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平成26年9月25日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成25年(ワ)第5600号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成26年7月15日
判決
原告株式会社松井製作所
同訴訟代理人弁護士畑郁夫
同平野惠稔
同訴訟復代理人弁護士森本祐介
同訴訟代理人弁理士河野登夫
同河野英仁
同野口富弘
被告株式会社カワタ
同訴訟代理人弁護士室谷和彦
同面谷和範
同補佐人弁理士鈴江正二
同木村俊之
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
(1)被告は,別紙イ号製品目録記載の製品を生産し,譲渡し又は譲渡の申出を
してはならない。
(2)被告は,別紙ロ号製品目録記載の製品を生産し,譲渡し又は譲渡の申出を
してはならない。
(3)被告は,別紙イ号製品目録記載の製品及びこれらの半製品を廃棄せよ。
(4)被告は,別紙ロ号製品目録記載の製品及びこれらの半製品を廃棄せよ。
(5)被告は,原告に対し,8432万円及びこれに対する平成25年4月1日
から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(6)訴訟費用は被告の負担とする。
(7)仮執行宣言
2被告
主文同旨
第2事案の概要
1前提事実(当事者間に争いがない。)
(1)当事者
原告は,化学,製薬,製紙,食品,繊維工業用諸機械の製造及び販売並び
にこれらに附帯する工事の施工等を目的とする会社である。
被告は,合成樹脂加工機械の設計,製作及び販売並びに機械器具設置工事
の設計及び施工等を目的とする会社である。
(2)原告の有する特許権
原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,請求項1に係る発明を「本
件特許発明1」,請求項2に係る発明を「本件特許発明2」といい,両者を併
せて「本件各特許発明」という。また,本件特許出願に係る明細書を「本件
明細書」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する。
登録番号第3767993号
発明の名称粉粒体の混合及び微粉除去方法並びにその装置
出願年月日平成10年1月17日
登録年月日平成18年2月10日
特許請求の範囲
【請求項1】
流動ホッパーと一時貯留ホッパーとの間に縦向き管と横向き管からなる供
給管を設け,前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,
材料供給源からの材料を吸引空気源の気力により前記供給管を介して流動
ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,その混合済み材料を前記一時貯
留ホッパー内へ落下するようにする操作を繰り返しながら行なう粉粒体の混
合及び微粉除去方法において,
流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引輸送し
た混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下する際に,前
記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の
近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始するようにすることを特
徴とする粉粒体の混合及び微粉除去方法。
【請求項2】
排気口にガス導管を介して吸引空気源を接続した流動ホッパーと,該流動
ホッパーの出入口と縦方向に連通した縦向き管と,この縦向き管に横方向に
連通され材料供給源からの材料が供給される横向き管とからなる供給管と,
該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,
前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,
前記供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線
より上方位置に,前記吸引空気源を停止する前に混合された混合済み材料の
充填レベルを,該吸引空気源を停止している場合に検出するためのレベル計
を設けてなることを特徴とする粉粒体の混合及び微粉除去装置。
(3)構成要件の分説
本件各特許発明は,以下のとおり,分説することができる。
ア本件特許発明1
1A-1流動ホッパーと一時貯留ホッパーとの間に縦向き管と横向き管
からなる供給管を設け,
1A-2前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,
材料供給源からの材料を吸引空気源の気力により前記供給管を介して流
動ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,
1A-3その混合済み材料を前記一時貯留ホッパー内へ落下するように
する操作を繰り返しながら行なう粉粒体の混合及び微粉除去方法におい
て,
1B流動ホッパーへの材料の吸引輸送は,吸引輸送の停止中に前回吸引
輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留ホッパーへと降下す
る際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における最
下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降下する前に開始する
ようにすることを特徴とする
1C粉粒体の混合及び微粉除去方法。
イ本件特許発明2
2A排気口にガス導管を介して吸引空気源を接続した流動ホッパーと,
2B-1該流動ホッパーの出入口と縦方向に連通した縦向き管と,
2B-2この縦向き管に横方向に連通され材料供給源からの材料が供
給される横向き管とからなる供給管と,
2C該供給管に接続された一時貯留ホッパーとからなり,
2D前記流動ホッパーの出入口は,前記供給管のみと連通してあり,
2E前記供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位置または
該延長線より上方位置に,前記吸引空気源を停止する前に混合された混
合済み材料の充填レベルを,該吸引空気源を停止している場合に検出す
るためのレベル計を設けてなることを特徴とする
2F粉粒体の混合及び微粉除去装置。
(4)被告の行為
被告は,平成23年8月から平成25年3月まで,別紙イ号製品目録記載
の流動ホッパー(以下「イ号製品」という。)を,業として,生産し,譲渡し,
