弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人A株式会社の負担とする。
         理    由
 弁護人江波戸文夫の上告趣意第一点について。
 所論は、原審が証拠として採用した被告人の歎願書は、被告人が他の重役と談合
の上本件の刑事責任を一身に負担する約旨のもとに作成されたものであるから、憲
法三八条の律意に反し無効であり、証拠とすることはできないものであると主張す
る。しかし所論の前提とするような事実は、原審においてなんら主張がなく、また
原審の全く認定していないところであるから、その前提において欠けることとなり
採用のかぎりでない。なお記録によつて調べてみても所論のような事実を是認する
ことはできない。
 同第二点及び第三点について。
 所論第二点は、要するに事実誤認の主張であり、第三点は単なる量刑不当の主張
であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(所論第二点の事実誤認の主張は、
ひつきよう原審が認定した被告人は事実上会社の業務を委されて主宰担任していた
という事実と異なる独自の見解を前提とし、判示説明の語句を他の意味に附会して
判示に矛盾ありとするに過ぎない。原判決をそのまま判読すればその趣旨は明らか
である。また原審の量刑を不当なりとする事由も認められない)。
 弁護人芦田浩志の上告趣意第一点について。
 所論は、法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(第一
審判決は、被告会社につき同判決別表一一の犯罪に対し、昭和二四年一二月二七日
法律第二八六号による改正前の物品税法一八条一項を適用し、同被告を罰金六十一
万五千七百円に処しているが、前記犯罪の犯行時は昭和二五年一月九日であるから、
これに対しては右法律第二八六号附則一項により前記改正後の物品税法一八条を適
用すべきものである。従つて第一審判決はこの点において法令の適用を誤つた違法
があることとなるが、改正後の物品税法一八条一、二項によれば前記犯罪につき被
告を金五十万円以上の罰金に処し得ること明らかであるから、右第一審判決の違法
は判決に影響がなく、従つてこれを理由として判決を破棄すべきものとは認められ
ない)。
 同第二点について。
 所論は、法令違反の主張に過ぎず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(所論
第一審判決別表一及び一六の事実は不申告の場合であつて、申告期日は同法八条に
よれば翌月一〇日であるから、判示はその日をもつて犯行の日と認めた趣旨であり、
理由不備とはいえない)。
 その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。
 よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す
る。
  昭和三〇年五月一七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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