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平成28年12月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成27年(ワ)第25149号特許権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日平成28年11月30日
判決
原告フルタ電機株式会社
同訴訟代理人弁護士小南明也
被告渡邊機開工業株式会社
同訴訟代理人弁護士塩見渉
同塩見明
同訴訟代理人弁理士涌井謙一
主文
1被告は,別紙物件目録1記載の「生海苔異物除去機」を,生産し,譲渡し,
貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2被告は,別紙物件目録2記載の「生海苔異物除去機」を,生産し,譲渡し,
貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
3被告は,別紙物件目録3記載の「回転円板」を,生産し,譲渡し,貸し渡し,
又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
4被告は,その保持する別紙物件目録1及び2記載の「生海苔異物除去機」並
びに同目録3記載の「回転円板」を廃棄せよ。
5訴訟費用は被告の負担とする。
6この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1主文第1項ないし第4項同旨
2仮執行宣言
第2事案の概要
1本件は,名称を「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」
とする発明(請求項の数5。以下,その請求項1,3及び4記載の各発明をそ
れぞれ「本件発明1」,「本件発明3」及び「本件発明4」といい,これらを
併せて「本件各発明」という。)についての特許権を有する原告が,被告は別
紙物件目録1及び2記載の生海苔異物除去機(以下,同目録1記載の除去機を
「本件装置(LS型)」,同目録2記載の除去機を「本件新装置」という。)
を製造・販売するところ,本件装置(LS型)は本件各発明の,本件新装置は
本件発明3の技術的範囲にそれぞれ属し,また本件新装置の部品である別紙物
件目録3記載の回転円板(以下「本件回転円板」という。)は本件新装置の
「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に当たると主張して,被告に
対し,特許法100条1項及び2項に基づき,本件装置(LS型),本件新装
置及び本件回転円板の生産,譲渡等の差止め(請求の趣旨第1項ないし3項)
及びその廃棄(請求の趣旨第4項)を求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣
旨により容易に認定できる事実)
(1)当事者
ア原告は,海苔製造加工に必要な機械の製造販売業者であり,その他各
種農業用及び各種水産用機械器具並びに各種風水力機械の製造,販売,
施工等を目的とする株式会社である。
イ被告は,海苔製造加工に必要な機械の製造販売業者である。(甲10)
(2)原告の有する特許権
原告は,次の内容の特許権(以下,この特許権を「本件特許権」といい,
これに係る特許を「本件特許」という。)を有する。
登録番号特許第3966527号
発明の名称生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置
出願日平成10年6月12日
登録日平成19年6月8日
訂正審決日平成22年2月25日
本件特許に関しては,訂正審判事件(訂正2010-390006)にお
ける平成22年2月25日付け審決(同年3月9日確定)により訂正が認め
られている。同訂正後の本件特許に係る特許請求の範囲,明細書及び図面の
内容は,別紙特許審決公報中の特許訂正明細書及び図面(以下「本件訂正明
細書等」という。)に各記載のとおりである。(甲3)
(3)本件特許の特許請求の範囲
本件特許の特許請求の範囲(請求項の数5)のうち請求項1,3及び4の
記載(本件各発明)は,それぞれ本件訂正明細書等の各該当項に記載のとお
りである。
(4)本件各発明の構成要件の分説
本件各発明をそれぞれ構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,
それぞれの記号に従い「構成要件A1」などという。)。(弁論の全趣旨)
ア本件発明1
A1生海苔排出口を有する選別ケーシング,
A2(及び)回転板,
A3この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手
段,
A4(並びに)異物排出口
A5をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液
槽を有する生海苔異物分離除去装置において,
B前記防止手段を,
B1突起・板体の突起物とし,
B2この突起物を,前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とし

C生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
イ本件発明3
A1~5(前記アのA1~5と同じ)
B’(前記アのBと同じ)
B’1(前記アのB1と同じ)
B’2この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設け
る構成とした
C(前記アのCと同じ)
ウ本件発明4
A1~5(前記アのA1~5と同じ)
B”(前記アのBと同じ)
B”1(前記アのB1と同じ)
B”2この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアラン
スに設ける構成とした
C(前記アのCと同じ)
(5)本件特許権の審査経過
本件特許は,その出願当初,請求項の数が7であり,うち請求項1には,
共回り防止手段を異物分離除去槽に設けた生海苔の異物分離除去装置におけ
る生海苔の共回り防止装置が記載され,請求項2にはその共回り防止手段を
所定の位置に設けることが記載されていた。また,請求項5(特許査定後の
請求項3であり,本件発明3に相当)には,出願当初,「突起・板体等の突
起物」との記載があった。
これに対し,特許庁は,①請求項1及び2に係る発明は,先願(実願平1
0-003304号)の明細書に記載された発明と同一である,②請求項5
に記載されている「突起・板体等の突起物」の「等」とは,突起・板体以外
に何を包含しているのか不明であるとの理由により,出願を拒絶すべきもの
として,その旨の通知をした。
そのため,原告は,上記①に対しては請求項1及び2を削除し,上記②に
対しては「等」を削除して「突起・板体の突起物」と補正するなどしたとこ
ろ,特許庁から本件特許として特許査定を受けた。(乙2ないし5)
(6)原告と株式会社親和製作所との訴訟
原告は,平成22年,株式会社親和製作所(以下「親和製作所」という。)
の製造・販売する原藻異物除去洗浄機等が本件発明3及び4の技術的範囲に
属するなどと主張して,当庁に対し,親和製作所による製造・販売等の差止
め及び損害賠償を求める訴え(以下「親和事件」という。)を提起した。
当庁は,平成24年11月2日,上記洗浄機等が本件発明3の技術的範囲
に属するなどと判断して,原告の請求を一部認容する旨の判決を言い渡した
(当庁平成22年(ワ)第24479号)。(乙8)
これに対して原告及び親和製作所の双方が知的財産高等裁判所に控訴した
が,同裁判所も,平成25年4月11日,上記洗浄機等が本件発明3の技術
的範囲に属するなどと判断して,双方の控訴を棄却する旨の判決を言い渡し
た(知的財産高等裁判所平成24年(ネ)第10092号)。(乙9)
(7)原告と被告との前訴等
ア被告は,型名「WK-500」,「WK-550」,「WK-600」
及び「WK-700」の生海苔異物除去機(以下「本件装置(WK型)」
という。)を製造・販売していた。
本件装置(WK型)の構成は,別紙物件目録1記載の別紙図面(1)及び
(2)における本件装置(LS型)の構成と同じであり,環状固定板4(以
下「環状固定板」という。)及びその内側に回転自在に遊嵌された回転
