弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
1 原判決を次のとおり変更する。
第1審判決を次のとおり変更する。
(1) 第1審被告が第1審原告に対し平成10年11月25日付けでした非公開処
分のうち,現金出納簿中の第1審判決別表番号8ないし13,26ないし31,5
7ないし62の情報が記録されている部分を非公開とした部分を取り消す。
(2) 第1審原告のその余の請求を棄却する。
2 訴訟の総費用は,これを4分し,その3を第1審原告の負担とし,その余を第
1審被告の負担とする。
         理    由
 第1 本件の概要
 1 本件は,千葉県内に事務所を有する権利能力なき社団である第1審原告が,
千葉県公文書公開条例(昭和63年千葉県条例第3号。以下「本件条例」という。)
に基づき,本件条例の実施機関である第1審被告に対し,知事交際費に係る公文書
の公開請求をしたところ,その一部につき非公開処分を受けたので,その取消しを
求める事件である。
 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 第1審原告は,平成10年11月11日,同年6月1日から同年8月31
日までの間に支出された知事交際費に関する公文書(支出日と支出金額が分かる書
類)の公開を請求した(以下「本件公開請求」という。)。これに対し,第1審被
告は,同年11月25日,上記期間の知事交際費に係る現金出納簿(以下「本件文
書」という。)が本件公開請求に対応する公文書に当たるとした上,本件文書のう
ち摘要欄中の第1審判決別表(以下「別表」という。)において伏せられている部
分(以下「本件非公開部分」という。)について,そこに記録されている情報が本
件条例11条8号に該当し,このうち別表番号2,8ないし14,16,18,2
2,24ないし31,33,36,37,43,48,49,51,54,56な
いし64,67ないし69,71及び72の情報については同条2号にも該当する
として,これを非公開とする旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。
 (2) 本件条例11条は,「実施機関は,次の各号の一に該当する情報が記録さ
れている公文書については,公開しないことができる。」と規定しており,同条2
号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で
あって特定個人が識別され,又は識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除
く。イ 法令等の定めるところにより,何人でも閲覧することができる情報 ロ 
実施機関が作成し,又は収受した情報で,公表を目的としているもの ハ 法令等
に基づく許可,免許,届出等の際に実施機関が作成し,又は収受した情報で,公開
することが公益上必要であると認められるもの」と,同条8号は,「実施機関が行
う交渉,取締り,立入検査,監査,争訟,入札,試験等の事務事業に関する情報で
あって,当該事務事業の性質上,公開することにより,実施機関と関係者との信頼
関係が損なわれると認められるもの,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業
の実施の目的が失われるおそれがあるもの又は当該事務事業若しくは将来の同種の
事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるもの」と規
定している。
 (3) 本件文書は,年月日,摘要,受,払,残の各欄から成っており,摘要欄に
は,支出項目(御祝い,激励金,香典・仏前,生花代,見舞い,賛助,懇談費,会
費,購読料),知事・副知事の別,支出の相手方,使途等が記載されている。本件
非公開部分は,本件文書の摘要欄中の交際の相手方の個人名,役職名,続柄又は団
体名,行事名,祝賀要因等が記載されている部分である。
 (4) 本件非公開部分に記録されている交際費に関する情報は,いずれも交際の
相手方が識別され得るものであり,支出項目ごとにみたその内容は,次のとおりで
ある。そのうち本件処分において同条2号に該当するとされた別表番号2,8ない
し14,16,18,22,24ないし31,33,36,37,43,48,4
9,51,54,56ないし64,67ないし69,71及び72の情報は,特定
の個人が識別され得るものである。
 ア 御祝い
 別表番号1,4ないし6,14ないし18,24,34,43ないし45,53
ないし55及び70ないし72の御祝いは,各種の祝賀会,絵画展,記念レセプシ
ョン,総会,定例会,祭等に際し,交際の相手方との信頼,友好等の関係の維持,
向上を願う趣旨で支出されたものである。
 イ 激励金
 別表番号38及び39の激励金は,スポーツ選手の大会出場に際し,選手を激励
し,スポーツ界の振興を図る目的で支出されたものである。
 ウ 香典・仏前
 別表番号2,22,48,49及び56の香典は,葬儀に際して支出されたもの
である。
 エ 生花代
 別表番号8ないし13,26ないし31及び57ないし62の生花代は,葬儀又
は通夜に際して支出されたものである。
 オ 見舞い
 別表番号25,36,37,63,64,67及び68の見舞いは,病気見舞い
として支出されたものである。
 カ 賛助
 別表番号33の賛助は,遺児育英の趣旨で支出されたものであり,別表番号42
及び47の賛助は,社会的弱者を支援する団体やボランティア団体等の非営利的な
活動をする各種団体等から協力要請等があった場合に,その活動の趣旨に賛同して
いることを示す意味で支出されたものである。
 キ 懇談費
 別表番号3の懇談費は,知事等が県政の推進に必要な各方面の理解と協力を得る
ことを目的として,意見交換の場を設けるために支出されたものである。
 ク 会費
