弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人福場吉夫の上告理由第一点について。
 所論は、先ず、上告人が「東京都世田谷区a町b番地のc家屋番号同町b番のd」
として保存登記を経由した建物と、被上告人が「東京都世田谷区a町b番家屋番号
同町e番のf」として保存登記を経由した建物とが、同一建物であるとの原判決(
その引用する第一審判決)の認定に理由不備の違法があると主張するが、原判決お
よびその引用する第一審判決は本件建物(訴外有限会社D木工所が昭和二三年四月
頃、東京都世田谷区a町b番地のcに建築所有し、事務所として便用していたもの)
について二重の所有権保存登記がなされるに至つた経過を証拠によつて認定判示し、
その説示は首肯するに十分である。次に、所論は、原判決が上告人および被上告人
の経由した判示各所有権保存登記がいずれも本件建物についてなされたものか、ま
たは本件建物および判示乙建物についてなされたものか確定していないというが、
前段の論旨について説明したとおり、原判決は本件建物についての二重登記を認定
していること明白である。以上所論は、いずれも、原判決を正解せず、前提を誤つ
た独自の見解にすぎず、採用の限りでない。
 同第二点について。
 所論は、要するに、行政処分の有効無効を通常の民事訴訟の前提問題として判断
することは許されず、行政処分無効確認訴訟の判決によつてその無効が確定するま
では、これを一応有効なものとして取扱うべきものである旨を主張する。しかし、
行政処分に重大かつ明白なかしがあつて、それが当然に無効である場合に、民事訴
訟の前提問題としてそのことを判断することは、少しも妨げがない。所論は、独自
の見解にすぎず、また所論引用の判例は事案を異にし適切でない。それ故、所論は
採るをえない。
 同第三点について。
 所論は、かりに本件公売処分に無効の原因があつたとしても、その後の長期間の
経過によつて、そのかしが治癒せられまたは有効な処分に転換せられたものと解す
べきである旨を主張するが、本件においては原判決(その引用する第一審判決)の
認定しているように、被上告人の所有権取得が対抗力を完備している以上、本件公
売処分の有効、無効によつて何等の影響をうけることがない。所論引用の判例もま
た、事案を異にし本件に適切でない。それ故、所論はすべて採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    長   部   謹   吾

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