弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取り消す。
     本件競落を許さない。
     抗告費用は相手方の負担とする。
         理    由
 抗告人は、主文第一、二項同旨の決定を求め、その理由として、末尾添附の「申
立の理由」と題する書面記載のとおり主張し、証拠として、乙第一ないし第八号証
を提出し、甲第一、第二号証の成立を認めて、これを援用した。
 相手方は、抗告棄却の決定を求め、答弁として、末尾添附の「申立の理由に対す
る反対陳述」と題する書面の通り主張し、証拠として、甲第一、第二号証を提出
し、乙第一号証の成立は不知、乙第二ないし第四号証の成立を認める、乙第五ない
し第七号証は、いずれも但書の部分を除き成立を認める、右各但書部分は、抗告人
が勝手に書き入れたものである、乙第八号証の成立を認めると答弁した。 よつ
て、まず抗告理由のうち、原裁判所が競売法第三十一条民事訴訟法第六百七十条の
規定に反して最低競売価額を低下した違法があるとの点について判断するに、一件
記録によれば、原裁判所は、昭和二十九年十二月二十日午前十時の競売期日におい
ては鑑定人の評価額をもつて最低競売価額と定め、執行吏をして競売を実施せしめ
たが、同日午前十一時の競売の終局までに相当の競買申込がなかつたので、原裁判
所は、本件競売の目的物たる宅地の最低競売価額を三十八万千六百円に、建物の最
低競売価額を四十五万九千円に低減した上、昭和三十年三月十一日午前十時を競売
期日と定めて公告したところ、右期日は債権者、債務者双方の申請により変更され
たこと、そこで原裁判所は、さらに昭和三十一年二月十日午前十時を競売期日と定
めて公告したが、この公告にあたり、本件競売の目的物たる宅地の最低競売価額を
三十五万円に、建物の最低競売価額を四十万五千円にそれぞれ低減したこと、しか
るに右競売期日も変更されて競売期日は同年四月九日午前十時と定められたが、右
競売期日において競売が実施せられ、宅地については三十五万円、建物については
四十万五千円の競買の申出があり、これに基いて原裁判所は競落許可決定をなした
ことが明らかである。原裁判所は、競売期日を開かないで最低競買価額を低減した
のは、競売法第三十条民事訴訟法第六百六十二条ノ二によつたものであるとの意見
を述べているけれども、右民事訴訟法第六百六十二条ノ二は、昭和十六年法律第五
七号により定められたもので、その意図するところは、当時国家総動員上の必要か
ら公定価格を定め、配給統制も実施されていた折柄、不動産の競売が統制をみだす
ことのないように公益上の必要から、これを抑制することを目的としたものであつ
たことは、立法の経過ならびに当時発せられた司法次官通牒(昭和十六年二月二八
日民事甲第二一三号司法次官通牒)民事局長通牒(昭和十六年三月四日民事甲第二
一九号民事局長通牒)により明らかなところであつて、民事訴訟法第六百六十二条
ノ二の「裁判所必要アリト認ムルトキハ」とは、公益上の必要ありと認むるときは
の意味に解すべきものである。元来民事訴訟法が予め最低競売価額を定め、これを
公告し、これ以下では売却を許さないことにしたのは、不動産の価額を相当に維持
し、不当に安価に競落されることを防止する目的に出たもので、利害関係人の合意
をもつてしてもこれを変更し得ないことは、民事訴訟法第<要旨>六百六十二条(競
売法第三十条により準用)の明定するところである。従つて競売法第三十一条民事
訴訟法第六百七十条により最低競売価額を低減する場合競売裁判所が一たん
その見込によつてこれを低減し、公告した以上、これを売却条件として競売期日を
開き、競売を実施しない限り、競売法第三十一条にいわゆる「相当ノ競買申込ナキ
トキ」なる要件に該当しないものというべく、従つて競売裁判所はさらにこれを低
減することはできないものというべきである。また本件が競売法第三十条の準用す
る民事訴訟法第六百六十二条ノ二にいわゆる「裁判所必要アリト認ムルトキ」にも
あたらないことは、前段の説明により了解できるであろう。従つて原裁判所が一た
ん低減した最低競売価額を売却条件として競売を実施しないのにかかわらずさらに
これを低減したのは違法である。よつて右違法なる手続の結果としてなされた競売
期日において原裁判所が違法に低減した最低競売価額を申し出た競買人に対し競落
許可決定をなしたのは失当であるから右決定はこれを取り消し、本件不動産の競落
はこれを許さないものとすべきである。
 よつて、その他の抗告理由に対する判断を省略し、抗告費用の負担につき民事訴
訟法第四百十四条第八十九条を適用し、主文のとおり決定する。
 (裁判長判事 大江保直 判事 猪俣幸一 判事 古原勇雄)

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