者に対する減免を認める
ものであるが,後者は,単にその他特別の事情のある者とのみ規定してい
て,その特別の事情が,前二者におけるような担税力の有無の観点からの
個別的なものであるべきことまで規定していない。
したがって,一定の公益性のある用途で使用している固定資産に係る納税
義務者について,その用途に係る事業の援助又は勧奨等の行政目的達成の
ためこれに係る固定資産税を減免することも可能であり,そうした納税義
務者を「特別の事情のある者」と認める条例を制定することも地方税法の
上記規定は許容しているということができ,本件条例75条2項の規定も
そのような趣旨から出た規定であると解される。
そして,本件条例75条2項は「公益上その他の事由により特に必要」,
があるか否かの判断を市長に委任していると解されるところ,議会が,特
定の固定資産の用途につき,これを固定資産税の減免の対象とする公益性
のあるものとするかどうかの判断をあらかじめ行って,これを条例に明記
することは可能であるとしても,公益性のある用途には種々のものがあり
得るところ,時の経過により公益性の有無の判断も変化していくこと等を
考慮して,その決定を市長の判断にゆだねる条例を制定することも,公益
性のあることという枠内における委任であり,また,議会は,市長に対し,
地方自治法に定められた様々な監督手段を行使し得ることからすれば,そ
の委任は合理的な措置ということができる。
(2)なお,本件条例75条2項及び本件規則7条3項は「市長は,公益上,
その他の事由により特に必要と認めるときは,固定資産税を減免すること
ができる」とのみ規定しており,文言上は,減免事由について特段の限定
を付していないようにみえないでもない。
しかし,租税法律主義や租税公平の原則に照らして,たとえ減免措置で
あっても課税庁に自由裁量を認めることはできないこと,本件条例75条
2項を受けて,本件規則7条2項各号が公益上の理由がある場合につき個
別具体的に列挙して規定していることからすれば,結局,本件条例75条
2項及び本件規則7条3項は,本件条例75条1項各号に準ずる場合及び
本件規則7条2項各号に準ずる公益上の理由がある場合に限って,減免措
置を認めたものと解するのが相当である。
この点は,被告においても争うものではなく,本件建物及び本件敷地の
うちの本件減免対象部分が,本件規則7条2項5号アに規定する「地方自
治法に規定する地縁による団体等が・・借り受けて管理運営を行い「専」,
ら公益のために使用する集会所」の用途に供するものに準ずるものであっ
て,これと同等の公益性があることを,本件減免措置の根拠として主張し
ている(前記第2の2(1)。)
(3)以上からすれば,本件減免措置の適法性を判断するに当たっては,八尾
市長が,本件建物(及び本件敷地)について,地方自治法に規定する地縁
による団体等が借り受けて管理運営を行い,専ら公益のために使用する集
会所の用途に供するものに準ずるものであって,これと同等の公益性があ
ると判断する上で,その基礎となる事実関係について客観的な裏付けがあ
ったかどうか,当該事実に対する評価が合理性を欠くかどうかという観点
から検討すべきであり,客観的な裏付けを欠き,あるいは,その評価が合
理性を欠いているような場合には,本件減免措置は裁量に違反した違法な
ものになるというべきである。
(4)そこで,本件減免措置の根拠とされた事実関係についてみるのに,八尾
市長が,本件減免措置を行うに先立ち,一定の調査を行ったことは,前記
1(3)アで認定したとおりである。
しかしながら,前記1(4)のとおり,本件建物の1階の和室及び事務室並
びに3階の集会室及び給湯室は,集会所として利用されているものの,朝
鮮総聯B支部の関連団体の行事又は活動に係る会議のための利用が大半を
占めており,その他には,公共団体による利用はなく,地域住民からは使
用の申込み自体がそもそもなかったというのであり,地域の集会所的な利
用についても,その公益性を判断する資料がなく,被告の関係職員におい
てもこれを提示しなかったというのである。
この点について,被告は,本件建物が八尾市を中心に居住する在日朝鮮
人等の住民福祉等の向上を図るため,集会・生活相談・文化伝承の場とし
て利用されており,地域住民にも開放されていたなどと主張する。しかし,
上記のとおり,街かどデイハウスとしての利用(この点が本件減免措置の
根拠にならないことは,被告も自認するところである)を除けば,朝鮮総。
聯B支部の関連団体による使用にほぼ限定されているというのであり,在
日朝鮮人,同韓国人が当該団体加入の有無にかかわらず利用していたかど
うかすら定かではないし,当該団体と無関係の地域住民にその使用が可能
であることが周知されていたのか,また,周知されていたとして,その管
理運営が,実際に使用を申し込む気を起こさせるような形態で行われてい
たのかなど,多大な疑問が生ずるところであり,これを払拭するような証
拠は何ら提出されていない。したがって,たとえ,被告の主張する八尾市
の住民構成等を考慮に入れたとしても,本件建物について,地縁による団
体等が管理運営する集会所と同視できるような裏付けは見当たらないとい
うほかない。
そうであるとすれば,本件建物,さらには,そのうちの本件減免対象部
分に限ってみても,これを「地方自治法に規定する地縁による団体等が・
・借り受けて管理運営を行い「専ら公益のために使用する集会所」の用」,
途に供するものに準ずるものであって,これと同等の公益性があると判断
するに足りる事実関係の客観的な裏付けがあったとはいえず,本件条例7
5条2項及び本件規則7条3項に規定する「公益上その他の事由により特
に必要と認める」ものに該当するとした八尾市長の判断に裁量違反があっ
たといわざるを得ず,違法との評価を免れない。
3以上によれば,本件減免措置の取消しを求める原告の本件請求は理由がある
から認容することとし,主文のとおり,判決する。
大阪地方裁判所第7民事部
裁判長裁判官吉田徹
裁判官小林康彦
裁判官仲井葉月
(別紙)
物件目録
1所在八尾市ab丁目
地番e番f
地目宅地
地積123.79平方メートル
2所在八尾市ab丁目e番地f
家屋番号e番f
種類事務所・集会所
構造鉄骨造スレート葺3階建
床面積1階79.59平方メートル
2階79.59平方メートル
3階84.34平方メートル
3上記2の建物のうち下記1階和室及び3階部分の全部,並びに1階
事務室,各階共用部及び上記1の土地の61.3%
1階79.59㎡(和室31.17㎡,事務室30.48㎡,共用
部(トイレ等)17.94㎡)
.(.,().2階7959㎡集会室6165㎡共用部トイレ等17
94㎡)
3階84.34㎡(集会室61.65㎡,給湯室4.75㎡,共用
部(トイレ等)17.94㎡)
以上

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