弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1 被告が原告に対してなした,別紙目録1ないし3記載の一部不開示決定のうち,同
目録1記載の「調査対象地区を具体的に示すことにつながりうる情報」,同目録2
及び3記載の「調査対象地域等を具体的に示すことにつながりうる情報」をそれぞ
れ不開示とする部分を取り消す。
2 訴訟費用は,差戻前の第1,2審及び当審を通じ,被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請 求
  主文同旨
第2 事案の概要
 本件は,原告が,被告に対し,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する
法律(以下「法」という。)に基づき,別紙目録記載①ないし⑥の各法人文書(以下,
これらを「本件各文書」と総称し,個別には「文書①」の例によって表記する。)の開
示を求めたところ,被告が,同目録1ないし3記載の一部不開示決定(以下,これら
を「本件各処分」と総称し,個別には「本件1処分」の例によって表記する。)をした
ため,原告が,本件各処分の一部(本件1処分のうち「調査対象地区を具体的に示
すことにつながりうる情報」を不開示とする部分並びに本件2処分及び本件3処分
のうち「調査対象地域等を具体的に示すことにつながりうる情報」をそれぞれ不開
示とする部分。以下「本件係争部分」という。)の取消しを求めた事案である。
1 争いのない事実等
   (争いのない事実のほかは,各項に掲記の各証拠によって認める。)
(1)被告は,原子力基本法及び核燃料サイクル開発機構法に基づいて設立さ
れ,原子力基本法に基づき,平和の目的に限り,高速増殖炉及びこれに必要
な核燃料物質の開発並びに核燃料物質の再処理並びに高レベル放射性廃
棄物の処理及び処分に関する技術の開発を計画的かつ効率的に行うととも
に,これらの成果の普及等を行い,もって原子力の開発及び利用の促進に寄
与することを目的とする特殊法人である。
 高レベル放射性廃棄物の最終処分は,高レベル放射性廃棄物を安定な形
態に固化した後,30年から50年間程度冷却のための貯蔵(中間貯蔵)を行
った後に行われるものであり,最終処分施設において最終処分が開始される
までの間は,中間貯蔵施設において中間貯蔵される(乙12)。被告は,高レベ
ル放射性廃棄物の中間貯蔵施設の立地を業務の一つとしている。
(2)原告は,法4条1項に基づいて,被告に対し,以下のとおり,本件各文書の開
示を請求した(甲2の1~3)。
ア 請求日 平成14年11月1日
(ア)「JNC ZN7450 2001-001 広域調査地表調査シート(昭和61
年度及び昭和62年度)」(文書①)
(イ)「PNC ZJ4257 88-001 Vol.1 東海・CA地域リモートセンシン
グ調査」(文書②)
イ 請求日 平成14年11月12日
(ア)「PNC ZJ4363 88-001 Vol.1 CB地域リモートセンシング調
査」(文書③)
(イ)「PNC ZJ4363 88-001 Vol.2 CC地域リモートセンシング調
査」(文書④)
(ウ)「PNC ZJ4363 88-001 Vol.3 中国東部・CD地域リモートセ
ンシング調査」(文書⑤)
(エ)「PNC ZJ4257 88-001 Vol.2 四国西部地域リモートセンシン
グ調査」(文書⑥)
(3)被告の東濃地科学センターは,以下のとおり,本件各文書の一部を不開示と
する本件各処分を行った(甲1の1~3)。
ア 本件1処分
(ア)処分の日 平成14年12月2日
(イ)対象文書 文書①
(ウ)不開示とした部分
a サイクル機構の一般職員の氏名
b 調査対象地区を具体的に示すことにつながりうる情報
(エ)不開示の理由
a 当該情報は,個人に関する情報であり,特定の個人が識別される。こ
れは,法5条1号の個人に関する情報であって,ただし書のイロハの
いずれにも該当しない。
b 当該情報は直接地名の特定につながるものであり,これらの情報を
公開することはサイクル機構への信頼を損なうことにつながり,事業
の適正な遂行に具体的な支障を及ぼすことになると考えられる。よっ
て法5条4号の不開示情報に該当する。
イ 本件2処分
(ア)処分の日 平成14年12月2日
(イ)対象文書 文書②
(ウ)不開示とした部分
a アの(ウ)aと同じ
b 調査対象地域等を具体的に示すことにつながりうる情報
(エ)不開示の理由
a アの(エ)aと同じ
b 当該情報を公開することは,地権者等の関係者とサイクル機構との
信頼を損なうことにつながり,事業の適正な遂行に具体的な支障を及
ぼすことになると考えられる。よって法5条4号の不開示情報に該当す
る。
ウ 本件3処分
(ア)処分の日 平成14年12月11日
(イ)対象文書 文書③ないし⑥
(ウ)不開示とした部分
a アの(ウ)aと同じ
b イの(ウ)bと同じ
(エ)不開示の理由
a アの(エ)aと同じ
b イの(エ)bと同じ
(4)本件各文書は,いずれも被告(当時は,動力炉・核燃料開発事業団(以下
「動燃事業団」という。))が高レベル放射性廃棄物の処分予定地を選定する
ために,日本各地の地質を調査した調査結果に関する文書である。
 そのうち文書①は,被告が広域調査対象地域検討のための準備作業とし
て,昭和61年度から昭和62年度にかけて,被告の中部事業所(現在は東濃
地科学センター)が実施した,露頭の岩種,岩相,露頭の割れ目や風化の状
態,岩石物性値などの調査項目について現地調査した結果を記載した調査シ
ートや,既存資料を基に岩石組成の情報を整理したシートを取りまとめたもの
である(乙4)。
 また,文書②ないし⑥は,被告から業務委託された民間調査会社が調査結
果をまとめて被告に提出した報告書である。これらは,昭和62年9月から昭
和63年1月までを調査期間として,高レベル放射性廃棄物の地層処分のた
めの地質環境等の適性調査として実施している地質環境調査の一環として,
航空写真及びランドサット画像を利用したリモートセンシング(電磁波等を利
用して遠隔点から対象物を非接触で調べる技術)によって,対象地域の地質・
地形特性等の判読,解析を行い,グランドトゥルース(リモートセンシング画像
の分類や解釈を行うために,地上の実態に関する情報を集めること)によって
その有効性を検証し,全国規模の地質環境データの収集に資することを目的
としたものであり,①既往地質調査資料の取りまとめ,②ランドサット画像の判
読,③航空写真の判読及び④グランドトゥルースを行い,これらの解析結果を