円板3を備え,環状固定板には板状部材8(以下「板状部材」という。)
が取り付けられていた。なお,同図面中の「C」はクリアランスを意味
する。
イ原告は,平成26年2月26日,本件装置(WK型)が本件各発明の
技術的範囲に属するなどと主張して,当庁に対し,被告による製造・販
売等の差止めを求める仮処分を申し立てた。
当庁は,同年10月31日,上記仮処分を発令する旨の決定をした
(以下「本件仮処分決定」という。)。(甲9)
ウ原告は,上記仮処分の申立てに先立ち,平成25年12月11日,本
件装置(WK型)が本件各発明の技術的範囲に属するなどと主張して,
当庁に対し,被告による製造・販売等の差止め及び損害賠償を求める訴
え(以下「前訴」という。)を提起した。
当庁は,平成27年3月18日,本件装置(WK型)の板状部材が本
件各発明の構成要件B1,B’1及びB”1にいう「突起・板体の突起
物」に該当することを前提に,同装置が本件各発明の技術的範囲に属す
るなどと判断して,原告の請求を一部認容する旨の判決を言い渡した
(当庁平成25年(ワ)第32555号)。(甲10)
これに対して原告及び被告の双方が知的財産高等裁判所に控訴したが,
同裁判所も,同年11月12日,本件装置(WK型)が本件各発明の技
術的範囲に属するなどと判断する旨の判決を言い渡した(ただし,差止
めの対象及び損害額について第1審判決を変更した。知的財産高等裁判
所平成27年(ネ)第10048号,第10088号)。(甲30)
(8)被告の行為
被告は,本件新装置を製造・販売している(ただし,本件新装置の構成に
ついては,後記のとおり争いがある。)。(甲31の1,2)
(9)本件回転円板
本件新装置では,本件回転円板の側面が回転により摩耗しやすいため,本
件回転円板は部品として取り外し可能となっており,被告はこれを補充部品
として需要者に供給している。
(10)構成要件の充足性
本件新装置は,本件発明3の構成要件A1,A2,A4,A5及びB’を
それぞれ充足する。
3争点
(1)本件装置(LS型)
被告による本件装置(LS型)の製造・販売の有無
(2)本件新装置
ア本件新装置の構成
イ構成要件A3の充足性
ウ構成要件B’1及びB’2の充足性
エ構成要件Cの充足性
(3)本件回転円板
特許法101条1号の間接侵害の成否
第3争点に関する当事者の主張
1争点(1)(被告による本件装置(LS型)の製造・販売の有無)について
〔原告の主張〕
被告は,本件仮処分決定によって本件装置(WK型)の製造・販売を差し止
められたにもかかわらず,板状部材等の構成をそのままにしながら,型名を
「LS-R」,「LS-S」,「LS-G」及び「LS-L」と変更しただけ
で(本件装置(LS型)),平成26年11月以降もこれらを製造・販売し続
けている。このことは,被告のパンフレットのほか,①被告の取引先である有
限会社白石海苔機械センター(以下「白石海苔」という。)が,「WK-60
0」と同一型の装置1台を「LS-G」として倉庫に保管している事実,及び
②白石海苔が「WK-550」と同一型の装置1台を「LS-S」として有限
会社鶴商(以下「鶴商」という。)に転売している事実からも明らかである。
〔被告の主張〕
否認する。いずれも白石海苔の販売活動に関わる出来事であって,被告は関
知していない。上記①については,被告は「LS-G」を白石海苔に販売した
時点では板状部材を取り付けておらず,原告がその主張の根拠とする写真は誤
りであるし,仮にそうでないとしても白石海苔が何らかの事情により取り付け
たものである。また,上記②についても,原告がその主張の根拠とする請求書
の記載は誤記である。いずれにせよ,白石海苔が被告の製品を販売していたと
しても,そのことから直ちに白石海苔の販売活動全てについて被告が関知して
いるということにはならない。
2争点(2)ア(本件新装置の構成)について
〔原告の主張〕
(1)本件新装置の構成
本件新装置の構成は,別紙「本件新装置の物件説明に関する対比一覧表」
の「原告第2準備書面(物件説明書2)」欄及び「原告の対応」欄並びに別
紙「原告主張図面」記載のとおりである。
(2)「突部D」を6個有する回転円板の存在
本件新装置については,突部Dを2個有する回転円板(別紙「原告主張図
面」図2-2参照)を備えたもののほか,これを6個有する回転円板(同図
2-1参照)を備えたものも存在している。被告はこの点を否認するが,こ
の点は白石海苔に保管されていた本件新装置からも明らかであるし,被告自
身,これを6個有する回転円板を備えたものを保管している事実自体は認め
ているところである。
〔被告の主張〕
(1)本件新装置の構成につき
本件新装置の構成は,別紙「本件新装置の物件説明に関する対比一覧表」
の「被告準備書面(2)」欄及び別紙「被告主張図面」記載のとおりである。
(2)「突部D」を6個有する回転円板の存在につき
否認する。本件新装置は凹部を2個(原告のいう「突部D」を2個)有す
る回転円板を備えたものだけであり,これを6個有する回転円板を備えた生
海苔異物除去機は製造・販売していない。白石海苔に保管されていた本件新
装置の回転円板は実験用に試作したものにすぎず,これを白石海苔が展示会
へ出品するため本件新装置に設置したものにすぎない。
3争点(2)イ(構成要件A3の充足性)について
〔原告の主張〕
本件新装置における回転円板3の表面3bには突部Dが設けられている。回
転円板3の回転によって異物選別層A内の生海苔混合液は回転し,吸引ポンプ
の吸引によって生海苔混合液は回転しながら(環状)隙間Cを通過していくが,
生海苔が隙間Cを通過する際の回転速度は回転円板3の回転に比べて相対的に
遅くなるため,①隙間Cの開口に挟まってスムーズに入れなかった生海苔(正
常でない生海苔)や異物は,上記突部Dの略垂直形状の側面壁3c(特にエッ
ジx)との衝突でかき出されたり,切除されたりし,また,②正常でない生海
苔や異物の隙間Cへの食い込みは上記側面壁3cによって遮断され,生海苔の
動きは矯正される。
回転円板3の突部Dは,これらの作用によって,隙間Cの目詰まり又は閉塞
を発生させる状況を回避させるものであり,隙間Cは目詰まりすることなく,
生海苔は隙間Cを介してケーシング部材7に流れ込み,吸引ポンプ用連結口を
介して次工程へ送られる。
したがって,本件新装置は,本件発明3の構成要件A3を充足する。
〔被告の主張〕
原告の主張する「突部D」なる構造は本件新装置に存在しない。本件新装置
は「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を備えて
いるが,それは回転円板に形成されている凹部及び固定リング(環状固定板)
に形成されている固定リング側凹部であって,その意味で構成要件A3に該当
するだけである。
4争点(2)ウ(構成要件B’1及びB’2の充足性)について
〔原告の主張〕
(1)「突起・板体の突起物」の意義
構成要件B’1の「突起・板体の突起物」における「突起」とは,「ある
部分が周囲より高く突き出ていること。また,そのもの。でっぱり。」,
「部分的につきでること。また,そのもの。」,「つき出たもの」の意味で
用いられる語である。
したがって,「突起」の語義から,周囲より高く突き出た部分,部分的に
突き出ているもの,出っ張りと判断されるものは「突起」に該当するのであ
り,また,その物(部分)自体が「突起物」に該当する。なお,板体を該当
箇所に設置(貼り付けや一体形成等の設置方法は問わない。)した結果,突
起状を呈する場合は,その板体自体が「突起物」に該当する。
(2)充足性
本件新装置の回転円板(本件回転円板)には突部Dが設けられているとこ
ろ,これは平面部よりも突出し,凹凸等の突起物に該当することが明らかで
あるから,突部Dは構成要件B’1の「突起・・・の突起物」に該当する。
また,突部Dの平面形状は略扇形で,薄板状部材を取り付けたような外観
を呈するから,「突起」に該当する点に加えて,突部Dは構成要件B’1の
「板体の突起物」に該当する。
〔被告の主張〕
(1)「突起・板体の突起物」の意義につき
ア本件訂正明細書等の段落【0026】には「切り溝,凹凸,ローレット
等の突起物」以外に「突起・板体・ナイフ等の突起物」とも記載されてお
り,構成要件B’1はこのうち「突起・板体の」突起物に限定しているか
ら,「切り溝,凹凸,ローレット等の突起物」は構成要件B’1の「突起
