弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
1 原判決のうち第1審判決文書目録一の2の(九),二の2の(五)及び三の2
の(六)記載の非公開部分に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り
消す。
2 被上告人が別紙選定者目録記載の選定者らに対し平成11年6月3日付け,同
月14日付け及び同年7月28日付けでした部分公開決定のうち次の部分を取り消
す。
 (1) 平成11年6月3日付けでした部分公開決定のうち第1審判決文書目録一
の2の(九)記載の非公開部分に関する部分
 (2) 平成11年6月14日付けでした部分公開決定のうち第1審判決文書目録
二の2の(五)記載の非公開部分に関する部分
 (3) 平成11年7月28日付けでした部分公開決定のうち第1審判決文書目録
三の2の(六)記載の非公開部分に関する部分
3 上告人らのその余の上告を棄却する。
4 訴訟の総費用はこれを12分し,その11を被上告人の負担とし,その余を上
告人らの負担とする。
         理    由
 上告人らの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
 1 本件は,岐阜県(以下「県」という。)の住民である別紙選定者目録記載の
選定者ら(以下「本件選定者ら」という。)が,旧岐阜県情報公開条例(平成6年
岐阜県条例第22号。平成12年岐阜県条例第56号による全部改正前のもの。以
下「本件条例」という。)に基づき,被上告人に対し,県の大垣土木事務所の県営
渡船越立業務等に関する公文書の公開を請求したところ,被上告人から公文書の一
部を公開しない旨の部分公開決定を受けたため,上告人らが,選定当事者として,
その取消しを求めている事案である。
 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 本件選定者らは,平成11年5月21日付けで,本件条例に基づき,被上
告人に対し,大垣土木事務所の県営渡船越立業務に関する公文書の公開を請求した
ところ,被上告人は,同年6月3日付けで,第1審判決文書目録(以下「文書目録」
という。)一の1記載の文書が請求に係る公文書に当たるとした上,これらの文書
のうち文書目録一の2の(一)ないし(九)記載の非公開部分を公開しない旨の部
分公開決定(以下「本件処分1」という。)をした。被上告人は,本件処分1にお
いて,文書目録一の2の(九)記載の非公開部分(以下「本件非公開部分1」とい
う。)は公開を請求された県営渡船越立業務に関するもの以外の情報又は同業務に
関するものとそれ以外のものの数額が合算された情報が記録されている部分であり
,公開すると,そのすべてが同業務に関するものであると混同されるおそれがある
との理由で,本件非公開部分1を公開しないこととした。
 (2) 本件選定者らは,平成11年6月3日付けで,本件条例に基づき,被上告
人に対し,大垣土木事務所の県営渡船越立業務に関する公文書の公開を請求したと
ころ,被上告人は,同月14日付けで,文書目録二の1記載の文書が請求に係る公
文書に当たるとした上,これらの文書のうち文書目録二の2の(一)ないし(五)
記載の非公開部分を公開しない旨の部分公開決定(以下「本件処分2」という。)
をした。被上告人は,本件処分2において,文書目録二の2の(五)記載の非公開
部分(以下「本件非公開部分2」という。)は公開を請求された県営渡船越立業務
に関するもの以外の情報が記録されている部分であり,公開すると,そのすべてが
同業務に関するものであると混同されるおそれがあるとの理由で,本件非公開部分
2を公開しないこととした。
 (3) 本件選定者らは,平成11年6月29日付けで,本件条例に基づき,被上
告人に対し,大垣土木事務所の管理課及び道路維持課の海津町への出張に関する公
文書の公開を請求したところ,被上告人は,同年7月28日付けで,文書目録三の
1記載の文書が請求に係る公文書に当たるとした上,これらの文書のうち文書目録
三の2の(一)ないし(六)記載の非公開部分を公開しない旨の部分公開決定(以
下「本件処分3」という。)をした。被上告人は,本件処分3において,文書目録
三の2の(六)記載の非公開部分(以下「本件非公開部分3」という。)は公開を
請求された海津町への出張に関するもの以外の情報又は同出張に関するものとそれ
以外のものの数額が合算された情報が記録されている部分であり,公開すると,そ
のすべてが同出張に関するものであると混同されるおそれがあるとの理由で,本件
非公開部分3を公開しないこととした。
 (4) 本件条例2条2項は,「この条例において『公文書』とは,実施機関の職
員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び写真であって,実施機関が管理し
ているものをいう。」と規定し,同条3項は,「この条例において『公文書の公開
』とは,実施機関が,この条例の定めるところにより,公文書を閲覧に供し,又は
公文書の写しを交付することをいう。」と規定している。そして,本件条例5条は
,「次に掲げるものは,実施機関に対して,公文書の公開を請求することができる。
一 県内に住所を有する者 二 県内に事務所又は事業所を有する個人及び法人そ
の他の団体」と規定している。
 3 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断した。
 本件条例の下において,実施機関は,公開を請求された対象以外の情報又は公開
を請求された対象とそれ以外のものの数額が合算された情報が記録された部分につ
いて公開義務を負うものではないから,被上告人が,本件処分1ないし3(以下,
併せて「本件各処分」という。)において,本件非公開部分1ないし3(以下,併
せて「本件各非公開部分」という。)を公開しないこととしたことに違法はない。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
 本件条例2条2項,3項及び5条の規定によれば,本件条例が,本件条例に基づ
く公開の請求の対象を「情報」ではなく「公文書」としていることは明らかである。
したがって,本件条例に基づき公文書の公開を請求する者が,例えば,「大垣土木
事務所の県営渡船越立業務に関する情報が記録されている公文書」というように,
記録されている情報の面から公開を請求する公文書を特定した場合であっても,当
該公文書のうちその情報が記録されている部分のみが公開の請求の対象となるもの
ではなく,当該公文書全体がその対象となるものというべきである。本件条例の下
において,実施機関が,公開の請求に係る公文書に請求の対象外となる情報等が記
録されている部分があるとし,公開すると,そのすべてが公開の請求に係る事項に
関するものであると混同されるおそれがあるとの理由で,上記部分を公開しないこ
とは許されないというべきである。
 前記事実関係等によれば,本件各非公開部分が記録されている文書は,いずれも
本件選定者らが本件条例に基づいて行った公開の請求の対象となる公文書に当たる
のであるから,被上告人が,上記文書に請求の対象外となる情報等が記録されてい
る部分があるとし,公開すると,そのすべてが公開の請求に係る事項に関するもの
であると混同されるおそれがあるとの理由で,上記部分を公開しないことは許され
ないというべきである。本件各処分のうち本件各非公開部分を公開しないこととし
た部分は,違法と断ずるほかはない。
 5 以上によれば,原判決のうち本件各非公開部分に関する部分には,判決に影
響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決のうち上
記部分は破棄を免れない。そして,上記部分については,上告人らの請求は理由が
あるから,第1審判決を取り消し,本件各処分のうち本件各非公開部分に関する部
分を取り消すべきである。
 なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の
決定において排除されたので,棄却することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田
宙靖)

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