譲渡の申出をした。
被告が,イ号製品に別の装置を組み合わせた別紙ロ号製品目録記載の製品
(以下「ロ号製品」という。)を,業として,生産し,譲渡し,譲渡の申出を
しているかについては,当事者間に争いがある。
2原告の請求
原告は,被告に対し,以下の請求をしている。
(1)本件特許権に基づき,イ号製品の生産,譲渡又は譲渡の申出の差止請求
(2)本件特許権に基づき,ロ号製品の生産,譲渡又は譲渡の申出の差止請求
(3)本件特許権に基づき,イ号製品及びロ号製品並びにこれらの半製品の廃棄
請求
(4)不法行為による損害賠償請求権に基づき,8432万円(イ号製品販売に
よる損害)及びこれに対する不法行為の後である平成25年4月1日から支
払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払請求
3争点
(1)イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか(争点1)
(2)イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対す
る特許法101条4号の間接侵害が成立するか(争点2)
(3)ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか(争点3)
(4)ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対す
る特許法101条4号の間接侵害が成立するか(争点4)
(5)損害額(争点5)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について
【原告の主張】
以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足する。
(1)イ号製品の構成
イ号製品の構成は,別紙イ号製品説明書(原告主張)記載1,3及び4の
とおりである。
(2)構成要件2Aから2Dまで
イ号製品の構成aは構成要件2Aに,構成b-1は構成要件2B-1に,
構成b-2は構成要件2B-2に,構成cは構成要件2Cに,構成dは構成
要件2Dに,それぞれ相当し,イ号製品は,構成要件2Aから2Dまでを充
足する。
(3)構成要件2E
以下のとおり,イ号製品の構成eは構成要件2Eに相当し,イ号製品は,
構成要件2Eを充足する。
ア「横向き管における最下面の延長線」
「横向き管における最下面の」との記載は,その直後の「延長線」を修
飾する。本件明細書において,【図1】及びこれを説明する【0030】
では,横向き管を上下平行な2つの線で表した場合に,下側の線(横向き
管内面の最下母線)に符号が付され,符号で示す線全体が「最下面」であ
ることが明記されており,「最下面」とは,横向き管全体の中で最も下の
面全体を意味する。したがって,「横向き管における最下面の延長線」と
は,横向き管の最下面という面全体をそのまま延長した線を意味すると解
される。
横向き管とは縦向き管に対して任意の角度で交差する管であり(【00
12】),縦向き管に対して横向き管を上方から下方に向けて下り勾配に
設けた場合には,横向き管の最下面も上方から下方に向けて下り勾配とな
り,最下面の延長線も上方から下方に向けて下り勾配となると解される。
イ「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」(レベル計の位置)
本件明細書では,レベル計の位置について,延長線より上方位置に設け
た場合(【0031】)と延長線近くに設けた場合(【0032】)が,並列
されて記載されている。「レベル計を延長線近くに設けた場合」(【003
2】)にいう「近く」とは,延長線の上方のみならず下方を含む「延長線
の付近」を意味すると解釈できる。「近傍」には,一般に,「近所,近辺」
という意味があり,「レベル計は延長線より近傍又は上方の位置に設けて
いる」(【0033】)にいう「延長線より近傍」は,延長線の下方を含む。
このように,【0031】から【0033】の記載によれば,レベル計
は,延長線の「上方」と,延長線の「近傍」(延長線の下方を含む。)のい
ずれかに設置されていればよい。レベル計の設置位置が,延長線よりも下
方位置であることが許容される旨も明示され,延長線とレベル計との間に
「少しばかり」の空間ができることが予定されている(【0049】)。
ホッパーの具体的な構成によって,横向き管の最下面の延長線からどの
範囲までを「近傍」と評価できるかが異なるため,「近傍」の内容は定量的
に特定されていないが,当業者であれば,本件各特許発明の作用効果や当
該製品の具体的構成を踏まえて,「近傍」の範囲を理解することができる。
したがって,「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長
線より上方位置」については,「最下面の延長線の近傍位置」と「延長線よ
り上方位置」という2つの位置が並列されており,「近傍位置」は延長線よ
りも下方であってもよいと解釈でき,レベル計は,延長線の下側を含む近
傍位置(近傍の最下点以上)に設置されていればよいと解され,充填され
た既混合の材料によって,未混合の材料が一時貯留ホッパーに落下するこ
とが阻止されるという効果を奏する限り,構成要件2Eを充足する。
ウイ号製品へのあてはめ
(ア)イ号製品では,横向き管は,縦向き管に対して上方から下方に向けて
下り勾配に設けられており,横向き管の最下面も上方から下方に向けて
下り勾配となるから,横向き管の最下面の延長線も上方から下方に向け
て下り勾配となる。
また,イ号製品のようなホッパーにおいては,レベル計の下部に蓄積
する材料の量を調整するなどの目的で,ユーザがレベル計の位置を上下
させることが予定されている。イ号製品は,レベル計の上下方向の位置
を,縦向き管を兼用する延伸部(透明管部)の範囲で任意に設定できる
構成としており,レベル計を延伸部の最上部,すなわち,レベル計を固
定したブラケットの上面を上側のフランジの下面に当接させた位置に設
定することができる。
(イ)甲第8号証及び甲第9号証の実験によると,イ号製品のレベル計の位
置を「最下面の延長線の近傍」に設けた場合でも,未混合の材料が一時
貯留ホッパーに落下することを阻止するという本件各特許発明の効果を
奏することが確認できる。
(ウ)したがって,イ号製品のレベル計は,「横向き管における最下面の延長
線の近傍位置」に設けられているといえる。
(4)構成要件2F
イ号製品の構成fは構成要件2Fに相当し,イ号製品は,構成要件2Fを
充足する。
【被告の主張】
以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2E及び2Fを充足
しない。
(1)イ号製品の構成
イ号製品の構成は,別紙イ号製品説明書(被告主張)記載1及び3のとお
りである。
