弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 被告は,原告に対し,金195万7631円及びうち別紙Aの未払賃金欄記載
の各金額に対する付帯請求欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とす
る。
4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
       事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,金1100万1918円及びうち別紙Bの未払時間外勤務
手当欄記載の金額に対する同勤務年月欄記載の月の翌月21日から支払済みまで年
5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,被告の職員であり,平日夜間・休日の宿日直業務を担当している原告
が,休憩時間及び仮眠時間と定められている時間帯も通常の勤務時間と異ならない
業務実態があり,労働時間にほかならないとして,被告に対し,時間外割増賃金及
び深夜割増賃金の支払いを請求した事案である。
1 争いのない事実等(認定に供した証拠は各項の末尾に掲記した。)
(1) 当事者等
 原告は,昭和52年12月,被告に採用され,採用当時から現在まで被告の庁舎
管理業務員(庶務課所属)として勤務する一般職の地方公務員である。
(2) 勤務体系
 被告の職員の勤務体系は,青梅市職員の勤務時間,休日,休暇等に関する条例
(以下「勤務時間等条例」という。)及びこれに基づく青梅市一般職員の勤務時
間,休憩時間等に関する規程(以下「勤務時間等規程」という。)に定められてい
る。
 庁舎管理業務員の勤務時間,休憩時間,仮眠時間(以下「勤務時間等」とい
う。)は次のとおりである。なお,下記以外に夜間の業務を含まない平日日勤が設
けられているが,この日には,庁舎管理業務員は有給休暇を取ることが慣例になっ
ており,実際には出勤しない。
平成13年8月31日まで
平日勤務 勤務時間 午後4時30分~11時30分,翌午前6時00分~9時0
0分
     休憩時間 午後11時30分~翌0時30分
     仮眠時間 午前0時30分~6時00分
休日勤務 勤務時間 午前8時30分~12時00分,午後12時30分~6時0
0分,午後6時30分~11時30分,翌午前6時00分~9時00分
     休憩時間 午後12時00分~12時30分,午後6時00分~6時3
0分,午後11時30分~翌0時30分
     仮眠時間 午前0時30分~6時00分
平成13年9月から平成14年6月まで
平日勤務 勤務時間 午後4時30分~11時30分,翌午前5時45分~9時1
5分
          (5時45分~6時00分は休息時間)
          (休息時間は勤務時間に含まれる。)
     休憩時間 午後11時30分~翌0時30分
     仮眠時間 午前0時30分~5時45分
休日勤務 勤務時間 午前8時30分~12時00分,午後12時30分~6時0
0分,午後6時30分~11時30分,翌午前5時45分~9時15分
          (5時45分~6時00分は休息時間)
     休憩時間 午後12時00分~12時30分,午後6時00分~6時3
0分,午後11時30分~翌0時30分
     仮眠時間 午前0時30分~5時45分
 平成14年7月,勤務時間等の内容が改正され,仮眠時間がなくなり,勤務時間
に含まれるようになった。 (条例及び規程について乙1~4)
(3) 賃金について
 被告の職員の給与は,青梅市一般職の給与に関する条例(以下「給与条例」とい
う。)の定めるところにしたがって支給される。
 庁舎管理業務員の賃金について,被告は,勤務時間に対して賃金を支給し,仮眠
時間及び休憩時間(以下「仮眠時間等」という。)に対しては賃金を支給しなかっ
たが,仮眠時間等の内,庁舎管理業務員が実際に作業を行った時間に対して時間外
勤務手当を支給していた。
 また,勤務割当日に出勤できなくなった職員に代わって勤務した職員(振替勤
務)に対しては,勤務時間全部について時間外勤務手当を支給している。
 給料の計算期間は月の1日から末日まで,毎月21日(この日が日曜日,土曜日
または休日であるときは,その日前のその日に最も近い日曜日,土曜日または休日
でない日)に給料の当月分が支払われるが,時間外勤務手当は,時間外労働を行っ
た翌月の給料支給日に支給される(給与条例17条)。
 また,被告は,平成4年7月分から,上記条例16条に基づき,職員組合と協議
した上で,原告を含む庁舎管理業務員に対して夜間の勤務1回に当たり2000円
の宿直手当を支給することとし,現実に支給している。 (条例の規定について甲
13,甲20)
(4) 原告の勤務
 原告は,平成12年1月から平成14年6月まで,下記のとおり勤務した。
  年  月 平日勤務 休日勤務   年  月 平日勤務 休日勤務
12年 1月   9回   4回 13年 4月  11回   3回
    2月  11回   1回     5月  10回   3回
    3月   8回   4回     6月   9回   3回
    4月   9回   3回     7月   9回   2回
    5月  10回   3回     8月  10回   2回
    6月   9回   2回     9月   8回   4回
    7月  10回   3回    10月  12回   2回
    8月  10回   3回    11月   9回   4回
    9月  10回   2回    12月  10回   3回
   10月   9回   4回 14年 1月   9回   4回
   11月   7回   5回     2月  10回   2回
   12月   9回   3回     3月   9回   3回
13年 1月   9回   3回     4月   9回   3回