取りまとめるとともに,当該解析結果から地質環境的に良好な地域を複数箇
所抽出した結果を取りまとめたものである(乙5~9)。
 したがって,本件各文書は,被告の役員又は職員が,その職務上取得した
文書であって,被告の役員又は職員が組織的に用いるものとして,被告が保
有している法人文書に当たる(法2条2項本文)。
(5)被告が本件各文書を作成した経緯
ア 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会は,昭和55年,「高レベル放射性廃棄
物処理処分に関する研究開発の推進について」と題する報告書において,研究
開発項目として「ガラス固化処理技術開発」と「地層処分研究開発」を挙げ,この
うち地層処分にかかわる研究開発については,可能性ある地層の調査(第1段
階),有効な地層の調査(第2段階),模擬固化体現地試験(第3段階),実固化
体現地試験(第4段階),試験的処分(第5段階)と段階を設けて行い,第2段階
の終了時に試験地(処分予定地)の選定を行うこととした(乙10)。
イ 原子力委員会は,昭和57年,「原子力開発利用長期計画」を決定し,同
計画において,「再処理施設から発生する高レベル放射性廃棄物について
は,安定な形態に固化処理し,一時貯蔵した後処分するものとする。」,「処
分については,長期にわたる隔離が必要であること等から国が責任を負う
こととし,必要な経費については,発生者負担の原則によることとする。」,
「処分技術について,2000年以降できる限り早い時期に確立することを目
標に地層処分及びこれに関連した研究開発を進めるものとし,当面地層に
関する調査・研究,人工バリアに関する研究等を進めるものとする。」(乙1
1)とし,国の責任の下に,高レベル放射性廃棄物の処分を行うものとした。
ウ 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会は,昭和59年,上記「原子力
開発利用長期計画」を受けて,「放射性廃棄物処理処分方策について(中
間報告)」と題する報告書を取りまとめ,前記地層処分にかかわる研究開
発のうち,既に終了した第1段階(可能性のある地層の調査)に続く第2段
階の終了時において試験地(処分予定地)の選定を行うこととした。そして
この第2段階においては,「複数地点において,物理探査等の地表踏査を
中心とする広域調査を行い,順次候補地点を選定し精密調査を行うととも
に,深地層試験場を設け深地層での天然バリア及び人工バリアの試験を
行い処分予定地の選定に資する。」,「これらの総合評価の結果,処分予
定地を選定するとともに,第3段階において必要な開発手法を策定する。」
などとする開発手順を示した(乙12)。
 また,上記中間報告書は,第2段階における調査・研究開発項目を処分
技術開発と安全性評価に分かち,前者の処分技術開発については,①広
域調査,②精密調査,③深地層試験及び④環境工学試験を挙げ,上記①
の広域調査については,「第1段階の終了に伴い有効な地層の選定が行
われたが,第2段階はこの有効な地層のうちから複数地点を取り上げ,経
済的・社会的要因調査,地表踏査,必要によって試錐等を行う。これにより
岩体規模等を調査し,精密調査地点の選定と深地層試験の場所選定を行
う。」とし,広域調査の結果は,精密調査地点の選定や深地層試験の場所
選定に供されるものであるとした(乙12)。
エ 原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会は,昭和60年,更に検討を進
め,「放射性廃棄物処理処分方策について」と題する報告書を取りまとめ,
「第2段階の目標とされている処分予定地の選定は,動力炉・核燃料開発
事業団が電気事業者など関係者の協力も得て行う」とした(乙13)。
 そこで,被告は,昭和61年から第2段階に属する広域調査を行ったが,
その結果を取りまとめたものが,本件各文書である。
オ なお,この広域調査は,前記のとおり,第2段階に属するものであるが,第
2段階の「処分予定地の選定」は,①広域調査,②広域調査の結果を踏ま
えて順次候補地点を選定して行われる精密調査,③深地層試験及び④環
境工学試験を経て行われるものであるから,広域調査の結果,抽出された
地点は,精密調査地点の選定や深地層試験の場所選定に際して,その検
討資料として供されることがあるとしても,これが直ちに高レベル放射性廃
棄物の処分予定地につながるものではない。
(6)昭和62年,第2段階の最終的な目標である「処分予定地の選定」について
は,処分事業の実施主体が行うこととされ(乙14),「特定放射性廃棄物の最
終処分に係る法律」(平成12年法律第117号)に基づき,「原子力発電環境
整備機構」が同処分事業を実施することとなった。そこで,被告は,第2段階
の最終的な目標である処分予定地の選定はもとより,精密調査地点の選定
や精密調査の実施にも至ることなく,それまで行っていた広域調査に係る業
務を終了させた。そして,被告は前記のとおり,核燃料サイクル開発機構法に
基づいて,中間貯蔵施設の立地を業務の一つとしているものである。
2 争 点
 本件係争部分が法5条4号本文の定める「公にすることにより,(中略)当該事
務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
があるもの」に該当するか
(1)被告の主張
ア 本件各文書の本件係争部分が開示され,具体的に示され得る調査対象
地区又は調査対象地域等が明らかになると,以下に述べるとおり,同所に
高レベル放射性廃棄物が持ち込まれるなどの誤解や疑念を生じさせ,ひい
ては被告の行う事業である中間貯蔵施設予定地の選定に重大な影響を及
ぼすおそれがあるから,本件係争部分が法5条4号本文に該当することは
明らかである。
イ 被告の事業の性質
(ア)被告は,①全国的見地から,自然環境に関するデータや,社会的環境
に関するデータについて,各種既存資料に基づき調査を実施し,中間貯
蔵施設を立地する上で,明らかに不適切な立地条件を明確にし,②全国
的見地からの調査結果を勘案し,適切であると判断する地点を抽出し,
地元の意向(誘致)を十分に踏まえながら,立地環境調査を自治体へ申
し入れ,③立地環境調査を実施し,④中間貯蔵施設の立地点を決定す
るとの立地手順で,被告の東海再処理工場において固化されるガラス固
化体の中間貯蔵施設の立地を選定する業務を行うものである。
 そして,現在,被告の中間貯蔵施設の立地業務は,上記①の初期段
階にあり,立地にかかわり考慮すべき項目について,地域を特定せず
に,全国的に,自然条件や社会条件等に関する既存資料や最新のデー
