弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人人見福松の上告理由第一、二点について。
 しかし民訴三六三条二項は、訴の取下についての同法二三六条二項を準用してい
ないから、控訴の取下をなすについては、相手方の同意を要しないものと解すべき
である。また、控訴の取下を書面を以てする場合はその書面を裁判所に提出するを
以て足るのであり、それが相手方に送達されることを必要とするものではない。尤
も、民訴三六三条二項によつて準用される同法二三六条四項は「訴状送達ノ後ニ在
リテハ取下ノ書面ハ之ヲ相手方ニ送達スルコトヲ要ス」と規定しているが、右は右
送達により相手方に控訴取下の事実を知らしめこれに対処するについて遺漏なから
しめんとした便宜的な趣旨に出ているものであつて、控訴取下の効力の発生要件を
規定したものではないのである。
 本件において、被上告人は、第一審で敗訴した部分につき、原審に附帯控訴の申
立てをしたが、その後、昭和二九年一〇月八日附帯控訴取下書を原審に提出したの
であるから、これとともに、附帯控訴は相手方に対する送達をまたずして、取下と
なつたものといわなければならない。
 されば原判決には、所論の違法はなく、論旨はいずれも採用しがたい。
 同第三点について。
 しかし本件債務は取立債務ではなく、持参債務と認むべきものであることは、原
審が証拠によつて認定したところであつて、その認定は挙示の証拠に照して是認で
きる。所論はひつきよう原審がその裁量権の範囲内において、適法にした証拠の取
捨判断並びに事実認定を非難するに帰するから採るを得ない。されば所論信義則お
よび経験則違反の主張もその前提を欠くものであるから、これまた採用し得ない。
 同第四点について。
 しかし所論の点に関し、原審が、判示の如き理由によつて、所論書面は上告人に
対してなされた催告並びに条件付契約解除の意思表示として有効であるとした判断
は正当であつて、当裁判所にも支持される。その末尾に所論の「右書面による催告
を無効とすべきでない」と判示している趣旨は、ただ単に催告だけについていうの
ではなく、条件付契約解除の意思表示をも含めての意味であることは、判文の全趣
旨によつて首肯するにかたくないから論旨はいずれも理由がない。
 同第五点について。
 しかし被上告人が第一審においてなした所論指摘の主張事実が、原審昭和三〇年
三月五日の口頭弁論において、原判決事実摘示のとおり訂正されたことは記録上明
らかである。そして昭和一九年五月二〇日に当初の賃貸借が成立したことは当事者
間に争いがなかつたのであるから、右の訂正は、自白の撤回に当るものというべき
ところ、上告人はこれに対して異議を述べた形跡を認めることはできないから、右
自白の撤回は有効になされたものといわなければならない。
 ところで、右訂正された被上告人の主張によれば、右昭和一九年五月二〇日に締
結された賃貸借は、上告人らの主張する如く、一旦解除されたが、判示の如き事情
から、その後、さらに、従前の契約と同一条件で賃貸されるに至つたというのであ
り、原審はこれを認めて、判示のように認定するに至つたのである。右原審の事実
認定は挙示の証拠に照して首肯するにかたくない。
 論旨は、このような場合には、「被上告人の自白に反する供述はそのままでは証
拠にならない」旨主張するが、採証上そのような法則はないから論旨は採るを得な
い。
 論旨はまた、原審は被上告人の新たな主張に基き一審と異なる事実を認定したの
であるから、かかる場合には、一審判決を破棄すべきである旨主張するが、既に前
叙の如く、上告人は訂正された右新たな事実の主張に異議を述べなかつたのである
し、右主張事実の訂正は訴訟物の同一性を左右するものではないのであつて、訴を
変更したものともいうことを得ないのであるから、このような場合に、一審判決を
取消すべきものでないことは、多くいうをまたないところである。それゆえ原判決
には所論の違法はなく、論旨は採るを得ない。
 同第六点について。
 しかし所論支払猶予の事実は、原審の是認しないところであるから、原審がその
確定した事実関係のもとにおいて、所論弁済の提供は、催告期間経過後のものであ
ること、したがつて催告に対する提供としては不適法のものであるとした判断は正
当である。この点に関する所論はひつきよう原審の認定に副わない事実を前提とす
るものであるから採るを得ない。
 ただ原審が、所論昭和二六年一月分から同年五月二六日までの分の弁済供託をも
不適法のものなるが如く判示した部分は、その真の趣意は兎に角として、表現の方
法において誤解の生じ易い点のあることを否定し得ない。しかしこの部分は、原審
において弁論の対象とはなつていないのであるから(附帯控訴の取下があつたこと
によつて)、右の部分の判示は蛇足であつたといわなければならない。それゆえ仮
に所論の違法が認められるとしても、その違法は原判決に影響を及ぼさないものと
考えられる。さればこの点に関する論旨も理由ないものとして採用しがたい。
 同第七点について。
 しかし所論の点に関する原審判断の正当であることは第四点において説明したと
おりであり、所論はひつきよう独自の見解を前提として原判決に所論の違法ある如
く主張するものであるから採るを得ない。
 同第八点について。
 所論はひつきよう原審の裁量に属する証拠の証明力を争うものに過ぎないから適
法の上告理由にはならない。 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に
従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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