弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主     文
1 原判決中,上告人が被上告人に対し平成9年9月19日付けでした公文書一部
非公開決定のうち第1審判決別紙目録3の番号1,7,10,13,23,28,
39及び43並
びに同目録4の番号3,6,7,14,15,17,18,20,23,25,3
8及び43の記載部分を非公開とした部分に関する部分を破棄する。
2 上記部分について,第1審判決を取り消し,被上告人の請求を棄却する。
3 上告人のその余の上告を棄却する。
4 訴訟の総費用は,これを10分し,その7を上告人の負担とし,その余を被上
告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人崎間昌一郎の上告受理申立て理由第一について
 1 本件は,被上告人が,京都市公文書の公開に関する条例(平成3年京都市条
例第12号。平成12年京都市条例第41号による改正前のもの。以下「本件条例」
という。)に基づき,上告人に対し,平成6年度及び同7年度の飲食を伴う接遇に
関する京都市(以下「市」という。)の清掃局分の経費支出決定書(以下「本件各
文書」という。)の公開を請求したところ,平成9年9月19日付けで一部非公開
決定(以下「本件処分」という。)がされたので,その一部取消しを求める事案で
ある。
 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 本件条例8条は,「実施機関は,次の各号の一に該当する情報が記録され
ている公文書については,公文書の公開をしないことができる。」と定め,その1
号において,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。
)で,個人が識別され,又は識別され得るもののうち,公開しないことが正当であ
ると認められるもの」と規定している。
 (2) 本件各文書には,接遇の相手方の氏名,肩書等が記載されている。接遇の
内容等は,次のとおりである。
 ア 本件文書1
 第1審判決目録(以下「目録」という。)3の番号1,7,13,23,28及
び39並びに目録4の番号3,7,14,15,18,20,25及び43の文書
(以下,これらの文書をまとめて「本件文書1」という。)は,既存又は計画中の
埋立処分地,清掃工場,清掃事務所等に関して,清掃局の職員が地元関係者と行っ
た会合の経費支出決定書である。これらの会合は,上記施設等の稼働又は建設計画
に関して地元関係者と内密に個別折衝するために開催されたものであり,会合の相
手方出席者は,地元住民,地元諸団体の役員等である。
 イ 本件文書2
 目録3の番号10及び43並びに目録4の番号6,17,23及び38の文書(
以下,これらの文書をまとめて「本件文書2」という。)は,計画中の埋立処分地
の造成,既存の清掃工場の建替え又は運営,空き瓶の収集等に関して,清掃局の職
員が地元関係者と行った会合等の経費支出決定書である。これらの会合は,清掃事
業推進のため,上記施設等の稼働又は建設計画等に関して地元関係者の理解を得る
ために開催されたものであり,会合を開催したことは,地元住民にも明らかにして
いる。会合の相手方出席者は,地区の対策委員会,自治会,保健協議会,PTA等
の関係者である。
 ウ 本件文書3
 目録3の番号5,12,19,33,34,38及び40並びに目録4の番号1
1,24,30及び40の文書(以下,これらをまとめて「本件文書3」という。)
は,清掃事業等に関して学識経験者に調査研究,講演等を依頼し,その結果報告等
を受けたり,技術指導を受けたりするために開催された会合の経費支出決定書であ
る。会合の相手方出席者は,学識経験者である。
 エ 本件文書4
 目録3の番号3,14,24及び42並びに目録4の番号16,26及び33の
文書(以下,これらをまとめて「本件文書4」という。)は,清掃工場の各種機器
の性能検査等に関して,市を訪れた関係者と各種機器の内容,状態等について協議
を行った際の経費支出決定書である。会合の相手方出席者は,市を訪問した清掃事
業に関係する団体の職員である。
 オ 本件文書5
 目録3の番号6,8及び31並びに目録4の番号9,10,27,29,35,
47及び49の文書(以下,これらをまとめて「本件文書5」という。)は,市の
清掃事業等について関係団体の職員,他の地方公共団体の職員,関係業者等と協議
を行った際の経費支出決定書である。
 カ 本件文書6
 目録3の番号41及び目録4の番号37の文書(以下,これらをまとめて「本件
文書6」という。)は,市の環境美化事業の調査等のために市を訪問した他の地方
公共団体の職員又は関係団体の職員と情報交換,協議を行った際の経費支出決定書
である。
 (3) 上告人は,本件文書1ないし6に記録されている情報については本件条例
8条1号所定の非公開情報に該当し,本件文書1及び2に記録されている情報につ
いては同条7号所定の非公開情報にも該当すること等を理由として,本件各文書中
の目録1及び2の「非公開部分」に対応する部分を非公開とする本件処分をした。
被上告人は,本件訴訟において,本件処分のうち本件各文書中の目録3及び4の「
非公開部分」に対応する部分の取消しを求めている。
 3 原審は,次のとおり判断して,本件処分のうち本件文書1ないし6中の目録
3及び4の「非公開部分」に対応する部分を非公開とした部分を取り消すべきであ
るとした。
 (1) 本件文書1ないし6に記録されている情報は,本件条例8条1号所定の非
公開情報に該当しない。
 (2) 本件文書1及び2に記録されている情報は,同条7号所定の非公開情報に
も該当しない。
 4 しかしながら,原審の上記判断(1)のうち,本件文書3ないし6に記録され
ている情報が本件条例8条1号所定の非公開情報に該当しないとした部分は是認す
ることができるが,本件文書1及び2に記録されている情報が同号所定の非公開情
報に該当しないとした部分は是認することができない。その理由は,次のとおりで
ある。
 (1) 本件文書1について
 【要旨1】本件文書1に記録されている情報は,地元住民,地元諸団体の役員等
