弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
1 別紙目録1記載の非公開部分に関する部分につき,原判決を破棄し,第1審判
決を取り消し,被上告人らが上告人に対し平成8年8月30日付けでした各公文書
一部非公開決定(同9年10月13日付け各決定により一部取り消された後のもの)
を取り消す。
2 別紙目録2記載の非公開部分に関する部分につき,原判決を破棄し,本件を福
岡高等裁判所に差し戻す。
3 別紙目録3記載の非公開部分に関する部分につき,本件上告を棄却する。
4 その余の本件上告を却下する。
5 第1項に関する訴訟の総費用は被上告人らの負担とし,第3項及び前項に関す
る上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人多加喜悦男ほかの上告受理申立て理由について
 1 本件は,北九州市(以下「市」という。)の区域内に事務所を有する権利能
力のない社団である上告人が,旧北九州市情報公開条例(平成元年北九州市条例第
22号。平成13年北九州市条例第42号による全部改正前のもの。以下「本件条
例」という。)に基づき,被上告人らに対し,平成7年度の市の局長ないしこれに
準ずる職員の交際費の支出に関する文書等の公開を請求したところ,被上告人らか
ら,本件条例6条所定の非公開情報が記録されていることを理由として,公開請求
に係る文書の一部を公開しない旨の各公文書一部非公開決定を受けたため,その取
消しを求めている事案である。
 2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 本件条例6条は,「実施機関は,公開請求に係る公文書に次の各号のいず
れかに該当する情報が記録されているときは,当該公文書に係る公文書の公開を行
わないことができる。」と規定し,その6号は,「市の機関内部若しくは機関相互
間又は市の機関と国等の機関との間における調査研究,検討,審議,協議等に関す
る情報であって,公開することにより,当該又は将来の同種の調査研究,検討,審
議,協議等を公正かつ適切に行うことに著しい支障が生じると認められるもの」と
規定し,その7号は,「市の機関又は国等の機関が行う取締り,監督,立入検査,
争訟,交渉,許認可,試験,人事その他の事務事業に関する情報であって,公開す
ることにより,当該若しくは将来の同種の事務事業の目的を損ない,又は適正若し
くは円滑な執行に著しい支障が生じると認められるもの」と規定している。
 (2) 上告人は,平成8年7月3日,本件条例に基づき,被上告人らに対し,平
成7年度の市の局長ないしこれに準ずる職員の旅費,食糧費(懇談会費)及び交際
費の支出に関する文書等の公開を請求した(以下,この公開請求を「本件公開請求」
という。)。これに対し,被上告人らは,同年8月30日,本件条例6条所定の非
公開情報が記録されていることを理由として,本件公開請求に係る文書の一部を公
開しない旨の各公文書一部非公開決定を行った。さらに,被上告人らは,本件公開
請求に係る文書のうち交際費の支出に関する文書(以下「本件交際費関係文書」と
いう。)について,同9年10月13日,上記各公文書一部非公開決定の一部を取
り消し,非公開部分の一部を公開する旨の各決定を行った。同決定により一部取り
消された後の本件交際費関係文書に係る各公文書一部非公開決定(以下「本件各処
分」という。)により非公開とされている部分は,第1審判決文書目録一の三,六
,九,一二,一五,一八,二一,二四,二七,三〇及び三三記載の非公開部分であ
る。
 (3) 市は,交際費の支出目的を次のとおり分類して整理している。
 ア 「御祝」 関係職員が各種の式典,会合,行事等に出席した際に,祝賀,協
賛,激励等の趣旨で金銭を贈ったもの
 イ 「弔意」 関係職員が葬儀,慰霊祭,初盆等に参列した際に,香典,弔慰金
,供花,供物等を献呈したもの
 ウ 「餞別」 相手方の人事異動等に際して金銭を贈ったもの
 エ 「会費」 関係職員が加入している団体の会費や,加入していない団体の会
合に出席した際の会費を支払ったもの
 オ 「見舞い」 病気など望ましくないことがあった相手方に金品を贈ったもの
 カ 「賛助」 団体の活動に対して賛意,激励等を表すために金銭を贈ったもの
 キ 「懇談」 相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として
行われた懇談の費用
 ク 「土産」 関係職員が相手方を訪問した際,あるいは相手方が市を来訪した
際に,社交儀礼の一環として,また,相手方との信頼関係ないし友好関係の維持増
進を目的として,市の名産品等を贈呈したもの
 ケ 「お礼」 市の事務事業に関して助言又は援助を受けたことについて感謝の
意を示すため,また,相手方との信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として
,金品を贈呈したもの
