弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1被告は,原告1に対し,1768万7773円及びこれに対する平成
24年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告2に対し,3096万9249円及びこれに対する平成
24年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用はこれを5分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告
の負担とする。
5この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告1に対し,3542万2024円及びこれに対する平成24年
4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告2に対し,4696万8500円及びこれに対する平成24年
4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,亡Aの相続人である原告らが,被告において,従業員である亡Aの
労働時間を適切に管理すべき義務があったのにこれを怠って亡Aに長時間労
働及び不規則かつ深夜にわたる労働をさせたことにより,亡Aが致死性不整脈
で死亡したと主張して,被告に対し,主位的に不法行為に基づく損害賠償とし
て,予備的に債務不履行に基づく損害賠償として,①原告1については354
2万2024円及びこれに対する亡Aの死亡日である平成24年4月12日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,②原告
2については4696万8500円及びこれに対する上記同日から支払済み
まで同割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。
1前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠等により容易に認定できる事実)
⑴当事者
ア被告は,昭和40年1月26日に設立され,各種商品陳列用什器及び事
務用什器備品の賃貸並びに販売を業とする株式会社であり,百貨店や展示
会場への什器の設置等を行っている。被告における業務のうち,百貨店や
展示会場への什器の搬入・設置作業等については,その業務量が日によっ
て大きく変動するため,主として,被告との間でアルバイトとして登録し
た者(以下「アルバイト従業員」という。)を使用し,現場ごとにアルバ
イト従業員を募ってこれを行わせている。
イ亡Aは,昭和48年5月26日生まれの男性であり,高等学校を卒業後,
複数の職を経て,遅くとも平成9年5月頃からアルバイト従業員として被
告の大阪営業所(大阪府高槻市大塚町所在)において恒常的に勤務し始め,
以後,平成24年4月12日の死亡日まで,百貨店等への陳列什器の設置
作業等に従事し,被告大阪営業所の指示により業務を行っていた。
ウ原告1は亡Aの妻であり,原告2(平成22年12月12日生)は原告
1と亡Aとの間の子である。ほかに亡Aの相続人はいない。
⑵アルバイト従業員の業務内容
アルバイト従業員は,被告大阪営業所の営業担当社員から事前に指示を受
け,指示された現場に赴き,被告の担当社員から具体的な指示を受けて,催
事陳列什器等の設置作業・撤収作業を行っていた。
アルバイト従業員の業務は,様々な場所・時間帯・時間数にわたるもので
あるが,就労する現場について特に制限は設けられていなかった。
⑶亡Aの死亡及び相続等
亡A(当時38歳)は,平成24年4月12日,仕事を終えて午後8時過
ぎ頃帰宅し,自宅で食事をした直後に意識を失って倒れ,午後9時22分頃
救急搬送されたが,病院に到着後死亡が確認された(甲6の2)。
亡Aの死亡により,原告1及び原告2が各2分の1の割合により亡Aを相
続した。
⑷労災認定
亡Aの死亡を受けて,原告1が,茨木労働基準監督署長に対し遺族補償年
金請求を行ったところ,平成25年1月23日,茨木労働基準監督署長は,
亡Aの死亡を業務上の災害に起因するものと認定し,原告1に対して遺族補
償年金を給付する旨の決定をした。
原告1は,口頭弁論終結日である平成28年8月5日までの間に,労災給
付(遺族補償年金及び葬祭料)として,以下の金員の給付を受けた。
遺族補償年金合計1154万6476円
葬祭料84万4330円
2争点
⑴業務と亡Aの死との間の因果関係の有無
⑵被告の安全配慮義務違反の有無
⑶過失相殺の可否及び過失割合
⑷損害の発生及び額
3争点に対する当事者の主張
⑴争点1(業務と亡Aの死との間の因果関係の有無)について
【原告ら】
ア亡Aの死亡の原因について
亡Aの死因は,発症日を死亡日とする致死性不整脈である。
亡Aの死因について,①死体検案書では「不整脈の疑い」,②救急搬送
先の医師の意見書では「致死性不整脈が原因」,③死体検案を行った医師の
意見書では「致死性不整脈が生じたと考えるのが妥当」,④局医職業病相談
員医師の意見書では,「原因不明の致死性不整脈の可能性が高い」と各記載
されている。このような各医師の見解によれば,亡Aの死亡原因は致死性
不整脈であったと判断する高度の蓋然性が認められる。
亡Aは,死亡前,長時間かつ不規則な労働に従事していたところ,その
ような労働に従事することにより,致死性不整脈を含む脳・心臓疾患を発
症する危険があることは,医学的に裏付けられている。
被告は,亡Aの食生活や喫煙の習慣等が発症の原因である可能性につい
て指摘するが,食生活が不規則となったのは被告における勤務時間が不規
則であるために過ぎず,喫煙についても少量であって,亡A自身が健康管
理を怠ったことが発症の原因であるとはいえない。
イ亡Aの労働時間について
後記を前提とした場合,脳心臓疾患の発症日である平成24年4月
12日の直近6か月間における亡Aの具体的労働時間及び時間外労働時
間数は別紙1のとおりである。なお,時間外労働時間とは,1週間単位
の総労働時間数のうち40時間を超えるものであるが,1月毎に集計す
る上で,1週間に満たない日数が生じる場合には,これらの日を含む1
週間で就労しなかった日の有無及び日数により休日労働とみなすか否か
を決定し,休日労働とする場合は2日間で8時間を超える時間数又は全
時間数を,休日労働としない場合は16時間を超える時間数を時間外労
働時間とする。
労働時間の算定方法
亡Aの実労働時間数は,被告において作成された給与明細及び作業実
績一覧(以下「給与明細等」という。)記載の労働時間をもとに算定すべ
きである。
休憩時間については,被告が所定の休憩時間を与える運用をしていた
かどうかが不明であるうえ,亡Aが十分な休憩をとれていなかったこと
からすれば,労働時間から所定の休憩時間数を控除すべきではない。
現場から現場への移動時間については,合理的な時間数であれば,労
働時間としてこれを計算に含めるべきである。被告においては,アルバ
イト従業員が複数の現場で作業することが通常予定されており,作業現
場間の移動は,アルバイト従業員が各現場で職務を遂行するために必要
不可欠な行為であり,その作業に当然に付随する行為といえる。したがっ
て,作業現場間の移動時間についても,使用者の指揮命令下に置かれて
いたものと評価できる。
被告の主張する各ルールについて
a実開始時刻から実終了時刻までの時間が2時間30分に満たない
場合でも賃金算定上労働時間を2時間30分としてカウントするとい
うルール(以下「2時間半ルール」という。)は存在しないし,同ルー
ルを前提として,給与明細等で2時間半とされている作業について実
労働時間が1時間15分であると推計することも不合理である。
被告がアルバイト登録の際に交付していた平成23年7月1日改
訂の「新規登録についての規定(資料)」と題する書面(乙1。以下「本
件規定」という。)には,2時間未満の作業時間に対して2時間分の賃
金を支払う旨の記載はあるが,2時間半ルールの記載はない。また,
賃金算定上も,労働時間が2時間半未満と算定されている日が複数存
在する。
被告が実労働時間の根拠として提出する大丸百貨店心斎橋店(以下
「大丸」という。)の入退店表(乙9の2,以下「大丸入退店表」とい
う。)は,亡Aの実際の労働時間を示すものではない。給与明細上労働
時間が記載された日のうち,同表への記載がないものが大部分である
上,記載があったとしても,給与明細上の始業・終業時刻と30分以
上の誤差があるものがある。また,店外作業を行う場合や,別の出入
口を利用する場合など,大丸入退店表に実労働時間が反映されない場
合もある。
b実終了時刻を30分刻みの時刻に繰り上げて記録するというルー
ル(以下「30分未満切上げルール」という。)については,同ルール
の存在を示す客観的資料はないし,同ルールを前提として,実終了時
刻と記録上の終了時刻との間に平均して15分の差があるとするのも
不合理である。
なお,仮に被告の主張する点を一定程度考慮し,給与明細等に記録さ
れた時間から,①一現場当たり15分ずつ労働時間を減じ(ただし,労
働時間が6時間以上7時間未満の現場では休憩時間との二重計上を避け
るため適用はないものとする。),②大丸での立会作業の日について午前
8時から9時までを除外し,③労働時間が6時間に達した直後の1時間
を休憩時間として除外して,亡Aの発症前1か月間の具体的労働時間及
び時間外労働時間を算定したものが,別紙2であるが(なお,合理的な
移動時間は労働時間としている。),この場合でも,時間外労働が108
時間53分に上るような長時間労働に従事していたことになる。
ウ業務の過重性について
亡Aの従事していた業務は,日ごとに作業現場が異なり,それに伴い作