(2)構成要件2Aから2Dまで
イ号製品が構成要件2Aから2Dまでを充足することは認める。
(3)構成要件2E
「混合」とは,複数の材料供給源から供給された複数の材料を流動ホッパー
において混ぜ合わせることを意味し,単一材料を混ぜ合わせる場合は「混合」
に該当しない。したがって,ホッパー装置であるイ号製品のみでは,「混合」
を行わない。
また,以下のとおり,レベル計が,「横向き管における最下面の延長線の近
傍位置または該延長線より上方位置」に設けられているとはいえない。
ア「横向き管における最下面の延長線」
本件明細書には,横向き管が水平の場合しか記載されておらず,「最下面」
や「最下面の延長線」の定義が記載されていないから,「面」の「延長線」
の始点,方向を特定できない。供給管が円筒の場合,その断面は円であり,
「最下面」は存在しない。横向き管が下方に傾斜している場合,縦向き管
への出口の下端が「最下点」であるが,それ以外の部分は「最下」とはい
えず,「最下面」は存在しない。
本件明細書では,従来の技術の課題が,横向き管の出口とレベル計との
間に空間ができることにあると説明され,本件各特許発明の技術思想は,
上記の課題を解消すべく,延長線より下方を混合済み材料で充填すること
により,輸送材料の一時貯留ホッパーへの落下を阻止する,というもので
ある。充填レベルの検知位置を延長線よりも下方とした場合,延長線より
も下方が満杯の状態とはならず,空間が生じてしまい,未混合材料の一時
貯留ホッパーへの落下を防止できないから,必然的に,「延長線」が充填レ
ベルを検知する位置の最下限となる。
構成要件2Eは,充填レベルが降下していくことを前提に,充填レベル
の検知位置ないしレベル計の設置位置と「延長線」との上下の位置関係に
よって,発明を特定している。混合済み材料の充填レベルは略水平に降下
し,レベル計も,縦向き管の側面に設置され,略水平に降下してくる充填
レベルを検出するため,延長線が水平方向で規定されなければ,上下関係
の特定はできない。本件明細書において挙げられた複数の実施例では,い
ずれも,横向き管出口の下端から水平に引かれた線が延長線であると説明
されており,それ以外の態様については記載されていない。また,前記の
技術思想によれば,輸送材料の一時貯留ホッパーへの落下を阻止するため,
延長線と充填レベルとの間に空間が生じないように,延長線より下方が混
合済み材料で充填される必要がある。構成要件2Eの記載との整合性,本
件明細書に記載された技術思想との整合性を考慮すると,「横向き管におけ
る最下面の延長線」は,縦向き管への出口の下端(横向き管の最下点)か
ら水平に引かれた線を意味すると解される。
イ「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」(レベル計の位置)
「近傍」とは,「近所,近辺」,「近いところ,付近」という意味であり,
「距離が近いこと」を意味する,距離や位置の概念である。
作用(【0016】~【0018】)や発明の実施の形態(【0030】~
【0033】,【0040】,【0045】)の説明によれば,構成要件2Eは,
レベル計を,①延長線の線上(別紙「延長線とレベル計との位置関係図」
(以下「本件位置関係図」という。)の(b)の位置であり,「近傍位置」に
相当する。)に設ける場合と,②延長線より上方位置(本件位置関係図の
(a)の位置であり,「延長線より上方位置」に相当する。)に設ける場合を
原則的な形態として,特定したものである。
本件位置関係図の(c)の位置にレベル計を設置した場合,充填レベルの
検知位置が延長線と同レベルとなり,延長線よりも下方が満杯の状態とな
るから,本件各特許発明の技術思想が実現される。また,「延長線の線上に
設けられている場合」(【0018】)に該当し,「延長線よりも上方に設け
られたレベル計」(【0017】)という表現にも含まれると考えられ,近傍
位置に含まれる。
本件位置関係図の(d)の位置にレベル計を設置した場合,通常,充填レ
ベルの検知位置が延長線よりも下方になってしまうため,本件各特許発明
の技術思想が実現されたとはいい難い。近傍位置が延長線より少しばかり
下方位置であってもよい旨の記載(【0049】)は,「その他の変形例」に
関する説明であり,本件各特許発明に関する説明ではない。仮にこの記載
が請求項2について説明したものであったとしても,その文言からみて,
例外的な場合を説明したものであり,前記の技術思想によれば,充填レベ
ルの検知位置が延長線よりも下になってもよいということにはならない。
レベル計は,一定の大きさを有し,上下方向に一定の長さがあるから,感
度の設定によっては,レベル計における充填レベルの検知位置を,レベル
計の検知面の上端に設定することも可能であり,その場合,充填レベルの
検知位置が延長線よりも上方に位置しても,レベル計自体は,延長線より
も少しばかり下方位置になり得る。本件明細書のほかの記載との整合性を
考慮すると,充填レベルの検知位置が延長線よりも上方でありながら,レ
ベル計の設置位置が「少しばかり下方位置であってもよい」とは,充填レ
ベルの検知位置を延長線上とすることが可能な範囲で延長線よりも下方位
置(本件位置関係図の(d)までの範囲)になってもよいという意味である
と解される。
これに対し,延長線と接することなく,延長線とレベル計との間に空間
が生じる位置(本件位置関係図の(e)の位置)にレベル計を設置した場合,
充填レベルの検知位置が延長線よりも下方になるため,本件各特許発明の
技術思想が実現されず,「少しばかり下方位置」ともいえないから,「近傍
位置」には当たらない。
このように解すると,レベル計が延長線と物理的に接しているか否かで
侵害の成否を判断すればよいので,判断基準も明確となり,最低限度の予
測可能性を確保することができる。
ウイ号製品へのあてはめ
(ア)イ号製品のレベル計は,延長線(横向き管出口の下端から引いた水平
線)と検知面の上端との間隔が56.5mm,延長線と検知面の中央との間
隔が73.5mmとなる位置に設けられている。また,イ号製品のレベル
計の高さを変更できることを考慮して,レベル計を最も高い位置に変更
したとしても,延長線(横向き管出口の下端から引いた水平線)とレベ
ル計の検出面の上端とは28.2mmの間隔があり,レベル計は延長線と
接していない。したがって,イ号製品は,構成要件2Eを充足しない。
(イ)甲第8号証の実験では,装置の改変や誤解を招く動画の編集がなされ
ている。
甲第9号証の実験では,新たな材料が,延長線より下に落下した後,
流動ホッパーへ吸い上げられており,本件各特許発明の技術思想が実現
されていない。また,実験に用いられた装置は,レベル計が延伸部の上
端に設置されており,イ号製品とは異なる。
(4)構成要件2F
イ号製品のみでは,「混合」を行わない。
2争点2(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権