 (4) 本件交際費関係文書の文書名,記載事項等は,第1審判決別表三の1ない
し4記載のとおりである。
 (5) 本件各処分においては,交際費の支出目的(ただし,支出目的が「会費」
又は「懇談」であるものを除く。)及び交際の相手方である個人又は団体を識別す
るに足りる氏名,名称等が非公開とされているところ,被上告人らは,本件交際費
関係文書に記録された上記の交際費の支出目的及び交際の相手方に関する情報は本
件条例6条6号及び7号所定の非公開情報に当たる旨主張している。
 3 原審は,上記事実関係等の下において,本件交際費関係文書に記録された交
際費の支出目的(ただし,支出目的が「会費」又は「懇談」であるものを除く。)
及び交際の相手方に関する情報は本件条例6条6号及び7号所定の非公開情報に当
たるから,本件各処分のうち上記の交際費の支出目的及び交際の相手方である個人
又は団体を識別するに足りる氏名,名称等を非公開とした部分は適法であると判断
した。
 4 しかしながら,原審の上記判断のうち,別紙目録3の(1)記載の非公開部分
に関する部分は是認することができるが,別紙目録1及び2記載の非公開部分に関
する部分は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 本件交際費関係文書に記録された交際費の支出に関する情報を公開するこ
とにより,本件条例6条6号にいう当該又は将来の同種の調査研究,検討,審議,
協議等を公正かつ適切に行うことに著しい支障が生ずることについて,具体的な主
張はないから,上記情報は同号所定の非公開情報に当たるということはできない。
 (2) 本件交際費関係文書に記録された交際費の支出に関する情報が本件条例6
条7号所定の非公開情報に当たるかどうかについて検討する。
 市の局長等の交際事務は,本件条例6条7号にいう交渉その他の事務事業に該当
すると解される。そして,上記の交際事務は,その目的,性質に照らして考えると
,相手方が識別される文書の公開によって相手方の氏名等が明らかにされることに
なれば,交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損ない,交際それ自体
の目的に反し,ひいては交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあり,また,
交際事務の適正又は円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれがあるというべきであ
るから,市の局長等の交際費の支出に関する情報で相手方が識別されるものは,原
則として,同号所定の非公開情報に該当するというべきである。しかしながら,交
際の相手方が識別されるものであっても,相手方の氏名等が外部に公表され,又は
披露されることがもともと予定されているもの,すなわち,交際の相手方及び内容
が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものなど,相手方の氏名等を
公表することによって交際の相手方との信頼関係あるいは友好関係を損ない,ひい
ては交際事務の目的が損なわれたり,交際事務の適正又は円滑な執行に著しい支障
が生じたりするおそれがあるとは認められないようなものは,例外として同号所定
の非公開情報に該当しないと解するのが相当である(最高裁平成3年(行ツ)第1
8号同6年1月27日第一小法廷判決・民集48巻1号53頁,最高裁平成8年(
行ツ)第210号,第211号同13年3月27日第三小法廷判決・民集55巻2
号530頁,最高裁平成9年(行ツ)第55号同14年2月28日第一小法廷判決・
裁判集民事205号671頁参照)。
 (3) 別紙目録1記載の非公開部分に係る文書は交際の相手方である個人又は団
体が識別されない文書であるところ,これらの文書を公開したとしても,交際事務
の目的を損ない,又は交際事務の適正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると
は認められないから,上記文書に記録された交際費の支出に関する情報は本件条例
6条7号所定の非公開情報に当たるということはできない。
 (4) 別紙目録2及び3の(1)記載の非公開部分に係る文書は交際の相手方である
個人又は団体が識別される文書であるので,その交際費の支出目的ごとに,当該文
書に記録された交際費の支出に関する情報が本件条例6条7号所定の非公開情報に
当たるかどうかを検討する。
 ア 前記事実関係等によれば,支出目的が「弔意」に分類されるものは,局長等
が葬儀,慰霊祭,初盆等に参列した際に,香典,弔慰金,供花,供物等を献呈した
ものである。これらのうち,葬儀等の際の供花及び供物は,献呈者の名を付して一
般参列者の目に触れる場所に飾られるのが通例であり,これを見ればそのおおよそ
の価格を知ることができるものであるから,その相手方及び内容が不特定の者に知
られ得る状態でされるものということができ,その交際費の支出に関する情報は,