 別表番号35の会費は,知事等が会員となっている団体の年会費として支出され
たものであり,別表番号51及び69の会費は,個人の祝賀会等に出席した際の会
費である。
 ケ 購読料
 別表番号7,19ないし21,23,32,40,41,46,50,52,6
5及び66の購読料は,交際の相手方が発行する新聞,雑誌,機関紙等の購読料と
して支出されたものである。
 3 原審は,上記事実関係等の下において,本件非公開部分に記録されている交
際費に関する情報のうち,① 購読料に係る情報は本件条例11条8号に該当しな
いが,その余のものは同号に該当する,② 別表番号2,8ないし14,16,1
8,22,24ないし31,33,36,37,43,48,49,51,54,
56ないし64,67ないし69,71及び72の情報は,いずれも同条2号に該
当すると判断した。
 第2 平成13年(行ヒ)第83号上告人,上告代理人廣瀬理夫,同石川知明,
同藤代浩則,同永嶋久美子,同菅野亮の上告受理申立て理由について
 1 論旨は,原審の上記判断のうち御祝い,激励金,香典・仏前,生花代,見舞
い,賛助,懇談費及び会費に係る情報が本件条例11条2号又は8号に該当すると
した判断について,法令の解釈適用の誤り等をいうものである。
 そこで,検討すると,所論の点に関する原審の上記判断のうち,御祝い,激励金
,香典・仏前,見舞い,賛助,懇談費及び会費に係る情報が本件条例11条2号又
は8号に該当するとした部分は是認することができるが,生花代に係る情報が上記
各号に該当するとした部分は是認することができない。その理由は,次のとおりで
ある。
 (1) 前記事実関係等によれば,御祝い,激励金,香典・仏前,生花代,見舞い
,賛助,懇談費及び会費に係る情報は,いずれも交際の相手方が識別され得るもの
であるというのであるから,原則として本件条例11条8号に該当するというべき
である。もっとも,知事の交際事務に関する情報で交際の相手方が識別され得るも
のであっても,相手方の氏名等が外部に公表,披露されることがもともと予定され
ているもの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でさ
れる交際に関するものなど,相手方の氏名等を公表することによって交際の相手方
との間の信頼関係あるいは友好関係を損ない,ひいては交際事務の目的が損なわれ
たり,知事の交際事務の公正かつ円滑な執行に支障が生じたりするおそれがあると
は認められないようなものは,例外として同号に該当しないと解するのが相当であ
る。
 また,上記各情報のうち本件処分において同条2号に該当するとされた別表番号
2,8ないし14,16,18,22,24ないし31,33,36,37,43
,48,49,51,54,56ないし64,67ないし69,71及び72の情
報は,特定の個人が識別され得るものであるというのであるから,原則として同号
に該当するというべきである。もっとも,【要旨1】本件条例の趣旨,制定経緯等
に照らせば,同号ただし書ロにいう「実施機関が作成し,又は収受した情報で,公
表を目的としているもの」とは,公表することを直接の目的として作成し,又は収
受された情報に限られるものではなく,公表することがもともと予定されているも
のを含むと解するのが相当である。そうすると,その交際の性質,内容等からして
,交際内容等が一般に公表,披露されることが予定されているもの,すなわち,交
際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交際に関するものにつ
いては,同号ただし書ロにより同号に該当しないというべきである。
 (2) 以上の基準に従って,上記各情報が本件条例11条8号又は2号に該当す
るか否かにつき検討する。
 ア 御祝い,激励金
 前記事実関係等によれば,本件における御祝いは,各種の祝賀会,絵画展,記念
レセプション,総会,定例会,祭等に際して支出された祝金であり,激励金は,ス
ポーツ振興等の激励金であるところ,これらについては,いずれもその性質上,県
と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定される
ものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状
態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件非公開部分に記録
されている御祝い及び激励金に係る情報は,本件条例11条8号に該当し,別表番
号14,16,18,24,43,54,71及び72の御祝いに係る情報は,同
条2号にも該当するというべきである。
 イ 香典・仏前
 香典・仏前は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の
要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金
額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。し
たがって,本件非公開部分に記録されている香典・仏前に係る情報は,本件条例1
1条2号及び8号に該当するというべきである。
 ウ 生花代
 前記事実関係等によれば,本件における生花代は,いずれも葬儀又は通夜に際し
て支出されたものであるところ,葬儀又は通夜に際して贈られる生花は,知事の名
を付して一般参列者の目に触れる場所に飾られるのが通例であり,これを見ればそ
のおおよその価格を知ることができるものである。そうすると,これらの生花贈呈
の事実及びその内容は不特定の者に知られ得るものであったということができるか
ら,本件非公開部分に記録されている生花代に係る情報は,本件条例11条2号及
び8号のいずれにも該当しないと解するのが相当である。
 エ 見舞い
 前記事実関係等によれば,本件における見舞いは,病気見舞いとして支出された
