弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
原告の本件請求中立川市選挙管理委員会のなした決定の取消を求める部分につき訴
を却下する。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
昭和五三年六月一八日執行された立川市議会議員選挙における当選の効力に関し立
川市選挙管理委員会が同年七月一九日なした原告の異議の申出を棄却する旨の決定
及び被告が同年九月一九日になした原告の審査の申立を棄却する旨の裁決はいずれ
もこれを取り消す。
右選挙における当選人Aの当選は無効とする。
訴訟費用は被告の負担とする。
との判決
二 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
との判決
第二 主張
一 請求の原因
1 原告は昭和五三年六月一八日執行の立川市議会議員選挙において立候補した候
補者であり、翌一九日開催の選挙会において、得票一、一八六票と決定され、最下
位当選人Aの得票数一、一九二票に対し六票差で落選人と決定されたものである。
原告は右選挙の効力に関し立川市選挙管理委員会(以下「市委員会」という。)に
対し昭和五三年六月二三日異議の申出をしたが、同委員会が、同年七月一九日これ
を棄却する決定をしたので、これを不服とし同年同月二八日被告に対し右決定を取
り消し、原告を当選人とする旨の裁決を求めた。被告は昭和五三年九月一九日右申
立を棄却した。
2 原告が被告の裁決を不服とする理由は、つぎのとおりである。すなわち本件選
挙に立候補し、最下位で当選人と決定されたA候補の得票数一、一九二票中には、
公職の候補者でない同人の父Bの投票が一一票算人されている。これを右A候補の
得票一、一九二票から控除すれば一、一八一票となり、原告の得票数一、一八六票
より五票だけ少くなる。よつて原告が当選人となりA候補は落選人となるべきであ
り、これに反する決定及び裁決は違法である。
3 被告は本件審査にあたり職権をもつて全投票を開披して調査した。開披調査に
おいて検討を要するものと認めた投票はA四七票、B一三票、C八票、D三票、E
六四票、合計一三五票であつた。個々の投票の記載内容は裁決書添付の別表のとお
りである。
右の投票中BないしEの投票は本件に関係なく、本件に関係あるのはAのうち投票
番号(37)ないし(47)の一一票である。
そのうち(37)ないし(45)の投票にはBと記載され、(46)(47)の投
票には甲州屋と記載されている。以下これらの投票が無効である理由を述べる。
4 別表A(37)ないし(45)の投票について
右各投票は、A候補の父Bに対してなされた無効の投票である。何となればBは、
以下の事情により立川市において極めて知名度の高い人物であるからである。すな
わち、
(一) Bは山梨県から<地名略>へ出て約五〇年、今日の甲州屋の隆盛を築きあ
げた山梨県人の中でも代表的成功者の一人として山梨県人の間で周知され著名であ
る。なお、山梨県人の立川市在住者は三、〇〇〇人余と推定されている。
(二) Bは昭和三年一月立川市<地名略>に甲州屋という屋号で酒類調味料等を
販売する店舗を構え、昭和二五年一一月二日合名会社甲州屋を設立してその代表社
員となつたが、その店舗は立川駅近くの目抜きの商店街にある。また同人は東京小
売酒販組合、東京酒類商業協同組合、東京味噌醤油商業協同組合の各立川支部組合
員であり、昭和二〇年代に立川酒商組合副組合長に就任していて現在同業者の長老
としてその知名度は高い。
(三) Bは昭和二八年五月一日に創立された立川商工会議所の当初からの正会員
であり、同会議所の商業部会の酒類燃料関係分科会員として活躍している。
この関係においても知名度は高い。
(四) Bは昭和二八年四月から昭和二九年三月まで及び昭和三一年四月から昭和
三二年三月までの二回に亘り「立川南口すずらん通り商友会」総代を勤め、昭和三
九年四月から昭和四一年三月までの二年間は「立川南口すずらん通り商店振興組
合」理事として商店街の発展に貢献しており、地元商店関係者の間ではその知名度
は頗る高い。