に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか)について
【原告の主張】
以下のとおり,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る
特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立する。
(1)イ号製品の動作
イ号製品の構成及び動作は,別紙イ号製品説明書(原告主張)記載1から
4までのとおりである。
(2)構成要件充足性
イ号製品の構成b及びcは構成要件1A-1に,イ号製品の動作gは構成
要件1A-2に,動作hは構成要件1A-3に,動作iは構成要件1Bに,
動作h及びiは構成要件1Cに,それぞれ相当し,イ号製品の動作は,本件
特許発明1の各構成要件を充足する。
本件明細書において,本件特許発明2の装置が本件特許発明1の実施に用
いられることが明記されているから(【0011】),本件特許発明1の構成要
件1Bは,本件特許発明2の構成要件2Eと整合するように解釈する必要が
ある。そうすると,本件特許発明1の構成要件1Bでは,「延長線の近傍」と
「延長線」が並列されていると解され,材料の供給される位置が「延長線の
(下側を含む)近傍」よりも下方に降下する前に開始される必要がある。し
たがって,流動ホッパーへの材料の輸送は,遅くとも混合済み材料の充填レ
ベルが延長線の近傍(すなわち,近傍の最下点)よりも下方に降下する前に
開始すればよいと解される。
イ号製品についてみると,前記1【原告の主張】(3)のとおり,動作iは
構成要件1Bを充足する。
(3)イ号製品が,本件特許発明1に係る方法の使用にのみ用いる物であること
イ号製品は,被告からイ号製品を購入した顧客において,本件特許発明1
に係る方法の使用にのみ用いる物であり,ほかの用途を有しない。
【被告の主張】
以下のとおり,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る
特許権に対する特許法101条4号の間接侵害は成立しない。
(1)イ号製品の動作
イ号製品の構成及び動作は,別紙イ号製品説明書(被告主張)記載1から
3までのとおりである。
(2)構成要件充足性
イ号製品のみでは,「混合」(構成要件1A-2,1A-3,1B及び1C)
を行わない。
また,前記1【被告の主張】(3)によると,イ号製品は,「前記混合済み材
料の充填レベルが供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍または該
延長線よりも下方に降下する前に開始する」という動作(構成要件1B)を
行わない。
(3)イ号製品が,本件特許発明1に係る方法の使用にのみ用いる物であること
否認ないし争う。
3争点3(ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について
【原告の主張】
以下のとおり,ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足する。
(1)ロ号製品の構成
被告は,平成24年頃から,イ号製品を別の装置と組み合わせて,ロ号製
品を,業として,生産し,譲渡し,譲渡の申出をしている。
ロ号製品の構成は,別紙ロ号製品目録記載のとおりである。
(2)構成要件充足性
前記1【原告の主張】のとおり,イ号製品は本件特許発明2の各構成要件
を充足し,ロ号製品は,イ号製品に構成gを組み合わせたものであるから,
本件特許発明2の各構成要件を充足する。
なお,構成gを組み合わせたことにより,必然的にイ号製品部分で混合が
行われることになる。
【被告の主張】
否認ないし争う。
4争点4(ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権
に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか)について
【原告の主張】
以下のとおり,ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る
特許権に対する特許法101条4号の間接侵害が成立する。
(1)ロ号製品の動作
ロ号製品の動作は,別紙ロ号製品目録記載のとおりである。
(2)構成要件充足性
前記2【原告の主張】のとおり,イ号製品の動作は本件特許発明1の各構
成要件を充足し,ロ号製品は,イ号製品に構成gを組み合わせたものである
から,その動作は本件特許発明1の各構成要件を充足する。
なお,構成gを組み合わせたことにより,必然的にイ号製品部分で混合が
行われることになる。
(3)ロ号製品が,本件特許発明1に係る方法の使用にのみ用いる物であること
ロ号製品は,被告からロ号製品を購入した顧客において,本件特許発明1
に係る方法の使用にのみ用いる物であり,ほかの用途を有しない。
【被告の主張】
否認ないし争う。
5争点5(損害額)について
【原告の主張】
イ号製品1台につき,販売価格は17万3000円,製造原価は4万900
0円と推測され,被告がイ号製品1台を販売することによって得る利益は,1
2万4000円を下らないと推測される。
被告は,平成23年8月から平成25年3月まで,少なくとも850台の乾
燥機を販売し,そのうちの8割の乾燥機にオプションとしてイ号製品が装着さ
れたと推測され,被告は,上記の期間に,少なくとも680台のイ号製品を販
売した。
したがって,原告は,被告のイ号製品販売によって,少なくとも8432万
円(12万4000円×680台)の損害を被ったと推定される。
【被告の主張】
否認ないし争う。
第4当裁判所の判断
イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを充足せず,イ号製品に係る被告
の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101条4号の間
接侵害は成立しない。その結果,ロ号製品についても,本件特許発明2の構成要
件を充足せず,ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許
権に対する間接侵害は成立しない。
以下,その理由を説明する。
1争点1(イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)について
以下のとおり,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを充足しない。
(1)本件明細書の記載
本件各特許発明に関し,本件明細書には,概ね以下の記載がある(甲2~
4)。
ア発明の属する技術分野
本件各特許発明は,プラスチック成形材料,医薬品材料,加工食品材料
