弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人袴田重司の上告理由第一について。
 原審第五回弁論調書に、被上告人ら先代が昭和三二年三月分以降の賃料につき提
供も供託もしていないことを以て、他人の家屋を使用する者として信義に反する行
為である旨の陳述が上告人によつてなされたこと及び右提供ないし供託のなされて
いない事実を認める旨の陳述が被上告人によつてなされたことの各記載があること
は所論指摘のとおりであるが、右賃料についてはその後被上告人はこれを供託した
旨陳述し、これに対し上告人はその点を争わない旨述べていることは、原審第七回
弁論調書上明らかであつて、かゝる弁論の経過に徴すれば、右上告人の所論陳述を
以て、上告人の被上告人ら先代に対する本件解約申入の正当事由の一つとして主張
されたものとは解されないから、原判決がこれを所論正当事由の主張として判断し
なかつた点に審理不尽、裁断遺脱ないし理由不備はない。所論は採用できない。
 同第二について。
 原審がその認定した事実関係を比較考量の上、上告人の所論解約申入に正当事由
なしとした判断は首肯できるところであり、その間に所論審理不尽、判断遺脱、理
由不備の違法は見当らない。所論は、ひつきよう原審の専権たる証拠の取捨、事実
の認定につき異を唱え、或いは独自の所見に基づき原審の正当な判断を非難するに
すぎないものであつて採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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