タを収集し,今後の検討に資するため,立地地点選定の基本的な考え方
について初期検討をしている段階にある。
(イ)ところで,前記②の段階である中間貯蔵施設を立地する上で適切であ
ると判断される地点を抽出した後は,関係地方自治体等関係する地元
への説明,了承の取得等が幾度となく必要となってくる。これは,中間貯
蔵施設を含め原子力関連施設の立地においては,幅広く,関係地方自
治体等,関係する地元との信頼関係を保持しつつ,その理解と協力を得
て行っていくことが望ましいだけでなく,原子力関連施設の立地上,これ
が必要不可欠であることによる。そこで,上記関係地方自治体等,関係
する地元には,施設を設置する都道府県,都道府県議会,市町村,市町
村議会はもとより,その隣接市町村や隣接市町村議会,さらには,当該
地区等の土地所有者やいわゆる町内会等も広く含まれることとなるし,
また,上記一連の手順の過程において,これらの関係する地元の理解と
協力を得るべく,十分に所要の説明を行い,被告への信頼を保持しつ
つ,誤解や疑念が生じないようにしていくことが必要となる。
 そして,仮に,被告において十分に所要の説明を行ったにもかかわら
ず,誤解や疑念を払拭し得なかった場合には,被告への信頼が損なわ
れ,関係地方自治体等,関係する地元の理解と協力が得られないという
結果を招来し,次の手順には進み得ず,計画の変更・中止等に至ること
も十分起こり得ることとなる。
ウ 本件係争部分が開示されることによる誤報等のおそれ
(ア)本件各文書における調査対象地区等が直ちに高レベル放射性廃棄物
の処分予定地につながるものではなく,また,被告は,中間貯蔵施設の
予定地を選定するものであるが,高レベル放射性廃棄物の処分予定地
を選定するものではない。
 しかし,本件係争部分が開示されれば,本件各文書における調査対象
地区等の土地所有者等において,同地区等とされた場所が高レベル放
射性廃棄物の処分予定地ないしその候補地として既に選定されている
のではないか,被告が高レベル放射性廃棄物の処分予定地を既に選定
し,又は今後選定しようとしているのではないかなどといった誤解や疑念
が生じ,およそ事実に反する誤った議論がいたずらに展開されるおそれ
がある。
(イ)誤報,誤解の実例
a 本件訴訟が提起される前の平成15年2月14日及び同月15日に,
本件各文書を含む広域調査に係る報告書について,動燃事業団が全
国四十数箇所を高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地とす
る報告書をまとめていたとの新聞報道が全国各地でされた(乙18の1
~9)。また,本件差戻前第一審の口頭弁論終結日である同年5月1
日には,被告が高レベル放射性廃棄物の処分場の候補地を絞り込ん
だこと,その候補地を明らかにしないとして本件訴訟が提起されたこと
等を内容とするニュースがテレビで放送された(乙34)。
 このような報道は,被告が候補地を絞り込んだ事実がないこと,本件
各文書における調査対象地区等が直ちに高レベル放射性廃棄物の
処分予定地につながるものではないことを看過した誤った報道であ
り,それ自体,本件各文書における調査対象地区等が処分予定地で
あるとの誤解をしているにとどまらず,広範な読者,視聴者にそのよう
な誤解,疑念を生じさせるものとなっている。
b 原告においても既に誤解が生じている。
 被告は,法施行前に自主的に「情報公開指針」(乙23)を策定し,こ
れに基づいて文書の公開を行っていたところ,平成13年8月及び平
成14年9月,原告からの公開請求(乙24,25)に基づいて,本件各
文書と同一の文書である「広域調査地表調査シート(昭和61年度およ
び昭和62年度)」及び「東海・CA地域リモートセンシング調査」の合計
2通について,調査対象地区や調査対象地域等を具体的に示すこと
につながり得る情報に該当すると判断した部分を除き公開した(乙2
6,27)。公開に際し,被告は,調査対象地区等が高レベル放射性廃
棄物最終処分場の候補地であるなどの誤解や疑念を与えないよう,
被告が実施した範囲を示すとともに,「具体的な候補地を選定しない
まま広域調査は終了し,精密調査には至っておりません」等と記載し,
公開資料の位置付けを説明するなどした資料(乙21,28)を付した。
 その後,原告は,本件各文書につき,平成14年10月30日付け及
び同11月11日付けで法に基づく開示請求を行い,それに対し,被告
は,同年12月2日付け及び同月11日付けで本件各処分を行った。
 原告は,本件訴訟の提起に当たり,原告が代表を務める「放射能の
ゴミはいらない!市民ネット・岐阜」(れんげ通信)のホームページ上に
おいて,「提訴にあたって」と題する文書(乙29)を掲載し,「公開文書
からわかったこと」のタイトルに続けて「処分候補地が実際に選定され
ていた」と記載し,調査対象地区等が高レベル放射性廃棄物処分場
の候補地であるとの誤った理解を示している。
 また,高レベル放射性廃棄物の処分予定地の選定は被告ではなく
原子力発電環境整備機構が行うこととされており,かつ,同機構にお
いては,現在,概要調査地区の候補となる区域の公募をしている段階
であって,精密調査地区はもとより概要調査地区それ自体が選定され
ていないにもかかわらず,原告は,上記ホームページ上において,「研
究所を受け入れた地域も,処分場から除外されていない。東濃も処分
候補地である。」との誤った理解を示した上で,日本弁護士連合会が
平成12年10月6日の人権擁護大会でした決議を引用し「処分場に直
結しかねない東濃超深地層研究所の建設を直ちに中止する」として被
告の事業である地層処分技術の確立を目指した研究開発に係る施設
(乙30)についてまで言及している(乙31)。
c 被告は,平成11年8月10日,原告以外の者から開示請求のあった
「高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する調査・研究(Ⅶ)(M-6
地区)報告書」について,報告書作成会社名,担当者名のみを不開示
としたものの,その余について開示した。同報告書は,被告が動燃事
業団であった昭和58年度のものであって,高レベル放射性廃棄物の
地層処分及びこれに関連した研究開発における第1段階(可能性ある
地層の調査)に位置付けられ,我が国に広く分布する地層等のうち,
調査できる地層を対象としてその特徴を把握するためのものであっ
た。したがって,高レベル放射性廃棄物の処分地の選定に関するもの
であっても,調査対象地区が処分地の候補地を意味することはあり得