見舞金であるところ,見舞金は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんし
ゃくして支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともか
く,具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考
えられない。したがって,本件非公開部分に記録されている見舞いに係る情報は,
本件条例11条2号及び8号に該当するというべきである。
 オ 賛助
 前記事実関係等によれば,別表番号33の賛助は,遺児育英の趣旨で支出された
ものであり,別表番号42及び47の賛助は,非営利的な活動をする各種団体等に
対する協賛金として支出されたものであるところ,これらについては,いずれもそ
の性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別
に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に
知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件非公
開部分に記録されている賛助に係る情報は,本件条例11条8号に該当し,別表番
号33の賛助に係る情報は,同条2号にも該当するというべきである。
 カ 懇談費
 前記事実関係等によれば,本件における懇談費は,知事等が県政の推進に必要な
各方面の理解と協力を得ることを目的として,意見交換の場を設けるために支出さ
れたというのであり,懇談費支出の事実又はその具体的な金額等が不特定の者に知
られ得るものであったとは通常考えられない。また,記録によっても,本件におけ
る懇談費が,他の地方公共団体の長等との間で公式に開催する定例の会合や公の表
彰の際の祝宴等のように,交際の相手方及び内容が明らかにされても,通常,これ
によって相手方が不快な感情を抱き,当該交際の目的に反するような事態を招くこ
とがあるとはいえない懇談に関するものであったことをうかがわせる事情は見当た
らない。したがって,本件非公開部分に記録されている懇談費に係る情報は,本件
条例11条8号に該当するというべきである。
 キ 会費
 前記事実関係等によれば,別表番号35の会費は,知事等が会員となっている団
体の年会費として支出されたものであり,別表番号51及び69の会費は,個人の
祝賀会等に出席した際に支出されたものであるところ,記録によっても,知事等が
ポスト指定として団体等の会員となっている場合やその会合に出席する場合等,知
事等の団体等への加入や会合等への出席が不特定の者に知られ得るものであったこ
とをうかがわせる事情は見当たらない。したがって,本件非公開部分に記録されて
いる会費に係る情報は,本件条例11条8号に該当し,別表番号51及び69の会
費に係る情報は,同条2号にも該当するというべきである。
 2 以上によれば,原審の前記判断中,御祝い,激励金,香典・仏前,見舞い,
賛助,懇談費及び会費に係る情報が本件条例11条2号又は8号に該当するとした
部分は,正当として是認することができ,この部分に関する論旨は採用することが
できない。しかしながら,原審の前記判断中,生花代に係る情報が上記各号に該当
するとした部分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判
決中上記判断に係る部分は破棄を免れない。この部分に関する論旨は理由がある。
そして,以上説示したところによれば,本件処分のうち生花代に係る情報が記録さ
れている本件文書中の部分についてこれを非公開とした部分は違法であるから,こ
の部分については第1審判決を取り消して第1審原告の請求を認容すべきである。
 第3 平成13年(行ヒ)第84号上告代理人滝田裕,同川戸淳一郎の上告受理
申立て理由第2について
 1 論旨は,原審の前記判断のうち購読料に係る情報が本件条例11条8号に該
当しないとした判断について法令の解釈適用の誤りをいうものである。
 そこで,検討すると,所論の点に関する原審の判断は是認することができない。
その理由は,次のとおりである。
 前記事実関係等によれば,本件における購読料は,交際の相手方が発行する新聞
,雑誌,機関紙等の購読料として支出されたものであり,いずれも交際の相手方が
識別され得るものであるところ,一般に,交際費から購読料が支出される機関誌等
については,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして購入の要否及び購入部数
が個別に決定されるものであり,知事等が機関誌等を購読して購読料を支出してい
る事実又はその具体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるというこ
とは通常考えられない。したがって,【要旨2】本件非公開部分に記録されている
購読料に係る情報は,本件条例11条8号に該当するというべきである。
 2 以上によれば,原審の前記判断中,購読料に係る情報が本件条例11条8号
に該当しないとした部分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があ
り,原判決中上記判断に係る部分は破棄を免れない。この部分に関する論旨は理由
がある。そして,以上説示したところによれば,本件処分のうち購読料に係る情報
が記録されている本件文書中の部分についてこれを非公開とした部分に違法はない
から,この部分については第1審判決を取り消して第1審原告の請求を棄却すべき
である。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田
宙靖)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