等の粉粒体を混合するとともに,該粉粒体に付着している微粉(ダストも
含む広義のものをいう。)を除去する,粉粒体の混合及び微粉除去方法とそ
の装置に関するものである(【0001】)。
イ従来の技術,発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手

従来の粉粒体の混合装置は,輸送管を介して材料供給源と接続した混合
ホッパーに,ガス導管を介して吸引空気源を接続し,前記混合ホッパーの
出入口に接続された材料の排出導通路には下方から上方に向けて上り勾配
の輸送短管を接続するとともに,排出導通路の軸線と輸送短管の軸線とが
交差する角を鋭角とし,さらに前記排出導通路の下端部には中程位置にレ
ベル計を設けたチャージホッパー(一時貯留ホッパー)を接続している。
このような構成によって,吸引空気源の気力により混合すべき材料を前記
輸送短管を介して混合ホッパー内に吸引輸送するとともに混合し,その混
合済み材料は前記チャージホッパー内へ落下するようにしてなるものであ
る(【0003】)。
従来の混合装置によれば,一時貯留ホッパー(チャージホッパー)には
中程位置にレベル計を設けており,成形機が材料を消費して材料のレベル
がレベル計の位置より下方に至れば混合ホッパーへの次回材料の輸送が開
始されるようになっている。すなわち,次回材料が輸送される時には,輸
送短管の出口とレベル計の位置との間には空間ができた状態になっている。
そのような状態で輸送が開始されると,材料の大部分は混合ホッパーへ吸
引輸送されるものの,材料の一部は未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接
に落下してしまうという問題が生じていた(【0005】)。
本件各特許発明は,上記の問題を解消するために提案された発明であっ
て,材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止する
ことを目的としており(【0008】),本件特許発明2は,本件特許発明1
の方法を実施する装置の発明である(【0011】)。なお,本件各特許発明
において,横向き管とは縦向き管に対して任意の角度で交差する管という
ことであり,上向き,下向き,水平等いずれの方向のものも含まれるもの
とし,交差する角度には限定されないものとする(【0012】)。
ウ作用
本件特許発明1の方法によれば,材料は吸引空気源の吸引気力により流
動ホッパー内へ吸引輸送されて混合され,吸引空気源が停止すると一時貯
留ホッパーへ落下する。その際,1回目の吸引輸送時には一時貯留ホッパー
内はもちろんのこと,横向き管における最下面の延長線の近傍または該延
長線よりも下方の縦向き管は空の状態になっている。このため,材料の大
部分は流動ホッパー内ヘ吸引輸送されるものの,材料の一部はその重力に
より空状態の一時貯留ホッパー内へ未混合のまま落下する(【0015】)。
このようにして,一時貯留ホッパーの下方には未混合の材料が混じってし
まうが,この1回目の材料は後工程(成形機など)の調整運転用材料とし
て消費され,次回の材料は第1回目の材料のレベルが横向き管における最
下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に落下する前に開始される
ものであるから,2回目以降の吸引輸送においては,横向き管における最
下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方には材料が充填された状態
になっている。従って,吸引輸送される材料はその充填された材料によっ
て一時貯留ホッパーへの落下は阻止され,未混合のまま一時貯留ホッパー
へ落下するという問題が解消する(【0016】)。
本件特許発明2の装置によれば,供給管の横向き管における最下面の延
長線の近傍または該延長線よりも上方位置には,材料の充填レベルを検出
するためのレベル計が設けられている。すなわち,材料の吸引輸送を,充
填レベルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも
下方に落下する前に開始する際のその開始時点は,該延長線よりも上方に
設けられたレベル計によって正確に捉えることができるようになっている。
従って,この装置では材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下すると
いうことはない(【0017】)。そして,レベル計が前記延長線の線上に設
けられている場合には,その延長線よりも上方は空の状態になっているの
で何らの抵抗もなくスムーズに吸引輸送される。また,レベル計が該延長
線よりも上方位置に設けられている場合には,該延長線の位置とレベル計
との間には材料が充填された状態になっているが,その充填層は吸引空気
の気力により供給管からの材料と一緒に流動ホッパーへ吸引されるもので
あるから吸引輸送に支障を来すことはない(【0018】)。
エ発明の実施の形態
横向き管から供給される粉粒体(材料)の充填量(供給量)を検出する
ため,横向き管における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上
方位置には,レベル計が設けてある(【0030】)。レベル計を中間管の上
部の位置に設けた場合は,材料の充填レベルがレベル計の位置まで降下す
ると,次回材料の吸引輸送が開始され,吸引輸送される材料は延長線とレ
ベル計との間にある材料と一緒に流動ホッパーに送られ混合される。そし
て,混合された材料は吸引が停止すると,残っている前回材料の上に落下
して積み増しされ,流動ホッパーの下方にも貯留された状態になる。貯留
された材料は一時貯留ホッパーの下方から成形機等に順次送られて消費さ
れ,材料の充填レベルがレベル計の位置まで落下すると次回の吸引輸送が
開始されるようになっており,これが繰り返される(【0031】)。
レベル計を延長線近くに設けた場合にも,材料の充填レベルがレベル計
の位置まで降下すると,次回材料の吸引輸送が開始される。この場合は,
延長線の上方に材料がない状態で開始される。そして,前記中間管の位置
に設けた場合と同様に,混合された材料は吸引が停止すると,残っている
前回材料の上に落下して積み増しされ,流動ホッパーの下方にも貯留され
た状態になる。貯留された材料は一時貯留ホッパーの下方から成形機等に
順次送られて消費され,材料の充填レベルがレベル計の位置まで降下する
と次回の吸引輸送が開始されるようになっており,これが繰り返される
(【0032】)。
このように,レベル計は延長線より近傍又は上方の位置に設けているの
で,延長線より下方は常に満杯の状態になっており,吸引輸送される材料
が未混合のままで一時貯留ホッパーへ落下するような現象は生じない(【0
033】)。
オその他の変形例
レベル計は,横向き管における最下面の延長線の近傍位置が好ましいも
