弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
    本件上告を棄却する。
    上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人神田昭二、同眞田文人の上告理由一及び上告補助参加代理人松崎孝一
の上告理由一について
 土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用
される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図る
ことを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被
収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償をすべきであり、金銭をもって
補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得する
ことを可能にするに足りる金額の補償を要するものと解される(最高裁昭和四六年
(オ)第一四六号同四八年一〇月一八日第一小法廷判決・民集二七巻九号一二一〇
頁参照)。同法による補償金の額は、「相当な価格」(同法七一条参照)等の不確
定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及
び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきもので
あって、補償の範囲及びその額(以下、これらを「補償額」という。)の決定につ
き収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。したがって、同
法一三三条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に
関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するものではなく、
証拠に基づき裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し、裁決に定められた
補償額が右認定額と異なるときは、裁決に定められた補償額を違法とし、正当な補
償額を確定すべきものと解するのが相当である。
 所論は、補償額の決定につき収用委員会に裁量権があることを前提とするもので
あって、その前提において失当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は採用す
ることができない。
 上告代理人神田昭二、同眞田文人の上告理由二及び上告補助参加代理人松崎孝一
の上告理由二について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属す
る証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づき原判決を論
難するものであって、採用することができない。
 上告代理人神田昭二、同眞田文人の上告理由三について
 土地収用法一三三条所定の損失補償に関する訴訟は、裁決のうち損失補償に関す
る部分又は補償裁決に対する不服を実質的な内容とし、その適否を争うものである
が、究極的には、起業者と被収用者との間において、裁決時における同法所定の正
当な補償額を確定し、これをめぐる紛争を終局的に解決し、正当な補償の実現を図
ることを目的とするものということができる。右訴訟において、権利取得裁決にお
いて定められた補償額が裁決の当時を基準としてみても過少であったと判断される
場合には、判決によって、裁決に定める権利取得の時期までに支払われるべきであ
った正当な補償額が確定されるものである。しかも、被収用者である土地所有者等
は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる
反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっ
ているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額と
の差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民
法所定の年五分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するの
が相当である。
 所論は、本件では、収用土地に係る損失補償額の総額については争いがないが、
収用土地上の小作権の存否につき争いがあるため、土地収用法四八条五項によるい
わゆる不明裁決がされており、上告人は、同法九五条四項によって、小作権がある
とされた場合の小作権の喪失に対する補償金について供託をしているにもかかわら
ず、原判決は、本件裁決が認めた割合よりも少ない小作権割合を認めたために生じ
たいわゆる底地権相当の損失補償額の増額分につき判決確定前からの遅延損害金の
支払義務を認めており、この点に違法があるという。しかし、本件訴訟では、小作
権があるとされる場合においても土地所有者である被上告人が前記権利取得の時期
までに払渡しを受けるべき底地権相当の補償額が争われ、その額について正当な補
償額に不足するとの判断がされたものであるから、その差額の支払義務は供託の対
象となっている債務とは別のものであり、右差額については、右権利取得の時期よ
り後の法定利率相当額が付されるべきものと解するのが相当である。
 そうすると、被上告人に対する損失補償額増額分につき、本件裁決所定の権利取
得の時期より後である本件訴状送達の日の翌日から民法所定の年五分の割合による
金員の支払を命じた原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論
の違法はない。論旨は採用することができない。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    尾   崎   行   信
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    千   種   秀   夫

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