弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主   文
被告人を懲役8年に処する。
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
押収してある電気コード1本(平成14年押第3号の1)を没収する。
理   由
(犯行に至る経緯)
1 被告人は,大正15年3月12日,当時の青森県三戸郡a村(現在の青森県八戸市
内)において出生し,尋常小学校高等科,修練農場を卒業した後,農業協同組合の
前身の農業会に就職し,昭和19年,Aと婚姻した。被告人は,昭和22年ころから頻
繁に賭博をするようになり,賭博罪のほか賭金を得るために犯した詐欺罪等でたびた
び検挙され,刑務所にも服役した。この間,被告人は農業会を解雇されて家業の農業
を手伝うなどし,また,昭和28年,Aと離婚した。
2 Bは,大正14年5月1日,青森県三戸郡b町で出生し,昭和22年,前夫と婚姻して,
Cらをもうけたが,昭和36年に離婚し,同町内の食堂で働くようになった。
3 被告人とBは,昭和40年ころに知り合い,二人で駆け落ち同然に北海道に転居し,
昭和42年に婚姻した。このころ,被告人は,Bの求めに応じてCを引き取り,3人で暮
らすようになった。被告人は,昭和43年ころ,実家に戻ることになり,Bと離婚して青
森県八戸市内の実家で暮らすようになったが,その後,Bと再会し,昭和50年ころに
再婚して再び同居するようになった。
4 昭和50年ころまでに被告人の両親が死亡し,被告人は,自己の相続の権利を主張
した結果,約900坪の土地を取得することになった。被告人は,当時も賭博を続けて
いたが,昭和55年ころ,被告人らによる賭博開帳図利事件が警察に摘発され,関係
者が逮捕されたため,東京都八王子市に逃げ,以後,土木作業員として稼働してい
た。被告人は,逃げる際に,Bに対して,前記のとおり取得した被告人名義の土地の
権利証と実印を預けており,Bは,この土地の一部を売却した。そして,被告人は,昭
和60年,前記賭博開帳図利事件により逮捕され,同年6月18日に執行猶予付きの
有罪判決を受けた。
 そのころから,被告人は,B及びCとともに,東京都八王子市で一緒に暮らし,パチ
ンコ遊びをするようになった。Bは,平成2年ころに青森県三戸郡c町に転居し,被告
人も,茨城県などで働いた後に,平成12年4月ころに,同町に引っ越してBと同居し,
やがてCも同居するようになり,以後,被告人らは,3人で生活していた。なお,Bは,
平成5年,被告人に知らせることなく,墓石を購入して,新しい墓を建立していた。
5 被告人は,Bと同居するようになった後,年金収入の一部を生活費としてBに渡すほ
かはパチンコに遣っており,Bからたびたびそのことをとがめられていた。そして,被告
人は,平成14年8月中旬ころ,支給された年金の一部を遣うのみならず,知人から金
を借りるなどして,ほぼ毎日のようにパチンコをし,夜遅くにわたることもあった。Bは,
パチンコから帰宅した被告人に対してそのパチンコ遊びについて強く叱責し,同月15
日ころには被告人がパチンコで勝った金から2万円を生活費として渡そうとしても,そ
んなものは要らないなどと言って受け取りを拒否し,また,同月18日ころには被告人
がパチンコ帰りにBの機嫌を取るために駄菓子を買ってきても,これを投げ捨てて,パ
チンコばかりしているなら出て行けなどと文句を言った。これに対し,被告人は,自ら
がパチンコに金を費消したという負い目があり,またBの方が口が達者であり口げん
かでは勝てないという考えから,反論できずにいた。
 被告人方では,Bが電気代を支払っていたところ,被告人は,平成14年8月19日
朝,電気ポットのコードを外して電源を切るのを忘れていたため,Bから電気を粗末に
使うなどと非難され,別々に暮らすように求められた。被告人は,この時までには,B
が前記の新しい墓を購入したことを知るに至っており,Bが,前記のとおり預けていた
被告人名義の土地の権利証と実印を用いて,被告人の土地を無断で売却してこれを
購入したと思っていたため,Bに対し,土地の売却代金の使途等について問いただし
たところ,Bは,土地の売却代金はすべて遣っており,残っていないと答えた。被告人
は,Bは嘘をついており,現金はまだあると考え,金庫の中を見せるように求めたとこ
