弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取消す。
     被控訴人の請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控
訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
 当事者双方の主張、証拠関係は、控訴代理人において、控訴会社が訴外日新化学
工業株式会社(以下日新化学という)の被控訴人に対する取引残代金債務について
保証したことは否認するところであるが、かりに右保証がなされたとしても第一、
次の事由により右保証は無効である。(一)当時控訴会社と訴外会社の代表取締役
はいずれも訴外Aであり、従つて控訴会社が訴外会社の本件債務について連帯保証
をなすためには商法第二六五条により控訴会社の取締役会の承認を必要とするとこ
ろ控訴会社の取締役会の承認をえず、右Aが本件保証をなしたものであり、その後
も取締役会はこれに承認を与えたことがないから無効である。(二)控訴会社は貸
家、貸室等を目的とする会社であつて、訴外会社は工業薬品の製造販売を目的とす
る会社で両会社は営業上、事業上何らの関係もない。従つて、右連帯保証は控訴会
社の目的遂行に必要な行為でなく目的の範囲外の行為であるから無効である。第
二、右抗弁が理由ないとしても本件債務は時効により消滅している。すなわち、被
控訴人が訴外会社に本件商品を売渡したのは昭和三四年七月一日頃であり、代金支
払期日は即日である。その後訴外会社が被控訴人に内払をしたとしても、それは本
件保証の成立した昭和三四年一一月三〇日までのことである。よつて被控訴人の訴
外会社に対する売掛代金債権はおそくとも同日より二年を経過した昭和三六年一一
月三〇日迄に時効により消滅している。主債務が消滅した以上控訴人には保証債務
はない。と陳べ、立証として、乙第一ないし四号証を提出し当審証人A、同B(第
一、二回)同C、の各証言を援用し、甲第五号証の成立を認め、甲第二号証の一な
いし四の各成立を認め(認否訂正)、
 被控訴代理人において、(一)被控訴人の訴外会社に対する本件ニッケル板の取
引はいずれも昭和三四年七月一日に三回にわたり行われたもので、現金取引の約定
で行われたものである。被控訴人は訴外会社との間に従来より取引はあつたけれど
もいずれも現金取引で、それ以前の分についでは残金はなかつた。本件取引分につ
いては小切手をもらつたがそれが不渡となり、その後本件保証がなされるに至つた
ものである。(二)控訴人の商法二六五条違反の主張に対し(イ)連帯保証契約は
売主である被控訴人と控訴人間の行為であつて訴外会社のためにAが控訴人となし
た取引ではないから、取締役会の承認をうける必要はない。(ロ)仮に前項の主張
が通らないとしても昭和三四年二一月当時の控訴会社の取締役は代表取締役である
Aの外その妻Bその他の親族である。右A以外の三人は実質的には会社の運営に参
与せず、何らAの業務執行を監督しうる立場でもなく、発言権もなく、控訴人が株
式会社の形態をとつている関係上取締役の役名を与えられているにすぎない、その
出資関係、運営関係上は全くAの個人商店と変りない所謂ワンマン会社である。従
つて特にAの行為について反対しうる何らの理由もない者ばかりであるから本件保
証についても商法二六五条の取締役の承認があつたものと看做しうる。(三)控訴
人は連帯保証をすることは会社の目的遂行に必要な行為でないというが、そのよう
なことはいえない。(四)時効の抗弁に対し、本件においては主たる債務者である
訴外会社が保証人である控訴人と連帯して債務を負担する場合にあたり、被控訴人
は控訴人に対し時効完成前に本訴を提起しているから民法四五八条、四三四条によ
り訴外会社に対しても履行の請求の効果は及び訴外会社に対し時効が完成すること
はない。と陳べ、立証として、当審証人Dの証言及び当審における被控訴本人尋問
の結果を援用し乙号各証の成立を認めた。
 ほか原判決事実摘示のとおりであるからここにこれを引用する。
         理    由
 当審証人A、原審証人Dの各証言により真正に成立したものと認むべき甲第一号
証、成立に争のない乙第三、四号証に右各証言、当審証人Dの証言、被控訴本人尋
問の結果に弁論の全趣旨を綜合すると、被控訴人は宝商会なる屋号で金、銀、ニッ
ケル等の地金商を営み、昭和三四年春頃より訴外日新化学工業株式会社(代表取締
役A)に対し現金取引により商品を売渡してきたこと、昭和三四年七月一日三回に
わたり同訴外会社にニッケル板代金合計七九九、〇〇〇円相当のものを売渡しその
代金の支払として訴外会社振出の小切手を受領したところ、右小切手は不渡とな
り、同訴外会社は、被控訴人に対し、同額の買掛債務を負担したこと、訴外会社は
その後一部弁済し残金五四〇、四一八円は未払のままになつていたところ、昭和三
四年一一月三〇日控訴会社(当時代表取締役A)は、被控訴人に対する右五四〇、
