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平成24年8月28日判決言渡
平成24年(ネ)第10026号,同第10057号特許を受ける権利出願人変
更請求控訴,同附帯控訴事件
(最高裁判所平成22年(受)第1340号の判決による差戻事件,差戻前の第2
審・知的財産高等裁判所平成21年(ネ)第10061号,第1審・東京地方裁判
所平成20年(ワ)第32587号)
口頭弁論終結日平成24年7月17日
判決
控訴人・附帯被控訴人(第1審被告)リアルプラスティック株式会社
被控訴人・附帯控訴人(第1審原告)Y
訴訟代理人弁護士外川裕
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴人・附帯被控訴人(第1審被告)と被控訴人・附帯控訴人(第1審原
告)との間において,被控訴人・附帯控訴人(第1審原告)が,別紙権利目録記載
1の特許出願に係る特許を受ける権利を有することを確認する。
3差戻前及び後の控訴審並びに上告審の訴訟費用は全部控訴人・附帯被控訴人
(第1審被告)の負担とする。
4なお,原判決主文第1項は,訴えの交換的変更により,失効している。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人・附帯控訴人(第1審原告)の請求をいずれも棄却する。
3訴訟の総費用は被控訴人・附帯控訴人(第1審原告)の負担とする。
第2事案の概要
以下,略語は第1審判決(以下「原判決」という。)と同様のものを用いる。ま
た,原判決を引用する場合,原判決中に「原告」とあるのを「被控訴人」と,「被
告」とあるのを「控訴人」とそれぞれ読み替える。
1経過
本件は,被控訴人・附帯控訴人(第1審原告。以下「被控訴人」という。)が,
控訴人・附帯被控訴人(第1審被告。以下「控訴人」という。)との間で,別紙権
利目録記載1の特許出願に係る特許を受ける権利(本件特許を受ける権利)を控訴
人から被控訴人に移転することを内容とする本件譲渡契約1及び同目録記載2の特
許権(本件特許権)を控訴人から被控訴人に移転することを内容とする本件譲渡契
約2を締結したとして,本件特許を受ける権利に係る特許出願の出願人であり,か
つ,本件特許権の登録名義人である控訴人に対し,本件譲渡契約1に基づき,本件
特許を受ける権利に係る特許出願につき出願人名義変更手続をすることを,本件譲
渡契約2に基づき,本件特許権につき移転登録手続をすることを,それぞれ求めた
事案である。
第1審(東京地方裁判所平成20年(ワ)第32587号)は,①本件各譲渡証
書(本件譲渡契約1及び本件譲渡契約2を証する各「譲渡証書」)のA作成部分は
真正に成立したものであると認められ,これらによれば,被控訴人と控訴人との間
で,本件各譲渡契約が締結されたとの事実を認めることができる,②控訴人(A)
が本件各譲渡契約に係る意思表示をするにつき,株主らや被控訴人から控訴人
(A)に対し,違法に害悪を示して畏怖を生じさせる行為(強迫行為)があったと
はいえず,他に上記事実を認めるに足りる証拠はない,本件各譲渡契約に係る控訴
人の意思表示は強迫によるものである旨の控訴人の主張は認められないと判断し,
被控訴人の請求を認容した。これに対して,控訴人は控訴した。
差戻前第2審(知的財産高等裁判所平成21年(ネ)第10061号)は,控訴
人を代表すべき者は,代表取締役であるAではなく,監査役であるBであり,Aを控
訴人代表者とした第1審の訴訟手続には違法があるとして,原判決を取り消した。
これに対して,被控訴人は上告受理を申し立てた。
上告審(最高裁判所平成22年(受)第1340号)判決は,本件は,控訴人と
その取締役であった被控訴人との間の訴えであるが,控訴人は,「会社法の施行に
伴う関係法律の整備等に関する法律」施行の際,現に,その定款に株式譲渡制限の
定めがあり,また,資本の額が1億円以下であったから,同法施行の際の最終の貸
借対照表の負債の部に計上した金額の合計額が200億円以上であった場合を除き,
同法53条の適用により監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定
款の定めがあるとみなされることとなり,上記の定款の定めがあるとみなされる場
合には,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定しないこととする旨の定款
変更がされ,又は株主総会若しくは取締役会において取締役であった者との間の訴
えについて代表取締役以外の者が控訴人を代表者と定められていない限り,本件訴
えについて控訴人を代表するのは代表取締役のAというべきである旨判示し,上記
第2審判決を破棄し,Aの代表権の有無を含め,更に審理を尽くさせるため,事件
を知的財産高等裁判所に差し戻した。
被控訴人は,当審において,附帯控訴し,控訴人に対し,本件特許を受ける権利
に係る特許出願につき出願人名義変更手続をすることを求める訴えを取り下げると
ともに,主文第2項記載の確認請求を追加する趣旨の訴えの交換的変更をした。
2前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加するほか
は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「1前提事実」,
「2争点」及び「第3争点に対する当事者の主張」(原判決2頁5行目から5
頁3行目)のとおりであるから,引用する。
(1)原判決4頁14行目から15行目の「辞任届に署名するか,警察に行くか」