・板体の突起物」に該当しない。このことは,原告が本件特許権の審査の
際に出願当初の請求項1及び2を削除し,もって「凹部」に係る先願との
発明の同一性を回避したことや,「突起・板体等の突起物」から「等」を
削除したことからも明らかである。
したがって,「凹凸・・・の突起物」は,「突起・板体の突起物」に該
当しない。
イまた,構成要件B’1の「突起・板体の突起物」における「・」を並列
の意味に解すると,「突起の突起物」と「板体の突起物」とを観念するこ
とになるが,「突起の突起物」は単なる「突起物」になるため,そのよう
な解釈は採用できない。したがって,「突起・板体の突起物」とは「突起
している板体の突起物」と解すべきである。
ウさらに,本件訂正明細書等に「この防止手段を,簡易かつ確実に適切な
場所に設置することを意図する。」(段落【0009】)及び「この防止
手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有する。」
(段落【0031】)と記載されていることからすると,「この防止手段」
である「突起・板体の突起物」とは,「簡易・・・に設置できる」もの,
すなわち共回り防止装置を構成する回転板・選別ケーシングとは別体であ
るものをいうと解すべきである。
エそして,本件特許権の審査経緯や親和事件の判示内容からすると,構成
要件B’1の「突起・板体の突起物」とは,選別ケーシングと回転円板で
形成されるクリアランスを超えて突出するものというべきである。
オなお,仮に「凹凸・・・の突起物」が「突起・板体の突起物」に含まれ
るとしても,その「凸」部分が,円周端面等の所定の面から突き出たある
いはクリアランスに突き出たものであって,生海苔混合液がクリアランス
に導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果),
生海苔の動きを矯正し,効率的にクリアランスに導く(矯正効果)という
機能を果たす場合にのみ,「凹凸・・・の突起物」の「凸」部分は,「突
起・板体の突起物」に該当するものというべきである。
(2)充足性につき
本件新装置の回転円板(本件回転円板)は「凹凸・・・の突起物」である
から,「突起・板体の突起物」に該当しない。
また,凹部Eの間の凸部とみなされる形状は,別紙被告主張図面のとおり,
実際には上側平面3bと外周側の側面3aで構成されており,平滑な円板の
一部にすぎず,円周端面等の所定の面から突き出たあるいはクリアランスに
突き出たものではないから,そもそも「凸部」とはいえない。本件回転円板
に設けられているのは「凹部」であり,別紙原告主張図面にいうところの平
面部3b2は凹部の底面に他ならない。
仮に,「凹凸・・・の突起物」が「突起・板体の突起物」に含まれるとし
ても,凹部Eの間の凸部とみなされる形状にはクリアランスの目詰まりをな
くす機能はなく,上記(1)オの防止効果及び矯正効果を欠くから,「突起・
板体の突起物」に該当しない。
5争点(2)エ(構成要件Cの充足性)について
〔原告の主張〕
本件新装置は,共回り防止手段たる回転円板3の突部Dなどからなる共回り
防止のための装置体系を包含する生海苔異物分離除去装置であるから,構成要
件Cに該当する。
〔被告の主張〕
否認する。本件新装置は「回転板とともに回る生海苔の共回りを防止する手
段」を備えた生海苔異物分離除去装置であるが,生海苔の共回り防止装置では
ない。
6争点(3)(特許法101条1号の間接侵害の成否)について
〔原告の主張〕
本件発明3は「生海苔の共回り防止装置」に関する発明であるところ,本件
回転円板だけでは「共回り防止装置」に該当しない。
したがって,本件回転円板は,本件発明3の技術的範囲に属する物(本件新
装置)の生産にのみ用いる物であることは明らかである。
〔被告の主張〕
否認する。
第4当裁判所の判断
1本件各発明の意義
(1)本件訂正明細書等には,次の記載がある。
ア発明の属する技術分野
・「本発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除去
する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関す
る。」(段落【0001】)
イ従来の技術
・「この異物分離機構を備えた生海苔異物分離除去装置としては,特開
平8-140637号の生海苔の異物分離除去装置がある。その構成は,
筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅
かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適
宜駆動手段によって回転可能とするとともに,前記筒状混合液タンクに
異物排出口を設けたことにある。この発明は,比重差と遠心力を利用し
て効率よく異物を分離除去できること,回転板が常時回転するので目詰
まりが少ないこと,又は仮りに目詰まりしても,当該目詰まりの解消を
簡易に行えること,等の特徴があると開示されている。」(段落【00
02】)
ウ発明が解決しようとする課題
・「前記生海苔の異物分離除去装置,又は回転板とクリアランスを利用
する生海苔異物分離除去装置においては,この回転板を高速回転するこ
とから,生海苔及び異物が,回転板とともに回り(回転し),クリアラ
ンスに吸い込まれない現象,又は生海苔等が,クリアランスに喰込んだ
状態で回転板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象であ
り,究極的には,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発
生する状況等である。この状況を共回りとする。この共回りが発生する
と,回転板の停止,又は作業の停止となって,結果的に異物分離作業の
能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の如く,最
悪の状況となることも考えられる。」(段落【0003】)
・「前記共回りの発生のメカニズムは,本発明者の経験則では,1.生
海苔(原藻)に根,スケール等の原藻異物が存在し,生海苔の厚みが不
均等のとき,2.生海苔が束状,捩じれ,絡み付き等の異常な状態で,
生海苔が展開した状態でない,所謂,生海苔の動きが正常でないとき,
3.生海苔が異物を取り込んでいる状態,生海苔に異物が付着する等の
状態であって,生海苔の厚みが不均等であるとき,等の生海苔の状態と
考えられる。」(段落【0004】)
エ課題を解決するための手段
・「請求項1の発明は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目詰
まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能
率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)を図
ることにある。またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置
することを意図する。」(段落【0005】)
・「請求項1は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,こ
の回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並び
に異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔
混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,
突起・板体の突起物とし,この突起物を,前記選別ケーシングの円周端
面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り
防止装置である。」(段落【0006】)
・「請求項3の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防
止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置することを意図する。」
(段落【0009】)