(五) Bは昭和二四年頃から立川市の諏訪神社の氏子総代を勤めている。諏訪神
社は同市<地名略>に所在する由緒ある神社で、約五、〇〇〇坪の敷地に寛文一〇
年に造営された本殿があり、再建以来三〇〇年を経、立川市における最古の木造建
築物として市重宝に指定されている。立川市の<地名略>、<地名略>、<地名略
>、<地名略>、<地名略>が右神社の氏子区域であり、旧立川市の八割に当り、
世帯数は昭和五三年現在八、七五〇名に及んでいる。
Bは<地名略>の北町会選出の氏子総代であるが、毎年四月に開催される氏子総代
会の総会に出席して年間行事と予算を決定するほか、正月祭、節分祭、例大祭の執
行や運営費、寄附金の徴収等に当つている。
昭和三七年八月諏訪神社が境内を囲む三方道路に石垣を築造した際Bは当時の市
長、市議会議長、市振興会長等と共に多額の寄附をなし、中柱に「B」の氏名が刻
されている。また昭和四二年七月神楽殿の新築に際してもBは金二万円を寄附し寄
附者芳名碑にその氏名が刻されている。従つてBは諏訪神社の氏子関係においても
長老としてその知名度は高い。
(六) Bは昭和二六年四月に執行された立川市議会議員選挙に立候補し最高点で
当選し、同年五月一日から昭和三〇年四月三〇日まで同市議会議員であつたが、そ
の間都市計画審議会委員、総務委員会委員、財務委員会委員、警務委員会委員、経
済委員会委員、事業委員会副委員長として幅広く活躍している。
また昭和三二年一一月一八日から昭和三五年一一月一七日まで、同年一二月一九日
から昭和三八年一二月一八日までの両度に亘り六年間立川市固定資産評価審査委員
会委員を勤めたほか、昭和三九年三月三〇日から昭和四〇年三月三一日まで立川市
選挙管理委員会委員として公職を歴任し、その知名度の高いことは何人も否定でき
ないところである。
それ故(37)ないし(45)の投票がいずれもA候補に対する有効な投票である
とした原裁決の判断は公職選挙法(以下「公選法」という。)の適用を誤つたもの
であつて、到底認容することはできない。
Bは実在人であり、その氏名がBである以上は、これをBと記載することは誤字で
も脱字でもないのである。これら九票の投票をした選挙人らはいずれもBを意識し
Bに投票する意思をもつて投票したものと察せられる。
したがつて投票秘密主義の法制のもとにおいては投票した選挙人の意思を憶測して
被選挙人をきめることは許されないところである。
5 これら投票に記載された文字をみるのに(37)ないし(40)に記載された
「B」なる漢字は、達筆で明瞭に記載され、また(41)ないし(45)に記載さ
れた「C」「D」なる名の文字が、何ら遅疑するところなく自信をもつて明瞭に記
載されている、この点からみてもこれらの投票の選挙人らはBを熟知しており同人
の存在を意識して記載したものと思われる。
以上のごとく(37)ないし(45)の投票はBの投票を正確明瞭に記載したもの
であつて、同人は本件選挙の候補者でないからこれらの投票は無効である。
6 甲州屋と記載した投票について
本件別表Aの投票番号(46)には「甲州屋」、(47)には「甲州ヤ」と明瞭に
記載されている。裁決は、この二票はいずれもA候補の有効投票と認めた。その理
由とするところは、Bは有名人でないこと、A候補は甲州屋の名義をもつて選挙運
動をしたことのあること、またA候補以外には甲州屋という名称を用いて選挙した
者のいないことから甲州屋と記載された投票はA候補を意味するものと認めたので
ある (裁決一四頁終から六行目以下)。しかしながらA候補は甲州屋なる屋号を
有する者ではなく、この屋号は酒類販売業を営んでいるBの販売店の屋号であつ
て、A候補には関係ない。A候補は市会議員として市政に没頭していて酒類の販売
には関係していない。したがつて甲州屋といえばBのことであり、Bといえば甲州
屋のことである。両者は社会的には一身同体をなしている。
他面Bは裁決が説示しているように(同九頁終から四行目以下)その公職歴、職業
歴などからみても永年にわたり町や市のために貢献した功労者であり、著名人であ
ることが明らかである。
よつて甲州屋と記載された投票は、Bに投ぜられた投票であつて、当然無効であ