    2月  10回   2回     5月   9回   4回
    3月   8回   4回     6月   9回   3回
 原告が上記期間中に受領した諸手当を含む給料は別紙Dのとおりである。
2 当事者の主張
(原告)
(1) 仮眠時間等は労働時間である。
ア 実作業に従事しない仮眠時間中や休憩時間中であっても,使用者の指揮命令下
にあれば,労基法上の労働時間に該当する。
 庁舎管理業務員は,仮眠時間中や休憩時間中であっても宿直室に待機することが
義務付けられており場所的拘束が非常に強い。
 原告が気象情報や警報などを聞き漏らすことは許されない。万一,これを聞き漏
らして人命等に影響がでれば,被告が責任を問われる大問題に発展しかねない。さ
らに,戸籍に関する各種届出には必ず対応しなければならないし,各階の超勤者の
退庁後には必ず巡回,点検作業を行っている。電話にも必ず対応しなければならな
い。そのために原告は,仮眠時間中であっても仕事に備えるために飲酒もしていな
い。
 また,原告は,休憩時間に実作業に従事したからといって,代替えの休憩を与え
られたことはない。したがって,休憩時間も労働時間に当たる。
イ 原告の仮眠時間等の時間帯の業務実態
 原告は仮眠時間になると布団を敷くが,枕元には青梅消防署(内線)電話,市役
所代表電話,火葬窯の予約簿とメモ用紙を置いて,即座に電話に対応できるように
していた。
 平成14年には1年を通じて警報の発令・解除が合計49回あった。そのうち,
原告が勤務した日は3月29日に4回(翌日 0時22分,2時34分,5時18
分),4月3日に1回(翌日 2時15分)であった。
 また,平成14年1月から4月までの期間,原告は48回勤務したが,仮眠時間
又は休憩時間中に火災発生・鎮火の報告,所定職員へ連絡を1回(2月25日),
最後の退庁者の確認を25回(なお,庁舎管理業務員は,最後の職員が退庁した
後,当該職員が在室していた部屋を巡回し,夜間通用門を施錠する。),戸籍届出
書の受理を3回,火葬窯の予約受付けを5回,埋葬許可証・火葬許可証(以下「埋
葬許可証等」という。)の発行を3回,庁舎内の事故対応を2回,電話対応を14
回行った。
 以上のとおり,原告が仮眠時間及び休憩時間中に実作業に従事した回数は,出勤
回数に対して75%にも及んでいる。このことからも,原告が仮眠時間及び休憩時
間中に労働から解放されているとはいえないことが明らかである。
(2) 監視又は断続的労働について
 被告は,庁舎管理業務員の労働を断続的労働として規定していない。被告は,庁
舎管理業務員を新設・配置した昭和52年当時,全勤務時間を労働時間にするだけ
の予定人員を確保することができなかったため,便宜的に仮眠時間を設けたに過ぎ
ない。
 また,断続的労働を前提にすれば,労働時間は1週間当たり40時間を超え,休
憩時間を設けなくともよいはずであるが,庁舎管理業務員の年間労働時間が一般事
務職員の年間労働時間数と同じになるように,4週間を通じて1週当たり平均40
時間と規定し,休憩時間も設けている(勤務時間等規程6条)。これは庁舎管理業
務について,1か月単位の変形労働時間制を採用していることを表した規定であ
り,監視又は断続的労働という考え方を前提にしていないことを表している。
 仮に,原告の業務が断続的労働に該当するとしても,給与条例12条には,「正
規の勤務時間外に勤務することを命ぜられた職員には時間外勤務手当を支給する」
との定めがおかれ,庁舎管理業務員についてのこの規定の適用は除外されていない
から,原告が勤務時間外に勤務した時間すなわち,仮眠時間等に対して,同条に基
づき時間外勤務手当の請求をすることができる。
(3) 未払賃金
 上記のとおり,庁舎管理業務員の勤務形態において,仮眠時間等も労基法上の労
働時間であるとすれば,これらの時間も賃金の支給対象となるので,被告は給与条
例又は労基法に従い,原告に対して時間外割増賃金及び深夜割増賃金を支給しなけ
ればならない。
ア 給与条例に基づく請求
 原告が平成12年1月から平成14年6月までに受給した給料,調整手当,住居
手当,勤務等条例に従い算出した原告の年間所定総労働時間,及びこれらを基礎に
して給与条例の規定に基づいて算出した時間当たりの賃金は別紙C1の該当欄に記
載のとおりである。時間当たりの賃金をもとに原告の1回勤務当たりの時間外労
働・深夜労働手当を算出すると別紙C2のとおりとなる。これに上記期間における
原告の勤務日数を乗じると各月の時間外勤務手当の合計額を算出できる。
 ただし,原告は,仮眠時間及び休憩時間中に実際に作業をした場合には作業を行
った時間について,並びに他の職員に代わって勤務した場合には勤務時間全部につ
いて,それぞれ,時間外勤務手当を別紙C4のとおり受給していたから,本件にお
いては,これを控除して請求する。
 よって,原告が給与条例に基づき請求する時間外勤務手当の総額は別紙C3の未
払時間外勤務手当欄記載のとおりとなる。
イ 労基法に基づく請求
 労基法37条1項及び3項の割増賃金算出の基礎となる「通常の労働時間又は労
働日の賃金の計算額」とは,別紙C5のとおりである。
 原告の毎月の勤務時間は月によって異なるので,1時間当たりの賃金額は,「一
月の賃金」を「1年間における一月平均勤務時間数」で除した金額となる。原告の
勤務時間は,1年間の一般職員の年間勤務日数に1日当たりの勤務時間(平成13
年8月までは1日当たり7.5時間,同年9月以降は1日当たり8時間)を乗じた
時間と同じになるように定められているから,さらにこれを12で除したものが1
年間の一月平均労働時間となる。このように算出した一月平均労働時間で一月の賃
金を除すると1時間当たりの賃金額を算出できる。
 そこで,原告は次のとおり,未払賃金の請求をする。
 まず,所定労働時間外の労働の全時間について,通常の賃金を請求する。実労働
時間から所定労働時間を除いた所定時間外労働時間は別紙C6の該当欄記載のとお
りである。
