弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
被告人を懲役1年2月に処する。
未決勾留日数中260日をその刑に算入する。
本件公訴事実中電汽車往来危険,威力業務妨害の点については,被
告人は無罪。
理由
【犯罪事実】
被告人は,平成23年5月1日午後0時18分ころ,高知市a町b丁目c番d号
株式会社A「業務用食品スーパーe店」において,同店店長B管理の天然ぶり1パ
ック等4点(販売価格合計919円)を窃取したものである。
【証拠の標目】(省略)
【累犯前科】(省略)
【法令の適用】(省略)
【一部無罪の理由】
第1本件の争点
1平成23年6月20日付け起訴状記載の電汽車往来危険,威力業務妨害の公
訴事実は,「被告人は,平成22年8月28日午後11時50分ころ,高知
市薊野中町31番地四国旅客鉄道株式会社JR土讃線薊野駅において,同駅
2番線ホームから,軌道上に自転車1台を落とし入れて放置し,そのころ,
同所を走行してきた同社高知運転所車両基地発同社JR高知駅行下り回送列
車に前記自転車を衝突させ,同列車を同所付近に停止させて約46分間運行
を遅延させるなどし,もって汽車の往来の危険を生じさせるとともに,威力
を用いて同社の列車運行業務を妨害した」というものである。
これに対し,弁護人は,被告人が上記犯行を行っておらず,無罪であると主
張し,被告人も当公判廷でその旨供述する。
2まず,関係証拠から認められる客観的状況によれば,何者か(以下「本件犯
人」という。)が,公訴事実記載の日時に,自転車1台(以下「本件第1自
転車」という。)を前記薊野駅ホームから軌道上に落として放置し,前記回
送列車に衝突させたこと(以下「本件事件」という。)が容易に推認される
(なお,同列車の乗務員が約10分後に衝突地点に戻ると新たにもう1台の
自転車(以下「本件第2自転車」という。)が放置されていた。)。
もっとも,本件犯人と被告人を直接結びつける客観的証拠は乏しく,検察
官は,主として被告人の自白を内容とする警察官調書,検察官調書及び勾留
質問調書(以下「本件自白調書」という。)に基づき,被告人の犯人性を立
証しようとする。
これに対し,弁護人は,①被告人は違法なポリグラフ検査の結果に影響さ
れて自白したのであるから,本件自白調書はいずれも違法収集証拠として排
除される,また,②被告人は,ポリグラフ検査に不当に影響された上,誘導
に迎合して自白したのであるから,本件自白調書はいずれも任意性が認めら
れない,としてその証拠能力を否定する。さらに,③仮に証拠能力があると
しても,上記事情などに照らせば,本件自白調書にはいずれも信用性が認め
られないと主張する。
3これらの点について,当裁判所は,本件自白調書はいずれも証拠能力は認め
られるが,高い信用性は認められず,他に被告人の犯人性を裏付けるに足る
証拠はないから,上記公訴事実については犯罪の証明がなく無罪であると判
断した。以下,その理由を説明する。
第2当裁判所の判断
1本件自白調書の作成経緯
被告人の公判供述,証人Cの証言,同Dの証言等によれば,本件自白調書
の作成経緯について次の事実が認められる。
⑴高知警察署刑事第1課強行犯係長であるCは,被告人が本件事件の直前
に高知駅駅員と揉めごとを起こしていたとの情報を受け,平成23年5月
25日,判示窃盗の事実で起訴後勾留中であった被告人に対し,本件事件
の取調べを行った。この取調べにおいて,Cが被告人に昨年起きた高知市
内での列車妨害事件を知っているかと尋ねると,被告人は全く知らない旨
答えた。
⑵Cは翌26日朝にも事情を聞いたが,被告人はやはり事件を知らないと
答えた。そこで,Cが,被告人に対し,事件について知っているかどうか
を確かめるポリグラフ検査というものがあること,事件を知らないのであ
ればその証明をするためにも検査を受けてもらいたいこと,検査の実施に
は被告人の承諾が必要であることなどを伝えると,被告人は,検査を受け
ても構わないと述べ,「私は,ポリグラフによる検査をうけることに承諾
します。」との記載がされたポリグラフ検査承諾書と題する書面に署名指
印した。
⑶そこで,高知県警察本部刑事部科学捜査研究所文書心理係主任研究員で
あるDが,同日午前9時ころから同日正午ころまで,被告人に対するポリ