のであり,その近傍位置とは延長線より少しばかり下方位置であってもよ
いことを意味する(【0049】)。
カ発明の効果
本件特許発明1によれば,材料の吸引輸送は1回目の材料の充填レベル
が横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に降
下する前に開始されるものであるから,横向き管における最下面の延長線
の近傍または該延長線よりも下方には材料が充填された状態になっていて,
吸引輸送される材料はその充填された材料によって一時貯留ホッパーへの
落下が阻止されるものであり,未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下する
という問題は解消する(【0053】)。
本件特許発明2によれば,供給管の横向き管における最下面の延長線の
近傍または該延長線よりも上方位置には,材料の充填レベルを検出するた
めのレベル計が設けられているものであるから,材料を吸引輸送する際の
開始はレベル計からの信号によって正確に捉えることができ,材料のレベ
ルが横向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方に
降下する前に開始することができるようになっているので,材料が未混合
のまま一時貯留ホッパーへ落下するという現象を防止した装置が提供でき
る(【0054】)。
(2)「横向き管における最下面の延長線」
ア請求項1には,「混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管における
最下面の延長線の近傍または延長線よりも下方に降下する前に」,流動ホッ
パーへの材料の輸送が開始する旨が記載されており(本件特許発明1の構
成要件1B),「延長線」は,材料輸送を開始する際に必要とされる,混合
済み材料の充填レベルの基準となるものである。請求項2には,「横向き管
における最下面の延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に,材料
の充填レベルを検出するためのレベル計を設け」る旨が記載されており(本
件特許発明2の構成要件2E),請求項1の上記の記載と併せ読むと,「延
長線」は,材料輸送を開始する際に必要とされる,混合済み材料の充填レ
ベルを検出するためのレベル計が設けられる位置の基準ともなるものであ
る。
もっとも,請求項1及び2の記載のみからは,「横向き管の最下面」,「延
長線」の意味が明らかではない。横向き管は,上向き,下向き等の方向の
ものをも含むところ,本件明細書では,横向き管が水平である場合の「延
長線」が図示されているのみで,上向きや下向きの場合の「延長線」は図
示されていない。そうすると,横向き管が上向きや下向きの場合に,「最下
面」がどの面を指すかという点や,「延長線」の始点,方向が明らかとはい
えない。
イそこで,前記(1)で指摘した本件明細書の記載内容を検討すると,従来
の混合装置では,輸送短管の出口とレベル計との間に空間ができていたた
めに,材料の一部が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下していたところ,
この問題を解消するため,本件各特許発明では,輸送開始時に必要とされ
る充填レベルに達するまで混合済み材料を充填させ,既に充填された混合
済み材料によって,吸引輸送される材料が未混合のまま一時貯留ホッパー
へ落下するのを阻止するようにしている。
また,充填レベルは,混合済み材料が縦向き管のどの高さまで貯留した
かを示すものであるから,輸送開始時を定める充填レベルの基準は,混合
済み材料の上表面によって示される必要がある(混合済み材料の上表面は,
必ずしも正確な水平面とは限らないが,レベル計によって,その上表面の
位置が判断される。)。
充填レベルが,横向き管が縦向き管に接する出口の下端よりも下方に
あって,充填レベルと横向き管の出口の下端との間に空間が生じていると,
輸送された材料が未混合のまま一時貯留ホッパーへ落下することになる。
そのため,一時貯留ホッパーへの落下を防ぐには,材料の輸送が開始する
時点で,横向き管が縦向き管に接する出口の下端に達するまで,混合済み
材料が充填されている必要がある。
したがって,輸送開始時を定める充填レベルの基準となり,充填レベル
を検出するためのレベル計の位置の基準ともなる「横向き管における最下
面の延長線」とは,横向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方
向に向かって延長した線を意味すると解される。
(3)「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」(レベル計の位置)
レベル計は,材料の吸引輸送の開始時点を正確に捉えるために設けられ,
混合済み材料の充填レベルがレベル計の位置まで降下すると,吸引輸送が開
始する。
「近傍」には,「近所,近辺」(乙11),「近いところ,付近」(乙12)と
いう意味がある。このような意味に,本件明細書において,近傍位置が延長
線より少しばかり下方位置であってもよい旨が指摘されることを併せ考えれ
ば,「延長線の近傍位置」は,延長線の上側だけでなく下側も含むと解される。
もっとも,前記のとおり,輸送開始時には,混合済み材料が「延長線」(横
向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方向に向かって延長した線)
に達するまで充填されている必要があり,輸送開始時点を正確に捉えるため
のレベル計は,充填レベルが「延長線」まで達していることを検知できなけ
ればならない。そのため,レベル計それ自体は「延長線」よりも下側に設置
されてもよいが,充填レベルの検知位置が「延長線」上にある必要があり,
少なくとも,レベル計の検知面の最上部が「延長線」に接している必要があ
る。
したがって,レベル計が「延長線の近傍位置または該延長線より上方位置」
に設けられるとは,レベル計が,延長線より上方に設けられること,延長線
上に設けられること,又は,延長線より下方ではあるものの,レベル計の検
知面の最上部が延長線に接する位置に設けられることを意味すると解される。
(4)イ号製品へのあてはめ
イ号製品を撮影した写真(乙13)をみると,レベル計は,「横向き管にお
ける最下面の延長線」(横向き管が縦向き管と接する出口の下端から,水平方
向に向かって延長した線)よりも下方に設けられており,検知面の最上部が
「延長線」に接してもいない。イ号製品の図面(乙16,18)によれば,
「延長線」とレベル計検知部の検知面の最上部との距離は56.5mmであり,
レベル計を最も高い位置に変更した場合でも,「延長線」とレベル計検知部の
検知面の最上部との距離は28.2mmである。すなわち,イ号製品の構成に