ず,このことは同報告書自体からも明らかであった。また,同報告書の
開示請求を受けた被告は,その開示の際,調査対象地区が処分地の
候補地であるとか,被告が処分地の選定を行っているというような誤
解,疑念が生じないよう,上記報告書の作成経緯及び前述したような
高レベル放射性廃棄物の処分地の選定に係る被告の役割の変遷に
ついて説明した資料(乙19)を併せて交付し説明をした。
 それにもかかわらず,ある市民団体は,平成12年1月20日,上記
報告書を取り上げて,北海道幌延町周辺が高レベル放射性廃棄物の
処分候補地として好ましいとした内部資料の存在が明らかになった,
処分場の候補地となる可能性がある旨を表明し,報道機関は,「幌延
周辺が処分適地 旧動燃の内部資料 反対派,推進を懸念」等,誤っ
た報道をした(乙20)。
d また,被告は,平成13年8月31日,M-6地区以外の地区に係る
「高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する調査・研究(Ⅶ)報告書」
について,委託先会社名及び委託先会社の担当者名並びに「調査対
象地区を具体的に示す情報のうち,直接地名の特定につながるもの」
は不開示とし,その余について部分開示した。同報告書は,被告が動
燃事業団であった昭和58年度のものであって,高レベル放射性廃棄
物の地層処分及びこれに関連した研究開発における第1段階(可能
性ある地層の調査)に位置付けられ,我が国に広く分布する地層等の
うち,調査できる地層を対象としてその特徴を把握するためのもので
あったから,調査対象地区が処分地の候補地を意味することはあり得
ず,このことは同報告書自体からも明らかであった。そして,被告は,
その開示の際にも,上記報告書の作成経緯及び前述したような高レ
ベル放射性廃棄物の処分地の選定に係る被告の役割の変遷につい
て説明した資料(乙21)を併せて交付し説明をした。
 しかし,それにもかかわらず,ある市民団体は,上記報告書の内容
を1年半にわたり分析検討した結果であるとして,平成15年2月12
日,被告が北海道幌延町を高レベル放射性廃棄物の処分場として有
効と判断していた旨を公表し,報道機関は,翌13日,「旧動燃計画の
放射性廃棄物処分場-調査27市町村を特定-住民団体発表」等と
誤って報じた(乙22)。
エ 誤報による被告の事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
(ア)前記のような誤報がなされると,調査対象地区等とされた場所が高レベ
ル放射性廃棄物の処分予定地ないしその候補地として既に選定されて
いるのではないか,被告が高レベル放射性廃棄物の処分予定地を既に
選定し又は今後選定しようとしているのではないかといった誤解や疑念
を生じさせ,これが契機となって,被告と関係自治体等の関係する地元
との間の信頼関係が損なわれ,今後,被告において,ガラス固化体の中
間貯蔵施設の立地のために,抽出した適切であると判断される地点に
係る立地環境調査を行うこと,立地地点に係る環境調査を行うことなど
についての関係地方自治体のほか,関係する地元の了解を得るという
立地手順を進めることができなくなる事態を招来することとなり,中間貯
蔵施設の立地業務遂行に重大な支障を及ぼし,最悪の場合には,計画
の白紙撤回といった事態をも招来しかねないこととなる。
(イ)いったん誤解や誤報がされると,それによって形成された不特定多数
の者の認識を訂正することが極めて困難であることは,経験則上明らか
である。この点,被告は,現に自らの業務や事業に関してされた報道機
関の誤報のうち主要なものについては,その都度,当該報道機関に対し
て抗議文を送付したり,事実関係について説明した文書を送付するとと
もに,当該報道内容を見た者が誤った認識を持つに至らないよう,被告
のホームページ上に上記抗議文書,説明文書を掲載したりなどして,説
明を尽くしているところであるが(乙32の1~9),当該報道機関において
記事の訂正がされたことは皆無である。
(ウ)なお,原告は,本件情報は被告の事業と直接の関連性はなく,これを
公開したからといって,被告の業務に支障をきたすおそれはないと主張
する。
 確かに,本件各文書は,高レベル放射性廃棄物の地層処分のための
予定地の選定を指向する「広域調査」に係るものであり,いまだ中間貯
蔵施設の立地手順上,立地地域を特定せずに,全国的に既存資料等を
収集し,今後の検討に資するため,立地地点選定の基本的な考え方に
ついて初期検討をしている現時点では同文書が使われる予定はないも
のではある。しかし,被告の中間貯蔵施設の立地業務が進み,中間貯
蔵施設の立地上,適切と判断される地点を抽出化していく段階において
は,本件各文書の不開示情報は,当該地点の自然的環境条件に関する
既存資料として参考に供され得るものである。
 したがって,本件係争部分に記載されている情報が,被告の事業に関
する情報であり,前記のとおり,これが公開されると被告の業務に支障を
きたすことは明らかである。
(2)原告の主張
ア 被告は,本件係争部分が開示されると,誤った報道がされるなどして,関
係する地元との信頼関係が損なわれ,ひいては被告の行う事業である中
間貯蔵施設予定地の選定に重大な影響を及ぼすおそれがあるなどと主張
する。
 しかし,以下に述べるように,①誤報のおそれがあることは不開示の理由
にはならないと解すべきであること,②誤報のおそれがあるとはいえないこ
と,③仮に誤報のおそれがあるとしても,そのことにより被告の業務の遂行
に支障を生じるとはいえないことから,被告の主張は失当である。
イ 誤報のおそれが不開示の理由にならないこと
 そもそも,国の情報公開法,自治体の情報公開条例や本法の対象となる
機関は権力又は社会的権力と評価される公的団体であって,民主主義の
原理上,各活動について国民による監視と批判を受けることが前提とされ
ている。そして,被告が法の対象機関とされているのは,被告がまさしくか
かる権力的な機関として,国民の監視と批判の対象とされることが予定さ
れているからである。そして,法は被告に対し,法1条の「その諸活動を国
民に説明する責務」の内容として,誤報のおそれに対しては情報の公開を
拒むのではなく,情報を公開した上で,仮に誤報が生じる危険があると判
断された場合には誤報を防ぎ,更に誤報を正す活動をすることを要求して
いるのである。したがって,かかる作業をしたくないからといって情報を不開
示にするという被告の姿勢は,法1条に反する。
 翻って考えれば,誤報のおそれがある場合に情報が不開示できるとすれ