グラフ検査(以下「本件検査」という。)を実施することになった。Dは,
被告人の学歴・病歴の聴取,被告人への検査方法の説明,予備検査などを
行った後で検査を実施した。本件検査を通じて,被告人が検査を受けたく
ないと述べたり,検査に対して抵抗を感じているようなそぶりを見せたり
することはなかった。
⑷Cは,本件検査実施後,Dから,被告人には本件事件の現場や使用された
物などにつき認識があるとの検査結果が出ていると聞き,同日午後2時ころ
から,被告人に対する取調べを行った。
被告人は,この取調べにおいても,当初全く心当たりがないと弁解した。
しかしその後,Cが,被告人と高知駅駅員が揉めた事実やその後の被告人の
行動について追及していくと,被告人は,本件事件により死傷者が出ていな
いことをCに確認した上,薊野駅のホームから軌道上に自転車を落とした旨
自白した。
被告人は,上記取調べを始める際,本件検査についてCに「心臓に悪い,
あの検査は嘘発見器やろう,本当はせられんがで。」などと述べたため,C
は嘘発見器ではないことを説明した。また,被告人が,「検査終了後に,男
の人から,『ちゃんと出ちゅう,昼から刑事さんの取調べがあると思うけど,
正直に話はせんといかん。』と言われた。」旨述べたことがあったため,C
は検査員がそのようなことを言うはずがないと伝えた。この取調べの中で,
Cから本件検査の結果に言及したことはない。
⑸その後,上記取調べについて平成23年5月26日付け自白調書が作成
された。その内容は概ね次のとおりである。
ア事件当日は,一宮駅から列車で高知駅まで行き,高知駅からタクシーで
売春宿まで行った。売春宿で遊び,歩いて高知駅に向かっている途中に酒
を飲みたくなった。酒を買えば,列車代が足りなくなることは分かってい
たが,駅員に頼めば貸してくれるだろうと考え,コンビニエンスストアで
日本酒等を購入して飲み食いした。
イその後,高知駅に行き駅員らに列車代を貸して欲しいとしつこく頼んだ
が,駅員らは貸してくれず,偉そうな物言いをしてきた。駅員らに高知警
察署に連れて行かれ,ここでも列車代を貸して欲しいと頼んだが,歩いて
帰るよう言われた。そこで,高知駅を北に抜けて歩いて帰っていたが,駅
員から金を貸してもらえなかったこと,偉そうに物を言われたことが頭に
浮かんで腹が立った。薊野駅の前に自転車が何十台も止まっているのが目
に入り,「JRを懲らしめるために,薊野駅のレールに自転車を置いて,
汽車が通るのを妨害しよう。」と考えた。
ウそこで,薊野駅北側の小さいお宮さんのそばに止まっていた白っぽい
古い自転車を,両手で持ってホームまで運び,レールの方に落とした。
自転車はレール上に落ちたのでこのまま列車が通れば自転車に当たり,
通行を妨害できると思った。その後,一宮方面に向かって100から1
50メートルくらい歩いたところで,列車が薊野駅に向かって来た。そ
の直後「ダンダン」「バリバリ」というもの凄い音がしたので,自転車
に列車が当たったと思った。
エこの後,薊野駅前に置かれていた別の自転車1台をレールの上に置いて
列車が通るのを妨害しようとした記憶がある。自分の記憶では,薊野駅か
ら東の方のレールに自転車を置いたと思うが,もしかしたら記憶違いをし
ているかもしれない。ただ,薊野駅に止まっていた自転車2台をレール上
に置いたことは間違いない。
⑹被告人は,平成23年5月30日に本件事件で逮捕され,同年6月1日,
勾留されたが,弁解録取や勾留質問においても,自らが本件事件を起こした
ことを認めていた。
被告人は,同月20日にこの事実で起訴されるまで,自白を維持し,被告
人の自白調書が順次作成された。これらの調書には,概ね同年5月26日付
けの調書をより詳細にした内容が記載されているが,自転車を落とした回数
については,「2台目も落としたかもしれない」「2台目の自転車を置いた
かはっきり覚えていない」といった供述に変わっている。
2本件自白調書の証拠能力について
⑴本件自白調書が違法収集証拠として排除されないこと
ア後述のとおり,被告人の知的能力は平均的な水準よりも相当低く,その
理解力や判断能力も乏しいと考えられる。しかし,Cは,ポリグラフ検査
の内容・方法について,「事件を知っているかどうかを確かめるポリグラ