・「請求項3は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,
この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並
びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海
苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,
突起・板体の突起物とし,この突起物を回転板及び/又は選別ケーシン
グの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔
の共回り防止装置である。」(段落【0010】)
・「請求項4の発明は,請求項1の目的を達成することと,またこの防
止手段を,クリアランスへの容易な設置を図ることを意図する。」(段
落【0011】)
・「請求項4は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回転板,
この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,並
びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海
苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,前記防止手段を,
突起・板体の突起物とし,この突起物を選別ケーシングと回転板で形成
されるクリアランスに設ける構成とした生海苔異物分離除去装置におけ
る生海苔の共回り防止装置である。」(段落【0012】)
オ発明の実施の形態
・「本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タンクから順次生海苔混合液が
導入される。この導入された生海苔混合液の生海苔は,回転板とともに
回転しつつ,順次吸込用ポンプにより回転板と選別ケーシングで形成さ
れる異物分離機構のクリアランスに導かれる。この生海苔は,このクリ
アランスを通過して分離処理される。この分離処理された生海苔及び海
水は,選別ケーシングのケーシング内底面より連結口を経由して良質タ
ンクに導かれる。」(段落【0019】)
・「このクリアランスに導かれる際に,生海苔の共回りが発生しても,
本発明では,防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚,前
記防止手段は,単なる解消に留まらず,生海苔の動きを矯正し,効率的
にクリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」(段落【00
20】)
・「以上のような操作により,生海苔の分離が,極めて効率的にかつト
ラブルもなく行われることと,当該回転板,又は当該装置の停止等は未
然に防止できる特徴がある。」(段落【0021】)
カ実施例
・「1は異物分離除去装置で,この異物分離除去装置1は,生海苔混合液
をプールする生海苔混合液槽2と,この生海苔混合液槽2の内底面21
に設けた異物分離機構3と,異物排出口4と,前記異物分離機構3の回
転板34を回転する駆動装置5と,防止手段6を主構成要素とする。」
(段落【0023】)
・「生海苔混合液槽2には,生海苔・海水を溜める生海苔タンク10と
連通する生海苔供給管11が開口しており,この生海苔供給管11には
供給用のポンプ12が設けられている。また分離処理された生海苔・海
水をプールする良質タンク13を設ける。」(段落【0024】)
・「異物分離機構3は,分離した生海苔・海水を吸い込む連結口31,
及び逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケー
シング33に寸法差部Aを設けるようにして当該選別ケーシング33の
噴射口32の上方に設けられた回転板34と,この回転板34の円周面
34aと前記選別ケーシング33の円周面33aとで形成されるクリア
ランスSと,で構成されている。前記寸法差部Aは,選別ケーシング3
3の円周端面33bと回転板34の円周端面34bとの間で形成する。」
(段落【0025】)
・「防止手段6は,一例として寸法差部Aに設ける。図3,図4の例で
は,選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突
起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は,生海苔混合液槽2の
内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は,回転板
34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一
点鎖線で示す。)に切り溝,凹凸,ローレット等の突起物を1ケ所又は
数ヶ所,或いは全周に設ける。また図7の例は,選別ケーシング33
(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが
内嵌めされた構成のクリアランスSでは,このクリアランスSに突起・
板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では,回
転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手
段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(段落【0026】)
・「尚,前記回転板34は,駆動装置5のモーター51に設けた回転軸
52に昇降自在に設けられている。従って,逆洗槽14内の海水を,ホ
ース15及び逆洗用ポンプ16を介して噴射口32より噴射して,この
回転板34を押上げ,この押上げによりクリアランスSの寸法を拡げる
構成となっている。」(段落【0027】)
・「図中17は連結口31に設けた分離された生海苔・海水を良質タン
ク13に導くホース,18はホース17に設けた吸込用ポンプをそれぞ
れ示す。」(段落【0028】)
キ発明の効果
・「請求項1の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回
転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,
並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生
海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,
突起・板体の突起物とし,突起物を,選別ケーシングの円周端面に設け
る生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置である。従
って,この請求項1は,共回りの発生を無くし,かつクリアランスの目
詰まりを無くすこと,又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の
能率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が
図れること,またこの防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置で
きること等の特徴がある。」(段落【0029】)
・「請求項3の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回
転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,
並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生
海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,
突起・板体の突起物とし,突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの
円周面に設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装
