弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原略式命令を破棄する。
     被告人を罰金三万円に処する。
     右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算し
た期間被告人を労役場に留置する。
         理    由
 本件記録によると、墨田簡易裁判所は、昭和六三年六月二三日、被告人に対する
道路交通法違反被告事件について、「被告人は、酒気を帯び、呼気一リツトルにつ
き〇・二五ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、昭和六二年三月
一〇日午前五時五七分ころ、東京都品川区ab丁目c番地付近道路において、大型
自動車(マイクロバス)を運転したものである。」旨の事実を認定したうえ、道路
交通法六五条一項、一一九条一項七号の二、同法施行令四四条の三、刑法一八条、
罰金等臨時措置法二条、刑訴法三四八条を適用して、「被告人を罰金五万円に処す
る。これを完納することができないときは金二〇〇〇円を一日に換算した期間(端
数を生じたときはそれを一日に換算する)被告人を労役場に留置する。第一項の金
額を仮に納付することを命ずる。」旨の略式命令を発付し、同略式命令は、昭和六
三年七月八日に確定したことが認められる。
 しかしながら、道路交通法六五条一項違反の罪の法定刑は、昭和六一年法律第六
三号によつて改正されるまで、同法一一九条一項により「三月以下の懲役又は三万
円以下の罰金」とされていたが、右改正によつて「三月以下の懲役又は五万円以下
の罰金」に改められ、右法律は昭和六一年五月二三日に公布され、昭和六二年四月
一日から施行されたものであるところ、被告人の本件所為は昭和六二年三月一〇日
におけるものであつて右改正法施行前の行為であるから、これに適用すべき法条は、
同改正法附則三項により、行為時法である右改正前の道路交通法一一九条一項であ
る。そして、同法条によれば、前記罪に対する罰金の最高額は三万円であり、加重
事由のない本件において、これを超過して被告人を罰金五万円に処した右略式命令
は、法令に違反しており、かつ、被告人のために不利益であるといわなければなら
ない。
 よつて、刑訴法四五八条一号により、原略式命令を破棄し、被告事件について更
に判決することとする。
 原略式命令の確定した道路交通法違反の事実に法令を適用すると、被告人の所為
は、道路交通法六五条一項、昭和六一年法律第六三号による改正前の道路交通法一
一九条一項七号の二(同改正法附則三項による。)、道路交通法施行令四四条の三
に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で被告人を罰金三万
円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金二〇〇〇
円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、主文のとおり判決す
る。
 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官関場大資 公判出席
  平成元年一月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    坂   上   壽   夫

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