業時間も異なるものであった。また,午後10時以降の深夜勤務時間帯に
労働することもあり,不規則かつ深夜にわたる勤務を行っていた。
不規則な勤務は生活リズムの悪化をもたらす場合が多く,深夜労働は疲
労が取れにくくなることが知られている。亡Aは,恒常的な長時間労働に
加え,不規則かつ深夜にも及ぶような労働を行ったことにより,生活リズ
ムの悪化をもたらし,疲労が蓄積していたと考えられる。
【被告】
ア亡Aの死因が不明であること
本件では,亡Aの遺体は解剖が実施されておらず,器質的変性の存在が
確認されていない。また,亡Aの死亡前後の医療記録としては,救急搬送
された先の病院でも診療録や,血液検査結果しか存在せず,生前における
既往歴や健康診断の結果を表す資料も提出されていない。心臓疾患が原因
となって亡Aが死亡したことを示す証拠は何ら存在しない。
イ亡Aの労働時間について
給与明細等における亡Aの労働時間について,後記補正を加えた
上で亡Aの死亡前約6か月の実労働時間を推計した場合,亡Aの具体的
労働時間及び時間外労働時間数は別紙3のとおりであり,原告が主張す
る労働時間を大幅に下回る。なお,時間外労働時間数の計算方法につい
ては,休日が定まっていないアルバイト従業員の労働形態を考慮すべき
であるから,1週間に満たない日数(29日目及び30日目)について,
その総労働時間数から11時間25分(40時間÷7日×2日(小数点
以下切捨て))を引いて,2日間の時間外労働時間数とすべきである。
被告における賃金算定上のルールについて
平成24年頃,被告においては,賃金算定上のルールとして,以下の
とおり,2時間半ルール,30分未満切上げルール並びに移動時間及び
休憩時間についてのルールが定められており,亡Aの実労働時間の算定
に当たっては以下のとおりとすべきである。
a2時間半ルールについて
2時間半ルールとは,実際の作業開始時刻(以下「実開始時刻」と
いう。)から実際の作業終了時刻(以下「実終了時刻」という。)まで
の時間が2時間30分に満たない場合でも賃金算定上労働時間を2時
間30分としてカウントするというルールをいう。同ルールを前提と
すれば,労働時間が2時間30分として記録された場合,理論上はそ
の中のあらゆる数値を取り得るから,実際の労働時間の平均値はその
半分の1時間15分とすべきである。
なお,大丸入退店表(乙9の2)は,被告のアルバイト従業員が大
丸に入退店する際に記入するものであるところ,大丸での業務は入店
後開始し退店前に終了するから,実労働時間はこの幅に収まることに
なる。大丸入退店表によれば,給与明細等上,労働時間が2時間30
分とされている場合の入店からまでの時間は平均して1時間6分であ
り(乙10),実際の労働時間の平均はこれよりも少なかった。
よって,給与明細等記載の労働時間が2時間30分の作業について
は,記録上終了時刻を1時間15分早い時刻に補正するものとして,
朝の立会い(午前8時から午前10時30分)については概ね9時か
ら作業が開始されていたという実態に近付けるため,午前9時から1
0時15分と補正する。
b30分未満切上げルールについて
30分未満切上げルールとは,実終了時刻を30分刻みの時刻に繰
り上げて記録するというルールをいう。同ルールを前提とすると,理
論上は,実終了時刻と記録終了時刻の間には平均15分の差(実終了
時刻が記録終了時刻よりも15分早い)が生じることとなるため,記
録上の終了時刻よりも平均的には15分早かったものと補正して算定
すべきである。
c移動時間について
被告においては,2つの現場の移動時間が概ね1時間以内の場合に
は移動時間を賃金算定時間に含めていた。労働時間でない移動時間が
賃金算定時間に含まれていることから,実際の労働時間は賃金算定時
間よりも現場間の移動時間分少ないことになる。そこで,給与明細等
上,前の現場の終了時刻と次の現場の開始時刻が同時刻の場合には,
前の現場の記録上の終了時刻を,移動時間分早い時刻に補正すべきで
ある。
原告は,現場間の移動時間を労働時間に含めるべきと主張するが,
労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう
ところ,アルバイト従業員は,開始時間までに現場に集合し,業務が
終了すると現場で解散するのであり,異なる現場での業務は,別個の
ものである。両現場の業務に連続性はなく,移動中のアルバイト従業
員が使用者の指揮命令下に置かれていないことは明らかであるから,
現場間の移動時間は労働時間には当たらず,これを労働時間に含める
べきではない。
d休憩時間について
被告においては,労働時間が6時間を超える場合に1時間の休憩を,
労働時間が9時間を超える場合には2時間の休憩を,アルバイト従業
員にとらせていたが,これらの休憩時間を賃金算定時間に含めていた。
上記補正を加えた実際の労働時間が7時間を超える場合には1時間
分,11時間を超える場合には2時間分,休憩時間に当たる時間を控
除すべきである。
ウ業務の過重性について
亡Aが携わっていた作業は,主に,①百貨店等での什器の搬入・設置・
搬出,②立会い,③倉庫での什器の搬入・搬出であったが,什器の運搬に
は台車が利用され,また,立会いではほとんど作業がなかったため,いず
れの作業も身体にそれほど負担をかけるものではなかった。
作業が長時間に及ぶ場合には,被告社員の指示のもとで休憩が与えられ,
亡Aは休憩室で食事等の休憩をとることができた。休憩時間でないときも
什器が到着するまでの間や,別の業者等の作業が終了するまでの間等に,
作業を行わずに待機していることもしばしばあった。
亡Aには業務上のノルマが課されておらず,自身の都合に合わせて働き
たいときだけ働くことが可能であったため,亡Aの業務上の精神的負担は
極めて小さいものであった。
⑵争点2(被告の安全配慮義務違反の有無)について
【原告ら】
ア本件の事実関係からすれば,被告は,亡Aとの関係において,遅くとも
亡Aが死亡する1か月前までには,亡Aの労働時間を把握し,長時間労働
となるおそれがある場合には申込みを受け付けない等の措置をとるべき
義務を負っていたにもかかわらず,かかる義務を怠った。
使用者は,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働
者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っていると一
般的に解されているところ,亡Aは被告との間で継続的にアルバイト勤務
に従事しており,特別な社会的接触の関係に入った当事者に当たるといえ
るから,具体的な労務の指示が都度行われるとしても,被告が亡Aに対し
上記安全配慮義務を負うことは明らかである。
被告におけるアルバイト従業員の労働条件(賃金等)は,各現場とも共
通しており,現場ごとに異なるわけではない。それゆえ,賃金の支払も,
現場単位ではなく,10日単位となっている。被告のアルバイト従業員の
特色として挙げられる点は,要は,各アルバイト従業員が自分の希望によ
り現場や働く時間を選択できるということに過ぎず,その選択の結果とし
て長時間労働等の過重労働となる場合が生じ得ることは,正社員や一定期
間の雇用期間が想定される有期雇用の場合と何ら異ならないから,被告に
おいて労働時間の適正把握等の義務を負わないとする根拠とはならない。
また,短期間の過重業務も脳心臓疾患の発症の原因となることは医学的
に知られているところ,雇用期間が形式としては短期間であることをもっ
て,使用者がその労働者に過重な業務をさせてはならないとの義務が否定
されるものではない。
イ被告は,各アルバイト従業員の申込み及び配置のみならず,その実際の
労働時間を把握することも十分に可能であった。実際にも,現在では被告
は各アルバイト従業員の労働時間を比較的正確に把握した上で,働き過ぎ
ている場合には休みをとるように伝えるという運用になっている。
また,各アルバイト従業員からの申込みは具体的な勤務の約1週間前に
されることから,被告においてその時点における正確な労働時間を集計す
ることはできないとしても,月初から申し込み時点までの間の当該従業員
の累積労働時間を確認することは可能である。
ウアルバイト従業員を必要なときに確保するという雇用形態が採用され
ているのは,被告の便宜のためであるから,亡Aの判断で業務を選択でき
る可能性のあったことをもって,安全配慮義務を否定する根拠とすべきで
はない。
【被告】
ア被告は,亡Aに対して,原告らの主張するような安全配慮義務を負って
はいなかった。
アルバイト従業員の各現場の作業は個々に完結しており,他の作業との
連続性はない。また,アルバイト従業員は,現実に従事する現場の作業以
外にノルマを負っていない。
勤務日程や作業量を決定するのは,各アルバイト従業員の権限である。
被告が募集した現場作業の中からどれを選択して申し込むかは自由であ
り,申込の後でも,被告に電話連絡を入れてキャンセルすることができる。
アルバイト従業員は,各現場で作業を行っている間だけ,被告との間に
使用従属関係が生じているに過ぎない。アルバイトから作業の申込みを受
け付ける段階においては,被告とアルバイト従業員との間に使用従属関係
があるとはいえず,「使用者」には当たらない。これは,亡Aのように繰
り返し現場作業に従事するアルバイト従業員との間においても同様であ
る。被告はバイトの申込みを順次受け付けているに過ぎず,個々のアルバ
イト従業員の1週間分の作業予定を定めて作業に従事するよう指示して
いるわけではない。
なお,各現場では,現場の安全性を確保するとともに,アルバイト従業
員に適度の休憩をとらせるなどしていた。
イ被告は,各現場の作業日の約1週間前からアルバイト従業員の申込みを
逐次受け付けるところ,その後の当該アルバイト従業員の作業予定を把握