 所定労働時間外労働のうち,法定労働時間を超える労働については,通常の賃金
に25%の割増を加算して請求する。変形労働時間制においては,単位期間内にお
ける法定労働時間の総枠を超える労働はすべて法定労働時間外労働となるから,原
告の実労働時間から法定時間外労働を差し引いた時間について,時間外割増賃金を
請求する。
 さらに,深夜労働時間帯の労働について,通常の賃金に25%の割増を加算して
請求する。割増分については別紙C7のとおりである。
 ただし,前記のとおり,原告は仮眠時間及び休憩時間中の実作業時間について時
間外勤務手当として合計46万9449円を受給しているから,これを控除して請
求する。
(4) 消滅時効について
ア 時効の中断
 原告は,平成14年7月18日,被告に対し,仮眠時間等に関する未払賃金の支
払いを求める旨通知し,同年9月11日,本訴訟を提起した。したがって,原告の
被告に対する未払賃金債権の消滅時効は同年7月18日に中断した。被告の時間外
勤務手当の支給日は翌月21日であるから,平成12年6月分及び同年7月分の時
間外勤務手当については消滅時効にかかっていない。
イ 権利の濫用
 原告は,庁舎管理業務員が制度化された昭和52年当初から仮眠時間等に賃金が
支払われないのは不当であると労働組合を通じて被告に対して改善を求めてきた。
また,平成13年12月12日には青梅市公平委員会に時間外勤務手当相当額の支
払措置を要求するなど長年にわたって継続的に時間外勤務手当の支払いを請求して
きた。被告の消滅時効の援用は権利の濫用であるから許されない。
(被告)
(1) 仮眠時間等は労基法上の労働時間に該当しない。
ア 本件における仮眠時間は,当該時間内に庁内を巡視するなどの定例的,恒常的
に必ず行わなければならない業務を含むものではなく,外出することが制限される
以外に何らの制限もない時間である。その総体としての時間について支配従属の関
係は存在しない。
 実作業と実作業との間におかれた時間が労働者を拘束するものか否かについて
は,①実作業からの解放,②労働解放の保障,③滞在場所の自由,④一定時間以上
の労働解放をその判断要素とするべきであるが,仮眠時間における原告の業務の実
態は後記のとおりであり,実作業に従事しなければならない必要は皆無に等しいか
ら,いわゆる手待ち時間としての要素がまったくない。
 庁舎管理業務員の滞在場所が制限されているのは職員を指揮監督する必要がある
からではなく,職務の性質によるものに過ぎない。外出は制限されてもそこで自由
に過ごした時間を労働時間とすることはできないと考えられる。
 例えば,病院に勤務する医師や看護師に対して緊急患者の発生に備えて自宅待機
を命じることが広く行われており,また,台風や大雨が予想される場合に,その程
度によっては関係職員に自宅待機を命じることがあるが,本件の場合はその待機す
る場所が庁舎内とされているに過ぎず,これらの場合と本質的な差異はない。
 また,原告が仮眠時間中に公務に従事することがあるのは,仮眠時間が労働時間
であることによるものではない。仮眠時間は,公務のため臨時の必要が生じた場合
に個別の上司の命令を待つことなく,当該業務を処理するべきことが予め命ぜられ
ている(労基法33条3項参照)ものであって,宿直勤務をしていない防災担当職
員が災害発生時に上司の個別具体的な命令を待つことなく自らの判断で出勤し,あ
るいは現場の判断で業務を行わなければならないということと同じである。仮に,
公務員にとって労働を命ぜられる可能性のある時間のすべてを労働時間としたとき
には,労働時間に該当しない時間はないことになってしまうという不合理が生じ
る。
 さらに,地方公務員は,その勤務時間(労働時間)のすべてをその職責遂行のた
めに用い,当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければなら
ないとされる(地方公務員法35条)。少なくとも地方公務員の労働時間はこのよ
うな性質を有するものと解されなければならないところ,仮眠時間中,庁舎管理業
務員は,このような職務専念義務を負っていない。実際,原告は,仮眠時間になる
と布団を敷くだけでなく,パジャマに着替え,具体的な必要のない限り起床して業
務を行う必要がない。仮眠時間中に定期的に庁内の巡視をし,常時異常の有無をモ
ニターする等の義務が課されたり,緊急事態に直ちに対処できるように装備して待
機しなければならないということはなく,原告は自由にその時間を使うことが認め
られている。つまり,地方公務員において,就寝を含めて自由な利用が認められる
ような時間については,たとい居住の自由が制限されている場合であっても労基法
上の労働時間に該当することはあり得ない。
イ 休憩時間は,勤務時間等条例及び勤務時間等規程に定められる「勤務時間」に
含まれず,原告の勤務時間の性質上,一定の場所で休憩することとされているもの
の,実際に休憩をすることができないような事態を生じたときには,それに引き続
く時間内に代替え休憩をとることが認められているのであるから,必要が生じたと
きに事務を処理したことがあるとしても,その時間が労働時間になることはない。
ウ 仮眠時間等の業務実態について
 原告の主張は,平成14年1月から4月までのわずか4か月の間のものに過ぎ
ず,極めて不十分であるが,原告の主張によっても,仮眠時間等の労働時間性を見
出すことはできない。
 原告の勤務回数48回のうち,36回は何らかの実作業があったとのことである
が,全体の4分の1に相当する12回はまったく作業がなかったということであ
る。また,実作業があったという36回のうち,15回は最終の退庁者を確認した
と言うに過ぎないから,具体的な業務がなされたのは全体の44%に相当する21
回に過ぎない。しかも,実質的な審査が必要なものとしては,離婚届の受理が1回
1件,婚姻届の受理が1回2件,埋葬許可証等の発行3回各1件,火葬窯の予約受
付けが5回累計6件あるだけで,いずれの業務もその所要時間は長くても10分程