ろ,Bは,金庫の前に移動して座って金庫の鍵を開けたものの,金庫の中を見せよう
としなかった。
 そのため,被告人は,日頃からパチンコに行くことを一方的に非難されていることに
ついて,Bに対する不満がうっ積していたことに加えて,Bが,被告人の土地を無断で
売却して無断で新しい墓を購入していながら,パチンコのことや電気代のことなどで文
句を言うことについて,馬鹿にされていると思い,Bに対する憎しみがこみ上げ,Bを
殺害することを決意した。
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成14年8月19日午前9時30分ころ,青森県三戸郡c町大字d字ef番地
の当時の被告人方において,B(当時77歳)に対し,殺意をもって,電気コード(平成14
年押第3号の1)の両端をそれぞれの手で持ち,これを同人の背後からその頚部に巻き
付けて左右に引っ張り,更に仰向けに倒れ込んだ同人の頸部の前部のところでこれを
交差させて引っ張った上でその両端を結んで強く締め付け,よって,そのころ,同所にお
いて,同人を絞頚による窒息により死亡させて殺害したものである。
(法令の適用)
罰 条        刑法199条
刑種の選択      有期懲役刑を選択
未決勾留日数の算入  刑法21条
没収刑法19条1項2号,2項本文
訴訟費用の不負担   刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1 不利な事情
 被告人は,本件犯行により,一人の人間の尊い生命を奪っており,本件犯行の結果
は,極めて重大であるというほかない。
 本件犯行の動機は,判示犯行に至る経緯のとおり,妻である被害者Bが被告人に
無断で被告人の土地を売却して新しい墓を購入しておきながら,被告人のパチンコ遊
びや電気ポットのコードを外さないことを非難することについて,Bに馬鹿にされてい
ると感じ,Bの殺害を決意したというものであり,短絡的かつ自己中心的と言うべきで
ある。土地売却や新しい墓購入の点については,そのことをもって本件につきBに特
段の落ち度があるとはいえず,本件犯行を正当化するものではない。
 また,本件犯行の態様は,Bの背後から,その頚部に電気コードを巻き付けて,無
抵抗のBに対して約2分間にわたりこれを締め付けた上,Bが倒れ込んで一旦電気コ
ードから手を離した後,更にBが息を吹き返したと思って電気コードが頸部に食い込
むまでに強く締め付けたものであって,確固とした殺意に基づいており,執拗かつ悪
質である。
 ところで,Bは,本件当時77歳と高齢ではあったものの,糖尿病や高血圧のために
病院に通う程度で比較的健康であったにもかかわらず,本件犯行により天寿を全うす
ることができなかったものである。本件犯行に対し,Bの息子であり,被告人及びBと
同居していたCは,長年連れ添ってきた夫である被告人によって殺されたBの無念さ
を思いやって厳しい処罰を望んでおり,Bの前夫との間の他の二人の子供も,犯人に
対する厳重な処罰を望んでいるが,被告人からBの遺族に対する慰謝の措置は,何
ら講じられていない。
 そして,被告人は,本件犯行後,北海道に逃走し,偽名で旅館に宿泊した上,知人
に金員を借りようとしており,このように自己保身に終始しているという点で,犯行後
の犯情も悪質である。
 以上によれば,被告人の刑事責任は,まことに重大である。
2 有利な事情
 他方において,被告人は,Bとの口論中に怒りがこみ上げて犯行に至ったものであ
り,本件犯行は,計画的とはいえない。また,被告人は,体刑前科8犯を有するもの
の,最終体刑前科は,昭和60年すなわち約18年前のものである。さらに,被告人
は,現在76歳と高齢であるほか,本件犯行を自白し,当公判廷においても反省の情
を示し,Bに対して申し訳ない旨供述している。
3 結論
 以上述べたところによれば,本件犯行の結果が極めて重大であるなど,被告人の刑
事責任は重大であり,被告人に有利な事情を考慮してもなお被告人に対しては長期
間の矯正教育が必要であるから,主文の刑を科すこととした。
(求刑-懲役10年及び電気コード1本の没収)
平成15年2月19日
青森地方裁判所八戸支部
裁判長裁判官   久留島 群 一
裁判官   増 田 啓 祐
裁判官   下 田 敦 史

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