していない。このため,被告は申込みを受け付けた時点では,当該アルバ
イト従業員が長時間労働となるおそれが生じるか否かを判断することが
できない。また,被告は,多数のアルバイト従業員からの申込みを一斉に
受け付けて,多数の作業現場への人員配置を行っており,個々のアルバイ
ト従業員の過去の労働時間等の個別事情を勘案して受け付けるか否かを
決めることは極めて困難である。
被告は,申し込まれた勤務日を変更したり申し込まれた作業以外の作業
を指示する権限を有していない。
ウ被告は,亡Aから健康状態に不安があるなどと言った報告は受けておら
ず,職場においてもそのような様子は見られなかったため,亡Aから申込
みを受けた時点において,亡Aが業務により死亡することを予見すること
は不可能であった。
⑶争点3(過失相殺の可否及び過失割合)について
【被告】
ア亡Aは,アルバイト従業員として働くことを自ら希望し,各作業の申込
みを行っていた。
亡Aは,平成24年1月,原告1及び原告2とともに大阪市北区天満か
ら京都市左京区千代田町に転居したが,転居後も主として大丸や被告の第
2センター(兵庫県西宮市鳴尾浜)等における作業に従事していた。亡A
は,自宅から遠く通勤に時間のかかる現場での作業を自ら申し込んでいた
ものである。
イ亡Aは,アルバイト従業員であり,被告における健康診断対象者には当
たらなかったのであるから,自身の健康を管理するため,自ら定期的に健
康診断を受ける等して健康状態を把握すべきであったにもかかわらず,長
期間にわたり健康診断を受けていなかった。その上,深夜に多くの量の食
事をとり,喫煙をする等して,自身の健康管理を怠っていた。
【原告ら】
ア被告は,亡Aに対して健康診断を受けさせる義務を負っていたというべ
きであるから,これを怠った被告において,亡Aが健康診断を受けていな
かったという事実を自己に不利な事情として主張することは許されない。
イ亡Aの食生活が不規則であることについては,ことさら強調されるよう
なものではないし,仮に日中食事がとれなかったとしても,それは勤務時
間が不規則であったことや,業務中に休憩時間が与えられていなかったこ
とによるものであり,むしろ勤務実態に問題があるということになる。
亡Aに喫煙の習慣があったことは事実であるが,1日につき3本程度に
過ぎず,およそ健康に悪影響を及ぼすような喫煙量ではない。
(4)争点4(損害の発生及び額)
【原告ら】
ア死亡による慰謝料2800万円
イ死亡による逸失利益5443万7000円
年収額513万6280円
遺族補償年金の給付基礎日額は1万4072円である。これは,被告
から支給された賃金だけでなく,法律上支払われるべき時間外労働等割
増賃金を加算して算出されている。これを年収に引き直すと,513万
6280円(1万4072円×365日)となる。
就労可能年数29年(ライプニッツ係数15.141)
亡Aは死亡時38歳であり,就労可能年数は29年である。
生活費控除30%
亡Aの家族構成(夫婦と未成年の子1名)に照らせば,30%とする
のが相当である。
よって,亡Aの死亡による逸失利益は,5443万7000円(51
3万6280円×15.141×(1-0.3))となる(千円未満切り
捨て。)。
ウ葬祭料150万円
エ弁護士費用1000万円
オ原告両名による相続後の合計額
原告両名は,上記アないしエの合計額である9393万7000円につ
いて,それぞれ2分の1の額である4696万8500円ずつを相続した。
カ損益相殺
原告1は,遺族補償年金として口頭弁論終結時までに合計1154万6
476円の支給を受けており,これについて損益相殺を行うと,原告1の
残損害額は3542万2024円となる。
キまとめ(原告ら各自の請求額)
原告13542万2024円
原告24696万8500円
【被告ら】
ア逸失利益については争い,その余は不知。
イ逸失利益を計算する際の年収額は,過去の年収額の実績から算出すべき
であり,仮定の数値である給付基礎日額から算出すべきではない。死亡前
の亡Aの年収額である480万7665円(平成23年4月11日から平
成24年4月10日までの賃金総額)を逸失利益算定の基礎収入とすべき
である。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前記前提事実に証拠(甲6,8ないし10,15,乙1,2,9,16ない
し21,証人B,証人C,証人D,原告1本人)及び弁論の全趣旨を総合する
と,以下の事実を認めることができる。
⑴亡Aの生前の生活状況等
ア生前,亡Aは原告1及び原告2と3人で居住しており,原告1及び原告
2は,亡Aの収入により生計を維持していた。
亡Aは,平成9年5月頃から被告においてアルバイト従業員として働い
ていた。また,亡Aは,他に稼働先はなく,被告からの収入のみで生計を
立てていた。
イ亡Aの喫煙量は1日2,3本程度,飲酒量は350mlの缶ビールを2
缶(700ml)程度であった。なお,亡Aは,生前,被告のアルバイト
従業員に対し,「不整脈がある」と述べたことがあった。
ウ亡A,原告1及び原告2は,平成22年から大阪市a区bに居住してい
たが,原告2のアトピーがひどかったこと,京都でも被告の仕事現場があ
ること等から,平成24年1月頃から京都市c区d町へ転居した。
転居後の自宅最寄駅であるe駅(叡山電鉄)から心斎橋駅(大阪市駅御
堂筋線)までは,電車で約1時間半の距離にある。
亡Aは,終業時間が遅くなり,電車で帰宅できない場合は,大阪市f区
gにある亡Aの実母宅へ行っていた。
エ亡Aには,通院中の疾病はなく,平素から服薬している薬はなかった。
⑵被告の業務及び規模等
平成24年当時,被告大阪営業所において取引関係のある百貨店等は約5
0店舗あり,年間の作業現場としては約8000か所に上っていた。
⑶被告におけるアルバイト従業員の採用等
ア被告においてアルバイト従業員として仕事を行うには,被告に履歴書等
を提出して面接を受け,被告のアルバイト従業員として登録を受けた上,
個別の仕事を受けるために,後記⑷記載の仕事の申込みを行うという手順
を踏む必要がある。
登録する際にアルバイト従業員に交付される本件規定には,賃金・交通
費の計算や支払方法等として,要旨以下のとおりの記載がある。
賃金は,時給1000円からスタートし,25円刻みで1350円ま
で加算される。(⑸賃金規定①)
作業時間は30分刻みで計算する。(⑸賃金規定③)
2時間未満の作業勤務に対しては2時間分の賃金を支払う。(⑸賃金
規定④)
1日に2つ以上の現場で作業するための移動時間は,1時間以内であ
れば,作業時間とみなす。(⑸賃金規定⑤)
交通費は,往復1000円までの実費とする。複数現場の移動のため
の交通費は,現場間の実費とする。具体的には,1日に現場が1か所の
場合,自宅最寄駅から現場までの交通費(往復)を支給する。1日に現
場が複数ある場合は,自宅最寄駅から最初の現場までの交通費(往路)
及び最終現場から自宅最寄駅までの交通費(復路)を支給するとともに,
①現場間移動時間が2時間未満の場合には現場間の交通費を支給し,②
現場間移動時間が2時間以上の場合には,自宅最寄駅から現場までの金
作業現場までの自動車,バイク等の利用は,原則として認めない(⑺
交通費☆印)
イ平成24年当時,被告のアルバイト従業員の登録人数は約300人であ
り,うち約100人が実際に作業に従事していた。主に被告での勤務によ
り生計を立てている者は,そのうち30人から40人程度であった。
ウ被告は,アルバイト従業員については,健康診断を受診させていない。
⑷アルバイト従業員の作業申込み
ア被告大阪営業所においては,実際に作業を行う日の約1週間前までには,
どの現場にどれだけの人数が必要であるかが判明することから,各現場の
作業日の約1週間前から,アルバイト従業員から作業の予約を受け付けて
いた。具体的な手順としては,アルバイト従業員が大阪営業所労務課に電
話をかけ,募集されている作業現場,日時等を確認した上で,当該アルバ
イト従業員の希望する作業現場,日時を営業所の受付担当者に告げると,
先に予約をした者から順次現場に配置され,各現場の定員に達した場合に
は当該現場の予約受付を終了するという流れにより,作業の予約が行われ
ていた。申し込むべき作業のノルマは特に定められていない。
他方で,ある現場に必要な人数に達する申込みがない場合には,被告の
営業担当社員又は労務課社員から,アルバイト従業員として登録している
者全員にメールを送信し,あるいは,アルバイト従業員に対して個別に電
話をしており,亡Aに対しても,アルバイト従業員が足りない日について
作業の引受けの打診を行うことがあった。
イ亡Aの死亡後,被告は,アルバイト従業員ごとに実労働時間を把握し,
1か月ごとに集計するようにしており,長時間労働になるような場合には,
被告の方から休みをとるよう勧告するとの運用をしている。
⑸アルバイト従業員の作業時間の管理及び作業の監督等
アアルバイト従業員は,作業当日,作業開始時間の概ね5分前から10分
前までに現地に集合し,社員の指示に従って作業を行い,作業が終了する
と現地で解散する。
イ大阪営業所の営業担当社員は,各現場において,アルバイト従業員に対
する作業の指示や監督のほか,アルバイト従業員の作業開始時刻及び作業
終了時刻の確認を行っており,アルバイト従業員の作業開始時刻及び作業
終了時刻の確認も営業担当社員において行っていた。具体的には,当該現
場に入るアルバイト従業員の氏名及び連絡先等が印字された作業確認リ
スト(乙17)をもとに,集合したアルバイト従業員の氏名や人数等を営
業担当社員が確認した後,アルバイト従業員において作業確認リストに
「開始時間」を記入して,営業担当社員がその時刻を確認し,作業が終了
すると,アルバイト従業員において「終了時間」を記載し,営業担当社員