の後に,「,『監獄に行くか。』,『刑務所に行くか。』」を付加する。
(2)原判決4頁19行目の「強要された。」の後に,「Aが最終的に署名したの
は,このままでは帰れないのではないかと怖かったからであり,印鑑も相手が渡し
た三文判を使った。」を付加する。
(3)原判決5頁1行目の後に,行を改めて,次のとおり付加する。
「(3)上記のほか,被控訴人は,控訴人の取締役であったにもかかわらず,控訴人
を裏切り,他社と共同で,控訴人のデータを持ち出し,特許を出願し,組織的に控
訴人を強迫したものである。控訴人の意思表示が強迫によるものであることを裏付
ける具体的事情は,以下のとおりである。
ア平成20年2月15日,控訴人の取締役であったCが,取締役のDを殴打し,
同年3月5日,控訴人に無断で新会社を設立した。
イ同月,E税理士が控訴人の経理資料を無断で持ち出し,控訴人の取締役C,F
及び被控訴人に提出した。
ウ同年4月8日,被控訴人が,控訴人に,取締役辞任届を提出した。
エ同月17日,新会社の設立集会が開催された。
オ同月22日,Fが,体調不良を理由に控訴人の取締役会を欠席し,被控訴人
と密談した。
カ同月25日,Cが,同年5月1日,Fが,それぞれ控訴人に取締役辞任届を提
出した。
キ同年5月29日,控訴人は,上伊那農協より取引中止の通知を受けた。
ク同年6月,被控訴人は,(株)環境ケアリングの技術顧問に就任し,同月1
7日,控訴人との関係を一切断ち切る旨の通知をした。
ケ同年7月4日,被控訴人は,同年6月26日に作成された本件各譲渡証書は
印鑑が違うので正規の印を押印するよう求めて控訴人に来社したが,控訴人の取締
役会は応じなかった。
コ同年8月6日,控訴人の株主G氏が来社し,紛争を仲裁するため,仲裁手数
料の支払を控訴人代表者Aに要求した。同年9月18日,G氏のセッティングで会合
が行われた。
サ同年10月3,4日,C,G氏らの強制により,控訴人は取締役会を開催させ
られ,会社印をG氏が持ち去った。G氏は,同月6日,Aに無断で,A名義で会社印を
使い,株主に催告書を通知した。
シ同月27日,控訴人の株主の一部に対し,「リアルプラスティック株式会社
被害者の会」を名乗る差出人から文書が送付され,G氏は被害者の会の代表を名乗
っていた。
ス同月31日,C,F,Gの3氏がAの自宅を突然訪問し,Aの妻に対し,Aが詐欺
師であるかのごとく吹聴した。同年11月14日,G氏が,Aの妻に電話し,脅迫し
た。また,同月15日,G,Eの両氏がDの自宅を突然訪問し,インターホン越しに
怒鳴り散らした。」
第3当裁判所の判断
1当裁判所は,被控訴人の請求は理由があるものと判断する。その理由は,次
のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第4当裁判所の判
断」の「1争点1(本件各譲渡契約の締結の有無)について」及び「2争点2
(本件各譲渡契約に係る控訴人の意思表示は強迫によるものか否か)について」
(原判決5頁5行目から11頁15行目)のとおりであるから,引用する。
(1)原判決11頁10行目の後に,行を改めて,次のとおり付加する。
「また,控訴人は,『Aが最終的に署名したのは,このままでは帰れないのでは
ないかと怖かったからである』旨主張する。しかし,乙1によれば,DやAは,長時
間にわたり株主らから厳しい質問や意見を受けていたものの,署名を拒否すれば,
DやAが危害を加えられたり退席を阻止されることを予想させるような発言や状況は
存在せず,また,署名に際し,Aが『Yさんにはお世話になりましたんで。』と述べ
ていることからしても,Aが,本件各譲渡証書の作成に当たり,署名しなければ帰
れないのではないかとの畏怖を感じていたとの事実は認めることができない。」
(2)原判決11頁14行目の後に,行を改めて,次のとおり付加する。
「控訴人は,控訴人の取締役であった被控訴人が,控訴人を裏切り,他社と共同
で,控訴人のデータを持ち出し,特許を出願し,組織的に控訴人を強迫したもので
あると主張し,控訴人の意思表示が強迫によるものであることを裏付ける具体的事
情として,上記第2の2の〔控訴人の主張〕(3)記載の諸事情を主張する。
しかし,控訴人が主張する諸事情を総合しても,本件各譲渡契約に係る控訴人の
意思表示が強迫によるものであることが裏付けられるとはいえないから,控訴人の
主張は失当である。」
2また,本件全記録を精査しても,本件訴えについて,控訴人を代表する者を,
控訴人の代表取締役であるA以外の者とすべき事情は認められない。
第4結論
以上のとおり,被控訴人の請求はいずれも理由がある。控訴人は,他にも縷々主
張するが,いずれも採用の限りでない。
よって,本件控訴を棄却し,当審において追加された請求を認容することとし,
被控訴人の当初請求の一つである出願人名義変更手続請求に係る原判決主文第1項
は,訴えの交換的変更により失効していることを明らかにして,主文のとおり判決
する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
芝田俊文
裁判官
岡本岳
裁判官
武宮英子
別紙
権利目録
1特許出願
出願番号特願2007-14951
出願日平成19年1月25日
出願人リアルプラスティック株式会社
発明の名称ポリ乳酸樹脂の再生方法
2特許権
特許番号第4101856号
発明の名称ポリエチレンテレフタレート樹脂の分解回収方法
登録日平成20年3月28日
登録名義人リアルプラスティック株式会社

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