弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       1 相手方運輸施設整備事業団に対する申立てに関する部分につき
,原決定を破棄し,原々決定を取り消す。
         同部分につき本件を神戸地方裁判所に差し戻す。
       2 抗告人のその余の抗告を棄却する。
       3 第1項の部分に関する抗告手続の総費用は相手方運輸施設整備
事業団の負担とし,前項の部分に関する抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 抗告代理人中村哲朗,同井郷亜子の抗告理由第1及び第2について
 本件各修繕費請求権が商法842条6号所定の債権に当たらないとした原審の判
断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 同第3について
 所論の点に関する原審の認定判断は,正当として是認することができる。論旨は
採用することができない。
 同第4について
 本件は,抗告人が相手方B海運株式会社との間で締結した請負契約に基づき相手
方両名の共有に係る本件船舶の検査及び修繕をしたことにより本件船舶の上に先取
特権を取得したとして,その競売を申し立てた事案である。
 1 記録によれば,本件の事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 相手方運輸施設整備事業団(以下「相手方事業団」という。)は,運輸
施設整備事業団法に基づき,海上運送事業者と費用を分担して船舶を建造し,当該
船舶をその事業者に使用させ,譲渡する等の業務(以下「船舶共有事業」という。)
を行っている。
 (2) 相手方事業団は,船舶共有事業として,相手方B海運と本件船舶を共有
しており,それぞれの持分は,相手方事業団が100分の80,相手方B海運が1
00分の20である。
 (3) 相手方B海運は,相手方事業団からその持分を賃借し,本件船舶を自己
の営む海上貨物運送事業の用に供している。
 (4) 抗告人は,平成10年ないし12年の各年に,相手方B海運から,本件
船舶につき,船舶安全法に定める定期検査又は中間検査及びそれに伴い必要となっ
た修繕を請け負い,これを完成させて,相手方B海運に対して本件各修繕費請求権
を取得した。
 2 上記事実関係の下において,原審は,本件各修繕費請求権を被担保債権とす
る動産保存の先取特権は,債務者である相手方B海運の有する本件船舶の共有持分
の上にのみ成立し,相手方事業団の有する共有持分の上には成立しないと判断し,
相手方事業団の共有持分に対する競売の申立てを却下した原々決定に対する抗告人
の抗告を棄却した。
 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
 【要旨】商法704条2項本文は,船舶の賃借人が商行為をする目的をもって船
舶を航海の用に供したときは,船舶の利用につき生じた先取特権が船舶の所有者に
対しても効力を生じる旨を規定しているところ,この先取特権には,民法上の先取
特権も含まれると解するのが相当である。けだし,同項本文は,同条1項の賃借人
による船舶の利用に関する事項により生じた債務を担保する先取特権については,
当該賃借人が当該船舶を所有している場合と同様の効力を認めることによって債権
者を保護しようとするものであり,その適用を商法842条に定める先取特権等に
限定する必要はないからである。
 前記事実関係によれば,相手方事業団の有する本件船舶の共有持分は相手方B海
運に賃貸され,相手方B海運は本件船舶を自己の営む海上貨物運送事業の用に供し
ているというのであり,本件各修繕費請求権を被担保債権とする動産保存の先取特
権は,相手方B海運による本件船舶の利用につき生じたものというべきであるから
,この先取特権は,商法704条2項本文により,相手方事業団に対してもその効
力を生じるものというべきである。
 そうすると,上記先取特権の効力が相手方事業団の共有持分に及ばないとした原
審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原決定中相
手方事業団に対する申立てに関する部分は破棄を免れない。そして,上記説示した
ところによれば,相手方事業団の共有持分に対する競売の申立てを却下した原々決
定は不当であるから,同部分について原々決定を取り消した上,本件を神戸地方裁
判所に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
    最高裁判所第三小法廷
(裁判長裁判官 奥田昌道 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田
邦夫)

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