がこれを確認するという流れにより,作業開始及び終了時刻を記録してい
た。
営業担当社員において作業の発注元に対する見積書を作成する際には,
自身の経験や記憶のほか,過去の作業確認リスト等に基づき,必要な人数
や時間を見積もっていた。
ウ小規模の現場であれば,営業担当社員が現場に行かない場合があり,そ
の際には,亡Aのような経験の長いアルバイト従業員に現場を任せること
がしばしばあった。
エ作業確認リストに記載された作業開始時刻は,実際の作業開始時刻と概
ね同じであるが,立会作業(後記⑹イ)等,被告の労務管理課において正
確な作業開始時刻を把握していない場合には,実際の作業開始時刻と異
なっていることがあった。
オ作業現場で作成された作業確認リストは,被告の労務管理課に提出され
た後,被告の記録媒体に各アルバイト従業員の作業時間が入力された。平
成24年頃において,作業確認リストに記載された労働時間は,現場間で
作業時間が重なる場合を除き,原則として,そのまま記録媒体に入力され,
これが作業実積一覧(甲6の22)に反映されていた。なお,現場間で作
業時間が重なる場合には,入力の際に重ならないよう修正していた。
カ休憩について
被告社員が現場にいるときは,社員の指示により適宜アルバイト従業員
に休憩をとらせており,什器備品類の到着が遅れている場合には待機時間
として適宜休憩所に行かせることもあった。なお,現場が百貨店である場
合には,アルバイト従業員が使用可能な休憩所があることが多いが,それ
以外のホテル等の現場では,アルバイト従業員が使用できる休憩所が事実
上ない場合があり,屋外で立ったまま休憩をとることもあった。
⑹アルバイト従業員の作業内容
被告のアルバイト従業員が行う作業は,概ね以下の3種類があった。
ア百貨店や展示会場での什器の搬入,設置及び搬出
百貨店や展示会場において使用する陳列棚やパーテーション等の什器
がトラックで運ばれてくるのを現地で待ち受け,トラックの到着後に,什
器をトラックから降ろして,台車や,什器自体に附属しているキャスター
等を使用して運搬し,所定の場所に設置する。
イ立会作業
百貨店等における催事のオープン当日,開店(開場)までの間に,電灯
が点いているか,什器が適切に稼働しているか等の確認を催事担当者が行
う際,これに立ち会う。催事の担当者から変更依頼があった場合には,こ
れに応じて変更作業等を行う。なお,朝に通常の搬入作業をすることもあ
るため,朝に行われる作業が必ず立会作業であるというわけではない。
ウ倉庫での什器の搬入・搬出
鳴尾浜にある被告第2センターの倉庫(以下「第2倉庫」という。)に
おける作業であり,事前に搬送する予定の什器をまとめておく,各現場に
搬送する什器をトラックに積み込む,トラックで搬送されてきた什器を倉
庫の元の位置に戻す等の作業を行う。倉庫内には什器を収納した多くのコ
ンテナが置かれ,必要な什器が入ったコンテナの取出し等は,全てコン
ピューター制御により行われていた。トラックまでの運搬や積込み等には,
台車や,什器自体に付属するキャスターを使用していた。
⑺大丸の外来者入退店表
被告のアルバイト従業員は,作業のために大丸の通用口を利用する際,入
店証や作業用の腕章を持っている場合を除いては,同通用口に備付けの大丸
入退店表(乙9の2)に会社名,氏名,入店時刻等を記載する必要があった。
亡Aは作業用の腕章を所持していたが,腕章を忘れた場合には大丸入退店表
への記入をしていた。
⑻アルバイト従業員の賃金の計算及び支払等
アルバイト従業員に対する平成24年頃の賃金の支払方法は,各月10日
ごとに締め,その約10日後に送金等により支払うという月3回払の形式を
とっていた(なお,現在では,毎月15日締め翌月15日払の形式になって
いる。)。
亡Aの賃金は,同年頃には,第2倉庫について1時間1000円,それ以
外の現場については1時間1350円となっており,深夜帯の作業について
は30分当たり150円の手当が加算されていた。なお,平成23年12月
頃までは,第2倉庫での作業についても,賃金は1時間当たり1350円で
あった。また,1日に複数の現場がある場合には,現場間の移動に要した交
通費が支払われていた。
⑼現場間の移動
ア同じアルバイト従業員が一日に複数の現場で就労する場合には,一つの
現場から次の現場へ直接移動することもあった。被告は現場間の移動方法
について特に指示をしておらず,アルバイト従業員は,現場までの距離に
応じ,電車や自転車,バイク等を用いて移動していた。
イアルバイト従業員が作業を行う各現場間の移動にかかる時間は,以下の
とおりと認められる。
大丸―第2倉庫1時間06分
大丸―ダイエー京橋店21分
大丸―リッツカールトンホテル19分
大丸―大丸梅田店12分
大丸―サンライズビル3分
大丸―ホテル日航大阪2分
大丸―高島屋泉北店42分
大丸―西武百貨店大津店1時間14分
大丸心斎橋―ル・ベンケイ1時間05分
大丸―高島屋堺24分
大丸―阪急梅田駅13分
大丸―ダイエー京橋店21分
大丸―ダイエー吹田店30分
大丸―イトーヨーカ堂阿倍野店17分
大丸―JR京都伊勢丹50分
第2倉庫―リッツカールトン55分
第2倉庫―ホテルオークラ神戸1時間23分
第2倉庫―ハービスエント52分
第2倉庫―西武百貨店高槻店1時間21分
第2倉庫―大丸梅田店52分
第2倉庫―JR京都伊勢丹1時間11分
第2倉庫―ホテル日航1時間07分
第2倉庫―セントレジス大阪1時間06分
大阪城ホール―ダイエー曽根店42分
帝国ホテル大阪―大丸29分
インテックス大阪―大丸34分
ル・ベンケイ―梅田クリスタルホール1時間10分
神戸国際展示場―太閤園54分
ホテルオークラ京都―大丸47分
グルメシティ豊中店―大丸34分
阪急梅田駅―京都国際会館1時間01分
ダイエー京橋店―リーガロイヤルホテル16分
ホテル阪急インターナショナル―大丸17分
リッツカールトンホテル―インテックス大阪42分
リーガロイヤルホテル―リッツカールトン15分
イトーヨーカ堂阿倍野店―高島屋京都店1時間13分
⑽亡Aの賃金の額について
亡Aの平成23年4月11日から平成24年4月10日までの賃金の総
支給額は,480万7665円であった。
また,平成21年以降,被告から亡Aに対して支払われた賃金の総額は以
下のとおりである。
平成21年分367万9275円
平成22年分321万7900円
平成23年分420万6900円
⑾労災認定
原告1は,平成24年7月,茨木労働基準監督署長に対し,遺族補償年金
及び葬祭料の支給を請求した。
同署長は,亡A
を含む。)),症状の発現日(発症日)を死亡日である平成24年4月12
日とした上で,亡Aの発症前1か月(同年3月14日から同年4月12日)
までの拘束時間が391時間,時間外労働時間数が154時間30分であり,
長時間労働が長期間にわたり継続していたものとして,亡Aの死亡を業務上
の災害に起因するものと認定した。
⑿亡Aの死亡の経過及び死因に関する医師の意見
ア亡Aは,平成24年4月11日の早朝に自宅を出発し,同日の朝から翌
日である同月2日の夕方まで徹夜での作業を行った後,午後8時30分頃
に帰宅してすぐ,原告1に対し,「疲れた。眠たい。」「ご飯を食べたら
横になりたい」と述べ,夕飯を食べた後,急に意識を失って倒れた。
亡Aは,京都第一赤十字病院へ搬送され,同日午後9時38分に同病院
へ到着した後,亡Aに対しCPR(心肺蘇生法)が開始された(担当はE
医師であった。)。同日午後9時38分から40分頃まではVf(心室細
動),同日午後9時40分から午後10時16分までAsys(心停止)
の状態が続き,同日午後10時54分,原告1立会いのもと,亡Aの死亡
が確認された。
京都府警察医(Fクリニック)F医師は,同月13日(死亡翌日),亡
Aの遺体を検案し,死体検案書(甲6の7)を作成した。同検案書中,「直
接死因」の欄には「不整脈の疑い」,「その他特に付言すべきことがら」
の欄には「夕食後意識消失し救急隊が到着した頃には死亡していた。CT
にて脳内出血,胸膜腔内出血認めず。」と記載されている。
イE医師の意見の要旨
亡Aは致死性不整脈が原因で死亡した。元々詳細不明ではあるが不整脈
の既往があること,若年者の突然発症のCPA(心肺停止)であったこと,
CPR(心肺蘇生法)開始後一度も波形が戻っていないこと等から,これ
がもっとも考えられる。その他の死因の可能性については否定できないが,
特に疾患は挙げられない。
ウF医師の意見の要旨
心臓死にしてもあまりにも突然死亡しているため,致死性不整脈が生じ
たと考えるのが妥当である。客観的判断ができる資料(心電図等)に乏し
いため,あくまでも推定である。今回の死亡原因が「心停止若しくは心臓
当たるかについては,前兆なく突然死亡しているので,心臓
死が考えやすい。
エ局医職業病相談のG医師(専門医)の意見の要旨
本件被災者(亡A)はいわゆる突然死であるところ,突然死の多くは心
原性であり,本件では年齢等から原因不明の致死性不整脈の可能性が高い。
⒀業務起因性にかかる認定基準等
ア専門検討会報告書について
脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会が,厚生労働省からの依頼
による検討結果を取りまとめた報告書である平成13年11月15日付
け「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」の検討結果(方針)に
ついて」(甲10。以下「専門検討会報告書」という。)には,概要以下
のとおりの記載がある。
業務による過重負荷によって発症する疾患のうち,虚血性心疾患等と
して,①心筋梗塞,②狭心症,③心停止(心臓性突然死を含む),④解
離性大動脈瘤があり,従来「一次性心停止」及び「不整脈による突然死
等」とされてきたものは③に含まれる。