フ検査というものがある。」という程度の説明しかしないまま,被告人か
ら承諾を得ている。その後,Dが被告人に検査方法を説明し,その中で,
事件について知らないのであればポリグラフ検査はそのことを明らかにし
てくれる旨説明しているが,ポリグラフ検査の仕組みについての説明はな
されていない。前記のとおり,検査実施後の取調べ開始の際,被告人がC
に「あれは嘘発見器やろ,本当はせられんがで。」などと,自分が想定し
ていたものとは違う検査を受けさせられたかともとれる発言をしているこ
とからしても,被告人は,ポリグラフ検査がどういうものであるかその趣
旨や目的の概要を認識できていなかった疑いがある(被告人の上記発言は,
自己の思惑に反して不利益な検査結果が出たと考えて後から文句を言い始
めたものと理解する余地もあるが,真に本件検査が自己の事前の理解と異
なるものであったという可能性も否定できない。)。
ポリグラフ検査の実施には,単に被検査者との意思疎通が可能であるだ
けでなく,被検査者が,検査の趣旨や目的の概要を理解した上での承諾を
することが必要であると解され,被告人のように知的能力の低い者につい
ては特に慎重な判断が求められるが,以上みたところによれば,被告人に
おいてこのような承諾をしていたと認めることはできず,本件検査は違法
であるといわざるを得ない。
イもっとも,前記のとおり,Cが被告人に検査を実施するために承諾が必
要である旨を伝え,ポリグラフ検査承諾書に署名指印させていることから
すれば,被告人は,検査の実施に自らの承諾が必要であることは理解して
いたと認められる。そして,前記認定事実のとおり,Dが検査の前にその
方法を説明したり,予備検査を実施したりしていることからすれば,被告
人は,遅くとも検査を受ける時点では,ポリグラフ検査がいわゆる「嘘発
見器」のようなものであるという程度の認識を有していたことが推認され,
にもかかわらず,被告人は不満等を述べることなく検査に協力し,検査を
拒否する意思を示していない。また,Cらが被告人に検査結果を示すなど
して自白を得ようとしていないことなどからすれば,捜査機関に,被告人
を騙してポリグラフ検査を受けさせよう,あるいは検査結果を不当な自白
獲得に利用しようなどという意図はなかったと認められる。
このような事情に照らせば,本件検査について,違法収集証拠として排
除する程の重大な違法があったとはいえない。そして,このことからすれ
ば,本件自白調書も違法収集証拠として排除されるものではない。
⑵本件自白調書に任意性が認められること
まず,弁護人が指摘するポリグラフ検査の影響については,そもそも検査
結果を曲げて告知したり,検査の正確性を過度に強調したりしない限り,ポ
リグラフ検査の結果を告げて自白を得ても任意性に疑いを生じさせるものと
は解されない上,検査後に直接取調べに当たったCは,被告人に検査結果を
一切告げていない。前記認定事実のとおり,被告人は,Cに対し「検査終了
後に,男の人から『ちゃんと出ちゅう,昼から刑事さんの取調べがあると思
うけど,正直に話はせんといかん。』と言われた。」旨述べているが,仮に
D等が被告人にこのように述べたとしても,検査結果を曲げて告知したり,
検査の正確性を過度に強調したりするものではなく,これ自体で直ちに任意
性を疑わせる事情には当たらない。
また,取調べにおける誘導についても,これが全くなかったとまでは認め
られないものの,本件自白調書には,自転車の色,本件第2自転車の放置場
所などについて捜査機関が把握していた事実と異なる内容がそのまま記載さ
れていることなどを考えると,少なくとも被告人を執拗に誘導することはな
かったと認められる。
ほかに,強制,脅迫など,本件自白調書の任意性を疑わせる事情は存在せ
ず,本件自白調書はいずれも任意性が認められる。
3本件自白調書の信用性について
⑴自白の経緯をみると,被告人は,平成23年5月25日に初めて本件事
件の取調べを受けた際は犯行を否認したが,翌26日には自白し,その後
起訴されるまでこの自白を維持したものであり,被告人に対する強制,脅
迫,執拗な誘導などは存しない。また,被告人は,現行犯人逮捕された判
示窃盗についてすら,捜査の初期の段階では,署名した自白調書の指印を