本件条例6条7号所定の非公開情報には当たらないと解するのが相当である。他方
,香典及び弔慰金は,その性質上,支出の要否や金額等が相手方とのかかわり等を
しんしゃくして個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,その具体的
金額までが一般参列者に知られることは通常考えられないから,その交際費の支出
に関する情報は,同号所定の非公開情報に当たると解するのが相当である。そうす
ると,支出目的が「弔意」に分類される交際費の支出に関する情報については,上
記の観点から,その細目を区分した上で同号所定の非公開情報に当たるかどうかを
判断する必要があるというべきである。
 イ 前記事実関係等によれば,支出目的が「会費」に分類されるものは,局長等
が加入している団体の会費や,加入していない団体の会合に出席した際の会費を支
払ったものである。これらのうちには,局長等がその団体に加入していることが公
知の事実となっているものや,当該会合への出席が不特定の者に知られ得る状態で
されるものが含まれている蓋然性がある。こうしたいわば公然とされる交際のうち
,会費の金額が相手方により一定の金額に定められているものについては,その交
際費の支出に関する情報を公開しても,相手方との間の信頼関係あるいは友好関係
を損なうなどの支障が生ずるおそれがあるとは認められない。そうすると,支出目
的が「会費」に分類されるものについては,上記のような事実の有無を確定しなけ
れば,その交際費の支出に関する情報が本件条例6条7号所定の非公開情報に当た
るかどうかを判断することはできないというべきである。
 ウ 前記事実関係等によれば,支出目的が「懇談」に分類されるものは,相手方
との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として行われた懇談の費用であ
る。これらの支出は,その性質上,その要否や金額等が相手方とのかかわり等をし
んしゃくして個別に決定されるものであり,支出金額,内容等が不特定の者に知ら
れ得る状態でされるものとは通常考えられないから,これらの懇談に係る交際費の
支出に関する情報が本件条例6条7号所定の非公開情報に当たる蓋然性は高いとい
うべきである。もっとも,例えば,局長等が他の地方公共団体の公務員との間で公
式に開催する定例の会合等は,その相手方及び内容が明らかにされても,通常,こ
れによって相手方が不快な感情を抱き,当該交際の目的に反するような事態を招く
ことがあるとはいえないから,これらの懇談における交際費の支出に関する情報の
中には同号所定の非公開情報に当たらないものが含まれている蓋然性もある。そう
すると,支出目的が「懇談」に分類されるものについては,その具体的な類型を明
らかにしなければ,その交際費の支出に関する情報が同号所定の非公開情報に当た
るかどうかを判断することはできないというべきである。
 エ 前記事実関係等によれば,支出目的が「御祝」,「餞別」,「見舞い」,「
賛助」,「土産」又は「お礼」に分類されるものについては,その性質上,その支
出の要否や金額等が相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に決定されるもの
であり,贈呈等の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態
でされるものとは通常考えられないものである。そうすると,上記の各支出目的に
分類されるものについては,その交際費の支出に関する情報は,本件条例6条7号
所定の非公開情報に当たると解するのが相当である。
 5 以上によれば,原判決のうち別紙目録1及び2記載の非公開部分に関する部
分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり
,原判決のうち同部分は破棄を免れない。そして,別紙目録1記載の非公開部分に
関しては,上告人の請求は理由があるから,同部分に関する部分につき,第1審判
決を取り消し,本件各処分を取り消すべきである。別紙目録2記載の非公開部分に
関しては,以上説示したところに従って更に審理を尽くさせるため,本件を原審に
差し戻すべきである。別紙目録3の(1)記載の非公開部分に関しては,論旨は理由
がなく,同(2)記載の非公開部分に関しては,上告受理申立て理由がないから,本
件上告を棄却すべきである。
 なお,その余の上告については,上告人は上告受理申立て理由を記載した書面を
提出しないから,これを却下することとする。
 よって,裁判官泉徳治の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文の
とおり判決する。
 裁判官泉徳治の反対意見は,次のとおりである。
 私は,多数意見のうち,別紙目録2記載の非公開部分の一部及び別紙目録3の(1
)記載の非公開部分の全部が本件条例6条7号所定の非公開情報に当たるとする部