心停止とは,心拍出が無となり,循環が停止した状態を指し,心電
図上,心室停止,心室細動のいずれかを示すことが多い。主な基礎疾患
は虚血性心疾患であり,急性冠症候群の心臓性突然死に当たる。
突然死を発症2時間以内の死と定義した場合,米国では,前死亡の1
2%が突然死であり,うち70%から85%が心臓由来すなわち心臓性
突然死と考えられている。日本においても,突然発症する心停止の多く
は,心室頻拍・心室細動が直接の原因であり,その基礎心疾患としては
虚血性心疾患,次いで心筋症が多いと考えられる。
長時間労働について
長期間にわたる長時間労働や,それによる睡眠不足に由来する疲労の
蓄積が血圧の上昇等を生じさせ,その結果,血管病変等をその自然経過
を越えて著しく増悪させる可能性がある。疲労の蓄積には,長時間労働
以外の種々の就労態様による負荷要因が関与することから,業務の過剰
性の判断は,それら諸要因を総合的に評価することによって行われるべ
きであるが,長時間労働に着目する場合には,1日4時間から6時間程
度の睡眠が確保できない状態が継続していたか否かという視点で検討
することが妥当である。
1日5時間程度の睡眠を確保できない場合には,脳・心臓疾患の発症
との関連に関し,すべての報告において有意性があるとされているとこ
ろ,1日5時間程度の睡眠が確保できない状態とは,平均的な労働者の
場合,1日の労働時間が8時間を超え,5時間程度の時間外労働を行っ
た場合に相当し,これが1か月継続した状態は概ね100時間を超える
時間外労働が想定される。また,1日6時間程度の睡眠が確保できない
状態とは,平均的な労働者の場合,1日の労働時間が8時間を超え,4
時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,これが1か月継続した状
態は概ね80時間を超える時間外労働が想定される。
1日7時間から8時間程度の睡眠が確保できる状態がもっとも健康
的であるという研究結果があり,1日7.5時間程度の睡眠が確保でき
る状態とは,平均的な労働者の場合,1日の労働時間が8時間を超え,
2時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,これが1か月継続した
状態は概ね45時間の時間外労働が想定される。
不規則な勤務について
不規則な勤務は,睡眠―覚醒のリズムを障害するため,不眠,睡眠障
害,昼間の眠気等の愁訴を高め,生活リズムの悪化をもたらす場合が多
いとの報告や,通常の交代制勤務よりも不規則な交代制勤務の方が完全
な休息が得られない可能性を指摘する報告がある。予定された業務スケ
ジュールの変更の頻度,程度,事前の通知状況,予測の度合,業務内容
の変更の程度等の観点から検討・評価を行うべきである。
拘束時間の長い勤務について
拘束時間数,実労働時間数だけでなく,拘束時間数の実態等(労働密
度,業務内容,休憩・仮眠時間数,休憩・仮眠施設の状況等)から検討
すべきである。
交代制勤務,深夜勤務について
交代制勤務の心血管疾患に対するリスクは概ね1.2倍から1.5倍
になると考えられる。また,夜遅くや主に夜間・早朝に働く労働者の虚
血性心疾患のリスクが高いとする報告がある。
交代制勤務や深夜勤務のシフトが変更されると,生体リズムと生活リ
ズムとの位相のずれが生じ,その修正の困難さから疲労がとれにくいと
いったことが考えられる。
交代制勤務や深夜労働の過重性については,勤務シフトの変更度合,
勤務と次の勤務までの時間,交代制勤務における深夜時間帯の頻度がど
うであったか等の観点から検討・評価を行うべきである。
業務の過重性(長期間・短期間両方を含む。)を評価するにあたって
は,労働時間やその他の就労態様等を考慮すべきである。
発症前1か月ないし6か月間の就労状況を調査すれば,発症と関連す
る疲労の蓄積が判断され得ることから,疲労の蓄積にかかる業務の過重
性を評価する期間を発症前6か月間とすることは,現在の医学的知見に
照らし,無理なく,妥当である。
イ厚生労働省の認定基準について
厚生労働省は,専門検討会報告書における検討結果をふまえて,平成1
3年12月12日付け基発1063号による都道府県労働局長宛厚生労
働省労働基準局長通知「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因する
ものを除く。)の認定基準について」(甲8。以下「本件認定基準」とい
う。)により,脳・心臓疾患に関し,概要以下の内容の認定基準(業務上
の疾病該当性の認定要件)を定めている。なお,「心停止(心臓性突然死
を含む。)」は,本件認定基準において対象疾病として取り扱われている。
脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす明らかな過重負荷として発症に近
接した時期における負荷のほか,長期間にわたる疲労の蓄積も考慮する。
また,業務の過重性の評価に当たっては,労働時間,勤務形態,作業環
境,精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握,検討し,総合的に
判断する必要がある。
発症に近接した時期(発症前概ね1週間)において特に過重な業務に
就労したか否かの評価については,業務量,業務内容,作業環境から,
特に過重な身体的,精神的負荷と認められるか否かという観点から行わ
れるべきである。その際,労働時間,不規則性,拘束時間の長さ,出張,
交代制勤務・深夜勤務,作業環境等の負荷要因を検討すべきであるが,
労働時間については,発症前概ね1週間以内に継続した長時間労働が認
められるか,休日が確保されていたか等の観点から検討し,評価する。
発症前の長期間にわたって著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な
業務に就労したか否かについての評価に当たっては,疲労の蓄積の観点
から,労働時間のほか,不規則性,拘束時間の長さ,出張,交代制勤務・
深夜勤務,作業環境,精神的緊張等の負荷要因についても十分検討すべ
きであるが,疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時
間に着目した場合には,①発症前1か月間ないし6か月間にわたって,
1か月あたり概ね45時間を超える時間外労働が認められない場合は,
業務と発症との関連性が弱いが,概ね45時間を超えて時間外労働が長
くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること,
②発症前1か月間に概ね100時間又は発症前2か月間ないし6か月
間にわたって,1か月あたり概ね45時間を超えて時間外労働時間が長
くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できることを
踏まえて判断する。また,休日のない連続勤務が長く続くほど業務と発
症との関連性をより強めるものであり,逆に,休日が十分確保されてい
る場合は,疲労は回復ないし回復傾向を示すものである。
平成8年1月22日付け基発第30号で対象疾病としていた「不整脈
による突然死等」は,不整脈が一義的な原因となって心停止又は心不全
症状を発症したものであることから,「不整脈による突然死等」は,「心
停止(心臓性突然死を含む。)」に含めて取り扱う。
ウ本件基準の運用上の留意点について
厚生労働省平成13年12月12日付け基労補発第31号「脳血管疾患
及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準の運用上
の留意点等について」(甲9。以下「留意点等」という。)は,本件認定
基準の具体的運用について定めている。同通達においては,発症前2週間
以内といった発症前1か月間よりも相当短い期間のみに過重な業務が集
中し,それより前の業務の過重性が低いために,長期間の過重業務とは認
められない場合には,発症前1週間を含めた当該期間に就労した業務の過
重性を評価し,それが特に過重な業務と認められるときは「発症に近接し
た時期(発症前概ね1週間)において特に過剰な業務に就労した」ものと
して取り扱うことができる旨が定められている。
2争点1(業務と亡Aの死との間の因果関係の有無)について
⑴亡Aの死因についての各医師の見解
前記認定事実のとおり,①亡Aが比較的若年であったこと,②亡Aは,
死亡当日,自宅で倒れるまで重大な症状が出ておらず,突然心肺停止の状態
になり死亡したこと,③心肺蘇生術中も,心電図の波形がVf(心室細動)
又はAsys(心停止)の状態にあったことがそれぞれ認められるところ,
亡Aの処置に当たったE医師は,上記①ないし③の事実を踏まえて,致死性
不整脈が亡Aの死因であると判断している。
また,亡Aの死体を検案したF医師及び局医であるG医師も,主として上
記②の事実から不整脈が亡Aの死因であると判断しており,亡Aの死因を致
死性不整脈とするE医師の上記判断について特に異論を述べていない。
そして,診断上致死性不整脈を含むとされている心停止(心臓性突然死)
においては,心電図上,心室静止・心室細動のいずれかを示す場合が多いと
ころ),上記③の事実を踏まえて亡Aの死因を致死性不整
脈と判断したE医師の意見に不合理な点は見当たらない。
⑵亡Aの労働時間等について
ア被告においては,以下イないしカ等において認定するとおり,本件当時,
アルバイト従業員の正確な作業時間を記録しておらず,亡Aの労働時間を
直接的かつ客観的に裏付ける証拠は存在しない。したがって,各証拠に照
らして,作業の開始及び終了時刻等を合理的に推認することにより,これ
を認定するほかない。
イ作業の現場において被告社員が作業確認リスト記載の作業開始時刻・終
