弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの上告趣意は、事実誤認の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条
の上告理由に当らない。
 被告人三名の弁護人佐藤義彌、同青柳盛雄、同倉田哲治、同池田輝孝の上告趣意
第一点について。
 論旨は憲法三一条違反をいうけれども、その実質は単なる刑訴法違反の主張に帰
し、上告適法の理由とならない。なお原判決は、被告人Aに対しては、一審判決認
定の各事実はその挙示する照応証拠によつてこれを肯認することができるから、そ
の事実認定には誤りはないが、ただその量刑が不当であるとして一審判決を破棄自
判したものであつて、かかる場合においては控訴審としてさらに改めて事実の認定
および証拠説明をする必要はなく、第一審の確定した事実に対し法令を適用の上量
刑をすれば足りる、とすることは、当裁判所の再次の判例とするところである。
 同第二点について。
 論旨は憲法三一条違反をいうが、その実質は単なる刑訴法違反の主張に帰し、上
告適法の理由とならない。なお記録によれば、所論被告人Bの検察官に対する供述
調書は、(1)昭和二七年七月一五日付供述調書(記録三冊、一四四六丁)、(2)
同年九月一六日付供述調書(記録四冊、一八八一丁)、(3)同年同月二二日付第
二回供述調書(記録四冊、一八九三丁)の三通があり、そして右各調書冒頭記載の
被疑事件の罪名によれば、右(1)は暴力行為等処罰に関する法律違反等被疑事件
について、右(2)と(3)とは爆発物取締罰則違反被疑事件についてそれぞれ作
成せられたものであり、右(2)と(3)のうち、(3)については、特に「第二
回」供述調書と題記せられているから、右(2)は単に「供述調書」と題記せられ
ているけれども、右罰則違反被疑事件についての「第一回」供述調書であることが
自から明らかである。そして、一審判決は、右(3)の「第二回」供述調書を証拠
として挙示していないこと判文上明白であり、しかも判示第一の事実については、
単に前記被告人の「検察官に対する供述調書」として挙示しているけれども、判示
第二、第三の事実については、特に右と区別するため「第一回」の文字を附加し「
検察官に対する第一回供述調書」として挙示していることも判文上明白である。し
てみれば、前者は右(1)の供述調書を、後者は右(2)の供述調書を指示するも
のであることが明らかである。それ故一審判決には、所論のような違法は存しない。
 同第三点1について。
 論旨は、一審判決が判示第二、第三の事実について証拠とした所論各検察官供述
調書は、刑訴三二一条一項二号に違背してこれを採証した違法があるとの控訴趣意
に対し、原判決は何らの判断を示していないから、判断遺脱、審理不尽の違法があ
る、との単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
なお、原判決には、所論指摘のような判断遺脱の違法があるけれども、後記上告趣
意第三点2について説明するとおり、所論各検祭官供述調書もまた刑訴三二一条一
項二号の要件を具備していると認められるから、一審判決がこれを採証したことに
は何らの違法はなく、従つて原判決の右違法は判決に影響を及ぼさず刑訴四一一条
を適用すべきものとは認められない。
 同第三点2について。
 所論は、刑訴三二一条一項二号にいう「前の供述と相反するか若しくは実質的に
異つた供述」とは、被告人がその供述者に対し反対尋問の機会を有する証拠調の段
階においてなされた供述をいい、刑訴二九一条二項の冒頭手続の段階における陳述
は単に公訴事実に対し争点を整理明確にするに過ぎず、検察官供述調書に対応する
ような事実に関する供述ではないのみならず、被告人は共同被告人の陳述に対して
は何ら反対尋問の機会を与えられていないのであるから、冒頭手続における共同被
告人の陳述はこれに含まれないと解すべきである、従つて一審判決における所論各
共同被告人の検察官供述調書の採証は右法条に違反する違法のものであり、これを
是認した原判決もまた右法条に違反しひいて憲法三七条二項、三一条に違反すると
主張する。
 しかし、刑訴二九一条二項の冒頭手続の段階における共同被告人の陳述であつて
も、それが事実に関する供述を含む限り、共同被告人の供述として、その供述者本
人のみならず被告人に対する関係においてもその証拠能力を否定されるべき理由は
ないし、そしてその陳述内容が前に検祭官に対してなした供述と相反し又は実質的
に異なるものであり、しかもそれをその後の手続段階においても依然維持している
場合には、たとえ共同被告人が所論のように証拠調の段階において供述をしていな
くとも、冒頭手続における右陳述は、刑訴三二一条一項二号にいう「公判期日にお
いて前の供述と相反するか若しくは実質的に異つた供述」に当たると解するを相当
とする。記録によつて第一審における本件訴訟の経過を見ると、被告人Aを除く所
論被告人等は、冒頭手続においていずれも、前に検祭官に対してなした供述とは相
反するか又は実質的に異なるところの各公訴事実全面否認の陳述をなし、最后まで
これを維持して変らなかつた事実が認められるのみならず、冒頭手続の段階におい
ては兎も角として、証拠調の段階において、特に所論各検祭官供述調書(一審判決
判示第一関係のもののみならず、原判決が判断を遺脱した判示第二、第三関係のも
のをも含む。)の証拠調施行前においては勿論その后においても所論各被告人又は
その弁護人等は、刑訴三一一条三項の規定による、裁判長に告げて所論各共同被告
人に対し同条二項の供述を求める機会が十分与えられており、一審裁判所において
何らこれを制限した形跡すら認められず、却つて所論各被告人又はその弁護人等に
おいては、自ら敢えてこの権利を行使しようとしなかつた事実が認められる。
 そして原判決は、所論のように、右の相反するか又は実質的に異つた供述がなさ
れたとの一事により直ちに証拠能力を肯定したものではなく、刑訴三二一条一項二
号但書所定の特信情況の存在をも肯認した上、一審判決判示第一の事実に関する所
論各検察官供述調書の採証を是認したものであることその判文に徴し明白であるし、
また、前記のように、原裁判所が判断を遺脱した同判示第二、第三の事実について
の所論各検察官供述調書もまた、その各供述内容から見て前記全面否認の各陳述よ
りもこれを信用すべき特別の情況があると認められるから、これを採証した一審判
決には所論のような刑訴法違反の違法はなく、従つてこれを維持した原判決は結局
正当なるに帰する。
 それ故、所論違憲の主張は、その前提において失当であつて上告適法の理由とな
らない。
 同第四点について。
 論旨は、事実誤認とこれを前提とする単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。
 同第五点の一と三は、事実誤認の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らな
い。同第五点の二の論旨中違憲をいう点は、記録に徴しても所論各検察官供述調書
の任意性は優にこれを認めることができるから、その前提を欠くものであり、その
余の論旨は単なる刑訴法違反の主張であつて、すべて上告適法の理由とならない。
 同第六点は、量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人三名の弁護人竹沢哲夫の上告趣意については、その採用できないこと前記
弁護人佐藤義彌外三名の上告趣意第三点2について説明したところによつて明らか
である。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和三五年七月二六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

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