分に賛成できない。これらの非公開部分は,本件条例6条7号所定の非公開情報に
当たらず,また,同条1号所定の非公開情報にも当たらないので,これらの非公開
部分についても,原判決を破棄し,第一審判決を取り消し,本件各処分を取り消す
べきであると考える。その理由は,次のとおりである。
 1 多数意見は,交際費の支出に関する情報のうち交際の相手方が識別されるも
のは,それが公開されると,相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損ない,
交際それ自体の目的に反し,ひいては交際事務の目的が達成できなくなるおそれが
あり,また,交際事務の適正又は円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれがあると
いうべきであるから,原則として,本件条例6条7号所定の非公開情報に該当する
という。
 2 本件条例6条7号は,非公開情報の一つとして,「市の機関又は国等の機関
が行う取締り,監督,立入検査,争訟,交渉,許認可,試験,人事その他の事務事
業に関する情報であって,公開することにより,当該若しくは将来の同種の事務事
業の目的を損ない,又は適正若しくは円滑な執行に著しい支障が生じると認められ
るもの」と規定しているところ,多数意見は,交際事務を同号の「事務事業」の一
つと解している。しかし,同号が事務事業の例として示しているものとの対比にお
いて,交際事務がそれ自体独立して同号の想定する事務事業に当たるとは考え難い。
 また,地方公共団体の行う交際は,法令により地方公共団体が処理すべきことと
されている事務(以下「本来的事務」という。)を円滑に執行するために,当該事
務の関係者との円満な関係を維持すること等を目的とするものであって,本来的事
務を円滑に処理するための付随的事務にすぎない。地方公共団体が,本来的事務を
離れて,特定の個人や団体との関係を円満に維持すること等それ自体を自己完結的
目的として交際を行うべき責務を負っているとは考え難い。
 したがって,本件条例6条7号の「事務事業」は,本来的事務を想定したもので
あって,交際事務は,本来的事務に付随する事務として,本来的事務と一体となっ
て同号の事務事業に当たることはあっても,独立してこれに当たることはないと解
される。
 そして,同号が「事務事業の目的を損ない,又は適正若しくは円滑な執行に著し
い支障が生じる」というのは,本来的事務にかかる支障が生じることを指すものと
解される。例えば,地方公共団体が民間人と「交渉」を円滑に行うために交際費を
支出し,当該交際費の支出に関する情報が公開されると,本来的事務たる「交渉」
を円滑に行う上において著しい支障が生じるというのであれば,交際費の支出に関
する情報を公開しないことも許されよう。ただし,本来的事務の執行に著しい支障
が生じることは,地方公共団体側で具体的に主張立証すべきである。
 3 もし,地方公共団体の行う交際が,本来的事務を離れて,それ自体独立して
本件条例6条7号の「事務事業」に該当し得ると解するとすると,交際費の支出に
関する情報は,一般に,それを公開することにより,交際の目的を損ない,又は円
滑な執行に著しい支障が生じるという性質を有しているから,同号の規定により原
則として非公開とすることができるとの考え方に大きく傾くことになろう。しかし
,かかる考え方を採用すると,地方公共団体の職員が選挙での支援を得るなどの個
人的な利益のために支出した交際費や,逆に民間の個人や団体が自己の利欲のため
地方公共団体から不当に支出させた交際費が,容易に住民の監視を逃れることにな
るのである。本件条例6条7号がかかる事態を許しているとは考えられない。
 4 被上告人らは,本件交際費関係文書を公開すると,交際事務の目的を損ない
,あるいは交際事務の適正な執行に支障が生じるということを主張するのみで,本
来的事務の執行に支障が生じることの主張立証はしていないから,本件交際費関係
文書は,本件条例6条7号の非公開情報が記録された文書には当たらないというべ
きである。
 5 なお,本件交際費関係文書のうち,交際の相手方が私人であるものについて
は,本件条例6条1号所定の「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され
,又は識別され得るもの」(以下「1号情報」という。)として非公開情報に当た
るか否かを検討する必要がある。
 1号情報は,公の立場を離れた一個人に関する情報,換言すれば,公的領域とは
区別される個人の私的領域の情報(個人の基本的人権であるプライバシーを中核と
した私的領域の情報)であると解するのが相当である(最高裁平成12年(行ヒ)
第16号同15年12月18日第一小法廷判決・裁判集民事212号239頁の私
の意見参照)。私人が,地方公共団体の交際費使用による金品を受領し,あるいは
懇談に参加するということは,法律や条例等で個人の権利として保障されたもので
はない。それは,地方公共団体が公費を使用して行う交際行為に参与することであ