了時刻を確認しているところ,被告においては,作業確認リストに記載さ
れた時間等をもとに発注元への見積りを作成していること(認定事実⑸
イ),作業確認リストに記載された時間は,次の現場と記録上の時間が被
らない限りは,原則としてそのまま被告の記録媒体に入力され,作業実績
一覧(甲6の22)に反映されることからすれば(認定事実⑸オ),作業
実績一覧記載の作業場所,作業開始時刻・終了時刻は,アルバイト従業員
の労働時間を比較的正確に反映しているものといえる。したがって,亡A
の労働時間を算定するにあたっては,作業実績一覧記載の作業開始及び終
了時刻(以下,それぞれ「記録上開始時刻」及び「記録上終了時刻」とい
う。)に基づいてこれを推計すべきである。
他方において,被告の主張する賃金算定上の各種ルールのうち,その存
在が認定しえ,かつ,同ルールの存在を前提とした時間数を把握し得るも
のについては,これを以下のとおり斟酌することとする。
ウ2時間半ルールについて
前記認定事実のとおり,本件規定には2時間未満の作業に対し
ても2時間分の賃金を支払う旨が記載される旨が記載されているとこ
ろ,被告は,平成23年6月8日付けで,アルバイト従業員に対し,従
来「最低保障時間」が3時間であったものを同年7月1日から2時間3
0分に減縮する旨の通知をしている(乙14)。また,作業実績一覧(甲
6の22)をみると,一つの現場における作業時間は,同作業の記録上
終了時刻と次の現場における記録上開始時刻とが接着している場合を
除き,原則として,最低でも2時間30分(平成23年6月以前につい
ては3時間)あるものと記録されている。
また,証人Dは,平成24年当時において,実作業時間にかかわらず,
一つの現場では2時間30分の作業をしたものとして算定して賃金の
支給を受けていた旨証言し,証人Bは,作業確認リストには作業時間が
最低でも2時間30分あるものと記載させ,そのままでは前の現場の作
業時間が次の現場の作業時間と重なるような場合を除いて同リストの
記載どおりに記録媒体に入力していた旨証言するところ,その内容はい
ずれも上記各事実と整合するものである。
以上によれば,被告によるアルバイト従業員の賃金の算定おいては,
2時間半ルールが存在していたものと考えられる。
しかしながら,実際に個々の現場の作業において2時間半ルールが適
用されたか否かは,作業実績一覧の記載によっては区別することはでき
ないし,一つの現場にかかる作業時間の最低値は不明であるから,被告
の主張するように作業時間の平均を2時間30分の中間値(1時間15
分)と認定するのも不合理というべきである。このようにみると,2時
間半ルールが存在することを推計の根拠として実作業時間を認定する
ことはできないといわざるを得ない。
もっとも,証人Bは,大丸における催事立ち上がり日の朝の立会作業
(以下「朝の立会作業」という。)については,記録上開始時刻と実際
の作業開始時刻がずれる場合があった旨証言し,証人C及び同Dは,記
録上開始時刻にかかわらず,午前9時に集合して作業を開始することが
多かった旨証言しており,これらの証言によれば,朝の立会作業の開始
時刻は概ね午前9時であったことが認められる。そうすると,朝の立会
作業であると認定できる作業については,記録上開始時刻にかかわらず,
午前9時に作業を開始したものとして実作業時間を推計するのが相当
である。ただし,大丸における作業のうち,記録上開始時刻が午前8時,
記録上終了時刻が午前10時30分であるもの(前日夜からの連続勤務
になるものを除く。)については,朝の立会作業が行われたと認められ
るから,かかる作業については,午前9時に開始したものとして作業時
間を推計するのが相当である。
エ30分未満切上げルールについて
作業実績一覧記載の作業開始時刻及び終了時刻が,すべて30分刻みで
記載されていること,本件規定(乙1)にも,作業時間は30分刻みで計
算する旨記載されていること,証人C及び同Dも作業終了時刻を30分単
位で繰り上げて作業確認リストに記載していた旨証言していることから
すれば,被告の賃金算定上,30分未満切上げルールが存在していたもの
と認められる。
また,証人Cによれば,作業確認リストには,30分未満切上げルール
を適用した後の終了時刻を記入しており,実終了時刻については作業確認
リストに記載されていなかったことが認められるから,実際の終了時刻よ
りも平均的に15分終了時刻を遅らせて作業確認リストへ時刻を記載し
ていたものとして,記録上終了時刻から15分早い時刻を実際の作業終了
時刻とすべきである。
オ休憩時間について
被告においては,アルバイト従業員の具体的な休憩時間について記録せ
ず,記録上開始時刻から記録上終了時刻までの時間数をすべて賃金算定上
の労働時間としているが,労働時間は1日に9時間以上にわたる場合があ
り,このような場合についても常に一切の休憩時間がなかったとは認めが
たい。そして,被告は,休憩時間の存在を考慮し,実際の労働時間が7時
間を超える場合には1時間分,11時間を超える場合には2時間分,休憩
時間に当たる時間を労働時間から控除すべき旨主張するところ,証人C及
び同Dが,アルバイト従業員は,6時間の作業であれば,1時間程度の休
憩をとっており,食事のための休憩もあった旨証言していることに照らす
と,実際の労働時間が7時間を超えた場合には1時間,11時間を超える
場合には2時間を控除して算定することには合理性があるというべきで
ある。前記認定事実⑸カのとおり,百貨店以外の現場においては,アルバ
イト従業員用の休憩場所が確保されず,アルバイト従業員が立ったままで
休憩時間を過ごす場合もあったと認められるが,そうではあっても,具体
的な指揮命令下を離れているといわざるを得ない以上,かかる事情は労働
時間の推計において考慮することはできず,業務の過重性の判断において
考慮すべきものである。
なお,機材の到着遅延等により生じた待機時間についても,具体的な指
示があれば作業を開始できる状態に置かれている以上,これを休憩時間と
同様に扱うことはできず,労働時間から除外すべきではない。
カ移動時間について
前記前提事実及び認定事実のとおり,被告が各アルバイト従業員の就業
する現場を事前に把握するとともに,現場から現場への移動についても交
通費を支給していたこと,現場により業務量が大きく変動するという被告
における業務の特殊性のために,1日に複数の現場を設定し,現場ごとに
アルバイト従業員を募るという形が採られていることからすれば,被告に
おいては,アルバイト従業員が1日に複数の現場で作業を行うことも当然
に想定されていたといえる。すなわち,個々の現場における作業は,それ
自体としては独立していながらも,ある現場で作業を終えた者が同日のう
ちに次の現場に移動して業務を行うという行動が当然に予定され,かつ,
被告の業務においても必要とされていたといえるから,一つの現場から他
の現場への移動に要する時間についても,業務の過重性を判断するに際し
ては,作業時間と同様,被告の指揮命令に基づくものとみて,これを労働
時間に含めるのが相当である。
なお,30分未満切上げルールが適用された結果として,ある作業の記
録上終了時刻と次の現場における記録上開始時刻とが接着している場合
については,30分刻みに記載したことにより記録されていない移動時間
が存在するものと考えられる。よって,そのような場合は,前記エに基づ
き推定される実終了時刻から記録上終了時刻までの15分間に移動が行
われたものと推認するのが相当である。
キ以上の検討に基づいて推計した亡Aの死亡前直前6か月間における労
働時間数及び時間外労働時間数(1週間当たり40時間を超える労働時間
のことをいう。ただし,1月ごとに集計する上で,1週間に満たない日数
が出る場合には,各労働日につき8時間を超える労働時間をいう。)は,
別紙4のとおりとなる。
⑶亡Aの業務の過重性について
ア死亡前1か月前から6か月前(平成23年10月16日から平成24
年4月12日)までの期間における亡Aの労働時間等についてみると,
作業実績一覧によれば,同期間における亡Aの基本的な就業形態は,午
前9時頃から立会作業等に従事し,次の現場までの移動時間や空き時間
の後,午後から別の現場で作業を行い,午後10時から11時頃にはそ
の日の作業を終えるというものであった。
他方で,深夜帯(午前0時ないし1時30分)を含む作業を行った日
のうち,その終了時刻(30分未満切上げルールを適用後のもの。)か
ら次の作業の開始時刻(立会作業については開始時刻の補正をしたも
の。)までの時間が9時間未満となっているものの回数は,以下のとお
りであり,7時間未満となっているものの回数は,以下の()内に記
載したとおりである。
平成24年3月14日から同年4月12日まで5回(3回)
平成24年2月13日から同年3月13日まで6回(5回)
平成24年1月14日から同年2月12日まで4回(2回)
平成23年12月15日から平成24年1月13日まで5回(2
回)
平成23年11月15日から同年12月14日まで6回(3回)
平成23年10月16日から同年11月14日まで5回(4回)
また,同期間のうち,休日(午前0時を起点とした24時間の間に作
業がなかった日をいう。)の日数は以下のとおりであり,1か月当たり
平均すると約2.8日となる。
平成24年3月14日から同年4月12日まで2日
平成24年2月13日から同年3月13日まで3日
平成24年1月14日から同年2月12日まで2日
平成23年12月15日から平成24年1月13日まで6日
平成23年11月15日から同年12月14日まで2日
平成23年10月16日から同年11月14日まで2日
亡Aは,午前9時頃から空き時間等を挟みつつ午後11時頃まで働く
という就労形態を基本としていたところ,月に複数回は,作業が深夜帯
