弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が原告らに対して昭和五三年九月二〇日になした原告らの昭和五一年九月
一六日付け地方公務員法(以下地公法という。)四六条に基づく勤務条件に関する
措置要求を却下する旨の判定を取消す。
2 被告が原告Aに対して昭和五三年九月二〇日になした同原告の昭和五二年八月
一一日付け地公法四六条に基づく勤務条件に関する措置要求を却下する旨の判定を
取消す。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告らの地位
原告らは、いずれも横浜市内の公立学校事務職員であり、同市の公立学校事務職員
を構成員として組織され被告に登録された職員団体である横浜市学校事務労働組合
(以下訴外職員団体という。)の構成員であつて、原告Aは執行委員長、その余の
原告らは役員たる地位にある。
2 判定の存在
(一) 訴外職員団体は、訴外横浜市教育委員会に対し、昭和五一年六月一七日、
勤務時間内組合活動の保障等九項目を議題とする交渉を申し入れたが、同教育委員
会から右交渉の申し入れを拒否された。そこで、原告らは被告に対し、同年九月一
六日付けで地公法四六条に基づき、同教育委員会は訴外職員団体の右交渉申し入れ
にすみやかに誠意をもつて応じなければならない旨の勤務条件に関する措置要求を
行つたところ、被告は、昭和五三年九月二〇日、右要求は同条に規定する勤務条件
に関する措置の要求にはあたらないとの理由で、これを却下する旨の判定(以下第
一の判定という。)をなした。
(二) 訴外職員団体は、訴外神奈川県教育委員会に対し、昭和五二年五月一〇日
には事務主任制の導入を、同年六月六日には同年度の夏期一時金を、同月二九日に
は時間外勤務手当をそれぞれ議題とする交渉を申し入れたが、同教育委員会から右
各交渉の申し入れを拒否された。そのため、原告Aは、被告に対し、同年八月一一
日付けで地公法四六条に基づき、同教育委員会は訴外職員団体の右各交渉申し入れ
にすみやかに誠意をもつて応じなければならない旨の勤務条件に関する措置要求を
行つたところ、被告は、昭和五三年九月二〇日、第一の判定と同様の理由で、
右要求を却下する旨の判定(以下第二の判定という。)をなした。
3 判定の違法性
第一、第二各判定とも地公法四六条の解釈を誤つた違法なものである。
よつて、被告に対し、原告らは第一の判定の、原告Aは第二の判定の、取消をそれ
ぞれ求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 請求原因2(一)の事実中、横浜市教育委員会が、原告ら主張の交渉申し入れ
を拒否したとの点は否認し、その余は認める。
3 請求原因2(二)の事実中、神奈川県教育委員会が、原告A主張の各交渉申し
入れを拒否したとの点は否認し、その余は認める。
4 請求原因3は争う。
三 被告の主張
原告らは、地公法四六条により、被告に対し、横浜市教育委員会及び神奈川県教育
委員会(以下訴外当局という。)をして訴外職具団体との交渉に応じさせる措置を
とるよう要求しているものであるが、同条によれば、措置要求のなしうる事項は、
給与、勤務時間その他の勤務条件と明示的に限定され、勤務条件とは、自己の勤務
を提供し、若しくは、その提供を継続するかどうかを決するにあたり一般的に当然
考慮の対象となるべき利害関係事項を指すものと解されるから、当局をして職員団
体との交渉に応じさせることが、右にいう勤務条件に含まれないことは明白であ
る。したがつて、被告は、原告らの右各要求が同条の措置要求の対象にならないと
して、これを却下したものである。
四 被告の主張に対する原告らの反論
地方公務員も、憲法二八条にいう勤労者として、本来団結権その他の労働基本権の
保障を受けるものであるが、地公法は、職員の団体協約締結権を否定し、争議行為
を禁止している結果、憲法二八条の保障する団体交渉権に由来する地公法五五条の
交渉も、その実質を大幅に制限されたものになつている。ところで、労働基本権を
制限する場合は、必要やむを得ない限度にとどめると共に、これに代わる相応の代
償措置が講じられなければならないものであるところ、労働基本権の制限に対する
代償措置として地公法四六条の勤務条件に関する措置要求の制度が設けられている
のであるから、交渉権が不当に侵害された場合には措置要求の制度によつて是正す
ることができるものと解さなければならない。もしそうでないとすれば、交渉権
は、その侵害に対し何らの救済措置を伴わない単なる陳情にすぎないものとなり、