置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,またこの防止
手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有す
る。」(段落【0031】)
・「請求項4の発明は,生海苔排出口を有する選別ケーシング,及び回
転板,回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段,
並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生
海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において,防止手段を,
突起・板体の突起物とし,突起物を選別ケーシングと回転板で形成され
るクリアランスに設ける生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回
り防止装置である。従って,請求項1の目的を達成できることと,また
この防止手段を,クリアランスへの容易な設置が図れること等の特徴を
有する。」(段落【0032】)
(2)以上の記載によれば,本件各発明の意義は次のとおりである。
ア本件各発明は,生海苔・海水混合液(生海苔混合液)から異物を分離除
去する生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置に関する
ものである。
従来の生海苔異物分離除去装置として,筒状混合液タンクの環状枠板部
の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌め
し,この回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とする
とともに,前記筒状混合液タンクに異物排出口を設けたものがある。
しかし,この生海苔異物分離除去装置(又は,回転板とクリアランスを
利用する生海苔異物分離除去装置)においては,この回転板を高速回転す
ることから,生海苔及び異物が回転板とともに回転し,クリアランスに吸
い込まれない現象,又は,生海苔等がクリアランスに喰込んだ状態で回転
板とともに回転し,クリアランスに吸い込まれない現象が生じ,究極的に
は,クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する。
このような「共回り」が発生すると,回転板の停止又は作業の停止とな
って,結果的に異物分離作業の能率低下,当該装置の停止,海苔加工シス
テム全体の停止等のような状況となることも考えられる。
イ本件各発明は,従来の生海苔異物分離除去装置の有する上記アの問題に
鑑み,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰まりをなくすこと,
又は効率的・連続的な異物分離を図ること等を目的に,「生海苔排出口を
有する選別ケーシング,及び回転板,この回転板の回転とともに回る生海
苔の共回りを防止する防止手段,並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海
苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去
装置」において,請求項1の発明(本件発明1)では,前記防止手段を
「突起・板体の突起物」とし,これを前記選別ケーシングの円周端面に設
ける構成とし,請求項3の発明(本件発明3)では,前記防止手段を「突
起・板体の突起物」とし,これを回転板及び/又は選別ケーシングの円周
面に設ける構成とし,請求項4の発明(本件発明4)では,前記防止手段
を「突起・板体の突起物」とし,これを選別ケーシングと回転板で形成さ
れるクリアランスに設ける構成としたものである。
ウ本件各発明によれば,共回りの発生をなくし,かつクリアランスの目詰
まりをなくすこと,又は,効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能
率低下,当該装置の停止,海苔加工システム全体の停止等の回避)が図ら
れること,この防止手段を簡易かつ確実に適切な場所に設置でき,クリア
ランスへの容易な設置が図れること等の効果を奏する。
2争点(1)(被告による本件装置(LS型)の製造・販売の有無)について
(1)原告は,環状固定板に板状部材が取り付けられていた本件装置(WK型)
については,本件仮処分決定によって製造・販売が差し止められていたにも
かかわらず,被告は板状部材等の構成をそのままにしながら,型名を「LS
-R」,「LS-S」,「LS-G」及び「LS-L」と変更しただけで
(本件装置(LS型)),平成26年11月以降も製造販売し続けていると
主張する。
これに対し,被告はこのような製造・販売の事実を否認している。
(2)そこで検討するに,被告の平成27年2月13日付けパンフレット(甲1
8)には型名を「LS-R」,「LS-S」,「LS-G」及び「LS-L」
とする装置が掲載されており,また作成日不詳のパンフレット(甲19の1,
2)にも型名を「LS-S」及び「LS-G」とする装置が掲載されている。
しかるに,これらの写真は,明らかに,従前のパンフレット(甲4,甲5の
1ないし4)における「WK-500」,「WK-550」,「WK-60
0」及び「WK-700」の写真と同一であり,ただ型番を削り取っただけ
のものにすぎない。
そして,このうち型名を「LS-G」とするものについては,2台が平成
27年3月17日(前訴第1審判決言渡日の前日)に被告から白石海苔に販
売され(甲17の1添付仕入帳52丁),このうち1台は白石海苔から第三
者に転売されている(甲17の2添付請求書6丁)。残り1台は白石海苔に
より保管されていたところ,これについては,白石海苔での証拠保全の検証
時に「機械3」として確認されており,同検証の検証調書(甲17の1。以
下「本件検証調書」という。)添付の写真によればその環状固定板に板状部
材が取り付けられているのであって(同添付写真7ないし9丁),その構成
は明らかに本件装置(WK型)と同一である。
また,型名を「LS-S」とするものについては,白石海苔作成の請求書
(甲17の2添付請求書9丁)によれば,白石海苔は平成27年2月26日
に鶴商に対して「LS-S」を販売している。そして,原告代理人作成の現
地調査報告書(甲20)によれば,上記「LS-S」とは明らかに本件装置
(WK型)のうちの「WK-550」を指し,その環状固定板には板状部材
が取り付けられている。
以上によれば,被告は平成26年11月以降も本件装置(WK型)の型名
を変更しただけの装置(本件装置(LS型))を製造・販売し続けているも
のと認めるのが相当である。
(3)被告の主張に対する判断
アこの点に関して被告は,「LS-G」を白石海苔に販売した時点では板
状部材を取り付けてはおらず,本件検証調書添付の写真に板状部材が写っ
ているのは誤りであり,仮にそうでないとしても白石海苔が何らかの事情
により取り付けたなどと主張する。
しかし,まず,被告が販売した時点で板状部材が取り付けられていなか
ったとの主張については,被告の専務取締役であるAがこれに沿う証言を
するものの(証人A〔証人調書6頁。以下,同様に証人調書の該当頁を併
記〕),本件全証拠を精査しても,同証言を裏付けるに足りる客観的証拠
は見当たらない。この点,被告は板状部材の取り付けられていない環状固
定板の写真(乙16添付の写真B)を提出するが,これが果たして被告が
白石海苔に販売した「LS-G」の写真であるのか,また販売時に撮影さ
れた写真であるのかなどについては,本件証拠上は何ら判然としない(証
人A〔18,19頁〕も参照)。
また,本件検証調書の信用性についても,確かに同調書において,白石
海苔代表者は「機械3は・・・板状部材等を使用しない仕様にし・・・た
ものである」と発言しており(同調書本文2頁7~9行目。なお,同ペー
ジ15,16行目も参照),この発言は同調書添付写真7ないし9丁の
「機械3」(LS-G)の写真に板状部材が写っていることとにわかに整
合しないが,そのことをもって直ちに添付写真そのものが誤っていると断
ずることは困難であって,他に本件検証調書の記載に不自然,不合理な点
