弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人海野普吉、同竹下甫の上告趣意第一点および弁護人大竹武七郎の上告趣意
(一)について。
 所論は事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由に当らない。
(所論の各点については原判決が詳細に判示するところであり、右判示はすべて正
当として肯認することができる。原判決には所論の如き違法は存しない。)
 弁護人海野普吉、同竹下甫の上告趣意第二点および弁護人大竹武七郎の上告趣意
(三)について。
 所論は事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由に当らない。
(鶴来町公安委員会および同町警察署名義の通行禁止の立札(証第一九号の一、二)
に関する原判示は正当であり、また石川県名義の立札(証第一九号の三、四)は、
本件違法な橋梁損壊行為をなすについて危険防止のため立てられたものであつて、
仮にこの通行止めの処分が無効でないとしても、右橋梁損壊行為による往来妨害致
死傷罪の成立に影響を及ぼさない。)
 弁護人海野普吉、同竹下甫の上告趣意第三点および弁護人大竹武七郎の上告趣意
(二)について。
 原審の維持した第一審判決は、被告人が現に人車馬の往来に使用している天狗橋
を損壊しその往来に妨害を生ぜしめる認識があつた旨の判示をしているのであつて、
所論は原判示に副わない事実を前提として判例違反、法令違反を主張するに帰し、
適法な上告理由に当らない。
 弁護人海野普吉、同竹下甫の上告趣意第四点について。
 所論は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由に当らない。(刑法一二四
条の趣旨とするところは、往来の妨害を生ぜしめた結果人の身体を傷害した場合に
は同法二〇四条の刑と比較し、因つて死に致した場合には同法二〇五条の刑と比較
し、それぞれ重きに従つて処断するというにあることが明らかであるから、原判決
に所論の違法はない。)
 同第五点について。
 所論は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由に当らない。(刑法一二四
条二項の罪が成立するためには、同条列記の客体を損壊または壅塞して往来の危険
を生ぜしめる意思があれば足り、それ以外にさらに傷害ないし傷害致死の結果につ
き予見あることを要するものではない。原判決に所論の如き法令解釈の違法は認め
られない。昭和二二年(れ)第八号、同年一二月一五日第一小法廷判決、刑集一巻
八〇頁、昭和二三年(れ)第一〇八号同年五月八日第二小法廷判決、刑集二巻五号
四七八頁、昭和二五年(れ)第一一九六号同年一一月九日第一小法廷判決、刑集四
巻一一号二二三九頁各参照。)
 同第六点について。
 原審が適法に確定したところによれば、天狗橋は強度の十分でない木造補剛溝つ
き吊り橋であつたところ、石川県土木部道路課長であつた被告人はこれが改築に要
する一千万円の国庫補助金を獲得するため、同橋があたかもジエーン颱風によつて
全長の四分の三以上について風害を受けたかの如き状況を作出しようと企て、当時
人車馬の通行可能であつた同橋を全長の四分の三以上にわたつて損壊すべき旨を他
の共犯者に指示し、共犯者の実行に因り所期の如く広範囲にわたる橋梁損壊を遂げ
たものであつて、偶々損壊行為実行中、予期を超え橋梁が墜落するに至り、これに
因つて通行人および情を知らない作業人夫の死傷の結果を生ぜしめたとて、致死傷
に対する責任がないとは言えない。原判決は、なんら論旨引用の判例に相反する判
断をしていないから、判例違反の主張は採用することができず、また原判決には所
論の違法も認められない。
 同第七点について。
 所論は事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由に当らない。
(原審の維持した第一審判決はジエーン颱風の襲来による同橋の被害状況につき詳
細な証拠を掲げており、原判決に所論の如き違法は認められない。)
 同第八点について、
 所論は量刑不当の主張であつて、適法な上告理田に当らない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三六年一月一〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    高   橋       潔

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