拒否して一時否認に転じるなどしており,このような態度からは,捜査機
関への迎合的な傾向は窺われない。
自白の内容をみると,本件自白調書は,犯行に至るまでの経緯や犯行態
様につき詳細かつ自然な記述となっている。また,被告人が本件自白調書
で述べる犯行動機の基礎となった駅員との揉めごとや,被告人が本件事件
の発生に近い時間帯に現場付近を通ったことは,関係証拠からも裏付けら
れる上,被告人が述べる本件第1自転車の施錠状況や形状は客観的証拠に
概ね符合する。
このような自白の経緯,被告人の性質,自白の内容からすれば,本件自白
調書の信用性を肯定できるようにも思われる。
⑵しかしながら,次のような事情も踏まえると,本件自白調書はいずれも
高い信用性を認めることはできない。
ア被告人は,平成21年2月に実施した知能検査において,知能指数が
49であり,知的障害がある旨診断されている。また,当公判廷において
も,質問者への迎合的な傾向は見られないものの,そもそも質問を理解で
きなかったり,質問に対応しない回答をしたり,あるいは,供述を変遷さ
せて相矛盾する発言を繰り返し,その中で自らに不利に働く内容をその自
覚を欠いたまま話したり,客観的事実に反する内容を作話したりしている
(なお,検察官は,被告人が質問内容を的確に理解して回答し,その供述
内容もおおむね整然として要領を得たものであったと主張するが,このよ
うな評価は,被告人質問で受けた当裁判所の心証とは合致しない。)。
上記診断結果や被告人の公判廷での言動からは,被告人の知的能力は平
均的水準よりも相当低く,質問の意図や自分にとっての利害得失を理解す
る能力が乏しい上,これを十分に理解しないまま,場当たり的かつ短絡的
に供述する傾向があることが窺われる。このような被告人による供述の意
図や言動を合理的に説明することは困難であり,強制,脅迫,執拗な誘導
などがない場合に虚偽の自白をすることはないであろうといった経験則を,
能力的な問題のない者の場合と同様に当てはめて考えることはできない。
前述のとおり,被告人には迎合的な傾向は窺われないものの,前記認定
事実によれば,本件では,自らに不利な内容のポリグラフ検査結果が出た
ことを認識していた可能性がある上,Cから事件当日の行動について追及
される中で自白に至っている。このような状況に加え,自白する直前には,
本件事件による死傷者がいないことをCに尋ねて認識しているのであり,
被告人の前記特性を考えると,犯行を認めても大した罪にはならず,刑期
がさほど延びることもないだろうなどと考え,その場を逃れるため,場当
たり的に自白に至り,かつ,これを維持したとしても不自然とまではいえ
ない。
イまた,本件自白調書に秘密の暴露といえるものはない。自白内容も,本
件事件の基本的な情報さえ与えられれば,薊野駅の状況を知っている被告
人が想像により補って供述することも可能と考えられるものであり,被告
人との結びつきを強く裏付ける客観的証拠は存在しない(なお,Cは,犯
行自体については一切誘導していない旨の証言をするが,捜査機関に有利
な方向に誇張して証言している面も窺え,誘導が全くなかったとまで認め
ることはできない。)。
さらに,本件自白調書によれば被告人において指紋が付かないよう注意
していたわけでもないのに,自転車から対照可能な指紋は検出されなかっ
た。
そして,現場の状況からすれば,本件第2自転車は,本件犯人が,本件
事件直後に軌道上に落としたものであることが明らかであるが,被告人は,
当初,自転車2台を線路に置いたのは間違いないと供述するものの,2台
目を落とした方法等をほとんど供述せず,その後,2台目の自転車を置い
たかはっきりとした記憶はないなどと供述を変遷させている。
本件犯人は,列車乗務員が戻ってきたり列車と本件第1自転車の衝突に
より大きな音がして人が来たりする危険のある状況のもと,駅外にあった
本件第2自転車を引いて高さ2.3メートルのスロープを上がり,ホーム
まで運んで落とすなど,相当の労力をかけてこの行為を行ったと考えられ
るから,かかる行為は,本件犯人にとって印象深く,他の事実と混同しに
くい事柄であると考えられる。しかも,被告人は,本件当日における犯行
に至るまでの行動や犯行状況を一連の流れとして途切れることなく詳細に
