弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人仲山忠克の上告理由第一点について
 一 原審が適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 a村は、同村字b地先の公有水面約二九万三〇一六平方メートルについて、昭和
六二年二月一四日、沖縄県知事から埋立免許を受けて埋立てを行ったが、免許出願
に際しては、昭和六二年に開催される国民体育大会の終了後、埋立地のうち約八万
〇六一七平方メートルを公共用地とし、残余の約二一万二三九八平方メートルを有
償で処分して埋立事業費に充当することとしていたところ、このうち本件土地(一
四万六〇五一平方メートル)については、その地質が軟弱であること、航空法上の
制約があること、村の財源確保や雇用促進に資するなどの理由から、用途をゴルフ
場と指定して売却することを企図していた。そして、その売却方法については、(
1) その用途からして特定少数企業を対象とする売却となるため、周辺地価より
低い価格で売却することは不適当であること、他方、(2) 本件土地は公有水面埋
立法二七条及び公有水面埋立法施行規則六条によりその処分に当たっての不当な受
益が禁止されており、これに反する場合にはその処分についての県知事の許可が得
られなくなるおそれがあり、また、当時社会問題化していた地価高騰を抑え周辺地
価との均衡を保つ必要もあるので、不当に高額な価格による売却を避けるべきであ
ることなどから、全埋立費用を有償で処分する埋立地の面積で除した額を単価とし
て計算した最低制限価格(二三億四六四七万円)とそれに四・七パーセントの利益
率を計上した最高制限価格(二四億五六七五万四〇九〇円)とを設定し、最低制限
価格以上最高制限価格以下の範囲の価格をもって申込みをした者のうち最高の価格
の申込者を契約の相手方とすることとし、そのような内容の一般競争入札を実施し
た。その結果、右最高制限価格を超える申込みとなった二件を無効とし、最低制限
価格以上最高制限価格以下の範囲内の価格(二四億四〇三二万八八〇〇円)をもっ
て申込みをした者一名を落札者と決定した。
 二 原審は、地方自治法二三四条三項の法意に照らすと、普通地方公共団体の収
入の原因となる契約についても、普通地方公共団体が被る損害を防止し、あるいは、
取引秩序の維持その他公益目的を達成するために必要性が認められるときには、最
低制限価格のほかに最高制限価格を設定し、最低制限価格以上で最高制限価格以下
の範囲内の申込みをした者のうち最高の価格をもって申込みをした者を契約の相手
方とする一般競争入札を実施したとしても、直ちに同項の趣旨を逸脱する違法なも
のということはできないとした上、本件においては、前記のような事情から最高制
限価格を設けたもので、公益目的を達成するために必要性があったのであり、その
決定価格も合理的範囲内にあったものと認めるのが相当であるから、本件競争入札
を違法とすることはできないと判断し、上告人らの請求を棄却した第一審判決を是
認して、上告人らの控訴を棄却した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のと
おりである。
 地方自治法は、普通地方公共団体が行う契約の締結については、原則として、一
般競争入札によるべきこととしている(同法二三四条二項)。ところで、一般競争
入札とは、契約に関する事項を公告し、不特定多数の者を入札に参加させ、当該普
通地方公共団体に最も有利な条件で申込みをした者を契約の相手方として決定する
ものである。そして、同法は、競争入札の方法について、契約の目的に応じ、予定
価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方
とするものとする(同条三項)と規定しているが、右の一般競争入札の性質からし
て、競争入札の方法としては、普通地方公共団体の収入の原因となる契約について
は、最低制限価格を定めてそれ以上の範囲内で最高の価格をもって申込みをした者
を契約の相手方とし、普通地方公共団体の支出の原因となる契約については、最高
制限価格を定めてそれ以下の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者を契約の
相手方とすることを定めたものと解すべきである。また、同項ただし書の趣旨から
すると、同法は、前者の契約について、一般競争入札において最高制限価格を設け
て入札を実施することを認めていないものと解すべきである。そうすると、普通地
方公共団体が、収入の原因となる契約を締結するため一般競争入札を行う場合、最
低制限価格のほか最高制限価格をも設定し、最低制限価格以上最高制限価格以下の
範囲の価格をもって申込みをした者のうち最高の価格の申込者を落札者とする方法
を採ることは許されず、このような方法による売却の実施は違法というべきである。
 もっとも、普通地方公共団体が不動産等を売却する場合において、合理的な行政
目的達成の必要などやむを得ない事情があって、売却価格が一定の価格を超えない
ようにする必要があり、これを一般競争入札に付するならば、最高入札価格が右一
定の価格を超えるおそれがあるときには、その売却は、「その性質又は目的が競争
入札に適しないもの」(地方自治法施行令一六七条の二第一項二号)に当たるとし
て、随意契約によって行うことができるものというべきである。ただ、その場合に
おいても、普通地方公共団体としては、右の事情につき配慮した上で、当該地方公
共団体に最も有利な価格で売却すべき義務を負うのであるから、そのような価格を
売却価格として売却しなければならない。
 これを本件についてみると、原審の適法に確定するところによれば、本件売却は、
売却の対象が公有水面埋立法による埋立地であるため、法令上その処分価格に制限
があり、また、地価高騰の抑制のため、周辺地価との均衡を保って売却する必要が
あるなどの事情があったというのであるから、売却の性質及び目的が競争入札に適
しないものであったということができる。したがって、a村としては、本件土地の
売却に当たっては、右のような事情を配慮して売却価格を定め、随意契約により売
却すべきであったのであり、最高制限価格を定めた一般競争入札によって行った本
件売却の実施は違法といわなければならない。これを適法とした原審の判断には、
同法二三四条三項の解釈適用を誤った違法があり、右違法が判決の結論に影響を及
ぼすことは明らかである。
 四 以上によれば、論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまで
もなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件は、本件売却価格と随意契約によ
ったときの売却価格として推認される価格との差異の有無など、損害の発生の有無
及びその額につき、更に審理を尽くさせる必要があるので、これを原審に差し戻す
こととする。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    三   好       達
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    大   白       勝
            裁判官    高   橋   久   子

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