結局団体交渉権を否定することとなつて地公法が違憲性を帯びるものといわざるを
得ない。したがつて、訴外当局をして訴外職員団体との交渉に応じさせる旨の要求
が同法四六条所定の措置要求の対象に含まれていることは明らかであるから、被告
の主張は失当である。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 請求原因1の事実、及び同2の事実中、訴外当局が原告ら及び原告A主張の各
交渉の申し入れを拒否したとの点を除くその余の事実は、いずれも当事者間に争い
がない。
二 そこで、地方公共団体の当局をして職員団体との交渉に応じさせる旨の措置要
求が地公法四六条に規定する勤務条件に関する措置要求にあたるか否かについて判
断する。
1 地公法四六条は、措置要求をなしうる事項を給与、勤務時間その他の勤務条件
に関する事項に限定しているところ、そこにいう勤務条件とは、給与、勤務時間、
休日、休暇、職場での安全衛生、執務環境、災害補償等勤労者がその労務を提供す
るに際しての諸条件、及び宿舎その他福利厚生に関する事項を含めて労務の提供に
関連した待遇の一切を指すものと解せられる。ところで、地公法五五条の職員団体
と当局との交渉は、前記勤務条件を維持改善するための手段ではあつても、勤務条
件そのものではないので、当局をして職員団体との交渉に応じさせることを求める
要求は、同法四六条の措置要求の対象には含まれないものと解される。
2 原告らは、地公法五五条の職員団体と当局の交渉は、憲法二八条の団体交渉権
に由来するものであるから、交渉権が不当に侵害された場合には、地公法四六条の
勤務条件に関する措置要求により代償的機能が果たされるべきであり、このように
解さないと、団体交渉権を否定することになり、地公法が違憲性を帯びるものとい
わざるを得ない旨主張する。
なるほど、地公法には、同法五五条の交渉が当局によつて不当に拒否された場合
に、労働組合法におけろ救済申立のような救済制度が設けられていないが、もとも
と、一般職に属する地方公務員(以下職員という)は、全体の奉仕者として公共の
利益のために勤務するというその地位の特殊性と職務の公共性から、争議行為が禁
じられ、団体協約を締結する権利が認められず、団体交渉権も制限されて、同法五
五条により職員団体と当局との間で交渉することができることになつてはいるもの
の、私企業における労働者のように団体交渉によつて労働条件を決定するという方
式は認められていないのであり、その反面、職員は、身分、任免、服務、給与その
他の勤務条件が法律及び条例によつて定められ、いわゆる法定された勤務条件を享
有できること、情勢適応の原則により、職員の勤務条件が社会一般の情勢に適応す
るよう随時適当な措置を講ずべきことを地方公共団体に義務づけていること(同法
一四条)、勤務条件に関する職員の利益を保障するため、公正、中立な立場の専門
機関である人事委員会又は公平委員会の制度を設けてこれに必要な権限を与えてい
ること、同法四六条により、職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、前
記委員会に対し、同法五五条の交渉を経て得られたと同一の事項につき措置要求を
して判定を受けうる権利ないし法的利益を有していることなど、労働基本権の制限
に対応して適切な代償措置が設けられているうえに、更に、労働基本権は勤労者の
経済的地位の向上のための手段として認められるものであつて、それ自体が目的と
される絶対的なものではないことを考え合わせると、同法五五条の交渉が当局に拒
否された場合に、交渉それ自体に関する救済方法がないからといつて、直ちに同法
が違憲性を帯びるものとは解し得ないから原告らの主張はとうてい採用できない。
3 以上のとおり、地方公共団体の当局をして職員団体との交渉に応じさせる旨の
要求は、地公法四六条の勤務条件に関する措置の要求にはあたらないものであるか
ら、原告らの措置要求を却下した被告の第一、第二の各判定には何らの違法もな
い。
三 よつて、原告らの本訴各請求はすべて理由がないのでこれを棄却することと
し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条をそれ
ぞれ適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 滝田 薫 吉崎直弥 飯渕 進)

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