供述している。これらの事柄をこれほど明瞭に記憶していながら,本件第
2自転車を落としたか否かについての記憶がないということは,被告人の
前記特性を考慮したとしても,なお考え難い。
したがって,上記のような供述の変遷は明らかに不自然であり,これが
本件犯行自体と密接に関連する行動についてのものであることを考えると,
本件自白調書全体の信用性を揺るがす事情というべきである。
⑶以上のとおり,被告人の特性を考慮すれば,その場を逃れるため,場当
たり的に自白に至り,かつ,これを維持したとしても不自然とはいえない
ことに加え,本件自白調書の信用性を裏付ける客観的証拠が十分でないこ
と,本件自白調書に不自然な内容及び供述の変遷があることに照らすと,
被告人が犯行を認めた本件自白調書は,いずれも高い信用性を認めること
はできない。
検察官は,上記に検討した点のほか,本件自白調書が本件検査の分析結果
と符合することなども指摘する。しかしながら,ポリグラフ検査の分析結果
の証明力については慎重な吟味を要するところ,本件検査においては,弁別
的な生理反応があるか否かを分析する検査者自身が裁決項目を認識して検査
に臨んでおり,被検査者の反応やその分析から検査者自身の先入観による影
響を取り除くための措置が十分に採られておらず,検査結果についても,脈
波に特徴的な生理反応が出ている理由を検査者が説明できない部分があり,
このような点を踏まえると,上記分析結果の証明力は限定的であって,本件
自白調書の信用性を高度に保障するとはいい難い。
なお,前記分析結果を踏まえたとしても,それは被告人が「薊野地域のホ
ームで線路に自転車を置いた列車の走行妨害事件があったこと」を認識して
いた蓋然性が高いことを示すにとどまる(検察官は,走行妨害の回数につき
被告人が確定的な認識を持っていないことを示したとも主張するが,鑑定結
果によれば,裁決項目及び特定の質問項目に対する認識の有無を推定できな
いとされているのみである。)。上記認識の限りで,本件自白調書と符合す
るというのは検察官主張のとおりであるが,かかる認識はそれ自体が本件犯
行の自白ではない。そこで,そのことが自白の信用性にどのように影響する
かを検討する必要があるところ,確かに被告人が犯人であれば,上記事実の
認識や,その認識について虚偽を述べたことを整合的に説明できるものの,
証拠上,被告人が上記事実を他の方法により知った可能性は排除できないし,
被告人の前記特性も踏まえれば,もし他の方法により知ったのであれば最初
からそう述べるはずだという通常の経験則を被告人にそのまま適用してよい
のか躊躇を覚えるところである。以上のことからも,本件自白調書に高い信
用性を認めることができるとまではいえない。
4結論
このように本件自白調書はいずれも高い信用性が認められず,他に被告人
の犯人性を裏付けるに足る証拠はないから,本件公訴事実中,電汽車往来危
険,威力業務妨害の点については犯罪の証明がなく,刑事訴訟法336条に
より無罪の言渡しをする。
【量刑の理由】
被告人は,日々生活するだけの収入がありながら,所持金を酒代に費やした末,
まだ酒を飲みたい,食材を土産に持って帰りたいなどと考えて本件犯行(万引き)
に及んだものであり,その動機,経緯に酌量の余地は全くない。また,被告人は,
最終刑執行終了後4年近く経過しているとはいえ累犯前科1犯を含む窃盗又は同未
遂を含む罪の服役前科3犯を有し,本件も同種の犯行を繰り返す中で及んだもので
ある上,他にも服役前科2犯があり,窃盗の常習性や全般的な規範意識の希薄さは
顕著である。
他方で,被害品は1000円足らずと少額で,被告人の母が弁償済みであること,
被告人に能力的なハンディキャップがあること,被告人が罪を認めて反省の態度を
示していることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。
これらの諸事情を考慮し,主文の刑が相当であると判断した。
(検察官杉山一彦及び丸茂民夫並びに弁護人(国選)大塚丈各出席,検察官の求
刑:懲役4年)
高知地方裁判所刑事部
裁判長裁判官平出喜一
裁判官安西二郎
裁判官平山俊輔

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