弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人瞿曇・・作成の控訴趣意書記載のとおりであるからこれ
を引用する。
 控訴趣意第一点(事実誤認の主張)について。
 所論は、被告人は確定的殺意は勿論未必的にも殺意はなかつたのに殺意ありと認
定したのは事実誤認であるというのである。
 記録を精査するに、原判示事実は、未必的殺意の点を含めて原判決挙示の各証拠
を総合して十分認めることができる。すなわち右各証拠によると、被告人は予てか
ら原判示のような理由で父Aを快よく思つていなかつたこと、本件犯行に使用した
刺身庖丁は自宅階下炊事場にあつたもので、被告人が父に頭部を殴打されるや憤慨
の余り「親父殺したろか」といいながら、被告人自身もそのつもりで二階から下り
て持ち出して来たことは、警察官に対して自ら認めている(被告人の司法警察員に
対する自首調書及び司法警察職員に対する各供述調書)ところであるし、又右庖丁
は刃渡り一四、五センチメートルの極めて鋭利なもので、用法によつては容易に人
を殺害し得るものであることは一見して明らかであり、而も被告人はこれを持つて
二階に行こうとした際、母Bに足を掴まれ制止されたのを振り切つて再び二階に戻
るなり、右庖丁で、敷居に腰を下していた父の胸部を力強く二回突き刺し、その結
果、右前胸部横隔膜を刺通し、肝右葉まで達する深さ八センチメートルの刺創等を
負わせたものであることが認められる。そうして右事実に徴すると被告人は確定的
殺意はともかく自分の行為によつて父が死亡するも已むを得ないことの認識すなわ
ち未必の殺意のあつたことを認めるに十分である。被告人の検察官に対する供述調
書及び原審、当審各公判廷の各供述中右認定に反する部分は信用し難い。そうする
と被告人に未必の殺意を認めた原判決の事実認定には何ら誤りのかどはない。論旨
は理由がない。
 控訴趣意第二点(法の解釈適用の誤りの主張)について。
 所論は、刑法二〇〇条は日本国民に対してのみ適用があり、外国人には適用がな
いのに、原判決が、被告人も被害者も共に韓国人である本件につき、尊属殺人未遂
を以て問擬しているのは法の解釈適用を誤つたものであるというのである。
 <要旨>わが刑法は、その一条において、いわゆる属地主義を採用し、「本法ハ何
人ヲ問ハス日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス」とし、いやしくも
日本国内で罪を犯した者は国籍の如何を問わず刑法の適用を受ける旨を規定してい
るのである。従て刑法二〇〇条も外国人にも又適用のあることは当然としなくては
ならない。
 けだし同条について、外国人を除外する旨の規定もなく、また日本人の直系尊属
についてのみ適用すべきであるという特別の理由も見出すことができないからであ
る。
 ところで刑法二〇〇条は「自己……ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役
ニ処ス」と規定しているが、ここにいう直系尊属とは子又は孫等よりみて父母、祖
父母等の系列にあたる者をいうものと解すべきところ、その関係は事実上の関係で
はなく法律上の関係をいうものであることは明白である。従てその法律関係は日本
人については民法等日本の法律により、その定めるところに従うべきことは勿論で
あるが、外国人については、民法等日本の法律の適用があるわけではないから、結
局法例二〇条、二二条等によつてこれを定めるべきものと解せられる。そして本件
に関する親子間の法律関係は、法例二〇条によれば、父の本国法によるべきものと
規定するから、被告人と父A間に法律上の親子関係従て尊属関係が認められるかど
うかはAの本国法たる韓国法によつて決すべきものと解せられるのである。
 そこで韓国法をみるに、韓国民法(西紀一九五八年法律四七一号)八四四条、八
五五条等によれば法律上の実親子関係について定められており、七六八条以下に尊
属に関する規定があつて親が子にとつて直系尊属とせられることが明らかである
し、(同民法は同附則二条によつて遡及効を有する旨定められるから、当然被告人
及びAについても適用がある。)更に韓国戸籍法及び記録中の被告人の戸籍謄本を
対照してみると、本件被害者であるAと被告人間には韓国法上親子関係があり、被
告人によつてAが直系尊属にあたることが明らかである。しかもその関係はわが民
法に照しても又同様であることが明白であるから、Aは被告人にとつてわが刑法二
〇〇条に定める「自己ノ直系尊属」に該当するものといわなくてはならない。
 然らば原判決が被告人に対し尊属殺人未遂罪として刑法二〇〇条、二〇三条を適
用処断したことは正当であり所論の如き法律の解釈適用を誤つたものということは
できない。論旨は理由がない。
 控訴趣意第三点(量刑不当の主張)について。
 所論は、本件については尊属殺の法条の適用がないことを前提とし、原判決の量
刑不当を主張するものであるが、右前提とする所論の採用し難いことはさきに判断
したとおりであり、又原判決は本件につき未遂減軽、酌量減軽をした上、その処断
刑の最下限を量刑したものであるから、その不当を主張する所論は当らない。本論
旨も理由がない。
 よつて刑事訴訟法三九六条を適用し、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 山田近之助 裁判官 藤原啓一郎 裁判官 瓦谷末雄)

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