弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 各被告人及び被告人両名の弁護人梅田林平、同梅田晴亮の各上告趣意は末尾に添
えた別紙記載のとおりである。
 職権をもつて調査するに、第一審判決は、被告人両名に対する本件道路交通取締
法違反教唆の公訴事実につき、これを認めるに十分な証拠がないとして被告人両名
に無罪を言い渡したところ、検察官は同判決は事実を誤認したものとして控訴を申
し立てた。ところが、原審は公判期日において検察官の控訴趣意書のとおりの陳述
と、弁護人の控訴は理由がない旨の陳述をきいただけで、自ら事実の取調をするこ
となく審理を終結し、訴訟記録と第一審で取り調べた証拠だけで第一審判決を破棄
して原判示の道路交通取締法違反教唆の犯罪事実を認定した上、被告人両名をそれ
ぞれ罰金千円に処する判決を言い渡したのである。しかし、原審のかかる措置は、
刑訴四〇〇条但書の許さないところであること、当裁判所大法廷判決(昭和二七年
(あ)第五八七七号同三一年九月二六日判決、昭和二六年(あ)第二四三六号同三
一年七月一八日判決)の趣旨に徴し明らかであるから、原判決は違法であり、この
違法は判決に影響を及ぼすべく、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合
に当ると解すべきである。
 よつて、上告論旨について判断することを省略し、刑訴四一一条一号、四一三条
本文に従い、原判決を破棄し、本件を原裁判所に差し戻すべきものとし、裁判官垂
水克己の意見を除く他の裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。
 裁判官垂水克己の少数意見は次のとおりである。
 原判決は論旨引用の判例に違反するから所論は上告論旨として適法ではあるが、
しかし私はこの判例及び本判決の多数意見には賛成できない。原審手続に違法はな
く本件上告は棄却すべきものである。
 論旨引用の昭和三一年七月一八日大法廷判決は、その第一審判決が公訴にかかる
犯罪事実を確定せず罪責なしとしたのに対し検察官控訴により事件が控訴審に係属
した場合においても「被告人は憲法三一条、三七条の保障する権利は有しており、
その審判は第一審の場合と同様の公判廷における直接審理主義、口頭弁論主義の原
則の適用を受けるものといわなければならない。従つて被告人は公開の法廷におい
て、その面前で、適法な証拠調の手続が行われ、被告人がこれに対する意見弁解を
述べる機会を与えられた上でなければ犯罪事実を確定され有罪の判決を言渡される
ことのない権利を保有するものといわなければならない。」と憲法を持ち出すが、
右憲法両条からは上訴審においても被告人がかような権利を有するものとされなけ
ればならない理由は出て来ない。
 現行法の控訴審は事後審査審であつて、控訴裁判所は公判廷で検察官と弁護人と
の弁論を聴いた以上、訴訟記録及び第一審で証拠とすることができた証拠(刑訴三
九四条)のみにより自ら格段の事実の取調をしないでいかなる実体裁判でもできる、
すなわち第一審の有罪判決を維持しあるいは無罪判決を破棄して有罪判決をするこ
とができるのである。被告人本人に公判廷への出頭を命ずるか否か、また、自ら事
実の取調をするか否かは、事件の模様による控訴裁判所の判断に任かされ、これを
しないで一審の犯罪の証明なしとする無罪判決を二審有罪に変更する裁判をするこ
とを違法とする特別規定は刑訴法存上しない。この点については従前の(昭和二六
年(あ)二四三六号同三一年七月一八日大法廷判決までの)当裁判所の判例が縷々
判示して来たことが正しいのである。詳細については昭和三一年(あ)三一八五号
同三三年二月一一日第三小法廷判決、昭和三一年(あ)一八二九号同三三年四月二
二日第三小法廷判決における私の少数意見を引用する。
 なお、昭和三三年五月一日宣告第一小法廷判決(集一二巻七号一二四三頁)は、
第一審判決が詐欺の意思を除く事実はすべて認められると判示しながら無罪を言渡
したような場合には、控訴審で被告人を公判廷で公訴事実等につき質問し、その検
察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠に
つき直接取調をしなくとも右調書を証拠として控訴審が有罪判決をするについては
控訴審における事実の取調として充分であると判示する。この判例は一審無罪を有
罪とする検察官控訴の場合における控訴審の取調の限度を示した点において、また、
事件の模様から取調の法律上の限度が定まることを示した点で前記大法廷判決以後
の判例より一歩進んでいる。
 検察官 高橋一郎公判出席
  昭和三四年六月一六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