四一八円の商品買掛債務について保証をなし、これが支払をなすことを認め、その
旨記載した「債務確認書」を被控訴人に差入れたことを各認めることができ、右認
定を左右する証拠はない。もつとも成立に争のない乙第一号証によれば、その後昭
和三四年一二月二二日右訴外会社は金五万円を支払つたようにうかがえるが、右は
成立に争のない甲第五号証と当審における被控訴人本人尋問の結果によれば、右訴
外会社が右被控訴人に対する残債務の支払として五万円の小切手(太洋化学工業株
式会社振出の同年一二月二六目附―先日付―の小切手)を交付したときの領収証で
あり、しかも右小切手は不渡になつていることが認められるので右乙号証を以て右
保証契約成立の日時及び当時の残債務額をうごかす証拠とはならない。そして右認
定事実よりすれば控訴会社は被控訴人との間に訴外会社のために右債務額につき保
証をしたものというべく、右主債務は商人たる訴外会社の取引上の債務で、会社の
営業のためになされたものと推定すべく、従つてこれが保証をした控訴会社は訴外
会社の連帯保証人としての責を負つたものといわねばならない。(商法五一一条二
項)。
 そこで控訴人の抗弁について検討する。控訴人は、当時主債務者の訴外日新化学
とその保証人となつた控訴会社の各代表取締役は訴外Aが兼務しており、控訴会社
が訴外会社のために右保証をなすには商法第二六五条により控訴会社の取締役会の
承認をえなければならないのにこれなくしてなされたものであるから右保証は無効
であるという。そして訴外Aが控訴人主張の如く当時右両会社の代表取締役を兼ね
ていたことは当時者間に争がない。被控訴人は、本件保証契約は控訴会社と被控訴
人との間になされたもので、訴外会社のためにAが控訴会社との間になした取引で
ないから取締役会の承認をうける必要がないという。思う<要旨>に、取締役は株式
会社の業務執行に関する意思決定機関たる取締役会の構成員として忠実に会社の利
益を守らなければならない立場にあるが、その取締役が会社と利害の対立す
る取引についてみずから相手方となり、または第三者(相手方)の代表者または代
理人となつて会社と取引する場合には、たとい自己が当該株式会社を代表または代
理しない場合でも、双方の利益を公平に考慮することは困難であり、ややもすれ
ば、会社の犠牲において自己または自己が代表ないし代理する相手方の利益をはか
る危険を伴うことを避け難い。そこでこの種の取引について取締役会をして監視さ
せ会社の利益を守ることとしたのが商法第二六五条の立法理由である。
 ところで取締役の個人債務、またはその取締役が代表乃至代理する他の者の債務
のため、会社が債権者たる第三者と保証契約をなすが如き場合は、取締役またはそ
の代表乃至代理する本人に利益にして会社に不利益を及ぼす行為で、会社の犠牲に
おいて自己または自己が代表ないし代理する本人の利益をはかる危険を伴う虞れが
あり、取締役会をして監視させ会社の利益を守る必要がある点において、同条が正
面から規定する場合と異るところがない。よつて同条はこの後の場合にも類推適用
するのが相当である(大判昭五年(オ)第二三〇七号昭和六年五月七日、同昭和八
年(オ)第一〇五四号昭和九年二月二八日、東高判昭三〇年(ネ)第一一八三号昭
和三一年八月三日各判決)。これを本件についてみれば、控訴会社の代表取締役た
るAが自己が代表取締役なる訴外日新化学工業株式会社の被控訴人に対する金五四
〇、四一八円の取引残代金債務の保証をしたのであるから、前記後者の場合に該当
すること勿論で、この保証は、控訴会社取締役会の承認がない限り、無権代理行為
となり(同旨大判大正九年七月一〇日同年(オ)第四三四号、同大正八年四月二一
日大正七年(オ)第一〇二七号各判決)効力を生じないものである。被控訴人は当
時の控訴会社の取締役会の構成は右Aの親戚でAの個人商店の実体を有し、他の取
締役においてAの行為に反対する何らの理由もない者ばかりからなつていたから本
件保証について取締役会の承認があつたとみなすべきであるというけれども、取締
役会の承認は取締役の過半数が出席しその取締役の過半数を以てこれをなし、定款
を以てしても此の要件を軽減することは許されず、また右承認は必ずしも事前たる
を要せず、事後においてもこれを為すことが出来るが、右承認のあつたことを主張
立証するのでなく、これなくしてこれあるものとみなすべきであるとの控訴人の主
張はそれ自体失当といわねばならない。
 以上のとおり、右控訴会社のなした右保証契約が無効である以上爾余の判断をな
すまでもなく、これが有効なることを前提とする被控訴人の請求は失当としてこれ
を棄却すべきである。よつて、被控訴人の請求を認容した原判決は不当である。そ
こで民事訴訟法第三八六条第九六条、を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 宅間達彦 裁判官 増田幸次郎 裁判官 島崎三郎)

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