が清掃局の開催した会合に出席したことに関する情報であることが原審において確
定されており,これらの者の社会的活動にかかわる情報であって,氏名,肩書等に
より特定の個人が識別され,又は識別され得るものである。そして,本件条例8条
1号は,個人識別情報のうち公開しないことが正当である私事に関する情報が記録
されている文書を公開しないこととしているものであるところ,前記事実関係等に
よれば,上記会合は,既存又は計画中の埋立処分地,清掃工場,清掃事務所等の稼
働又は建設計画に関して地元関係者と内密に個別折衝するために開催されたという
のであるから,これらの者の上記会合への出席に関する情報は,個人識別情報のう
ち公開しないことが正当である私事に関する情報に当たるというべきである。そう
すると,本件文書1に記録されている情報は,同号所定の非公開情報に該当する。
 (2) 本件文書2について
 【要旨1】本件文書2に記録されている情報は,地区の対策委員会,自治会,保
健協議会,PTA等の関係者が清掃局の開催した会合に出席したことに関する情報
であることが原審において確定されており,これらの者の社会的活動にかかわる情
報であって,氏名,肩書等により特定の個人が識別され,又は識別され得るもので
ある。そして,前記事実関係等によれば,上記会合は,計画中の埋立処分地の造成
,既存の清掃工場の建替え又は運営,空き瓶の収集等の事業推進について,地元関
係者の理解を得るために開催されたというのであるから,これらの者の上記会合へ
の出席に関する情報は,個人識別情報のうち公開しないことが正当である私事に関
する情報に当たるというべきである。そうすると,本件文書2に記録されている情
報は,本件条例8条1号所定の非公開情報に該当する。
 (3) 本件文書3について
 【要旨2】本件文書3に記録されている情報は,氏名,肩書等により特定の個人
が識別され,又は識別され得るものである。しかしながら,前記事実関係等によれ
ば,本件文書3に係る会合は,清掃事業等に関する調査研究,講演等を依頼した学
識経験者から結果報告を受けたり,技術指導を受けたりするために開催されたとい
うのであるから,学識経験者の上記会合への出席に関する情報は,公開によりその
者の職業ないし職務上の地位が判明することを考慮しても,個人識別情報のうち公
開しないことが正当である私事に関する情報に当たるということはできない。そう
すると,本件文書3に記録されている情報は,本件条例8条1号所定の非公開情報
に該当しないというべきである。
 (4) 本件文書4について
 【要旨3】本件文書4に記録されている情報は,氏名,肩書等により特定の個人
が識別され,又は識別され得るものである。しかしながら,前記事実関係等によれ
ば,本件文書4に係る会合は,清掃事業に関係する団体の職員が清掃工場の各種機
器の性能検査等を実施した際に,各種機器の内容,状態等について協議するために
開催されたというのであるから,上記職員の上記会合への出席に関する情報は,公
開によりその者の職業ないし職務上の地位が判明することを考慮しても,個人識別
情報のうち公開しないことが正当である私事に関する情報に当たるということはで
きない。そうすると,本件文書4に記録されている情報は,本件条例8条1号所定
の非公開情報に該当しないというべきである。
 (5) 本件文書5について
 【要旨3】本件文書5に記録されている情報は,氏名,肩書等により特定の個人
が識別され,又は識別され得るものである。しかしながら,前記事実関係等によれ
ば,本件文書5に係る会合は,市の清掃事業等について関係団体の職員,他の地方
公共団体の職員,関係業者等と協議するために開催されたというのであるから,こ
れらの者の上記会合への出席に関する情報は,公開によりその者の職業ないし職務
上の地位が判明することを考慮しても,個人識別情報のうち公開しないことが正当
である私事に関する情報に当たるということはできない。そうすると,本件文書5
に記録されている情報は,本件条例8条1号所定の非公開情報に該当しないという
べきである。
 (6) 本件文書6について
 【要旨3】本件文書6に記録されている情報は,氏名,肩書等により特定の個人
が識別され,又は識別され得るものである。しかしながら,前記事実関係等によれ
ば,本件文書6に係る会合は,市の環境美化事業の調査等のために市を訪問した他
の地方公共団体の職員又は関係団体の職員と情報交換及び協議を行うために開催さ
れたというのであるから,これらの者の上記会合への出席に関する情報は,公開に
よりその者の職業ないし職務上の地位が判明することを考慮しても,個人識別情報
のうち公開しないことが正当である私事に関する情報に当たるということはできな
い。そうすると,本件文書6に記録されている情報は,本件条例8条1号所定の非
公開情報に該当しないというべきである。
 5 以上によれば,原審の前記判断中,本件文書1及び2に記録されている情報
が本件条例8条1号所定の非公開情報に該当しないとした部分には,判決に影響を
及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点に関する論旨は理由があり,原判
決中上記判断に係る部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば
,本件処分のうち本件文書1及び2中の部分を非公開とした部分に違法はないから
,上記部分については,第1審判決を取り消して被上告人の請求を棄却するのが相
当であるが,本件処分のうち本件文書3ないし6中の部分を非公開とした部分の取
消請求に係る上告は棄却すべきである。
 なお,その余の上告については,上告受理申立ての理由が上告受理の決定におい
て排除されたので,棄却することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 梶谷 玄 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 滝井
繁男)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