る。
7 結語
以上のごとく別表Aの投票番号(37)ないし(47)の投票はいずれも候補者で
ないBになされた投票であることが明らかであるから無効である。その結果A候補
の得票は原告の得票より少く、原告が当選人となり、A候補は落選人となるべきで
ある。
よつて原告は本件異議申立棄却の決定及び審査申立棄却の裁決の取消及びA候補の
当選無効の宣言を求める。
二 請求の原因に対する答弁及び被告の主張
1 請求の原因1の事実は認める。
2 同2の事実は否認する。
3 同3の事実は認める。ただし別表A(37)ないし(47)の各投票が無効投
票である旨の主張は争う。
4 同4の事実中
(一) は不知。ただし、山梨県人の間で周知されて著名である点は否認。
(二) はBが原告主張の会社を設立しその代表社員となつたこと。
を認め、その余は不知。なお、同業者の長老として知名度が高いとの点は否認。
(三) は不知。
知名度が高いとの点は否認。
(四) は不知。地元商店関係者の間ではその知名度は頗る高いとの点は否認。
(五) はBが諏訪神社の<地名略>の北町氏子総代であることを認め、知名度が
高いとの点を否認。
(六) は認める。ただし知名度が高いとの点は否認。
5 同5の主張は争う。
6 同6の事実中、裁決書の理由記載の中にその主張のとおり認定部分が存するこ
とを認め、その余は否認する。
7 別表A(37)ないし(45)の効力について
およそ「立候補者制を採る選挙制度の下においては、選挙人は候補者に投票する意
思をもつて投票に記載したものと推定すべきであるから、投票の記載が候補者の氏
名と一致しない投票であつても、その記載が候補者氏名の誤記と認められる限り
は、当該候補者に対する投票と認めるべきである。」(最高裁判所昭和三一年二月
三日第二小法廷判決民集一〇巻二号一九頁)。ところで、右各投票の記載が本件選
挙における他の候補者との比較において候補者Aの氏名との類似性が高いことにつ
いては、原告もこれを明かに争わないところ、本件においては、たまたま投票と同
一の氏名を有する者が立川市内に実在するため、この者との関係で右各投票の効力
が問題とされるわけであるが、かかる場合には前記選挙人の投票推定に関する実験
則が、候補者同志間のそのときよりも一層強力に働くに至ることは明らかであるか
ら、該投票にして明確に候補者外の実在人に投票する意思をもつて投票したとすべ
き特段の事情が認められない限り、これを無効投票とすべきではなく、当該候補者
に対する有効投票と認定されなければならない。しかるにA候補の父、Bの経歴
は、立川市議会議員をおよそ二十数年前の昭和二六年五月一日から同三〇年四月三
〇日までの一期つとめたことがあるほか、同市固定資産評価審査委員を昭和三二年
一一月一八日から同三五年一一月一七日まで、及び同年一二月一九日から同三八年
一二月一八日までの二期六年間、その後同市選挙管理委員会委員を昭和三九年三月
三〇日から同四〇年三月三一日まで一年間(なお、この一年間には選挙の執行は皆
無であつた。)つとめ、また立川駅南口で甲州屋(合名会社甲州屋、代表社員B)
という屋号で酒類販売を主とする店舗を構え営業中で、かつて同業組合の役員に就
任したことがあり、現在は立川市にある諏訪神社の一町会の選出にかかる氏子総代
をつとめているという程度に過ぎず、しかも前記立川市議会議員に当選したさいの
選挙を除き、公選法に基づくいかなる選挙にも立候補したことがない等を斟酌すれ
ば、選挙人が殊更同人を志向して投票する程の著名人と認め得ないから、右投票を
無効とすべき特別事情はなく、右各投票はA候補に対する有効票というほかない。
従つて、これを無効票とする原告の主張は失当である。
8 (46)(47)の投票の効力について
A候補は本件選挙の選挙運動にさいし、選挙運動用ポスター及び同葉書に「合名会
社甲州屋役員」と記載してこれを掲示頒布し、その上選挙公報にも氏名の横に「甲
州屋」と記載して選挙運動をしていたものであり、他方立候補者中にA候補を除き
かかる屋号を有したり、又は「甲州屋」という名称を使用して選挙運動をした立候
補者はいなかつたから、たとえ候補者外に「甲州屋」の屋号を有する者が存在し、
