弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人等の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決のうち各控訴人敗訴部分を取消す、被控訴人の請求を棄却
する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴
代理人は主文と同じ判決を求めた。 当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出・援
用・認否は、次に附加するほかすべて原判決の事実欄の記載と同一であるから右記
載を引用する。
 (一) 被控訴代理人の附加する陳述。訴外Aが昭和三二年一月二八日死亡した
ことは認める。
 (二) 控訴代理人の附加する陳述。(1)本件の金六〇万円の消費貸借におい
ては、利息を年三割六分の割合とする約定はなされたが控訴人等が債務を履行しな
いときの損害賠償額を予定する特約はなされなかつた。したがつて弁済期日後も、
利息は支払われたけれども損害金の支払はなかつた。このような場合には、利息は
もちろん期限後の損害金も利息制限法第一条、民法第四一九条第一項但書によつて
年一割八分の割合によらなければならない。それを、利息については年一割八分に
制限されるが損害金については利息に関する年三割六分の約定(損害金についての
約定ではない)によつて右限度まで請求できると解するのは利息制限法第四条に反
する不当な解釈である。よつて被控訴人の年三割六分の割合による損害金の請求は
失当であつて年一割八分の範囲に止めるべきである。(2)訴外Aは第一審判決前
昭和三二年一月二八日死亡した。したがつて原判決が控訴人Bに同訴外人と連帯し
て金員の支払いを命じたのは失当である。
         理    由
 当裁判所の認定・判断は次に附加するほかすべて原判決の理由と同一であるか
ら、その記載をここに引用する。
 <要旨>(一) 損害金の請求について。利息制限法第四条の制限まで期限後の遅
延損害金を請求しうるのは、その賠償額が予定されている場合に限るのであ
つて、賠償額が予定されていない場合には、約定利率があるときはそれによること
になり(民法第四一九条)、その約定利息が利息制限法第一条の限度をこえて定め
られていても、約定利息は右の制限の範囲内においてのみ有効であり、遅延損害金
も同じ範囲内においてのみ徴しうるにとどまる、と解すべきである。したがつても
し本件において遅延損害金の約定がなかつたならば、たとえ約定利息が年三割六分
であつてもそれによることはできず、利息制限法の制限内に引き直された約定利息
にしたがつてそれと同一の割合すなわち年一割八分の割合にとどまらなければなら
ない。しかし証人Cの証言によつて成立を認めうる甲第一号証の一、二、成立に争
いのない甲第二号証、乙第一号証および乙第二号証の一ないし九、ならびに証人
C、同D、同E(一、二回ただしその一部)および同F(ただし一部)の各証言を
綜合すると、控訴人等と被控訴人とは本件貸借に当つて利息を月三分(年三割六
分)と約定したがそれは特に遅延損害金と区別したものとしてではなく、遅延損害
金をも含めたものとして約定したものであること、したがつて弁済期日後も引続き
「利息」として期日前と同じ割合の金員を授受していること、被控訴人発行のその
領収証のうちには「利息延滞」あるいは「延滞利息」として受領する旨の文言もみ
られること(乙第二号証の五、七)を認めることができる。証人E、同Fの各証言
のうち右認定に反する部分は信用しない。その他右認定に反する証拠はない。右事
実から考えると本件においては遅延損害金の約定(賠償額の予定)がなかつたので
はなく、前記利息の約定のうちに利息とともに年三割六分とすることに約定があつ
たと解するのが相当である。したがつて被控訴人が年三割六分の割合で遅延損害金
を請求するのは適法であつて、控訴人等の主張は理由がない。
 (二) 訴外Aが本訴提起前昭和三二年に死亡していたことは当事者間に争いが
ない。したがつて原判決がその主文において控訴人Bに同訴外人と連帯して金員を
支払うことを命じたのは適当でない。しかし右「訴外Aと連帯して」という記載は
そもそも原判決には不用の記載であつてその記載があるからといつて当事者間の権
利関係に何等の影響をもつものでもないから、右のかしは原判決を取消す事由とは
ならない。したがつてこの点に関する控訴人等の主張も理由がない。 以上のとお
り、原判決は相当であつて本件控訴はいずれも理由がない。よつて控訴費用につき
民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 渡辺進 裁判官 水上東作 裁判官 石井玄)

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