ば,表現の自由が保障される民主主義国家においてはすべての情報が不
開示の対象となってしまう。むろん,法1条はかかる解釈を排除するとみる
べきであって,法上,誤報のおそれは情報の不開示理由とはならない。
ウ 誤報のおそれがあるとはいえないこと
(ア)そもそも「誤報」とは事実に反する報道がなされることをいうのである
が,被告が「誤報」として主張するものはいずれも事実に反する報道がな
されたものではない。せいぜい,被告と見解を異にする観点からなされ
た報道を摘示したものにすぎない。そして,かかる評価の相違は単なる
見解の相違というものにすぎず,誤報ではない。
(イ)被告は,本件各文書に関して,新聞やテレビが「処分場の候補地」や
「処分場の候補地を絞り込んだ」と報道したことを誤報と主張する。
 しかし,本件各文書のうち,文書②ないし⑥の各報告書は「高レベル放射
性廃棄物地層処分のための地質環境的に良好な地域として望ましい候
補地」「高レベル放射性廃棄物地層処分において地質環境的に良好な
地域」として,報告書ごとに2ないし11箇所を選んでいる内容であり,報
道機関はこれらの箇所を「処分場の候補地」と表現したにすぎないので
ある。
 そして,報告書の目的や調査方法,表現をもとにすれば,報道機関が「処
分場の候補地を絞り込んだ」という用語を使用したことは極めて常識的
である。
 次に被告は,報道機関が,「本件各文書における調査対象地区等が処
分予定地であるとの誤解をしている」と主張しているが,報道機関はそも
そも「処分予定地」との表現を用いていない。この点についての被告の主
張は的外れである。
(ウ)また,原告本人や市民団体が被告の意に添わない評価や表現をした
からといって,これを報道機関による「誤報」と同視するのは明白な誤り
である。
 被告の論理は結局のところ,原告のような一般国民が情報の公開によっ
て事実を被告の意に添わない形で表現するおそれがあるから情報を公
開できないと言っているにすぎない。このような論理は法1条の「その諸
活動を国民に説明する責務」を無視する暴論であるばかりか,情報公開
制度そのものを否定し,憲法の保障する表現の自由に対立するもので
あることは明らかである。
(エ)被告は,「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する調査・研究(Ⅶ)(M
-6地区)報告書」を被告が部分開示したことに関して,「処分候補地とし
て好ましいとした内部資料の存在が明らかになった,処分場の候補地と
なる可能性がある旨を表明し,報道機関は,『幌延周辺が処分適地 旧
動燃の内部資料 反対派,推進を懸念』等」と報道されたことを誤報と主
張している。しかし,これは誤報の評価を受けるものではない。
 被告が問題とする「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する調査・研究
(Ⅶ)(M-6地区)報告書」とは,昭和58年度に高レベル放射性廃棄物
「地層処分技術開発の観点から地層の特徴を把握する」ことを目的に
「可能性ある地層の調査」として全国25箇所で実施された調査のうち,
北海道幌延町周辺に関する報告書であり,平成11年8月に開示請求に
よって開示された報告書である。その内容は,「可能性のある地層」の対
象として幌延町をはじめ,豊富町,稚内市,猿払村,中頓別町などを含
む50km×80kmの範囲から水平的広がりや垂直的厚さを持つ泥岩質
(古第三紀以前)の上部蝦夷層群を抽出し,12の項目から調査したもの
で,幌延町周辺については10項目について「有効な地層の分布域とし
て好ましい環境にあると判断される。」と評価されていたものである。
 報道機関は以上の事実をもとに,「幌延町周辺が高レベル放射性廃棄物
の処分候補地として好ましいとした内部資料の存在が明らかになった」と
の表現をしただけであって,これのどこが誤報なのか理解に苦しむ。
(オ)被告は,M-6地区以外の地区に係る「高レベル放射性廃棄物地層処
分に関する調査・研究(Ⅶ)報告書」について,「『旧動燃計画の放射性廃
棄物処分場-調査27市町村を特定-住民団体発表』等と誤って報じ
た。」と主張している。
 しかし,報道の対象は,市民団体である幌延問題道民懇談会が被告に
よって不開示とされた対象地域を1年半の分析検討の結果,自治体名を
特定したという事実であり,このことは疑いのない事実である。要する
に,被告は報道機関が市民団体の活動の報道をしたことを誤報と述べて
いるにすぎないのである。
(カ)以上のとおり,被告が「誤報」として主張する事実は「誤報」ですらない
から,被告は誤報の「おそれ」があるという主張を根拠付ける事実の摘示
すらできていないことになる。
 よって,被告が「誤報のおそれ」を理由とすること自体,合理的根拠がな
い。
エ 誤報が被告の業務の遂行に支障を及ぼすものであるとはいえないこと
(ア)誤解や疑念に対する被告の説明義務
 被告は,中間貯蔵施設を含め原子力関連施設の立地においては,関
係地方自治体等の協力を得るべく,十分に所要の説明を行い,被告へ
の信頼を保持しつつ,誤解や疑念が生じないようにしていくことが必要不
可欠であるとした上,被告において十分に所要の説明を行ったにもかか
わらず,誤解や疑念を払拭し得なかった場合には,被告への信頼関係
が損なわれ,次の手順には進み得ないと主張している。
 すなわち,情報の公開とは関係なく,原子力関連施設の立地手順にお
いては誤解や疑念が生じることは被告の事業では所与の前提であり,こ
れに対して十分に所要の説明を行うことが必要不可欠であることを被告
は自認しているのである。
(イ)被告の主張する支障は反対派に対する説明義務を意味するにすぎな
いこと
 また,これまで被告が「誤報」,「誤解」として摘示した例が誤報でも誤解で
もないこと,誤解と指摘した事実が日弁連の意見や原告らの意見である
ことから明らかなように,被告の説明義務(又は説明に対する負担)は
「誤報」,「誤解」に対して発生するものではなく,被告の事業実施に反対
する個人や団体,世論に対して発生する。
 したがって,被告の主張は,情報の公開によって被告の事業に対する反
対意見が発生し,反対派に対する説得の負担によって事業実施が困難
となるということに尽きるものである。
 しかし,反対派に対する説得や説明の負担を事業の遂行に対する支障と
位置付けることはできない。これを情報公開の不開示事由であるとした
場合には,賛成,反対をめぐり意見の対立する事業情報のほとんどが公
開されないことになり,その結果,法1条が国民主権の理念にのっとり,
独立行政法人等の保有する情報の一層の公開を図り,もって独立行政
