弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する
     被告人C及び同Dに対しては当審における未決勾留日数中各三五〇日を
の本刑に算する。
         理    由
 被告人Eの弁護人梅山実明の上告趣意について
 論旨は結局原審の量刑不当を主張することに帰するから上告適法の理由とならな
いものである。
 被告人D上告趣意について
 論旨は原判決事実摘示第三の強盗強姦の事実の内被告人がFを強姦したという点
を否認しているが、被告人は原審において所論強姦の事実を認めており、原判決挙
示の証拠によれば判示事実を認定するに十分である、そして論旨は結局原審の事実
誤認と、犯罪の動機、現在の心境、家庭の事情、等を述べているにすぎないので上
告適法の理由とならないものである。
 被告人G上告趣意について
 論旨は結局寛大な処置によつて執行猶予の判決をたまわりたいということに帰着
する、しかしかような主張は上告適法の理由とならないものである。
 被告人Cの上告趣意について。
 論旨は原判決事実摘示第五の(一)の強盗傷人の事実につき自分は被害者Hを縛
つたことなく、同人の受けたと称する切傷は本件強盗の際受けたものか否か疑わし
く、仮に然りとするも、被告人には傷害の意思はなく、不可抗力によつて生じたも
のではないかと思うと主張する外、自己の生い立ち、戰災による環境の変化、敗戰
後の世相、家庭の事情、犯罪の動機、犯罪事実の顛末、現在の心境等を述べている
にすぎない、しかし所論強盗傷人の事実は原判決挙示の証拠により、これを認める
ことができるばかりでなく、被告人Cにおいて被害者を縛つたのではなく、又傷害
の意思がなかつたとしても他の共犯者が爲した行爲に対しては共同正犯者として其
責を負わなくてはならない、從つて此点に関する論旨は理由がないし、共余の論旨
は上告適法の理由とならないものである。
 被告人C、同Iの弁護人松尾菊太郎の上告趣意について
 第一点について
 しかし、原判決の基本となつた原審第五回公判調書には証拠調の手続に関し所論
のような記載があるが、その記載中には押收物件を展示し其の都度、これについて
意見弁解の有無を問うた旨の記載があるから、押收にかかる所論各証拠物について
適法な証拠調が爲されたこと極めて明らかである、從つて論旨は理由がない。
 第二点について
 所論の聽取書及び被害品明細書というのは別冊記録三一五丁以下に編綴されてい
るが右明細書は聽取書の末尾に編綴されて居り、両者の問には聽取書の作成者たる、
巡査部長Jの契印が押されているばかりでなく聽取書の末項には所論の如く「私方
被害品別に差出しました被害品明細表の通りであります」とのKの供述記載がある
から、右明細書は聽取書と一体をなし、その記載は有効にKの供述の内容をなすも
のと認めるを相当とする、從つて右明細書に作成者たる被害者の署名捺印がなくと
も、証拠能力に欠けるところはないといわなければならない。論旨は理由がない。
 第三点一について
 しかし、原判決はことさらに被告人Cが被害者を蹴つたとは認定していない、そ
して被告人等共犯者中の何人かゞ被害者に傷害を與えた事実は原判決挙示の証拠に
より、これを認め得るばかりでなく、強盗の共犯者が強盗の機会に他人を傷害した
以上は強盗致傷の責を負わなければならないから、判示傷害が被告人の如何なる行
爲に由來したか明らかでないとしても被告人の責罪に消長を來すものではない、從
つて論旨は採用できない。
 被告人Lの弁護人鈴村金一の上告趣意について
 第一点について
 論旨は上告人は本件賍物を買受入たるAに示しておらず、同人をして買受の意思
を決定せしめるに至つていない、從つて賍物牙保罪は成立しないと主張する。しか
し被告人はBから同人等が窃取した衣類二百六十余点の賣却方を依頼され賍物たる
情を知りながら、Aに対し本件賍物を買受けられたき旨を申向けて斡旋し、同人と
同道して賍物の所在場所に出向いた途中逮捕されたというのであつて、被告人の行
為はB等が判示犯罪によつて得た賍物に関して同人等の為め不公正な取引を仲介周
旋したものであつて一般に強窃盗等を誘発するおそれが十分にあるといわなければ
ならない、されば被告人の右周旋行爲によつて未だ賍物の賣買は完成するに至らず、
また本犯の被害者の賍物返還請求権行使を不能又は困難ならしめるおそれはなかつ
たとしても、尚行爲自体は既に賍物牙保罪の成立に必要な周旋行爲に該当するもの
と認めるを相当とする、論旨は賍物牙保罪は賍物に対する被害者の返還請求権の行
使を不能、又は困難ならしめるおそれのある犯罪であると前提し被告人の無罪を主
張するのであるが、賍物に関する罪を一概に所論の如く被害者の返還請求権に対す
る罪とのみ狹く解するのは妥当でない、(法が賍物牙保を罰するのはこれにより被
害者の返還請求権の行使を困難ならしめるばかりでなく、一般に強窃盗の如き犯罪
を助成し誘発せしめる危險があるからである)、從つて原判決が判示事実を以て賍
物牙保罪は成立すると判断したことは正当であつて、所論の如き違法はなく論旨は
理由がない。
 第二点について
 論旨は結局原審の事実誤認と量刑不当を主張することに帰着する、しかしかよう
な主張は上告適法の理由となし得ないものであるから論旨は採用しがたい。
 よつて旧刑訴四四六條により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 茂見義勝関與
  昭和二六年一月三〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官穗積重遠は差支えの爲署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎

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