関して,原告が主張するところの別紙イ号製品説明書(原告主張)の図面を
前提とし,レベル計を固定したブラケットの上面が上側のフランジに接する
までレベル計の位置を高くしたとしても,イ号製品の構造上,「延長線」とレ
ベル計検知部の検知面の最上部との間には隔たりがあることが認められる。
したがって,イ号製品のレベル計は,「延長線」より下方にあり,かつ,検
知面の最上部が「延長線」に接していないから,「延長線の近傍位置または該
延長線より上方位置」に設けられているとはいえない。
以上によれば,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを充足しない。
2争点2(イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権
に対する特許法101条4号の間接侵害が成立するか)について
本件特許発明2は本件特許発明1の方法を実施する装置の発明であるところ,
前記1のとおり,イ号製品は本件特許発明2の構成要件2Eを充足しない。
このことは,原告の主張するイ号製品の動作については,その前提となる構
成を欠くことを意味する。つまり,レベル計の検知面の最上部が「延長線」に
接する位置より下に設けられていることを意味し,その結果,混合済み材料が
流動ホッパーから延伸部(一時貯留ホッパーに相当)へと降下するに当たり,
流動ホッパーへの材料の吸引輸送が,上記混合済み材料の充填レベルが「供給
管の横向き管における最下面の延長線」よりも下方に降下する前に開始すると
はいえないこととなる。さらに,前記1(4)で認定したレベル計の位置からす
ると,上記「延長線」の近傍を基準とした場合についても同様のことがいえる。
なお,原告は,イ号製品で,混合済み材料が,上記「延長線」の近傍よりも
下方に降下する前に流動ホッパーへの材料の吸引輸送が開始されている証拠と
して,甲第8から第10号証を提出する。これによると,レベル計の位置が延
伸部の最上部に設定されていることが認められるが,イ号製品を購入した顧客
が,レベル計の位置を上記のように設定した上で使用していることを認めるに
足りる証拠はない。結局,イ号製品の動作は,本件特許発明1の構成要件1B
を充足すると認めることはできない。
したがって,イ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特
許権に対する特許法101条4号の間接侵害は成立しない。
3争点3(ロ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足するか)及び争点
4(ロ号製品に係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対す
る特許法101条4号の間接侵害が成立するか)について
原告の主張(別紙ロ号製品目録)によれば,ロ号製品は,ホッパー装置(イ
号製品)と材料供給装置によって構成されるところ,前記1及び2を踏まえる
と,ロ号製品についても,本件特許発明2の構成要件を充足せず,ロ号製品に
係る被告の行為について,本件特許発明1に係る特許権に対する特許法101
条4号の間接侵害は成立しない。
4イ号製品及びロ号製品の生産,販売の中止
前記第2の1(4)のとおり,被告が業としてイ号製品の生産等を行ったのは,
平成25年3月までである。ロ号製品は,イ号製品に別の装置を組み合わせた
ものであるから,被告が,ロ号製品を,業として生産し,譲渡し又は譲渡の申
出をしていたのも,平成25年3月までと認めるのが相当である。
5結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求にはい
ずれも理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官
山田陽三
裁判官
松阿彌隆
裁判官
林啓治郎
(別紙)
イ号製品目録
名称:新型パワーリダクションホッパ
品番:PR-02-3
(別紙)
イ号製品説明書(原告主張)
1のとおりの構成を有し,2のとおり作動し,3のとおりレベル計70の高さ
を調整できる,4記載の流動ホッパーである。

1構成
a流動ホッパー(2)と天蓋の排気口にエルボ型の排気管(22)が突設
されてホースを介して吸引空気源が連結される,
b-1流動ホッパー(2)の出入口と縦方向に連通した縦向き管(4A)と,
b-2該縦向き管(4A)の中途に連通連設した横向き管(4B)とから成る
供給管(4)が設けられている。
c供給管の縦向き管(4A)を下方に延伸してなる延伸部(47)が設け
られている。
d延伸部(47)が供給管(4)と連通されている。
e横向き管(4B)最下面の延長線の近傍に,樹脂材料のレベルを,該
吸引空気源を停止している場合に計測するレベル計(70)が設けら
れている。
f流動ホッパー(2)の上端には天蓋が設けられ,その下側には排気及
び微細粉を透過させるフィルタが設けられている。
2動作
g吸引空気源を運転することによって前記流動ホッパー(2)及び供給
管(4)内の空気が吸引され,これに伴って,ホッパーX等に各収容
されている樹脂材料A等は横向き管(4B)から吸い込まれ,流動
ホッパー(2)内で均質に混合される。
h吸引空気源の運転中に,混合された樹脂材料は縦向き管(4A)を兼
用する延伸部(47)に堆積せずに,横向き管(4B)最下面の延長線
の近傍に設置されたレベル計(70)の位置で流動を続ける。一方で,
樹脂材料は供給管(4)の下端では流動せず,静止状態を保つ。
吸引空気源を停止すると,流動が停止し,均質に混合された樹脂材
料が供給管に落下し,縦向き管(4A)を兼用する延伸部(47)に貯
留される。そして成形機の材料消費動作に合わせて供給管内(4)の
均質に混合された樹脂材料のレベルが低下していき,やがてこれが
レベル計(70)に検出される。
この検出に関連して吸引空気源を起動すると,新たな樹脂材料A等
が横向き管(4B)から吸い込まれ流動ホッパー(2)内で混合がなさ
れる。
以上の反復で,縦向き管(4A)内のレベル計(70)までの充填物は
必ず均質に混合されたものとなる。
また,微細粉はフィルタを透過して流動ホッパー(2)から空気と共
に排出され,微粉を除去する。
i上記のような流動ホッパー(2)への樹脂材料の輸送再開,すなわち
吸引空気源の起動は,レベル計(70)が横向き管(4B)最下面の延
長線の近傍に位置していることから,前回輸送の混合済み材料が流
動ホッパー(2)から縦向き管(4A)を兼用する延伸部(47)へと降
下する際に,混合済み材料の充填レベルが供給管の横向き管(4B)
最下面の延長線の近傍よりも下方に降下する前に開始することとな
る。
3イ号製品(図2,図3)の説明(レベル計70の高さ位置調整の構成につい
て)
延伸部(47)の上部には,上側のフランジ(51)を設け,延伸部(47)の途
中には,下側のフランジ(52)を設けてあり,