も見当たらない。
さらに,白石海苔が何らかの事情により板状部材を取り付けたとの説明
についても,その「事情」が具体的に何であるのかについては被告から合
理的な主張はないし,Aも,白石海苔に聞いてみたが事情は分からなかっ
たなどという,曖昧な証言に終始している(証人A〔7頁〕)。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イまた,被告は,白石海苔が鶴商への請求書に「LS-S」という誤った
表示をしたものにすぎず,被告が白石海苔に販売したのは「WK-550」
であり,鶴商の納品書(甲20添付資料2)にも「WK-550」と記載
されているなどと主張する。
しかし,「LS-S」とは被告が被告の生海苔異物除去機に付した型番
であって(甲18,甲19の1),白石海苔が被告の関与のないまま無断
で「LS-S」との型番を請求書に付したとはにわかに考え難い。そもそ
も,上記装置は白石海苔が本件仮処分決定後の平成27年2月26日に鶴
商に転売したものであるが,証拠(甲20,証人A〔18頁〕)によれば,
鶴商でのセッティングは被告の専務であるAが他の従業員とともに行って
いることが認められるから,被告において,「WK-550」の販売等が
本件仮処分決定に抵触することを十分認識しながら,これを潜脱する目的
で型番を変更し,セッティングをしたとの疑いを払拭することができない
(A自身も,本件仮処分決定を受ければ本件装置(WK型)の製造・販売
はできないとの認識があったと証言している。証人A〔16,17頁〕)。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(4)以上によれば,争点(1)における原告の主張は,理由がある。
そして,原告は本件装置(LS型)が本件各発明の技術的範囲に属する旨
主張するところ,この点について被告は何ら認否しておらず,明らかに争っ
ていないと認められるから,原告の主張どおり,本件装置(LS型)が本件
各発明の技術的範囲に属するものと認めるのが相当である。
したがって,本件装置(LS型)に関する原告の請求は理由がある。
3争点(2)ア(本件新装置の構成)について
(1)本件新装置の構成
当事者間に争いのない事実に証拠(甲17の1,甲21の1ないし3)及
び弁論の全趣旨を併せると,本件新装置の構成は以下のとおりと認められる。
なお,図面については「突部D」の個数の点を除いて当事者間に実質的な争
いがないため,この点を除いて別紙「原告主張図面」のとおりであると認め
(「突部D」の個数については後記(2)で論じる。),これに従い,各構成
の符号についても別紙「本件新装置の物件説明に関する対比一覧表」におい
て原告の主張する符号を採用している(ただし,原告の主張する符号を採用
したからといって,このことは直ちに構成要件該当性の判断に影響を及ぼす
ものではない。)。
ア異物選別槽A
外枠1,底板2,底板2に形成されている円形孔の内周縁に配備される
環状固定板4,環状固定板4の内側に回転可能に遊嵌されている回転円板
3の全体として,一つの異物選別槽Aを構成しており,原料供給ホース6
を介して異物選別槽Aに供給された生海苔と海水の混合液(生海苔・海水
混合液=原料)を蓄えることができる。
イ外枠1等
外枠1は,上方から見て八角形状を呈し,その内側には,多数の小孔が
開けられたパンチング網で,さらに枠が形成されている。
異物選別槽Aの開口上部には,原料供給ホース6,洗浄水供給ホース,
センサー等が設置されている。
底板2の一部(パンチング網に囲まれた部分)には,通常は閉鎖され,
コックによって開閉可能なように構成された異物排出口5が設けられてい
る。
ウ円形孔等
底板2には円形孔が複数個(LS-R型及びLS-S型は4個。LS-
G型及びLS-L型は6個。LS-8型は8個)形成されており,各円形
孔の内周縁にそれぞれ環状固定板4が配置され,各円形孔の下側を閉鎖す
るケーシング部材7が各固定リング4の下側に配備されている。
ケーシング部材7の側面下部には,吸引ポンプ用の連結口が設けられて
いる。同連結口に連設したホースは,吸引ポンプに接続されている。
エ回転円板3及び環状固定板4
回転円板3の外径は,環状固定板4の内径よりも僅かに小さい。その
ため,回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に載架され
て環状固定板4の内周側で回転する。
回転円板3の外周側の側面部(端面)3aと,環状固定板4の内周側
の側面部(内周端面)4aとの間に,環状の隙間Cが形成される。
回転円板3の外周側の側面部(端面)3aは,下側に向かうにつれて
外径が小さくなるテーパー状になっている。
オ回転円板3の形状
回転円板3には,突部Dが1か所以上形成されている。
(ア)突部Dは,側面部(端面)3a1(回転円板3の側面部(端面)3a
の一部の面と共通である。),平面部3b1(回転円板3の表面3bの
一部の面と共通である。),2か所の側面壁3cなどから構成される。
(イ)側面壁3cと側面部(端面)3a1の各面の交差によってエッジxが
形成される。
(ウ)突部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの平面部3b2の高低差は
エッジxの長さと略同一で,0.5㎜程度である。
側面壁3c,及びエッジxによって,平面部3b1は平面部3b2と
の間で段差を形成し,突部Dを突出させる。
(エ)平面部3b1と側面壁3cの各面が交差する場所には上部境界線yが,
平面部3b2と側面壁3cの各面が交差する場所には下部境界線zが,
それぞれ現れる。
(オ)突部Dは,回転円板3を平面視した場合において,平面部3b2との
間で直線状の境界線(上部境界線y又は下部境界線z。側面壁3cが平
面部3b2に対して略垂直に形成される場合は両者はほぼ一致する。)
を呈することによって,あたかも,回転円板3の表面外周側に略扇形
(中心を回転円板3の中心と共通にする。)の薄板状部材が,半島状に
取り付けられたような外観を呈する。
(カ)この突部Dの形成によって,側面壁3c(2か所),平面部3b2,
側面部(端面)3dによって囲まれた(回転円板側)凹部Eを観念する
ことができる。回転円板3の円周に沿う方向で見ると,突部D,凹部E
が,交互に現れ,両者の個数は必ず同数となる。
カ隙間調整機構
回転円板3は,止めネジ,隙間調整ネジ,目盛板,スプリングなどか
ら構成される隙間調整機構によって,図5-1,図5-2の上下方向で
上下移動可能なように構成されている。
(2)「突部D」を6個有する回転円板を備えた本件新装置の存否
ア原告は,本件新装置には突部Dを2個有する回転円板(別紙「原告主張
図面」図2-2参照)を備えたもののほか,これを6個有する回転円板
(同図2-1参照)を備えたものも存在していると主張するのに対し,被
告はこれを否認する。
そこで検討するに,本件検証調書には本件新装置のうち型番が「LS-
S」のものを撮影した写真が添付されており,その回転円板にある突部D
の数は6個である(甲17の1添付写真10ないし12丁)。
したがって,本件新装置については,突部Dを6個有する回転円板を備
えたものも存在していると認められる。
イこの点に関して被告は,上記写真の回転円板(突部Dを6個有するもの)
は実験用に試作したものにすぎず,白石海苔が展示会への出品のために設
置したものであるなどと主張する(Aもこれに沿う証言をする。証人A
〔2ないし5頁〕)。
しかし,上記写真の回転円板が試作品であるとか,白石海苔が展示会へ
の出品のために設置したものであることを裏付けるに足りる客観的証拠は
見当たらない。かえって,被告は,上記写真の回転円板を備えた本件新装
置について,これを白石海苔から返品された後も継続して保管していると
いうのであるし(乙16のA陳述書も同旨),そもそも上記写真の回転円
板が試作品ないし展示会への出品目的の製品であるからといって,被告が
これを製造し,第三者である白石海苔へ譲渡したという事実自体に変わり
はないのであって,これらの各事実からすれば,被告が突部Dを6個有す
る回転円板を備えた装置(本件新装置)を製造・販売しようとする意思を
備えていることを優に推認できるというべきである。
したがって,被告の上記主張は採用することができないか,そもそも上
記アの認定を左右するものではない。