度であり,電話等の応対もせいぜい数分に過ぎないと思われる。警報及び火災の通
報があったのも3日,5回に過ぎない(しかも,原告は通報を受けるだけでその原
因の除去作業をするわけでもない)。そうすると,原告が実際の業務に従事した時
間は,最も長い日でもせいぜい40分足らずであったと推測される。
(2) 仮眠時間には対価が支払われている。
 仮眠時間自体は労働時間に該当しないが,外出できないという制限を伴うもので
あるから,庁舎管理業務員に対し,その不利益の対価として,職員組合との協議の
うえ,勤務1回あたり2000円の宿直手当を支給している。
 本件の仮眠時間は,給与条例16条が適用される宿直勤務の時間に該当するので
あって,同条例12条の時間外勤務又は同条例14条の夜間勤務に該当するわけで
はない。時間外勤務又は夜間勤務の場合に特別に多額の手当が支給されるのは,そ
の勤務にあっても正規の勤務時間や昼間の勤務と同じ密度の仕事をするからであ
り,仮眠することが認められた時間外勤務や夜間勤務というものは存在しない。
(3) 原告の業務は労基法41条3号の監視又は断続的労働に該当する。
 仮に,仮眠時間及び休憩時間が労働時間に該当するとしても,原告の業務は,い
わゆる庁舎管理業務に加えて,必要に応じて各種届出を受理することであって,労
基法41条3号の監視又は断続的労働に該当する。
 労基法上における労働基準監督機関の職権を行う青梅市長は庁舎管理業務員の勤
務が監視又は断続的労働に該当することを前提として勤務時間等条例に基づく勤務
時間等規程において仮眠時間を含む勤務体系を定めているのである。
 しかも,原告の上記勤務実態そのものが断続的労働に該当することを明らかにし
ている。
 したがって,原告には労基法の定める労働時間,休憩及び休日に関する規定が適
用されない。
(4) 消滅時効
 万一,原告の本訴請求に理由があるとしても,賃金請求権は2年間の消滅時効に
かかるから,本訴提起の2年前である平成12年9月11日より前に支払期が到来
していることの明らかな同年1月分から7月分までの賃金請求権について時効を援
用する。
第3 当裁判所の判断
1 一般職の地方公務員の給与は,条例で定めることとなっており(地方公務員法
24条6項),その支給は同条項による給与に関する条例に基づいて支給されなけ
ればならず,また,これに基づかずには,いかなる金銭又は有価物も支給してはな
らないとされている(同法25条1項)(給与条例主義)。
 ところで,勤務時間等条例及び勤務時間等規程において規定される勤務時間には
仮眠時間等は含まれていない。被告は,勤務時間等規程において,庁舎管理業務員
の仮眠時間中の実作業時間に対しては,給与条例に従い時間外勤務手当を支給する
という運用を行い,また,給与条例において宿日直手当に関する規定(16条)を
置くとともに,組合との協議の上,平成4年7月分から1回勤務につき2000円
の宿日直手当を支給している。
 上記のような規定及び運用の状況に照らし,被告は,仮眠時間に対しては,実作
業が行われない限り,宿日直手当のみを支給し,それ以外に賃金を支給しないこと
として給与条例を定めていると解釈するのが相当である。
 また,休憩時間について,被告は,実作業を行わない限り賃金を支払わないもの
として給与条例を定めていると解釈するのが相当である。
 そうであるとすれば,原告は,被告に対して,給与条例に基づく割増賃金を請求
することはできない。
2 しかしながら,給与条例において時間外勤務手当を支給する定めがない場合で
あっても,地方公務員法58条により適用が除外されていない労基法の規定は地方
公務員にも適用があるから,仮眠時間等が労基法上の労働時間に該当すると認めら
れれば,被告は,原告に対し,労基法13条及び37条に基づき労基法の定める最
低基準の時間外割増賃金,深夜割増賃金を支払うべきである。仮眠時間等が労基法
上の労働時間に該当するか検討する。
(1) 労基法上の労働時間(同法32条参照)とは,労働者が使用者の指揮命令
下に置かれている時間をいう。使用者が就業規則等で定める勤務体系のうち,従業
員が実作業に従事していない仮眠時間等が労基法上の労働時間に該当するか否か
は,労働者が仮眠時間等において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価す
ることができるか否かにより客観的に定まるものというべきである(最高裁平成1
2年3月9日判決・民集54巻3号801頁参照)。そして,不活動の仮眠時間等
において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下
から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを
保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価
することができる。したがって,不活動の仮眠時間等であっても労働からの解放が
保障されていない場合には労基法の労働時間に当たるというべきである。そして,
当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合
には労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に
置かれているというのが相当である(最高裁平成14年2月28日判決・民集56
巻2号361頁参照)。
(2) そこで,庁舎管理業務員の仮眠時間及び休憩時間の実態についてみるに,
証拠(甲9の1~4,甲10,15~17,24)及び弁論の全趣旨によれば次の
とおり認められる。
ア 被告は,青梅市庁舎管理業務員服務要綱を設け,総務部庶務課長の指揮により
庁舎管理業務員の行うべき業務内容を定めている。その内容は防災関係に関する処
理事項と一般業務の処理事項に大別することができる。
 防災関係に関する処理事項として,諸警報・注意報の受信・連絡に関すること,
火災・降雨災害その他非常災害発生に伴う被害の受信・連絡等が定められている