且つ、候補者がその屋号による事業の営業主ではないことを考慮しても、なお右二
票を「甲州屋」を使用して選挙運動をなした候補者の有効票と認めるのが相当であ
つて、かかる認定こそ前記(一)で述べた選挙人は立候補者中のいずれかに投票し
たものと推定すべきである旨の実験則にも合致する所以というべく、これに反する
原告の主張は原告独自の主張として排斥をまぬがれない。なお、「甲州屋」なる名
称の使用に関しては、選挙長に届出ることを要しないものである。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 原告が本件選挙に立候補した候補者であること、原告がその主張の経緯により
選挙会において落選人と決定されたこと、原告が右選挙の効力に関し立川市選挙管
理委員会に対し、その主張の日時に異議申出をなし、同委員会が原告主張の日時に
右異議申出を棄却する決定をしたこと、原告はさらにその主張の日に被告に対し右
決定を取り消し、原告を当選人とする旨の裁決を求め、被告が原告主張の日に右申
立を棄却したこと、右選挙における原告の有効得票数が一、一八六票であること、
最下位当選人とされたA候補の得票数一、一九二票中一一票は別表A(37)ない
し(47)に示されたとおりの記載内容を有し、これらを除くその余の一、一八一
票が同候補に対する有効な投票であること、A候補の父の氏名は「B」であり現存
しており、立川市<地名略>において酒屋を営む合名会社甲州屋を設立し、その代
表社員であり、その公職歴は原告主張のとおりであり、現に立川市諏訪神社の氏子
総代(<地名略>選出)をつとめていることは当事者間に争いがない。
二 1成立に争いのない乙第二号証によれば、本件選挙の候補者中には、「古屋」
の氏を称する者あるいは「E」と読む氏を称する者はA候補のほかになく、「博」
あるいは「C」の名を称する者としてはA候補のほかに、F、Gの両名があり、な
お「H」と読む名を有する者としてはIがあり、そのほかに「J」ではじまる名を
有する者はいなかつたことが認められ、これに反する証拠はない。
2 訴外Bの知名度につき、証拠によれば次の各事実を認めることができ、これに
反する証拠はない。
(一) Bが立川市議会議員に当選した昭和二五年の選挙における同人の得票順位
は第一位であり、得票数は六五〇票であつたが、その後は一度も公選法による選挙
に立候補したことがない。(成立に争いのない甲第一二号証の一、二、同乙第三号
証の五)
(二) Bが代表社員をしている合名会社甲州屋酒店は国鉄立川駅の南口(裏口)
から一〇〇メートル足らずの商店街に位置する通常の規模の商店である。(証人K
の証言、これにより、右商店の写真であると認められる甲第六、第七号証、立川市
の地図であると認められる同第八号証の一、二)
(三) Bは東京小売酒販組合、東京酒類商業協同組合、東京味噌醤油商業協同組
合の各立川支部組合員であり、昭和二〇年代に立川酒商組合副組合長に就任してい
る。
(原告本人尋問の結果、これにより真正に成立したと認められる甲第九号証の一、
二、成立に争いのない乙第三号証の四)
(四) Bは昭和二八年五月一日創立された立川商工会議所の会員であり、同会議
所の商業部会の酒類燃料関係分科会員である。(いずれもその体裁及び内容から立
川商工会議所の作成した名簿であると認められる甲第一〇、第一四号証の各一、
二)
(五) Bは昭和二八年四月から同二九年三月まで及び昭和三一年四月から同三二
年三月までの二回に亘り「立川南口すずらん通り商友会」総代を勤め、昭和三九年
四月から同四一年三月までの二年間は「立川南口すずらん通り商店振興組合理事を
つとめた。
(成立に争いのない乙第三号証の四)
(六) 立川市の著名な神社である諏訪神社の境内の碑に同社神楽殿新築のさいB
が金三万円を寄附したことが他の多数人の名にまじつて刻まれており、また道路に
面し、同社の周囲にめぐらされた石柱の一本にBの名が刻まれている。人名を刻し
た石柱には、大中小三種あり、Bの分は中位の大きさで、一七九本のうちの一本で
ある。(成立に争いのない甲第一ないし第三号証の各一、二、第四号証、原告本人