ウ以上によれば,被告は,突部Dを6個有する回転円板を備えた本件新装
置を製造・販売したと認めるのが相当である。
(3)よって,争点(2)アにおける原告の主張は,理由がある。
4争点(2)イ(構成要件A3の充足性)について
構成要件A3につき,被告は,「突部D」なる構造は本件新装置に存在しな
いのであって,本件新装置は「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防
止する防止手段」を備えているが,それは回転円板に形成されている凹部及び
固定リング(環状固定板)に形成されている固定リング側凹部であるなどと主
張する。
しかし,構成要件A3は単に「この回転板の回転とともに回る生海苔の共回
りを防止する防止手段,」というものにすぎず,その防止手段の内容について
は構成要件A3自体には記載されていない。そうすると,本件新装置が「回転
板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を備えている以上,
本件新装置は構成要件A3を充足するというべきである。
5争点(2)ウ(構成要件B’1及びB’2の充足性)について
原告は,本件新装置の回転円板(本件回転円板)上に設けられた突部Dが構
成要件B’1の「突起・板体の突起物」に該当すると主張する一方,被告はこ
れを争っている。
そこで,以下,この点について判断する。
(1)「突起・板体の突起物」の意義
一般に「突起」には,「ある部分が周囲より高く突き出ていること。また,
そのもの。でっぱり。」(デジタル大辞泉〔甲34の1〕),「部分的につ
きでること。また,そのもの。」(広辞苑第6版2020頁〔甲34の2,
乙7〕),「つき出たもの」(新選国語辞典第7版834頁〔甲34の3〕)
という意味がある。
そして,構成要件B’1の文言上,「突起」及び「突起物」の形成手段等
については,何らの限定もされていない。
そうすると,構成要件B’1の「突起・板体の突起物」にいう「突起」と
は,周囲より高く突き出た部分,部分的に突き出ている部分ないし出っ張り
と判断される部分を意味するものであり,「突起物」とはそのような物(部
分)自体を意味するものであると解するのが相当である。
(2)充足性
前記3(1)において認定したとおり,本件新装置の本件回転円板に形成さ
れた突部Dは,側面部(端面)3a1(回転円板3の側面部(端面)3aの
一部の面と共通である。),平面部3b1(回転円板3の表面3bの一部の
面と共通である。),2か所の側面壁3cなどから構成されるものであり,
突部Dの平面部3b1と回転円板側凹部Eの平面部3b2の高低差はエッジ
xの長さと略同一の0.5㎜程度であって,側面壁3c,及びエッジxによ
って,平面部3b1は平面部3b2との間で段差を形成し,突部Dを突出さ
せている。
そうすると,突部Dは,平面部3b2から円周面方向に部分的に突き出て
おり,出っ張りと判断される部分であるから,当該部分は「突起」に,その
ような物自体は「突起物」に該当するものとして,全体として「突起・・・
の突起物」に該当するということができる。
したがって,本件新装置の回転円板(本件回転円板)上に設けられた突部
D(側面部(端面)3a1,平面部3b1,2箇所の側面壁3cなどから構
成される部分)は,構成要件B’1の「突起・板体の突起物」に該当すると
いうべきである。
(3)被告の主張に対する判断
アこの点に関して被告は,まず,①本件訂正明細書等の段落【0026】
には「切り溝,凹凸,ローレット等の突起物」以外に「突起・板体・ナイ
フ等の突起物」とも記載されており,構成要件B’1はこのうち「突起・
板体の」突起物に限定しているから,「切り溝,凹凸,ローレット等の突
起物」は構成要件B’1の「突起・板体の突起物」に該当しない,②この
ことは,原告が本件特許権の審査の際に出願当初の請求項1及び2を削除
し,もって「凹部」に係る先願との発明の同一性を回避したことや,「突
起・板体等の突起物」から「等」を削除したこと(前記第2,2(5))か
らも明らかであるなどと主張する。
この点,確かに,本件訂正明細書等の段落【0026】には「切り溝,
凹凸,ローレット等の突起物」と「突起・板体・ナイフ等の突起物」の
両方が記載されているのに対し,請求項3(本件発明3)にはこのうち
「突起・板体の突起物」(構成要件B’1)としか記載されていないこ
とからすると,「突起・板体の突起物」とは,当然に「切り溝,凹凸,
ローレット等」を包含するものではないと解するのが相当である。
しかし,「突起・板体の突起物」が「切り溝,凹凸,ローレット等」を
当然に包含しないとしても,そのことから直ちに,いかなる「切り溝,
凹凸,ローレット等」であっても「突起・板体の突起物」に該当しない
ということにはならない。すなわち,「凹凸」であっても,その構成が
「突起」に該当する場合もあるのであって,このような場合には,たと
え「凹凸」の概念に含まれるものであっても,「突起・板体の突起物」
に該当するというべきである。
そして,本件新装置においては,側面壁3c,及びエッジxによって,
平面部3b1は平面部3b2との間で段差を形成し,突部Dを突出させ
ているのであるから,全体的にみれば「凹凸」に含まれるとしても,こ
のような構成は,前述のとおり「突起・・・の突起物」に該当するもの
といわざるを得ない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ次に,被告は,本件訂正明細書等に「この防止手段を,簡易かつ確実に
適切な場所に設置することを意図する。」(段落【0009】)及び「こ
の防止手段を,簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴を有
する。」(段落【0031】)と記載されていることからすると,「この
防止手段」である「突起・板体の突起物」とは,「簡易・・・に設置でき
る」もの,すなわち共回り防止装置を構成する回転板・選別ケーシングと
は別体であるものをいうなどと主張する。
しかし,そもそも構成要件B’1の文言上,「突起・板体の突起物」を
「別体」に限定する旨の記載はない。また,本件訂正明細書等の段落【0
026】には,板状の別体を所定箇所に取り付けた実施例が記載されてい
るものの(図3ないし図5の例),他方で,このような別体ではなく,回
転円板又は選別ケーシングを作成する際に最初から一体的に突起物を形成
したりした実施例も記載されている(図6の例)。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
ウまた,被告は,「突起・板体の突起物」とは選別ケーシングと回転円板
で形成されるクリアランスを超えて突出するものをいうなどと主張し,そ
の根拠として,①原告が本件特許権の審査の際に提出したCD-Rには,
板状の突起物がクリアランスに突出した写真等が掲載されていたこと(乙
6,17,18),②上記(1)のとおり,「突起」とは「部分的につきで
る」との意味であること,③親和事件の第1審判決は「本件プレート板の
うち本件回転板の外周縁から突出した部分(爪部)は,構成要件B1の
『板体の突起物』に該当すると解され,・・・本件プレート板の基部の断
面からなる,『回転板』の『円周面』に,本件プレート板の爪部である
『突起物』が設けられている構成(構成要件B2)ということができる。」
などと判示していることを指摘する。
しかし,上記①については,審査の際に提出したCD-Rにそのような
写真等が掲載されていたとしても,結局は実施例の一例を示したものにす
ぎないというべきであるから,そのことをもって,「突起・板体の突起物」
がクリアランスを超えて突出するものに限るなどと断定することはできな
い。上記②については,「突起」とは「部分的につきでる」の意味である
からといって,その「部分的につきでる」方向がクリアランス側に限られ
るということにはならず,被告の主張には論理に飛躍があるものといわざ
るを得ない。上記③についても,親和事件の対象製品がクリアランスに突
出していたという事案であったため,第1審判決において上記のような判
示がされたにすぎず,「突起・板体の突起物」がクリアランスを超えて突
出するものに限定することの根拠とはなり得ない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