が,現実の業務としては,気象に関する各種警報・注意報の発令及び解除があった
場合に,東京都夜間防災連絡室から東京都防災行政無線によって受信した内容を確
認し,所定の連絡網により担当職員に連絡すること,青梅市内で火災が発生した場
合に,短波放送による消防署からの報告を受信し,該当地域のサイレンを吹鳴し,
所定の職員に連絡をすること(なお,鎮火が確認された段階で消防署から連絡が報
告を受けるので,その連絡も行う。)が多い。
 一般業務の処理事項は多岐にわたるが,現実に行っている業務としては次のもの
が多い。
(ア) 退庁者の確認,庁舎内の巡回等
 庁舎管理業務員は,時間外勤務者が退庁する際に記載する時間外勤務等命令書の
内容を確認し,確認印を押す。また,各部署の職員がすべて退庁した後には,当該
部署を巡回し,窓の施錠,火の元,消灯等の状況を確認する。さらに,全庁の職員
がすべて退庁した後,最後の退庁者が在室していた部屋を巡回し,夜間通用門を施
錠する。
(イ) 戸籍関係事務
 婚姻届,死亡届等戸籍に関する届出書を受領する。受領に際しては,記載事項の
確認をし,戸籍届受領簿に記載する。
(ウ) 火葬窯の予約
 市民からの電話を受けて,火葬窯の予約簿に申込者氏名を記載し,霊柩車の利用
の有無を確認する。
(エ) 埋葬許可証等の発行
(オ) 事故・工事等の対応
 青梅市内で事故が生じた場合,庁舎内で工事が行われる場合,原告ら庁舎管理業
務員が対応しなければならない。
(カ) 電話の収受
 被告市役所の代表電話は,閉庁後,業務終了のアナウンスを流している。しか
し,原告ほか庁舎管理業務員は,緊急に対応しなければならないような電話がかか
ってくる可能性を考慮し,仮眠時間及び休憩時間中であっても応答している。
イ 原告ほか庁舎管理業務員は,宿日直室において待機し,業務を行う。
 宿日直室は,3階建ての被告市役所の1階正面玄関横の通用口(夜間出入口)に
面した場所にある。
 宿日直室の通用口に面した部分には受付窓口があり,事務机2台が置かれ,その
周辺に市役所代表電話2台,東京都防災行政無線1台,夜間受付インターフォン,
庁舎火災報知器,駐車場火災報知器,鍵ボックスが設置されている。また,同室の
約半分のスペース(戸や襖などの仕切は設けられていない。)は畳敷きとなってお
り,そこには夜間受付インターフォン(受話器),短波放送発信受信機,火災等サ
イレン吹鳴機,青梅消防署(内線)電話1台が置かれている。
ウ 原告ら庁舎管理業務員は,所定の仮眠時間には,上記宿日直室の畳敷きの部屋
に布団を敷き,パジャマに着替えて仮眠をとる等,自由にその時間を利用すること
が許されているが,宿日直室に滞在していなければならず,外出などは許されな
い。
エ 原告は,平成14年1月から4月までの間に,合計48回勤務したところ,仮
眠時間中又は休憩時間中に次の状況が生じた(日付は原告の勤務日を示す)。
(ア) 防災関係処理
a 警報・注意報の発令・解除は合計4回あった。
3月29日 翌日0時22分,5時18分
4月 3日 翌日4時55分
b 火災の発生が1回あった。
2月25日 翌日2時55分(発生),3時22分(鎮火)
(イ) 一般業務処理
a 仮眠時間中又は休憩時間中に最後の職員の退庁を確認した日は,1月17日,
同月22日,同月24日,同月27日,同月29日,同月31日,2月5日,同月
7日,同月10日,同月12日,同月22日,同月25日,同月27日,3月4
日,同月19日,同月22日,同月27日,同月29日,4月1日,同月3日,同
月8日,同月16日,同月18日,同月23日,同月26日の25日あった。
b 戸籍に関する届出の受理は3回あった。
2月25日 翌日1時45分 離婚届
3月 2日 翌日0時15分 婚姻届,0時45分 婚姻届
c 火葬窯の予約受付けを,1月19日(翌日0時45分),同月22日(翌日3
時15分),同月29日(翌日1時10分,2時05分),3月2日(翌日3時3
0分),4月3日(翌日3時30分)の6回行った。
d 埋葬許可証等の発行等を,3月12日(翌日2時00分),4月3日(翌日0
時45分)の2回行った。
e また,1月9日(翌日0時5分)には,市内で上水道の漏水事故が発生したの
で多摩事故センターへ連絡し,3月22日(翌日5時)には,庁舎内停電のために
工事関係者が入庁したので,その対応をした。
f なお,電話の収受は14回あった。
(3) 以上の事実を前提に,庁舎管理業務員である原告が仮眠時間等において,
被告の指揮命令下に置かれているといえるか否かについて判断するに,原告は,仮
眠時間及び休憩時間中といえども,宿日直室を離れることができないという場所的
な拘束を受けていること,庁舎管理業務員としての対応が必要な事態が生じたとき
には実作業に従事しなければならず,また,職務の性質上,仮眠時間及び休憩時間
中にそのような事態が生じないと認めることができるような事情も存しないから,
仮眠時間等は全体として労働からの解放が保障されているとはいえない。したがっ
て,原告は,仮眠時間及び休憩時間中においても被告の指揮命令下に置かれている
というべきであり,仮眠時間等のいずれも労基法上の労働時間に当たる。
 これに対して被告は,仮眠時間中の庁舎管理業務員が実作業に従事しなければな
らない必要性は皆無に等しいので,いわゆる手待ち時間としての要素がまったくな
いと主張する。しかし,原告が仮眠時間中であっても実作業を行うことがあるのは
上記のとおりであり,また,例えば,市民が戸籍関係書類の届出を行うことについ
て制限がなされておらず,災害がいつ発生するかも分からない状況にあって,庁舎
管理業務員が宿日直室に滞在していなければならないとされるのは,そのような事
態が生じたときにはいつでも具体的な作業に就くべきことを要請されているからで
あるといわねばならない。そうであれば,仮眠時間等は,いわゆる手待ち時間とし
ての要素を十分に有しているから,被告の上記主張は採用しない。
 また,被告は,庁舎管理業務員の仮眠時間が自宅待機を命じられた医師や看護師