尋問の結果、これにより立川市の地図であると認められる同第五号証の一、二)
(七) 諏訪神社の氏子総代は全部で四九人あり、Bは同市<地名略>の北町会
(世帯数二四一)を代表してその一人となつている。(証人Kの証言、これにより
真正に成立したと認められる甲第一三、第一五号証)
(八) Bは山梨県出身であり、戦前立川市山梨県人会の結成につくし、同県人会
内部では比較的知名度が高い。(証人Kの証言、これにより真正に成立したと認め
られる甲第一一号証の一、二、第一八号証)
三 さて、以上の事実関係を前提として別表A(37)から同(45)までの投票
の効力について検討する。
まず、これらの投票は「B」、「L」、「M」、「N」あるいは「O」と記載され
ているので、本件選挙の候補者でないBに向けられた票であるか否かが問題となる
が、選挙人は候補者に投票する意思をもつて投票に記載したと推定すべきものであ
るから、投票に記載された氏名と同じ氏名をもつ者が同一選挙区内に実在する場合
でも、投票の記載がその実在人を指向するものと認められるためには、その者が地
方的に著名であるなどその記載が特に当該実在人を表示したと推認すべき特段の事
情があることを要する(最高裁判所昭和三一年二月三日第二小法廷判決民集一〇巻
二号一九頁、同三二年三月五日第三小法廷判決民集一一巻三号四二九頁、同三三年
四月八日第三小法廷判決民集一二巻五号七〇一頁、同四〇年二月九日第三小法廷判
決民集一九巻一号一三六頁参照)ところ、Bは判示の公職歴を有し、また酒類販売
業を営み、諏訪神社の氏子総代を務め、さらに立川市山梨県人会の主要なメンバー
であるなど公私に亘つて種々の活動をして来た結果、立川市内等の限られた範囲で
ある程度の知名度を有することをうかがうことはできるが、一方同人はA候補の先
代として既に活動の最盛期を終えているものと推認され、また立川市が東京のいわ
ゆるベツドタウンとして近年著しい発展を遂げ、他地方よりの流入者の割合の高い
地域である(この点は公知の事実である。)ことを斟酌するときは、前認定の事実
関係からBが前記特段の事情とするに足りるほどの高い知名度を有するとは認めが
たいといわざるをえず、従つて右各投票は候補者でないBに向けられたものとする
ことはできない。一方本件選挙の候補者中には右各投票の記載と完全に一致する氏
名の者はなく、右各記載と最も高い類似性を有する氏名の候補者がA候補であるこ
とはいうまでもなく、かつその間の相違も僅少であつて、右各投票の記載はA候補
の氏名を誤記したものと認めるになんら妨げがない。
それ故右(37)ないし(45)の各投票はいずれもA候補に対する有効投票であ
るといわねばならない。
四 当事者間に争いのないA候補の有効得票数一、一八一票に右A(37)ないし
(45)の九票を加算すると一、一九〇票であり、それだけで原告の得票数一、一
八六票を上廻ることは明らかであるから、別表A(46)、(47)の二票(「甲
州屋」あるいは「甲州ヤ」と記載された票)がA候補に対する有効な投票であるか
否かについての判断は省略することとする。
五 原告は立川市選挙管理委員会のなした原告の異議申出に対する却下決定の取消
をも求めているが、公選法第二〇七条、第二〇六条に照らすと、異議申出に対する
決定及び審査申立に対する裁決を順次経由した場合、その結果に不服のある者は、
決定が裁決によつて取り消されているときはもちろん、決定が裁決によつて維持さ
れているときでも、裁決のみの取消を求めで出訴しうるが、決定の取消を求めて出
訴することは許されていないと解すべきであつて、原告の右取消の訴は不適法とい
うほかはない。
六 以上の説示で明らかなとおり、立川市選挙管理委員会の決定の取消を求める訴
はこれを却下すべく、またA候補を当選人として、原告を落選人とした被告の裁決
はいずれも正当であつて原告の本件請求は理由がないからこれを棄却することと
し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 安藤 覺 石川義夫 柴田保幸)
別表(省略)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