(午前0時ないし1時30分まで)に及ぶ場合があり,そのうち,終業
時から翌日の作業開始までの時間が9時間未満である場合は,4ないし
6回あり,そのうち7時間未満である場合は,多ければ月に5回,少な
くとも月に2回あったというものである。
翌日の作業開始までの時間が9時間未満である場合には,帰宅するた
めの移動時間,次の出勤に要する移動時間や身支度にかかる時間を考慮
すると,自宅等において5時間ないし6時間以上の睡眠時間を確保する
ことは困難であり,これが7時間未満である場合には,上記睡眠を確保
することはほぼ不可能と考えられ,結局,労務による疲労が回復しない
ままに次の作業に従事することとならざるを得ない。また,5時間ない
し6時間以上の睡眠時間が確保できる場合であっても,勤務時間帯の変
化が生体リズムと生活リズムとの位相のずれをもたらし,疲労の蓄積を
招く要因となることからすれば,このような勤務時間帯の変化が亡Aの
身体に負担をかけるものであったことは否定できない。
また,平均して月約2.8日の休日によっては,不規則な時間帯に働
いたことによる疲労を回復するために十分であるとは認められない。
以上のように,亡Aが死亡前6か月間従事していた業務は,月毎の労
働時間数の差等はあれ,その時間帯の不規則さ等から見て,相当程度疲
労を蓄積しやすいものであったと認められる。
前記⑵キにおいて認定したとおり,亡Aの死亡前1か月間の時間外労
働時間数は,死亡前1か月(平成24年3月14日から同年4月12日)
については84時間25分に及んでおり,これ自体としても相当程度長
時間の労働に従事していたとみることができるものであるが,殊に,死
亡前2週間(同年3月30日から同年4月12日)については49時間
22分,死亡前1週間(同年4月6日から同月12日)については31
時間42分の時間外労働を行っており,死亡時に近接するほど量的な過
重性が増大していったものと認められる。
また,労働時間帯に着目すれば,死亡前2週間については,作業が午
前0時頃まで及んだ日が6日であったのに対し,休日は1日であった。
これに加えて,死亡直前の亡Aの具体的な労働状況についてみると,
亡Aは,①4月8日の午後9時から翌9日の午前3時頃まで働いた後,
約4時間の空き時間を挟んで,午前7時30分から作業に従事し,移動
時間や合計2時間程度の空き時間を挟みながら,同月10日の午前0時
頃まで働き,さらに,②同月10日の午前9時から同月11日午前0時
近くまで働いた後,③同月11日午前8時から同月12日(死亡日)の
午後4時まで,移動時間や約2時間の空き時間を挟みながらも,ほぼ連
続して働いていた。
このように,亡Aは,死亡直前の数日間,十分に休息する時間がとれ
ないまま,いわば昼夜を問わず働いている状態にあり,一定の休憩時間
が与えられていたことを考慮しても,このような労働が亡Aの身体に重
大な負担をかけていたものと認められる。
ウ以上認定したとおり,亡Aの死亡前6か月間の勤務は,不規則な時間帯
に働くことが多く,休日が少ないという状況にあって,長期間にわたり従
事することにより疲労の蓄積を招きやすいものであったといえる。さらに,
死亡に近接した時期には,労働時間数が増加したのみならず,不規則かつ
深夜時間帯にわたる作業もより増加していた上,十分な休息なく連続して
数日間働くなど,亡Aの身体に重大な負荷が生じていたものと認められる。
また,前記1で認定したとおり,アルバイト従業員の作業内容は,什
器の運搬にキャスターを使用等するとしても,決して軽易なものではなく,
催事のオープンに合わせ,時間的制約がある中での作業を強いられるもの
であり,さらに,亡Aの被告における勤務歴は15年にも及んでおり,現
場で相応の役割を果たしていたことにも照らすと,亡Aにとっては現場の
選択に際し,強制ではないにしても,疲労が蓄積している場合にもそのこ
とを理由として現場作業に入らないということも容易にはできない状況
であったと考えられるから,その意味でも,肉体的,心理的負荷が存在し
たと認められる。
⑷そして,恒常的な長時間労働等の負荷により疲労の蓄積が生じ,これが自
然経過を著しく超えて血管病変等を増悪させ,その結果,心臓や脳の疾患を
発生させることがあることは,公知の事実であるところ,亡Aにおいて通常
の労務に支障を来すような基礎疾患等を有していたことは明確には認めら
れず,他方で,前記認定のとおり,死亡日前6か月における不規則な労働や,
死亡日直前の連続勤務等により,亡Aの身体には特に強度の身体的負荷が生
じていたことが認められる。死亡日前2か月目ないし4か月目(平成23年
12月15日から平成24年2月14日まで)の間の亡Aの時間外労働時間
数は,多かったとまではいえないが(別紙4),時間帯が不規則であるなど,
疲労を蓄積しやすいものであったことは前記⑶アのとおりである。
⑸以上の事情によれば,亡Aは,恒常的な長時間勤務ないし生体リズムと生
活リズムとの位相のずれを生じ得る不規則な勤務により,慢性的に疲労が蓄
積する労働状況にあったところ,ことに亡Aの死亡前1か月間は,労働時間
が増大したことに伴い疲労や心理的負荷が蓄積され,これを原因として致死
性不整脈による心疾患を発症し,死亡するに至ったと認めるのが相当であり,
本件業務と亡Aの致死性不整脈発症及び死亡との間には因果関係が存在す
るものと認められる。
⑹これに対し,被告は,亡Aの死亡原因が医学的知見により判明していると
はいえず,いかなる基礎疾患がどのように増悪し死亡に至ったかについての
経過が不明であるとして,亡Aの死因を争う。しかし,亡Aの死亡原因につ
いては,前記⑴で認定したとおり,複数の医師が致死性不整脈であるとして
いるところ,亡Aには,前記のとおり,自然的経過によって致死的不整脈を
招来するような既往症があった事実は認められないことや,上記認定を疑わ
せるような具体的な事情も窺われないことに照らすと,被告の上記主張は採
用できず,前記認定は左右されない。
3争点2(被告の安全配慮義務違反の有無)について
⑴労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどし
て疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると,労働者の心身の健康を損なう危
険のあることは,周知のところであり,労働基準法上の労働時間制限や労働
安全衛生法の健康配慮義務は,上記のような危険の発生の防止をも目的とす
るものと解されるから,使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を
定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度
に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負
うと解するのが相当であり(最高裁判所平成12年3月24日第二小法廷判
決民集54巻3号1155頁参照),使用者が上記義務に違反した場合には,
労働者に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
⑵ア被告とアルバイト従業員との間の労働契約は,法形式としては,被用者
の申込みに応じて,使用者が具体的な作業場所を指示し,被用者が同現場
の作業に従事するという形をとるものであるが,被告においては,1人の
アルバイト従業員が1日のうちに複数の現場に赴いて稼働することがあ
ることを当然の前提として,賃金の算定における各現場の間の移動時間の
取扱いや,移動に要する交通費の支給に関するルールが定められていたの
であるから,被告は,個々の現場での作業を完全に独立のものとして扱っ
てはいなかったというべきである。
イ陳列棚の搬入・組立・設置等の業務は,相当の重量を有す
うものであって,一定の体力を要するものであった上,現場によっては被
告のアルバイト従業員用の休憩場所が用意されず,立ったまま休憩をとら
なければならない場合もあったのであり,業務に従事する者の体力的な負
担も相応にあったといえる。
また,被告におけるアルバイト従業員の業務は,現場により時間帯や時
間数が様々であって,決まったシフト等が存在しない上,前記認定のとお
り,深夜の時間帯に及ぶ作業も少なくなかったことに照らせば,被告にお
ける労働状況は,長期間稼働する者にとって,稼働の時間帯が非常に不規
則であり,疲労の蓄積を招きやすいものであったといえる。
ウ加えて,前記前提事実及び認定事実によれば,亡Aは,遅くとも平成9
年5月頃から被告において恒常的にアルバイト従業員としての勤務を開
始しているところ,①被告における亡Aの年収は遅くとも平成21年頃ま
でには300万円を超え,平成23年については400万円を超えるなど
しており,亡Aが専ら被告での勤務により収入を得ていたと認められるこ
と,②亡Aは大丸の通用口を出入りするための腕章を所持しており,同現
場における業務に継続して従事することが予定されていたといえること,
③亡Aは被告における勤務期間が長く,アルバイト従業員が足りない際に
作業に入るよう被告従業員から依頼を受けたこともあったこと等からす
れば,亡Aが,過去において被告のアルバイト従業員として,15年以上
もの長期間継続して労務を提供し,かつ,将来にわたっても長期間継続し
て労務を提供する意思を有していたことが明らかであり,被告においても,
亡Aのそのような意思を認識していたものと認められる。
エ以上のとおり,被告のアルバイト従業員の労働状況として,その従事す
る業務は,長期間従事することにより疲労の蓄積を招くものであった上,
亡Aにおいては,15年以上の長期間にわたり継続的にアルバイト従業員
として稼働するとともに,さらに将来にわたって稼働する意思を有してお