エさらに,被告は,そもそも構成要件B’1の「突起・板体の突起物」と
は「突起している板体の突起物」と解すべきであると主張し,その根拠と
して,「突起・板体の突起物」における「・」を並列の意味に解すると,
「突起の突起物」と「板体の突起物」とを観念することになってしまい,
「突起の突起物」は単なる「突起物」になるため,そのような解釈は採用
できないなどと説明する。
しかし,被告の上記主張は,要するに「突起・板体の突起物」における
「・」を「している」との意味に捉えるものであるところ,一般に,「・」
が「している」との意味で用いられているとはにわかに考え難いのであっ
て,被告の上記主張は採用することができない。
オそして,被告は,凹部Eの間の凸部とみなされる形状(突部D)は,実
際には上側平面3bと外周側の側面3aで構成されており,平滑な円板の
一部にすぎないなどと主張する。
しかし,前記(2)のとおり,本件回転円板においては,側面壁3c,及
びエッジxによって,平面部3b1は平面部3b2との間で段差を形成し,
突部Dを突出させているのであって,このような形状の突部Dが「突起」
ないし「突起物」に該当しないなどということはできない。
この点に関して被告は,本件回転円板に設けられているのは「凹部」で
あり,「平面部3b2」とは凹部の底面に他ならないなどとも説明するが,
「平面部3b2」が凹部の底面であることと,突部Dが突起に該当するこ
ととは直ちに矛盾するものではなく,被告の説明は上記判断を左右しない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
カ加えて,被告は,①「凹凸」の「凸」部分が「突起・板体の突起物」に
該当するというためには,生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発
生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果),生海苔の動きを
矯正し,効率的にクリアランスに導く(矯正効果)という機能を果たすこ
とが必要である,②本件回転円板の凹部Eの間の凸部とみなされる形状
(突部D)にはクリアランスの目詰まりをなくす機能はなく,上記防止効
果及び矯正効果を欠くから,「突起・板体の突起物」に該当しないと主張
する。
しかし,そもそも構成要件B’1には「突起・板体の突起物」と記載さ
れているだけで,クリアランスの目詰まりをなくす機能を有する場合に限
って「突起・板体の突起物」に該当するなどといった限定的な記載は文言
上見当たらないし,ましてや,「凹凸」の「凸」部分が「突起・板体の突
起物」に該当する場合についてのみクリアランスの目詰まりをなくす機能
を要するものとするような記載も見当たらない。
そうすると,被告の主張はその前提を欠くから,その余の点(上記②)
について判断するまでもなく,採用することができない。
なお,念のため上記②についても判断するに,被告は上記②のとおり主
張するが,他方で「本件新装置においては,回転円板3に形成されている
凹部Eのエッジxや,上部境界線y(物件説明書の図4-3),回転円板
3の凹部Eのエッジxに対応する固定リング側凹部の上下方向に伸びる固
定リング側凹部の円周方向の両端縁(エッジ)が,生海苔を切断する役割
を果たし,隙間Cに生海苔や異物が詰まることを防止し,その一方で,隙
間Cの存在によって異物が分離除去された生海苔が,海苔生産ラインの処
理要求量を満たす量で隙間Cを通過して選別ケーシング側に吸引されてい
るのである」(平成28年2月19日付け被告準備書面(1)9,10頁),
「凹部Eが形成されている箇所では凹部の深さに該当する領域で隙間が幅
広になっている。その点に加え,凹部Eを形成するエッジxや上部境界線
〔y〕の作用とが相まって,クリアランスの目詰まり防止機能を果たして
いる」(平成28年11月25日付け被告準備書面(5)6頁)などとして,
突部Dを構成するエッジx及び上部境界線yが,生海苔を切断する役割を
果たし,隙間Cに生海苔及び異物が詰まることを防止し,凹部Eと相まっ
てクリアランスの目詰まり防止機能を果たしていることを自認している。
そうすると,被告の上記②における「クリアランスの目詰まりをなくす機
能はなく」との主張は,被告自身の主張と相反するというべきであるから,
上記②の主張はその前提を欠き,採用することができない。
(4)以上によれば,本件新装置の突部Dは構成要件B’1の「突起・板体の
突起物」に該当するから,本件新装置は構成要件B’1を充足する。
また,構成要件B’2は「この突起物を回転板及び/又は選別ケーシング
の円周面に設ける構成とした」というものであるところ,突部Dは,回転円
板3の表面3bで,かつ外周側に形成されているから,「回転板・・・の円
周面に設け」られていることは明らかであり,本件新装置は構成要件B’2
を充足する。
したがって,争点(2)イにおける原告の主張は,理由がある。
6争点(2)エ(構成要件Cの充足性)について
(1)この点に関する被告の主張は必ずしも判然としない部分もあるものの,こ
れを善解するに,本件新装置は「回転板とともに回る生海苔の共回りを防止
する手段」を備えてはいるが,本件装置そのものは生海苔異物分離除去装置
であって,「生海苔の共回り防止装置」ではないから,構成要件Cに該当し
ないという主張であると思われる。
しかし,本件発明3では,「生海苔の共回り防止装置」(構成要件C)の
語は「生海苔異物分離除去装置」(構成要件A5及びC)の語とは別に用い
られており,なおかつ構成要件Cの文言は「生海苔異物分離除去装置(A5)
における生海苔の共回り防止装置」というものであって,これらの事実に照
らせば,「生海苔の共回り防止装置」とは,「生海苔異物分離除去装置」に
内蔵され,その一部となる構成を指すものであることが明らかである。
したがって,本件新装置が「生海苔の共回りを防止する手段」を備えてい
る以上は,本件新装置には「生海苔の共回り防止装置」(構成要件C)が備
わっており,構成要件Cを充足するものといわざるを得ない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(2)以上によれば,本件新装置は本件発明3の構成要件を全て充足するのであ
るから,本件新装置は本件発明3の技術的範囲に属するものと認めるのが相
当である。
したがって,本件新装置に関する原告の請求は,理由があるものというべ
きである。
7争点(3)(特許法101条1号の間接侵害の成否)について
(1)特許法101条1号にいう「その物の生産にのみ用いる物」とは,社会通
念上経済的,商業的ないし実用的観点からみて,特許発明に係る物の生産に
使用する以外の他の用途(他用途)がないことを意味するというべきところ,
本件新装置においては,①外枠,②底板,③底板に形成されている円形孔の
内周円に配備される固定リング,④固定リングの内側に回転可能に遊嵌され
ている本件回転円板の4点が,相互に組み合わさり,全体として一つの異物
分離槽を構成しているのであって(当事者間に争いがない。),本件回転円
板が本件新装置の異物分離槽以外にも用いられる事実をうかがわせる証拠は
見当たらないことからすると,本件回転円板は,社会通念上経済的,商業的
ないし実用的な他用途を有しないと認められるから,本件発明3の技術的範
囲に属する物(本件新装置)の生産にのみ用いるものに該当するというべき
である。
(2)したがって,本件回転円板を生産し,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しく
は貸渡しの申出をする行為は,本件特許権を侵害するものとみなされるから
(特許法101条1号),原告の主張は理由がある。
8結論
よって,本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,主文
第4項については仮執行宣言を付するのは相当ではないからこれを付さないこ
ととし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
東海林保
裁判官
瀬孝
裁判官
勝又来未子

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