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平成12年(ワ)第10417号 商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成12年3月2日
判      決
原      告 株式会社アイコム
訴訟代理人弁護士   本  山  信二郎
被      告アイコム株式会社
訴訟代理人弁護士   川  村  和  久
補佐人弁理士   杉  本  勝  徳
主      文
  1 原告の請求をいずれも棄却する。
  2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙被告役務目録記載の役務を行うに際し、別紙標章目録記載の各
標章を表示し又は同標章を付した物品を納入して別紙被告役務目録記載の役務を行
ってはならない。
2 被告は、別紙被告役務目録記載の役務に関する宣伝用のカタログ、パンフレ
ットに別紙標章目録記載の各標章を付して頒布してはならない。
3 被告は、その本店、営業所に存在する別紙標章目録記載の標章を記載した宣
伝用のカタログ、パンフレットを廃棄せよ。
4 被告は、原告に対し、金300万円及びこれに対する平成12年10月19
日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、別紙商標権目録1及び2記載の商標権(以下「本件商標権1」など
といい、その登録商標を「本件登録商標1」などという。)を有している原告が、
被告に対し、被告は、別紙被告役務目録記載の役務(以下「本件被告役務」とい
う。)を行うに際し、別紙標章目録記載(1)及び(2)記載の各標章(以下「本件被告
標章(1)」などという。)を付して行っており、かつ、各標章をその宣伝用のカタロ
グ、パンフレット等に使用しているところ、これは本件商標権1及び2を侵害する
行為であるとして、その差止等と損害賠償を請求した事案である。
 被告が、①本件被告標章(1)及び(2)を商標として使用していること、②同標
章が、本件登録商標1及び2と同一又は類似していることは、当事者間に争いがな
い。
(争点)
1 被告は、本件商標権1又は2の指定役務の商標として本件被告標章(1)及
び(2)を使用しているか。
2 原告の損害額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(指定役務についての使用)について
【原告の主張】
 被告は、本件被告役務の商標として、本件被告標章を使用しているが、同役
務は、本件商標権1及び2の指定役務中「電子計算機のプログラムの設計・作成又
は保守」に該当ないし類似する。
 本件被告役務の対象である「アイコムAVMシステム(自動車両位置表示シ
ステム)」は、そのシステムの性質上、既存のコンピュータにセットすれば足りる
汎用性はなく、個別の顧客の必要に応じた設定、変更がシステムの優劣を決し重要
である。
【被告の主張】
 被告は、本件被告役務を行っていない。本件被告役務の対象とされている
「アイコムAVMシステム」は、商標法上の商品であり、被告は、同商品の商標と
して本件被告標章1及び2を使用している。
 なお、被告は、上記商品を、販売店に卸しており、販売店は、ユーザーに対
して、導入時の初期設定、希望場所への設置を行うが、この初期設定において、シ
ステムソフトウェア自体の変更は、何ら行われていない。
2 争点2(損害額)について
【原告の主張】
 被告は、本件被告役務を平成10年9月から有償で提供しており、これまで
2年間に少なくとも5000万円の売上を得たところ、本件登録商標1及び2の使
用料率は、売上高の5%と見るのが相当であるから、被告が原告に対し支払うべき
使用料相当額は、250万円となる。
 また、本件訴え提起に関し、不法行為に基づく損害賠償請求に係る弁護士費
用の賠償として被告に負担させるべき金額は50万円が相当である。
【被告の主張】
 争う。
第4 争点に対する判断
1 争点1について
(1) 証拠(乙1の1と2、乙3ないし9、10の1ないし10)と弁論の全趣
旨によれば、「アイコムAVMシステム」(以下「本件被告システム」という。)
に関し、次の事実が認められる。
ア 本件被告システムは、GPS(Global Positioning
 System)で車両の位置を把握し、そのデータを無線で転送し、車両の位置
や進行方向、作業状況等を指令局(事務所)のコンピュータ画面にリアルタイムで
表示するシステムである。
イ 本件被告システムは、指令局のコンピュータにインストールするシステ
ムソフトウエアである「AV-100B」(フロッピーディスク6枚に記憶されて
いる。)、車両に搭載するコンピュータである「AV-100C」、及びそれらの