法人等の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにし
た趣旨を没却するからである。
(ウ)そもそも,情報を公開したことによって生じる「誤解や誤った報道」は情
報を公開することと法的な因果関係を持つ事柄ではない。したがって,こ
れら「誤報」等を理由として,法5条4号本文の「当該事務又は事業の適
正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があるとする被告の立論は法解釈を
誤っている。
 まず,法5条4号本文の「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼ
すおそれ」は,当然ながら,情報の公開と法的な因果関係を有すること
が前提である。しかし,被告が主張するような誤解や誤った報道は,情
報公開との因果関係があると評価されるべき事象ではなく,被告が十分
な説明をしないことや被告自身が一般市民との信頼関係を持つことがで
きないこと,あるいは被告が情報を公開しないことを原因とするものでし
かない。
 むろん,情報の公開によって,情報を公開しない場合と比較して被告が広
く市民に対して理解を求め,事業の説明をする負担が増すことは予想さ
れる。しかし,かかる職務は本来的に被告がなすべき職務のはずであっ
て,市民へ理解を求める作業や場合によっては誤解を解くための作業,
事業の実施のために当事者を説得する作業などの負担が生じる可能性
を「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」と評価でき
ないことも自明である。
(エ)なお,本件各文書は,高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定業
務に関わるものであるところ,被告が設置をめざす高レベル放射性廃棄
物の中間貯蔵施設とは,最終処分をするまでの期間,高レベル放射性
廃棄物を管理する施設であって,そもそも最終処分場とは全く別のもの
である。
 また,本件調査データを中間貯蔵施設の立地業務に使う予定はないこと
は,被告が提出した乙第18号証の8の新聞報道に記載のあるように,
被告自身が公式に明らかにしている。
 こうしてみると,本件各文書の情報は被告の事業と直接の関連性はなく,
これを公開したからといって,被告の業務に支障をきたすおそれはない。
第3 争点に対する判断
1 被告は,上記のとおり,本件係争部分を開示することにより,調査対象地区又は
調査対象地域等が明らかになると,かつて本件各文書の本件係争部分を除く部分
を開示した際や,他の調査報告書を開示した際に,それを巡って誤った報道がなさ
れたのと同様に,上記の調査対象地区等が高レベル放射性廃棄物の処分予定地
ないしその候補地として選定されるなどの誤解や疑念を生じさせ,ひいては被告の
行う事業である中間貯蔵施設予定地の選定に重大な影響を及ぼすおそれがある
などとして,本件係争部分は,法5条4号本文の「公にすることにより,(中略)当該
事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
があるもの」に該当する旨を主張する。
2 そこで,被告の主張にかかる誤解や誤報の例について検討する。
(1)証拠(乙5~9,18の1~10,19~22,29,31,34)及び弁論の全趣旨によ
れば,以下の事実が認められる。
ア 本件各文書のうち文書②及び⑥の各報告書には,「提言」の章に,「適正地
区の選定」として「適正地区として,本地域では次のような地区(直径3kmの範
囲)を選定した。」との結論が記載されている(乙5,9)。また,文書③ないし⑤
の各報告書の「地質環境的に良好な地域の抽出」の章には,「考察」として
「同区域内は高レベル放射性廃棄物地層処分のための地質環境的に良好な
地域として望ましい候補地の一つといえる」,「高レベル放射性廃棄物地層処
分のための地質環境的に良好な地域としては,図-20に示す(非開示部分)
類分布域内のAreaⅠが適当と考えられる。」又は「同区地域内は高レベル放
射性廃棄物地層処分のための地質環境的に良好な地域として望ましい候補
地といえる。」などの記載がある(乙6~8)。
イ 平成15年2月14日又は同月15日に,南日本新聞など少なくとも9紙の新
聞で,本件各文書等に関する報道がされた。その記事の内容は,動燃事業団
が実施した高レベル放射性廃棄物の処分地選定調査で計12道県の四十数
箇所を候補地とする報告書をまとめていたなどとするものであった。そのうち
の7紙では,その直後に「処分地選定は,現在,原子力発電環境整備機構が
全国から公募する形に変更し」と記載されていたり,「動燃は1987年6月に
処分地選定業務から外れ,核燃機構も処分方法の研究開発だけを行ってい
る」などと記載されている(乙18の1~9)。
ウ 平成15年2月17日,名古屋テレビの報道番組において本件各文書に関す
る報道がされ,その中で「核燃料サイクル開発機構の核廃棄処分地の候補地
に,岐阜県の市町村が含まれていることが分かりました」との報道がされた
(乙18の10)。
 また,同年5月1日,中部日本放送は,本件の訴訟に関して,「核燃,旧動燃
は86年から2年間,高レベル放射性廃棄物の処分場の候補地として,全国5
70箇所で調査を行い,岐阜を含む五十箇所余りを候補地に絞り込みました」
との報道をした(乙34)。
エ 原告は,そのホームページ上に,「公開文書から分かったこと」,「処分候補
地が実際に選定されていた」,「調査の結果,『高レベル放射性廃棄物地層処
分における地質環境的に良好な地域』,『適正地区』,『地質環境的に良好な
地域として望ましい候補地』等の表現で選定されていた」などと記載した(乙2
9)。
 また,同ホームページには,「研究所を受け入れた地域も,処分場から除外
されていない。東濃も処分候補地である。」との記載があるが,その直前には
「地下調査され尽くした研究所の周辺地域が処分場にされる可能性が高いた
め,研究所建設そのものに反対しています。」と記載されている。
 そして,同ホームページ上に,日本弁護士連合会が平成12年10月6日の
人権擁護大会でした決議である「処分場に直結しかねない東濃超深地層研
究所の建設を直ちに中止する」との記載がされた(乙31)。
オ 被告は,平成11年8月10日,「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する
調査・研究(Ⅶ)(M-6地区)報告書」を部分開示した。これに関して,北海道