が自宅にいる時間と同じであるとか,仮眠時間中に庁舎管理業務員が行う作業と宿
直勤務を命じられていない防災担当職員が自己の判断で出勤し業務を行う場合と同
じであると主張する。しかしながら,被告が掲げる具体例はいずれも,呼び出さ
れ,又は出勤して具体的業務に就くまで所在すべき場所の拘束が弱く,自由に時間
を利用できるという点で庁舎管理業務員の仮眠時間と異なるから,これらと同様に
取り扱うことはできない。
 さらに,被告は,庁舎管理業員は,仮眠時間中に職務専念義務を負わないから,
仮眠時間は賃金支払いの対象となる労働時間に該当しないとも主張するが,公務員
の職務専念義務の有無の問題と給与の取扱いの問題とは別個のものである。
 また,被告は,休憩時間において実作業に従事した場合には代替え休憩をとるこ
とが許されているから労働時間に該当しないと主張するが,原告は,庁舎管理業務
員として宿日直室に滞在し,いつ生じるか分からない具体的業務に備えなければな
らないために労働からの解放の保障が認められないのであるから,被告の上記主張
は失当といわねばならない。
3 被告は,庁舎管理業務員の業務は,労基法41条3号の「監視又は断続的労
働」に該当し,時間外割増賃金の支給に関する労基法の適用が除外されると主張す
るので,この点について判断する。
 労基法41条3号の「監視又は断続的労働に従事する者」が同法の適用の除外を
受けるのは,通常の労働者と比較して労働密度が疎であり,労働時間,休憩,休日
の規定を適用しなくても必ずしも労働者保護に欠けるところがないからである。こ
のような適用除外の趣旨に照らすと,同号所定の「監視」業務とは,原則として一
定部署にあって監視するのを本来の業務とし,常態として身体の疲労又は精神的緊
張の少ないものであり,「断続的労働」とは,作業自体が本来間歇的に行われるも
ので,作業時間が長く継続することなく中断し,しばらくして再び同じような態様
の作業が行われ,また中断するというように繰り返されるものをいうと解するのが
相当である。
 これを庁舎管理業務員の業務についてみると,服務要綱(甲10)によれば,庁
舎管理業務員の行うべき業務内容は,退庁者の確認,庁舎内の巡回,電話の収受
等,一般に宿日直業務として取り上げられる学校管理員や民間会社の警備員などが
行う同様の業務のほか,戸籍関係事務,火葬窯の予約,埋葬許可証等の発行,事
故・工事等の対応等が含まれ,現に原告は,平成14年1月から4月までの勤務4
8回中,戸籍に関する届出の受理3回,火葬窯の予約5回,火葬許可証等の発行2
回,工事関係者入庁の対応1回等の処理を行っている。このような服務要綱の定め
及び勤務の実態に照らすと,庁舎管理業務員の勤務は一定程度労働する必要のある
勤務であると認められるから,労基法41条3号所定の「監視又は断続的労働」に
該当するということはできない。
 したがって,庁舎管理業務員の業務について,労基法の適用が除外されるという
被告の主張は採用の限りではない。
4 割増賃金の算定について
 以上のとおりであるから,原告は,労基法37条に基づいて,時間外割増賃金及
び深夜割増賃金を請求することができる。
(1) 1時間あたりの単価
 労基法37条所定の割増賃金の基礎となる賃金は,通常の労働時間又は労働日の
賃金(いわゆる通常の賃金)である。原告の通常の賃金は,給料と調整手当(ただ
し,給与条例8条の2により同手当の算出の基礎とされている扶養手当に相当する
部分は除く。)及び住居手当(給与条例8条の3により一律1万円とされている同
手当は,労基法施行規則21条3号で除外賃金とされる「住宅手当」に該当しな
い。)の合計額を月の所定労働時間数で除した金額である。
 月の所定労働時間について,原告の労働時間は給与条例により1日8時間とされ
ているが,年間の勤務日数は当該年度の休日数によって年度ごとに異なり,具体的
な年間の勤務時間は,弁論の全趣旨により下記のとおりと認められる。この年間の
勤務時間数を12か月で除したものが月の所定労働時間となる(小数点以下第2位
四捨五入。以下同じ。)。
  期間        年間勤務時間  所定労働時間
11年4月~12年3月 1944時間 162.0時間
12年4月~13年3月 1960時間 163.3時間
13年4月~14年3月 1960時間 163.3時間
14年4月~15年3月 1952時間 162.7時間
 なお,原告は所定労働時間につき上記と異なる主張をするが,その根拠とすると
ころは平成10年以前の資料であって,上記期間に関する資料ではないから採用し
ない。
 上記にしたがって原告が本件で割増賃金を請求する期間の時間あたりの賃金を算
出する(甲7の1~10,甲8の1~12,甲9の1~7,弁論の全趣旨)。な
お,調整手当は扶養手当に相当する部分を除いた額である。
     期間        給料     調整手当   住居手当    
合計    労働時間   時間賃金
12年 1月~   3月 436,800 43,680 10,000 49
0,480 162.0 3027.7
    4月~   9月 436,800 43,680 10,000 49
0,480 163.3 3003.6
12年10月~13年8月 444.300 44.300 10,000 49
8,730 163.3 3054.1
13年 9月       444.300 44.300 10,000 49
8,730 163.3 3054.1
   10月~14年3月 450,800 45.080 10,000 50
5,880 163.3 3097.9
14年 4月~   6月 450,800 45.080 10,000 50
5,880 162.7 3109.3
(2) 原告の法定労働時間外労働時間を検討する。
 原告の勤務時間等は前記第2の1(2)のとおりであり,仮眠時間等を勤務時間
に加算すると,平成12年1月から平成13年8月までの1回あたりの実労働時間