り,被告においてもこのことを認識していたものである。被告と亡Aとの
間の労働関係は,形式的には各現場ごとに個別の労働契約が成立するもの
ではあるが,上記のような事情に照らせば,被告は,亡Aに対し,期間の
定めのない雇用契約における使用者と同様に,業務に伴う疲労等の過度の
蓄積により心身の健康を損なうことのないよう注意すべき義務を負って
いたと認めるのが相当である。
以上によれば,被告は,遅くとも亡Aが死亡する1年前までの時点にお
いて,亡Aが一定期間継続して就労することを前提として,亡Aから具体
的な作業の申込みを受けるにつき,作業に伴う疲労や心理的負荷等が過度
に蓄積してその心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務を
負っていたものというべきである。すなわち,被告は,亡Aの労働時間数
及びその他の労働形態等(稼働する時間帯,現場ごとの作業時間等)を把
握するとともに,労働時間数等において亡Aに過度の負担をもたらすこと
のないよう調整するための措置を採るべき義務を負っていたものであり,
具体的には,亡Aによる申込みの前においては労働時間数等を適切に調整
するよう,また,申込みの後においても他の日時,時間帯に変更等するよ
う指導するなど,亡Aの労働状況を適切なものとするための措置を採るべ
き義務を負っていたものというべきである(なお,被告においてそのよう
な措置を採ることが困難であったとはいえない。)。
⑶前記のとおり,亡Aは,長期間にわたる不規則な労働に加え,死亡直前の
2週間における長時間かつ極めて不規則な労働により死亡するに至ったも
のと認められるところ,被告は,労働時間等の亡Aの労働状況により,被告
におけるアルバイト業務が亡Aに過度の負担をもたらすおそれがあるにも
かかわらず,亡Aの正確な労働時間を把握することを怠り,かつ,亡Aの労
働時間数等を調整するための措置を採ることなく,漫然と亡Aを各現場にお
ける作業に従事させたものといえるから,被告は,亡Aに対する上記義務の
履行を怠ったものというべきである。
4争点3(過失相殺の可否及び過失割合)について
前記認定事実のとおり,被告において作業現場に必要なアルバイト従業員を
確保することができない場合には,被告側から作業に入るよう個別に依頼され
ることがあり,稼働年数が長く,真面目な性格であった亡Aが,その責任感か
ら,現場に穴をあけることのないよう努力して作業を引き受けていたことは容
易に推察できるものの,被告においては従事すべき作業のノルマというべきも
のは設定されておらず,基本的には,亡Aからの申込みがない限り,具体的な
作業に従事する義務が発生するものではなかったといえる。
そうすると,亡Aはその従事する作業についてある程度主体的に選択し得る
立場にあったともいえるのであって,亡Aが作業に伴う疲労や心理的負荷等が
過度に蓄積して心身の健康を損なう事態を避けるためには,自らにおいても業
務量を適正なものとし,休息や休日を十分に取ることにより疲労の回復に努め
るべきであったことは否定できないから,亡Aの死亡による損害の全額につい
ての賠償を被告に命じるのは,当事者間の公平を失し,相当とはいえない。そ
こで,民法722条を適用ないし類推適用して,原告らが被告に対して賠償を
求め得る金額(ただし,損益相殺による減額前の金額であり,弁護士費用を含
めない。)からその30%を控除するのが相当である。
この点,被告は,平成24年1月に亡Aらが大阪市北区天満から京都府左京
区千代田町に転居したために長距離通勤となったことや,それにもかかわらず,
自宅から遠い大丸や第2倉庫において作業をしていたこと等から,これらの点
についても亡Aの死亡に対する寄与を認めるべきである旨主張する。しかし,
上記転居により従前の通勤時間と比較して片道1時間以上を要することと
なったとしても,その距離が社会通念上許容されないほどの遠距離ではなく,
これをもって損害の減額要因とするのは相当とはいえず,亡A自身による作業
時間や現場の選択が可能であったことは,上記のとおり既に評価済みであるか
ら,上記割合を超えて過失相殺をすべきものとは認められない。
また,被告は,亡Aが健康診断を受けていなかったことや,深夜に食事をと
り,喫煙を続けているなど,自身の健康管理を怠っていたことが死亡の原因で
ある旨主張するが,死因については前記に認定したとおりであって,健康診断
を受けていれば死亡を回避できたものとはいえず,深夜に食事をとらざるを得
なかったのは,むしろ深夜勤務に起因する面があるものと認められ,喫煙の程
度が亡Aの死亡に寄与したとも認められないから,結局,上記被告の主張する
点を損害の減額事由として斟酌することはできない。
5争点4(損害の発生及び額)について
⑴亡Aの損害
ア逸失利益5095万4999円
前記認定事実のとおり,亡Aが平成23年4月11日から平成24年
4月10日までに被告から支給された賃金総額は480万7665円
であるところ,前記に認定した亡Aの稼働状況に照らせば,満67歳ま
での29年間にわたり,上記収入が得られた蓋然性が認められるから,
上記金額を基礎収入とするのが相当である。
この点,原告らは,遺族補償年金の給付基礎日額から算出した年収額
を基礎収入とすべきと主張する。しかし,アルバイト従業員による労務
提供は,法形式としては,個々の現場について別個の雇用契約を随時締
結したことに基づき行われるものであり,法定時間外労働について労働
基準法所定の割増賃金等を当然に請求できるものとは解されず,これま
でも割増賃金による支給がされていないことからすれば,亡Aの基礎収
入の算定において,割増賃金を考慮することはできないというべきであ
る。
亡Aは一家の支柱として妻子を養っていたから,逸失利益を算定する
に当たって控除すべき生活費は,その全稼働期間を通じ,30%とする
のが相当である。
よって,480万7665円から生活費として30%を控除した金額
に,労働能力喪失期間29年に対応するライプニッツ係数(15.14
1)を乗じた金額である5095万4999円(480万7665円×
15.141×(1-0.3)。1円未満切捨て,以下同じ。)をもっ
て,亡Aの死亡による逸失利益と認めるのが相当である。
イ慰謝料2800万円
亡Aは,死亡時は38歳と働き盛りであり一家の支柱であったこと,妻
と幼い子を残して死亡したことその他本件に現れた一切の事情を勘案す
ると,亡Aにかかる死亡慰謝料の額は2800万円と認めるのが相当であ
る。
ウ葬祭料150万円
原告らは,原告らに150万円の葬祭料相当額の損害が生じた旨主張す
るところ,証拠(甲6の4)及び弁論の全趣旨によれば,亡Aの葬儀が執
り行われたことが認められ,上記全額について相当因果関係の範囲内にあ
る損害と認められる。
エ合計8045万4999円
オ過失相殺後の額5631万8499円
前記4において認定したとおり,過失相殺により,エの額の30%を控
除するのが相当である。
⑵原告1が請求し得る損害額
ア原告らは亡Aの損害賠償請求権の2分の1をそれぞれ相続により承継
するから,原告1の後記控除前の損害額は,上記(1)オの2分の1である2
815万9249円となる。
イ損益相殺
原告1は,①遺族補償年金として,当審口頭弁論終結日である平成28
年8月5日までに合計1154万6476円,②葬祭料として84万43
30円の給付を受けているところ(前記前提事実⑷),①は原告1が相続
した亡Aの損害賠償請求権のうち逸失利益の元金部分(過失相殺後の金額
である1783万4249円)につき当然に填補がされ,②も原告1分の
葬祭費のうち過失相殺後の金額である52万5000円を限度としてそ
の元金部分につきそれぞれ填補がされる(弁論の全趣旨)から,これらを
控除した後の損害額は,1608万7773円となる。
(計算式)2815万9249円-(1154万6476円+52万50
00円)
ウ弁護士費用160万円
本件の事情を総合すると,原告1につき,相当因果関係のある弁護士費
用の額は121万円と認めるのが相当である。
エ原告1にかかる損害額の合計1768万7773円
⑶原告2が請求し得る損害額
ア原告2が亡Aから相続した損害賠償請求権2815万9249円
イ弁護士費用281万円
本件の事情を総合すると,原告2につき,相当因果関係のある弁護士費
用の額は281万円と認めるのが相当である。
ウ原告2にかかる損害額の合計3096万9249円
⑷まとめ
以上によれば,被告が賠償すべき原告らの損害額は,主位的請求(不法行
為)に基づき,原告1については1768万7773円及びこれに対する亡
A死亡日からの年5分の割合による遅延損害金,原告2については3096
万9249円及びこれに対する同日からの年5分の割合による遅延損害金
となる。原告らの予備的請求(債務不履行)に基づく損害は,上記損害額を
上回るものではないから,同額を超える予備的請求部分には理由がない。
第4結論
以上の次第で,原告らの請求は,主位的請求に基づき,被告に対し,原告1
については1768万7773円及びこれに対する亡Aの死亡日である平成
24年4月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
金の支払を求める限度で,原告2については3096万9249円及びこれに
対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める
限度でそれぞれ理由があるから,原告らの請求をこの限度において認容し,そ
の余の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第3民事部
裁判長裁判官長谷部幸弥
裁判官中武由紀
裁判官馬場梨代

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