弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人別府祐六の上告趣意について。
 被告人が控訴をした事件及び被告人のために控訴をした事件については、原判決
の刑より重い刑を言渡すことを得ない(いわゆる不利益変更禁止の原則、刑訴第四
〇三条)。しかるに、検事が独立控訴又は附帯控訴をした事件については、原判決
の刑より重い刑をも言渡すことを得る。それ故、所論のように被告人にとつて検事
の控訴は、恐いものであり少なからず畏怖の念を抱かしめるものであり、殊に検事
の附帯控訴があつた場合には、被告人は、不安定な状態に置かれ、結局自己の控訴
をそのまま維持して刑の軽重の運命を控訴判決の結果に委ねるか、又は自己の控訴
を取下ぐることによつて検事の附帯控訴を滅却せしめ原審判決の結果に甘んずるか
の岐路に立つに至ることは、想像に難くないところである。しかし、これは各具体
的事件において、被告人が十分に自己の利害を比較考慮して自由に決定すべき問題
である。ただこれは刑事訴訟法が被告人の控訴に不利益変更禁止の原則を認めたこ
とに由来するに過ぎないものである(立法例によつてはかかる原則を認めていない)。
さればこれをもつて直ちに所論のように検事の附帯控訴自体を違憲であると論結す
ることはできない。又検事は国家機関として公益を代表して適正な法の運用と正義
の実現のために控訴をなすものであるから、検事のみの独立控訴がある場合でも被
告人に常に原判決の刑より重い刑を言渡すのではなく、無罪その他の軽い刑を言渡
すこともできるのである。それ故、特に被告人に附帯控訴を認める必要は全然存し
ないのである。純理から言えば、被告人控訴の場合に不利益変更禁止の原則が認め
られている以上、これと対比して検事控訴の場合に利益変更禁止の原則が認められ
ることが公平の観念に適合すると論ぜられないこともない。若し、かように検事控
訴の場合に利益変更禁止の原則が認められている場合においては、検事の附帯控訴
との均衡上被告人の附帯控訴を認めることが必要となつて来るのであるが、かかる
原則は刑事訴訟法上認められていないから、前述のごとく被告人に附帯控訴を認め
る必要はない。されば、検事の附帯控訴を認め、被告人の附帯控訴を認めないのを
公平の観念に反すると言うことはできない。論旨は検事の附帯控訴について種々の
不都合と不合理を挙げているが、そのすべては刑事訴訟法が被告人の控訴に不利益
変更禁止の原則を認めたことに原因するのであつて、この原則さえ認めなければ論
旨のごとき非難は全く起り得ない。それ故、問題の焦点は単に刑事訴訟法の内容の
当不当の点にあるのであつて、所論のごとく憲法適否の点にあるのではない。すな
わち、検事の附帯控訴に関する刑訴法第三九九条の規定は、憲法違反と言うことは
できない。されば、かかる憲法違反を根拠とする論旨は、すべて理由なきものであ
る。
 被告人の上告趣意について。
 右は原判決の認定した事実と異る事実を主張し、或は一家の事情を述べて寛大な
る裁判を望むというのであるが、かかる事由は上告適法の理由とはならない。
 以上の理由により、刑訴法第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 福屋尾弥太郎関与
  昭和二三年一一月二四日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官小谷勝重は差支えのため署名捺印することができない
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義

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