上側のフランジ(51)と下側のフランジ(52)とを,両端部にねじを形成し
た4本の連結丸棒(6)を挿通してねじ止めして連結してあり,
連結丸棒(6)の上側のフランジ(51)と下側のフランジ(52)との間の部分
は滑面となっており,
レベル計(70)を固定したブラケット(71)は,連結丸棒(6)よりわずかに
大径の円筒部(72)を有し,円筒部(72)に一の連結丸棒(6)を摺動可能に挿
入させてブラケット(71)を昇降可能にしてあり,
円筒部(72)側面に螺合するねじ(8)を緩めて,ブラケット(71)を一の連
結丸棒(6)の任意の高さ位置に移動させ,レベル計(70)を所望の高さ位置に
してねじ(8)を締結してブラケット(71)を一の連結丸棒(6)に固定するよう
にしてある。
4図面の説明
図面の説明
図1イ号製品の斜視図
図2イ号製品の使用状態説明図
図3イ号製品の使用状態説明図
(図2とは異なる角度から見たもの)
符号の説明
2流動ホッパー
4供給管
4A縦向き管
4B横向き管
6連結丸棒
8ねじ
22排気管
47延伸部
51上側のフランジ
52下側のフランジ
70レベル計
71ブラケット
72円筒部
(別紙)
イ号製品説明書(被告主張)
1のとおりの構成を有し,2のとおり作動する,3記載の流動ホッパーである。

1構成
a流動ホッパー(2)と天蓋の排気口にエルボ型の排気管(22)が突設
されてホースを介して吸引空気源が連結される,
b-1流動ホッパー(2)の出入口と縦方向に連通した縦向き管(4A)と,
b-2該縦向き管(4A)の中途に連通連設した横向き管(4B)とから成る
供給管(4)が設けられている。
c供給管の縦向き管(4A)の下方にはガラス管部(47)が設けられて
いる。
dガラス管部(47)が供給管(4)と連通されている。
e横向き管(4B)の出口の下端から70.5mm下方の位置に,樹脂材
料のレベルを,該吸引空気源を停止している場合に計測するレベル
計(70)が設けられている。
f流動ホッパー(2)の上端には天蓋が設けられ,その下側には排気及
び微細粉を透過させるフィルタが設けられている。
2動作
g吸引空気源を運転することによって前記流動ホッパー(2)及び供給
管(4)内の空気が吸引され,これに伴って,材料供給源に収容され
ている樹脂材料の吸引輸送が開始される。
hこの吸引輸送により流動ホッパー(2)内へ運ばれた樹脂材料は,流
動ホッパー(2)内で気力によって流動撹拌される。他方,一部の樹
脂材料は流動ホッパー(2)へ運ばれずにガラス管部(47)へ落下し,
そこに貯留される。
吸引空気源を停止すると,流動撹拌が停止し,流動ホッパー(2)内
の樹脂材料が縦向き管(4A)及びガラス管部に落下し,貯留される。
そして成形機の材料消費動作に合わせて縦向き管(4A)及びガラス
管部内の樹脂材料のレベルが低下していき,やがてこれがレベル計
(70)に検出される。
レベル計(70)によって空杯が3秒間連続して検出された場合に吸
引空気源は再起動され,新たな樹脂材料の輸送が開始される。
微細粉はフィルタを透過して流動ホッパー(2)から空気と共に排出
され,微粉を除去する。
3図面の説明
図面の説明
図1イ号製品の斜視図
図2イ号製品の側面図
図3イ号製品の側面図
(図2とは異なる角度から見たもの)
符号の説明
2流動ホッパー
4供給管
4A縦向き管
4B横向き管
22排気管
47ガラス管部
70レベル計
【図1】
【図2】
【図3】
(別紙)
ロ号製品目録
A記載のホッパー装置(イ号製品)と,
該ホッパー装置の横向き管(4B)にそれぞれ下記B―1~5に示すように材料
供給管(50)を介して樹脂材料の気送を可能に連結されるgの構成を有する材料
供給装置(それぞれ図4-1~5参照)とからなり,
ホッパー装置のレベル計(70)から得られる信号に応動して材料供給装置から
ホッパー装置へ複数の樹脂材料の供給を行うように連繋稼働される二装置の組。
Aホッパー装置(イ号製品)
B-1材料供給装置(図4-1)
g相異なる樹脂材料を各収容するタンク,乾燥機又は粉砕機から選択された
同一種又は異種の少なくとも2機(図示の例は乾燥機51及び粉砕機52)
が材料供給管(53)(54)それぞれを介して入側に接続され,出側に材料供
給管(50)が接続され,入側の材料供給管を選択的に切り替える切替弁を備
える装置(オートセレクタ:80)。出側の材料供給管(50)は図1のホッパー
装置に与えられる。レベル計(70)の信号は,吸引空気源(55)の駆動/停
止の制御に使用される。
B-2材料供給装置(図4-2)
g相異なる樹脂材料を各収容するタンク又は粉砕機から選択された同一種又
は異種の少なくとも2機(図示の例はタンク(57)及び粉砕機(52))が材
料供給管(53)(54)それぞれを介して入側に接続され,出側に材料供給管
(50)が接続され,入側の材料供給管を選択的に切り替える切替弁を備える
オートセレクタ(80)。材料供給管(50)の出側には,供給材料を乾燥する
乾燥機(51)が接続され,乾燥された材料がホッパー装置に供給される。レ
ベル計(70)の信号は,吸引空気源の駆動/停止の制御に使用される。
B-3材料供給装置(図4-3)
g相異なる樹脂材料(図示の例は,新材と粉砕材)を各収容するタンク(6
1)(62)及びタンク(61)(62)それぞれから供給される樹脂材料を収容
するストックタンク(63)を備えるミックタンク。ストックタンク(63)の
出側に接続された材料供給管(50)には,供給材料を乾燥する乾燥機(51)
が接続され,乾燥された材料がホッパー装置に供給される。レベル計(70)
の信号は,吸引空気源の駆動/停止の制御に使用される。
B-4材料供給装置(図4-4)
g相異なる樹脂材料をミキシングドラムで混合し,ミキシングドラムから排
出された配合材料を収容しておく貯留ホッパー(75)を組み合わせてなる装
置(オートカラー)であり,貯留ホッパー(75)の排出口は材料供給管(50)
に連結され,ホッパー装置に連なる。レベル計(70)の信号は,吸引空気源(5
5)の駆動/停止制御に使用される。
B-5材料供給装置(図4-5)
g相異なる樹脂材料を各収容するタンク(71)(72)(73)それぞれから供
給される樹脂材料をミキシングドラムで混合し,ミキシングドラムで混合さ
れた配合材料を収容しておく貯留ホッパー(75)を組み合わせてなる装置
(オートカラー)。貯留ホッパー(75)の出側に接続された材料供給管(50)
には供給材料を乾燥する乾燥機(51)が接続され,乾燥された材料がホッ
パー装置に供給される。レベル計(70)の信号は,吸引空気源の駆動/停止
の制御に使用される。
(別紙)
延長線とレベル計との位置関係図
※破線は,上下方向中央位置であり,静電容量型センサ(イ号製品のもの)に
おいて通常設定される検出位置を示す。

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