は平日勤務が16.5時間,休日勤務が24.5時間となり,平成13年9月から
平成14年6月までの1回あたりの実労働時間は平日勤務が16.75時間,休日
勤務が24.75時間となる。(乙10の1~3参照)。
 上記及び原告主張の計算方法を前提とすれば,実労働時間総計,法定労働時間及
び法定労働時間外労働は別紙C6のとおりとなる。
(3) 時間外割増賃金について,原告は,通常の賃金(一時間当たりの平均賃
金)及びその25%の割合による賃金を併せた金額に時間外労働時間数を乗じた金
額を請求するところである(別紙C6)が,給与条例に基づいて支給される庁舎管
理業務員の賃金のうち,仮眠時間に対しては宿日直手当が支給され(同条例16
条),休憩時間に対しては賃金を支払わないこととされているのであるから,本件
において仮眠時間等に対する賃金の未払いはないものと言わなければならない(な
お,その労働密度が高くない仮眠時間及び休憩時間中の庁舎管理業務員の業務実態
に照らせば,1勤務当たり2000円という宿日直手当の金額は社会的に不当な廉
額とはいえない)。そうであるとすれば,未払いの時間外割増賃金は,通常の賃金
(一時間当たりの平均賃金)の25%に相当する部分に限られることになる。他
方,労基法37条所定の割増賃金の基礎となる賃金は,当該法定時間外労働ないし
深夜労働が,深夜でない所定労働時間中に行われた場合に支払われる通常の賃金で
あるから,上記25%の割合による賃金の基礎となる賃金が宿日直手当2000円
ではなく,前記(1)で算出した一時間当たりの平均賃金であることは言うまでも
ない。
 また,仮眠時間等のうち,午後11時30分から翌日午前5時までの5時間30
分は深夜時間帯として通常の賃金の2割5分の割増賃金の対象となる。
(4) 以上の検討によれば,平成12年1月から平成14年6月までの期間にお
いて,原告に生じた時間外割増賃金及び深夜割増賃金は以下のとおりとなる。
  勤務年月 実労働時間  法定時間   時間外   時間賃金   時間外
賃金  深夜割増賃金
12年 1月 246.50 177.10 69.40 3027.7 52,
531 54,120
    2月 206.00 159.90 46.10 3027.7 34,
894 49,957
    3月 230.00 177.10 52.90 3027.7 40,
041 49,957
    4月 222.00 171.40 50.60 3003.6 37,
996 49,559
    5月 238.50 177.10 61.40 3003.6 46,
105 53,689
    6月 197.50 171.40 26.10 3003.6 19,
598 45,429
    7月 238.50 177.10 61.40 3003.6 46,
105 53,689
    8月 238.50 177.10 61.40 3003.6 46,
105 53,689
    9月 214.00 171.40 42.60 3003.6 31,
988 49,559
   10月 246.50 177.10 69.40 3054.1 52,
989 54,592
   11月 238.00 171.40 66.60 3054.1 50,
851 50,393
   12月 222.00 177.10 44.90 3054.1 34,
282 50,393
13年 1月 222.00 177.10 44.90 3054.1 34,
282 50,393
    2月 214.00 159.90 54.10 3054.1 41,
307 50,393
    3月 230.00 177.10 52.90 3054.1 40,
390 50,393
    4月 255.00 171.40 83.60 3054.1 63,
831 58,791
    5月 238.50 177.10 61.40 3054.1 46,
880 54,592
    6月 222.00 171.40 50.60 3054.1 38,
634 50,393
    7月 197.50 177.10 20.40 3054.1 15,
576 46,193
    8月 214.00 177.10 36.90 3054.1 28,
174 50,393
    9月 233.00 171.40 61.60 3054.1 47,
033 50,393
   10月 250.50 177.10 73.40 3097.9 56,
846 59,635
   11月 249.75 171.40 78.35 3097.9 60,
680 55,375
   12月 241.75 177.10 64.65 3097.9 50,
070 55,375
14年 1月 249.75 177.10 72.65 3097.9 56,
266 55,375
    2月 217.00 159.90 57.10 3097.9 44,
223 51,115
    3月 225.00 177.10 47.90 3097.9 37,
097 51,115
    4月 225.00 171.40 53.60 3109.3 41,
665 51,303
    5月 249.75 177.10 72.65 3109.3 56,
473 55,579
    6月 225.00 171.40 53.60 3109.3 41,
665 51,303
5 消滅時効の成否について
(1) 原告が平成14年9月11日に本件訴訟を提起したこと,被告が平成16
年3月3日の第7回弁論準備手続期日において,原告の平成12年1月から7月ま
での未払賃金請求権について労基法115条所定の2年の消滅時効を援用するとの
意思表示をしたことは,当裁判所に顕著である。
(2) 証拠(甲27の1,2)によれば,原告代理人らが被告に対して平成14
年7月18日到達の内容証明郵便により仮眠時間等に対する未払賃金の支払いを求
める旨通知したことが認められる。原告の被告に対する訴訟外の請求は,民法15
