弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被人告Aに対する部分を破棄する。
     被告人Aを懲役一年六月及び罰金百五十万円に処する。
     右罰金を完納することができないときは金五千円を一日に換算した期間
同被告人を労役場に留置する。
     但し被告人Aに対し本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予す
る。
     原審における訴訟費用中証人B、同Cに支給した分は相被告人D及び同
Eと被告人Aとの連帯負担とする。
     被告人D及び同Eの本件各控訴はいずれもこれを棄却する。
     当審における通訳人Fに支給した訴訟費用は全部被告人Eの負担とす
る。
         理    由
 本件各控訴の趣意は弁護人小野清一郎、同宮沢邦夫連名提出の控訴趣意書及び弁
護人戸田謙提出の控訴趣意書記載のとおりであるからここにこれを引用する。これ
に対する当裁判所の判断は左のとおりである。
 右弁護人小野清一郎、同宮沢邦夫の控訴の趣意第一点及び第二点について。
 論旨は、被告人D及び同Aに対する原判示第一の事実につき原審の事実誤認を主
張し、ひいて法令適用の誤りを主張するものであるが、原判決挙示の証拠を綜合す
れば、原判決認定の事実は優にこれを認めることができ、記録を精査検討しても原
判決に事実誤認の疑は存しない。したがつて、原判決には擬律の点についても所論
のごとき法令適用の誤りは存しない。弁護人は、右被告人らは原判示Gから外国に
ある財産たる二万三千弗の譲渡を受けた事実は何ら存しないと主張するけれども、
原判決挙示の証拠、殊に被告人D及び同Aの検察官に対する各供述調書並びにGの
検察官に対する供述調書によれば、いずれも本邦にある居住者である被告人D及び
同Aは共謀の上中国台北市ab号H・有限公司に対する二万三千弗の債務を弁済す
るため外国通貨である弗を入手してこれを送金しようと企てかねて知合のGがアメ
リカ合衆国紐育市所在の銀行に弗預金口座を所有していることを知り、同人に対し
アメリカ合衆国における弗預金譲渡の代償として一弗四百十五円又は四百二十円を
支払うべきことを約しかつその履行の方法として前記H・有限公司I本社のため右
紐育市所在のK銀行L支店のJ銀行名義の当座預金口座に振り込むべきことを約さ
しめ、原判示のごとくこれを実行せしめて本邦にある居住者たるGに対し二万三千
弗の譲渡を受けた代償として一弗四百十五円又は四百二十円の割合による合計金九
百六十四万円の支払をしたことは明らかなところであり、この事実は外国為替及び
外国貿易管理法第二十八条に違反し同法第七十条第九号に該当するものであり、か
つ同時に同法第七条第六項、昭和二十四年大蔵省告示第九百七十号に該当すること
は疑を入れないところといわなければならない。若し、弁護人所論のごとく、Gが
始めから自己の弗預金をH・有限公司I本社に帰属せしめることを依頼され、これ
を実行したのに対し、被告人らが非居住者たる右I本社のためこれが代償を支払つ
たものとすれば、右は外国為替及び外国貿易管理法第二十七条第一項第三号に違反
し同法第七十条第八号に該当するとともに、同時に同法第七条第六項に触れること
となるのであるが、本件は前認定のとおり、被告人らが法定の除外事由なくして自
己の債務弁済のため外国にある財産を取得し、これが代償として本邦において居住
者に対し支払をしたものであることが明らかであるから、所論は到底採用し難い。
なお、弁護人は、本件被告人らの所為が同法第二十八条に触れ、同法第七十条によ
り処罰さるべきものとするならば、その上さらに同法第七条第六項を適用し観念的
競合として処断することは誤りであつて、右は法条競合の場合に該当し、その一方
の違反は他の違反を排除するものといわなければ<要旨>ならないと主張するけれど
も、同法第二十八条と同法第七条第六項とは、所論のごとく、国際収支の均衡を
的とする点でその性質を同じくすることはいなみえないとしても、後者の
場合は特に通貨の安定ということにより重点を置いた規定であり、したがつておの
ずからその取締の範囲を異にしているものというべく、また両者は常に必ずしも同
時に違反される性質のものではないのであるから、そのいずれか一方が成立すれば
他方は成立せず、若しくは一方は常に他方を吸収する関係に立ついわゆる法条競合
の場合に該当するものとは到底認め難いところである。なお、弁護人は、本件取引
はH・有限公司の社長であるMが被告人らにこれを要求し、被告人らはH東京弁事
処の使用人としてその意思に従つて行動したものであり、したがつて(一)Mがそ
の実行正犯であり、被告人らはその実行を幇助しものであるか、又は(二)Mと被
告人らと共謀共同正犯である、なお被告人Dについては果して共謀の事実があつた
かどうか証拠上明らかでない、と主張するけれども、前記認定のごことく、被告人
D及び同Aが共謀の上本件犯行に出たものであることは明らかなところであつて、
記録を精査検討しても原判決に事実誤認の疑は存しない。なお、弁護人は被告人D
の司法警察員及び検察官に対する供述調書中の供述はGが釈放された後陳の示唆に
よつて供述したものであるとして、その共謀の点に関する自白の任意性を争つてい
るけれども、右主張に添うがごとき被告人の原審公判廷における供述は被告人A及
びGの検察官に対する各供述調書に照したやすく措信し難いところであり、他に右
主張の事実を認むべき資料は存しないから、この点に関する所論もまた採用し難
い。竟畢所論は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 花輪三次郎 判事 山本長次 判事 下関忠義)

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