新聞は,平成12年1月21日,「幌延周辺が処分適地」,「旧動燃の内部資
料」,「反対派,推進を懸念」との見出しの下に,「協議会側は,動燃事業団の
1983年度の調査で,幌延町周辺が高レベル廃棄物の処分候補地として好
ましいとした内部資料の存在を明らかにし,計画が廃棄物処分につながる恐
れがあると訴えた。」との報道をした(乙20)。
カ 被告は,平成13年8月31日,M-6地区以外の地区に係る「高レベル放射
性廃棄物地層処分に関する調査・研究(Ⅶ)報告書」について,調査対象の地
名等を非開示として,部分開示をした。朝日新聞は,平成15年2月13日,
「旧動燃計画の放射性廃棄物処分場」,「調査27市町村を特定」との報道をし
たが,その内容は,市民団体が,非開示とされた地名等を地域や気候等の記
述から市町村名の特定をしたというものであった(乙22)。
(2)各報道内容等の検討
ア 被告は,動燃事業団が実施した高レベル放射性廃棄物の処分地選定調査
で計12道県の四十数箇所を候補地とする報告書をまとめていたとの新聞報
道(前記(1)イ)は,本件各文書における調査対象地区等が直ちに高レベル放
射性廃棄物の処分予定地につながるものではないことを看過し,誤った報道
をしたものであると主張する。
 しかし,前記(1)アのとおり,本件各文書には,「適正地区として,本地域では次
のような地区(直径3kmの範囲)を選定した。」,「同区域内は高レベル放射性
廃棄物地層処分のための地質環境的に良好な地域として望ましい候補地の
一つといえる」,「高レベル放射性廃棄物地層処分のための地質環境的な良
好な地域としては,図-20に示す(本件係争部分)類分布域内のAreaⅠが適
当と考えられる。」又は「同区地域内は高レベル放射性廃棄物地層処分のた
めの地質環境的に良好な地域として望ましい候補地といえる。」などの結論が
記載されており,これらの結論部分の「適正地区」や「候補地」等との記載と照
らし合わせてみれば,前記の「動燃事業団が実施した高レベル放射性廃棄物
の処分選定調査で計12道県の四十数箇所を候補地とする報告書をまとめて
いた」などの報道は,それと符合するものというべきであるから,それが誤った
報道であるとは解されない。
 また,前記(1)イのとおり,上記新聞9紙のうちの7紙については,「処分地選定
は,現在,原子力発電環境整備機構が全国から公募する形に変更し」と記載
していたり,「動燃は1987年6月に処分地選定業務から外れ,核燃機構も処
分方法の研究開発だけを行っている」と記載しており,本件各文書における調
査対象地区が直ちに処分予定地につながるものではないことを明らかにして
いる。
 以上のとおりであるから,上記新聞報道が誤った報道であるということはできな
い。
イ 被告は,テレビ番組においても誤った報道がされたと主張し,上記の2つの
番組を例として挙げている。
 しかし,前記(1)ウ前段の平成15年2月17日のテレビ番組中の「候補地に,岐
阜県の市町村が含まれていることが分かりました」との部分については,本件
各文書の報告書の記載と符合するものであり,これを誤った報道ということは
できないのは前記と同様である。
 また,前記(1)ウ後段の同年5月1日のテレビ番組の中の「核燃,旧動燃は86
年から2年間,高レベル放射性廃棄物の処分場の候補地として,全国570箇
所で調査を行い,岐阜を含む五十箇所余りを候補地に絞り込みました」との部
分は,絞り込まれた五十箇所余りの候補地のいずれかの場所に,高レベル放
射性廃棄物処分場の建設地が限定されたかのような印象を与える余地がな
いでもない。しかしながら,本件各文書のいずれの報告書も,単に全国規模
の地質環境データの収集に止まらず,多くの調査対象地区の中から,具体的
にどの地区が高レベル放射性廃棄物地層処分のために良好であるかを指摘
しているのであり,このような報告書の記載内容からすれば,上記テレビ番組
の報道部分も,被告とは異なった立場ないし視点からの報道とみることはでき
るが,これが誤った報道であるということはできない。
ウ 被告は,原告のホームページ上の記載について,これが誤解に基づくもので
あると主張する。
 前記(1)エのとおり,原告は,ホームページ上に,「公開文書から分かったこ
と」,「処分候補地が実際に選定されていた」などと記載したことが認められる
が,この部分については,前記の本件各文書の各報告書の記載内容と必ず
しも異なるものではない上に,原告は,同ホームページ上に,「調査の結果,
『高レベル放射性廃棄物地層処分における地質環境的に良好な地域』,『適
正地区』,『地質環境的に良好な地域として望ましい候補地』等の表現で選定
されていた」とも記載し,各報告書の記載そのものを引用して説明しているの
であり,これを誤った記載であるということはできない。
 また,同ホームページ上には,「研究所を受け入れた地域も,処分場から除外
されていない。東濃も処分候補地である。」との記載もあるが,その直前に
は,「地下調査され尽くした研究所の周辺地域が処分場にされる可能性が高
いため,研究所建設そのものに反対しています。」と記載されており,このよう
な原告自身の考えに基づいて,「東濃も処分候補地である」と記載したもので
あると容易に理解できるから,原告の上記ホームページ上の記載は,被告が
公開した情報を誤解したものということはできない。
 なお,日本弁護士連合会が平成12年10月6日の人権擁護大会でした「処分
場に直結しかねない東濃超深地層研究所の建設を直ちに中止する」との決議
をホームページ上に記載することが何らの誤解に基づくものではないことは言
うまでもない。
エ 被告は,市民団体が,平成12年1月20日,「高レベル放射性廃棄物の地層
処分に関する調査・研究(Ⅶ)(M-6地区)報告書」を取り上げて,幌延町周
辺が高レベル放射性廃棄物の処分候補地として好ましいとした内部資料の存
在が明らかになった旨,そして処分場の候補地となる可能性がある旨を表明
し,これについて報道機関が,「幌延周辺が処分適地-旧動燃の内部資料-
反対派,推進を懸念」等との誤った報道をしたと主張し,前記(1)オのとおりの
報道がされたことが認められる。
 しかし,「高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する調査・研究(Ⅶ)(M-6
地区)報告書」の記載がどのようなものであったかを確認できる証拠はないか
ら,上記報道が誤解に基づくものであると認めることはできない。
オ また,被告は,平成15年2月13日,朝日新聞が「旧動燃計画の放射性廃棄