3条の催告に該当するので,本件訴訟の提起によって,上記通知の到達した平成1
4年7月18日に時効中断の効力が生じたといえるから,平成12年6月21日ま
でに支払日が到来する未払賃金請求権は時効により消滅した。
 原告は,被告による消滅時効の援用が権利の濫用であると主張するが,労働者や
労働組合が労働条件に関して使用者と継続的に交渉を行っていたからといって,そ
のような事情が使用者による労働債権の消滅時効の援用を妨げることにはならな
い。原告の上記主張は失当である。
(3) したがって,原告の請求する割増賃金債権のうち,平成12年1月分から
同年5月分までの部分は労基法115条により時効消滅した。
6 既払時間外勤務手当の控除
 被告が,別紙C3のとおり,平成12年6月分から平成14年6月分まで,原告
に対して時間外勤務手当として合計43万1233円を支払ったことは原告の自認
するところである。
 被告の原告に対する労基法37条に基づく割増賃金の支払いは,本件給与条例に
基づく割増賃金の支払いが同条項の基準に満たない部分にかかるものであるから
(労基法13条),既払いの割増賃金を控除する必要があり,原告もこれを控除し
て請求している。
7 前記3~6の結果,被告が原告に対して支払うべき賃金は,別紙A記載のとお
り,平成12年6月分から平成14年6月分の時間外労働時間に対する割増賃金1
08万3011円に同期間の深夜割増賃金130万5853円を加えた合計238
万8864円から同期間の既払金を控除した195万7631円となる。
8 結論
 よって,原告の請求は,別紙Aの未払賃金欄記載の金額及びこれに対する賃金支
給日の翌日以降の日である付帯請求欄記載の日から支払い済みまで民法所定年5分
の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し,そ
の余は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本
文,61条を,仮執行の宣言について同法259条1項を,それぞれ適用して主文
のとおり判決する。
東京地方裁判所八王子支部民事第2部
裁判長裁判官 押切瞳
裁判官 西理香
裁判官 栗田正紀
別紙A
支給年月    時間外割増賃金    深夜割増賃金    既払金     
 未払賃金     付帯請求
H12.7    19,598    45,429   4,504    
60,524  H12.7.22
H12.8    46,105    53,689  19,518    
80,277  H12.8.22
H12.9    46,105    53,689  15,615    
84,180  H12.9.22
H12.10   31,988    49,559   2,252    
79,296  H12.10.21
H12.11   52,989    54,592  13,740    
93,841  H12.11.22
H12.12   50,851    50,393  15,878    
85,365  H12.12.22
H13.1    34,282    50,393       0    
84,675  H13.1.21
H13.2    34,282    50,393   4,580    
80,095  H13.2.22
H13.3    41,307    50,393  16,030    
75,669  H13.3.22
H13.4    40,390    50,393  22,900    
67,883  H13.4.21
H13.5    63,831    58,791  19,084   1
03,538  H13.5.22
H13.6    46,880    54,592   4,427    
97,045  H13.6.22
H13.7    38,634    50,393  13,740    
75,287  H13.7.21
H13.8    15,576    46,193   2,290    
59,479  H13.8.22
H13.9    28,174    50,393   9,160    
69,407  H13.9.22
H13.10   47,033    50,393  25,953    
71,473  H13.10.21
H13.11   56,846    59,635  10,375   1
06,106  H13.11.22
H13.12   60,680    55,375  12,698   1
03,357  H13.12.22
H14.1    50,070    55,375   8,052    
97,393  H14.1.22
H14.2    56,266    55,375  33,371    
78,270  H14.2.22
H14.3    44,223    51,115  49,786    
45,552  H14.3.22
H14.4    37,097    51,115  54,975    
33,238  H14.4.21
H14.5    41,665    51,303  39,651    
53,317  H14.5.22
H14.6    56,473    55,579  32,654    
79,397  H14.6.22
H14.7    41,665    51,303            
92,968  H14.7.21
      1,083,011 1,305,853 431,233 1,9
57,631

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職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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