付属品ないしオプションから構成されている。
ウ 「AV-100B」は標準価格が250万円であり、「AV-100
C」は標準価格が18万円である。
エ 「AV-100B」及び「AV-100C」は、それぞれ、1つの箱に
パッケージされて需要者に提供されている。
オ 本件被告システムと同種の車両位置表示システムは、同業他社から複数
販売されている。
カ 本件被告システムのパンフレットには本件被告標章(1)及び(2)が、「A
V-100B」及び「AV-100C」」の包装、「AV-100B」が記憶され
たフロッピーディスク、並びに「AV-100C」には本件被告標章(1)が、それぞ
れ付されている(ただし、現実に付されている本件被告標章(1)の外観は別紙被告標
章目録(1)と多少異なる。)。
(2) 以上の事実からすれば、本件被告システムは、全体として、商標法上の商
品(通信機器に類似するもの)というべきであり、本件被告標章(1)及び(2)は、当
該商品の出所を表示するものとして使用されているというべきである。本件被告シ
ステムには、フロッピーディスクに記憶されたシステムソフトウエア「AV-10
0B」が含まれているが、本件被告標章(1)及び(2)の使用状況からすれば、同標章
はあくまでも本件被告システム全体の出所を識別するものとして機能していると認
められる上、本件被告システムに含まれる上記システムソフトウエアは、予め、被
告において開発されたソフトウエアが記憶媒体に記憶されたものであり、需要者の
求めに応じて個別的に開発作成されるソフトウエアではないから、上記システムソ
フトウエアが本件被告システムに含まれていることをもって、本件被告システムの
販売を、ソフトウエアの作成という役務の提供と見ることはできない。
(3) 原告は、被告が、本件被告システムについての電子計算機のプログラムの
設計・作成又は保守に関する役務を行っていると主張する。しかし、「役務」と
は、他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得るもの
をいうと解するのが相当であるところ、上記のとおり、被告は、本件被告システム
の販売に先立ち、同システム用のソフトウエアを開発したにすぎず、そのような開
発行為自体を独立の商取引と見る余地はなく、需要者との関係で被告が行っている
のは、そのように完成したソフトウエアを含む本件被告システムを商品として販売
しているにすぎないから、原告の主張は採用することができない。
 原告は、本件被告システムの性質上、既存のコンピュータにセットすれば
足りる汎用性はなく、個別の顧客の必要に応じた設定、変更がシステムの優劣を決
し重要であるとも主張する。しかし、仮に、被告が、本件被告システムを顧客に対
して販売するに際して、一部その使用をカスタマイズしたとしても、それは本件被
告システムという商品の販売に伴う付随的役務にすぎず、それ自体独立の商取引と
して行われるものではないから、そのような被告の付随的役務をもって、被告が商
標法上の役務を行っていると見ることはできないというべきである。
(4)なお、商品である本件被告システムと本件商標権1及び2の指定役務であ
る「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」とが類似するかどうかについ
ても念のために検討しておくと(この点については原告は主張していない。)、証
拠(乙10の1ないし10)によれば、現在のところ、本件被告システムと同種の
ものは市場において商品として提供されていることが認められ、役務として提供さ
れているものがあるとは認められない。そして、本件全証拠によっても、本件被告
システムという商品が、電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守という役務
と類似することを根拠付けるような事情は認められないから、本件被告システムが
電子計算機のプログラムの設計、作成又は保守と類似するとは認められないという
べきである。
(5) 以上より、被告が、本件商標権1又は2の指定役務の商標として本件被告
標章(1)及び(2)を使用しているとは認められない。 
2 よって、その余の争点について検討するまでもなく、原告の請求はいずれも
理由がないから、主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官    小   松  一   雄
裁判官    安   永  武   央
裁判官高松宏之は転勤のため署名押印することができない。         
裁判長裁判官    小   松  一   雄
別紙 被告役務目録
別紙 標章目録
別紙 商標権目録1
別紙 商標権目録2

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