物処分場-調査27市町村を特定-住民団体発表」と報じたこと(前記(1)カ)
を誤報であると主張する。
 しかし,前記のとおり,同記事は,被告が「高レベル放射性廃棄物の地層処
分に関する調査・研究(Ⅶ)報告書」を開示するに際して地名等を非開示とし
たのに対して,市民団体が地域や気候等の記述から市町村名の特定をしたと
いう内容を報じたものであり,その報道内容が誤っているとはいえない。
 なお,被告は,上記新聞報道がなされた日の前日の同月12日に,市民団
体が,高レベル放射性廃棄物の処分場として有効と被告が判断していた旨を
公表したと主張するが,そのような内容の公表がなされたことを認めるに足り
る証拠はない。
(3)以上のとおり,被告が誤解や誤報として指摘する上記の各事例は,いずれも,
誤解や誤報であるとは認められない。
3(1)被告は,本件係争部分が開示されると,誤解や誤報がなされ,そのために被告
と関係自治体や地元住民らとの間の信頼関係が損なわれ,被告の中間貯蔵施
設の立地業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張するところ,被
告がその具体的な根拠として指摘する前記の事例については,前項に検討した
とおり,いずれも誤解や誤報がなされたものとは認められない。
 もっとも,本件各文書の各報告書において「適正地区」や「候補地」とされた具
体的な地区が明らかになると,高レベル放射性廃棄物の処分予定地の選定が
原子力発電環境整備機構により全国的な公募によって行われるものとされたこ
とや,被告の業務内容が中間貯蔵施設の立地等とされたことを知らない者や,
それらに関する前述の経緯や業務の進行状況等の理解が十分でない者にとっ
ては,なおそれらの地区が上記処分予定地として既に選定されているのではな
いか,あるいは,被告が処分予定地を選定しようとしているのではないかとの疑
念を抱き,そのために被告の業務に対して批判的な姿勢が示される事態が予想
されないわけではない。
 しかし,仮に,そのような疑念を生じさせる可能性があるとすれば,その疑念を
生じさせる直接の原因は,高レベル放射性廃棄物の処分予定地の選定の主体
や方法,その進捗段階,被告の業務内容やその経緯,進行状況等,これら各独
立行政法人の活動内容や経緯等について,関係者の理解を得ることがいまだ
十分でないことによるものというべきであって,本件係争部分が開示されること
によるものとは解されない。
 すなわち,被告は,動燃事業団であった当時,処分予定地選定のための有効
な地層の調査(第2段階)として全国的に地層等の調査を行ったが,更に精密調
査,深地層試験等を経て処分予定地を選定するとされていたこと,その後,処分
予定地の選定は原子力発電環境整備機構が公募によって行うこととされ,被告
は現在では高レベル放射性廃棄物の処分予定地の選定業務を行っておらず,
その業務は中間貯蔵施設の立地であることなどについて,関係者の理解を得る
ための説明その他の努力を尽くすことによって,本件各文書の調査対象地区が
高レベル放射性廃棄物の処分予定地等として既に選定されているのではない
か,あるいは,被告が高レベル放射性廃棄物の処分予定地を既に選定し,又は
今後選定しようとしているのではないかなどという上記の被告主張にかかる疑念
に対処すべきものというべきである。
(2)上記のような説明等によっても,関係者らの一致した理解を得ることについて
は,関係者らの利害の状況いかんによって困難なところがあることも予想される
ところである。
 しかしながら,法1条は,「この法律は,国民主権の理念にのっとり,法人文書の
開示を請求する権利及び独立行政法人等の諸活動に関する情報の提供につき
定めること等により,独立行政法人等の保有する情報の一層の公開を図り,もっ
て独立行政法人等の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるよう
にすることを目的とする。」と定め,独立行政法人が国民に対する説明の責務を
全うし,国民の批判を仰ぎ,その理解を得るように定めている趣旨に照らせば,
国民の理解を得ることが困難であることを理由として保有する情報を非開示とす
ることは許されず,それは独立行政法人の説明の責務を放棄するに等しいもの
というべきである。
(3)原子力に関する業務は,国民生活に与える影響が大きく,また,それを巡る賛
否等についても多様な議論があるところであるから,被告の業務内容等につい
て国民の理解と信頼を得るために情報の公開が望まれるのであって,国民への
説明や理解を得ることの困難さ,また,それから生じる疑念や誤解等,そして,
被告の業務に対する批判的な報道や運動等が予想されるとしても,上述したと
おり,それらは,本件係争部分が開示されることによるものではないというべきで
あって,その開示によって,法5条4号本文の被告の事務又は事業の適正な遂
行に支障を及ぼすおそれがあるものに該当するとは認められない。
4 以上のとおりであって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のと
おり判決する。
名古屋地方裁判所民事第7部
裁判長裁判官  中   村   直   文
裁判官  武   藤   真 紀 子
裁判官  舟   橋   伸   行
目    録
1 処分日時 平成14年12月2日
 開示する法人文書の名称
 ① JNCZN74502001-001広域調査地表調査シート(昭和61年度及び昭和62
年度)
不開示とする箇所
 「サイクル機構の一般職員の氏名」
 「調査対象地区を具体的に示すことにつながりうる情報」
2 処分日時 平成14年12月2日
 開示する法人文書の名称
 ② PNCZJ425788-001Vol.1東海・CA地域リモートセンシング調査
 不開示とする箇所
 「サイクル機構の一般職員の氏名」
 「調査対象地域等を具体的に示すことにつながりうる情報」
3 処分日時 平成14年12月11日
開示する法人文書の名称
 ③ PNCZJ436388-001Vol.1CB地域リモートセンシング調査
 ④ PNCZJ436388-001Vol.2CC地域リモートセンシング調査
 ⑤ PNCZJ436388-001Vol.3中国東部・CD地域リモートセンシング調査
 ⑥ PNCZJ425788-001Vol.2四国西部地域リモートセンシング調査
不開示とする箇所
 「サイクル機構の一般職員の氏名」
 「調査対象地域等を具体的に示すことにつながりうる情報」
以上

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