弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 論旨第一点について。
 論旨は、上級審の裁判官が、前審において口頭弁論に列席し、当事者の陳述・証
拠の申出・証人の供述を聴き、証拠決定をなし、その他訴訟指揮に関する決定に関
与した場合等が、すべて、民事訴訟法第三五条第六号にいう裁判官が前審の裁判に
関与した場合に当ることを前提とするものであるが、これらの場合は、いずれも、
前審関与に当らないものと解すべきであるから、所論は採用することができない。
 論旨第二点について。
 原審は、買収基準日から前に遡る事実に同日後の事実を合せてしんしやくするこ
とにより、基準日当時において被上告人がa村を生活の本拠とする意思がその生活
関係の上に客観的に現われていたと判断したものであつて、かように、基準日当時
における住所の所在を認定する資料として、その後の事実をしんしやくすることが
許されないと解すべき根拠はない。そして、原審がこれらの事実をすべて総合して
下した右判断は相当であつて、論旨の主張する転入の遅延、農地委員選挙人名簿へ
の不登載、居村における所得税不納付の事実等は、原審の認定する事情の下では、
基準日当時被上告人の住所がa村にあつたと認めることの妨げとなるものではない。
それ故、所論は採用することができない。
 論旨第三点について。
 原審の認定するところによれば、被上告人は、昭和一八年頃家族全員を伴いa村
に移転するに当つて同村を生活の本拠とする方針をもつて家具、什器の目ぼしいも
のは全部同村居宅に輸送し、京都の居宅は借家のままで、わずかに被上告人の寝具
と自炊道具を残し、終戦後に隣人に依頼して客用座布団を造つた程度で、玄関の両
側には雑草がはびこつている状況であり、昭和二六年頃から留守番を常住させるよ
うにするまで、被上告人が訴訟業務のため京都に来る外は、ほとんど閉鎖していた
というのである。右状況において、被上告人が当時なお京都弁護士会に所属し、京
都における事務所をまつたく廃したものといい得ないとしても、この事実は、原審
の認定するその他諸般の状況にかんがみれば、基準日当時被上告人の住所がa村に
あつたと認めることの妨げとなるものではないから、所論は採用することができな
い。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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