って,個人の私的領域に属する行為ではないのである。
 仮に,本件交際費関係文書のうち交際の相手方が私人であるものが,本件条例6
条1号本文の情報に該当するとしても,ただし書ウの「その他公開することが公益
上必要であると認められる情報」に当たるというべきである。
 したがって,本件交際費関係文書のうち交際の相手方が私人であるものも,1号
情報には当たらないというべきである。
 6 そうすると,本件交際費関係文書は,本件条例6条1号及び7号の非公開情
報に当たらないので,本件各処分はすべて取り消されるべきである。
7 仮に,多数意見の考え方に従うとしても,「交際の相手方である個人又は団体
を識別するに足りる氏名,名称等」を非公開にすれば足りることで,「支出目的」
まで非公開にすべき理由はない。本件条例7条は,「前条の規定にかかわらず,実
施機関は,公開請求に係る公文書に前条各号のいずれかに該当する情報が記録され
ている部分が含まれている場合において,当該部分を容易に,かつ,公開請求の趣
旨を損なわない程度に分離することができるときは,当該部分を除いて,当該公文
書に係る公文書の公開を行うものとする。」と規定しており,現に,被上告人らは
,本件交際費関係文書についても,同条による部分公開を行っているのである。こ
の部分公開により,少なくとも「支出目的」は公開すべきである。 
8 なお,付言するに,地方自治法の下における交際費の支出は,明確な基準に従
い,オープンな形で行うべきである。情報の公開により,交際の相手方との信頼関
係や友好関係が損なわれるというのであれば,交際費の支出を見送ればよいことで
,情報を秘匿してまでして交際費を支出することに,正当性を認めることができな
い。また,交際費の支出がある程度画一的になるとしても,民主的地方自治におけ
る交際事務の在り方として,それはむしろ望ましいことというべきである。地方自
治体の交際費支出は,住民を代表して行うというところに意義があり,相手方とし
ても,住民を代表する形で敬意等を表されること自体を名誉と受け止め,その金額
の多寡を問題としないのが通常であり,真に正当性を持った交際費の支出であれば
,これを公開しても,相手方との信頼関係を損ねることはないと考えられ,相手方
においても,公開されることを望まないのであれば,受領等を断ればそれですむこ
とであり,そのような場合においてもあえて交際費を支出しなければならないとい
う必要性は想定し難い。「交際事務」をあたかも自己完結的目的を持った事務のご
とく扱い,交際費の支出に関する情報を公開すれば将来における交際費の支出に支
障が生じるなどとして,住民に隠密裡に交際費を支出することを正当化することは
,民主的かつ健全な行政の確保を目指す地方自治法の趣旨にも反するものというべ
きである。例えば,「会費」は「関係職員が加入している団体の会費や,加入して
いない団体の会合に出席した際の会費を支払ったもの」であり,「賛助」は「団体
の活動に対して賛意,激励等を表するために金銭を贈ったもの」であるところ,多
数意見によると,相手方である団体が識別できる場合は「会費」や「賛助」に関す
る情報も非公開とすることができることになるが,非公開とすべき必要性が乏しい
のに対し,非公開とすれば不明朗な公費の支出を招くという大きな弊害が想定され
,民主的地方自治の精神に反するといわざるを得ない。
(裁判長裁判官 才口千晴 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉
徳治 裁判官 島田仁郎)
(別紙)
            目     録
1 第1審判決文書目録一の三,六,九,一二,一五,一八,二一,二四,二七,
三〇及び三三記載の非公開部分のうち,交際の相手方である個人又は団体を識別す
るに足りる氏名,名称等が記載されていない文書の支出目的
2 第1審判決文書目録一の三,六,九,一二,一五,一八,二一,二四,二七,
三〇及び三三記載の非公開部分のうち,交際の相手方である個人又は団体を識別す
るに足りる氏名,名称等が記載されている文書で,その交際費の支出目的が「弔意」
,「会費」又は「懇談」に分類されているものの
 (1) 交際の相手方である個人又は団体を識別するに足りる氏名,名称等
 (2) 支出目的
3(1) 第1審判決文書目録一の三,六,九,一二,一五,一八,二一,二四,二
七,三〇及び三三記載の非公開部分のうち,交際の相手方である個人又は団体を識
別するに足りる氏名,名称等が記載されている文書で,その交際費の支出目的が「
御祝」,「餞別」,「見舞い」,「賛助」,「土産」又は「お礼」に分類されてい
るものの
  ア 交際の相手方である個人又は団体を識別するに足りる氏名,名称等
  イ 支出目的
 (2) 第1審判決文書目録一の三,六,九,一二,一五,一八,二一,二四,二
七,三〇及び三三記載の非公開部分のうち,債権者の口座及び印影

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